魔法少女リリカルなのはEXTRA SEQUENCE   作:黄金馬鹿

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ここからどうなるのか……まぁ、タグとかでバレバレでしょうね!!


第三話

 ヴィヴィオ達に連れてこられた場所は、先ほどの荒廃した場所に比べれば、かなりミッドチルダとしての原型を残していた。

 そこは管理局の本部だった場所を中心に広がっており、城壁のような物と櫓のような物が街らしき物を守るためにぐるりと展開されている。その城壁は厚く硬く、なのはのような火力バカでも、抜くには一苦労だろう。

 その壁には、門のような物が一つだけ存在し、それを見張るように、デバイスを持った男が立っていた。

 

「これは聖王様、覇王様、エレミア様。お早いお帰りですね。成果の方は、いかがでしょうか」

「ウェンディの管轄地の偵察は終了したから、準備が整ってからダールグリュンとクロゼルグと共にウェンディを討伐って感じかな。あ、これまだ極秘だから、口外しないようにね?」

「分かっていますとも、聖王様。して、そちらの男は……」

「街中で飛んでたので、保護しました。怪しさしかないですが、ヴィヴィオが信用しているみたいなので、連れてきたんです」

「そうでしたか……お前、運がよかったな。聖王様達に見つけてもらって」

「あ、あぁ……」

 

 もうここまで来るとついていけない。時代を逆行しているのではないかと思ってしまうほど、目の前の魔導士はヴィヴィオ達に対して堅っ苦しい対応をしていた。そして、その魔導士と話すヴィヴィオとアインハルトは、正しく王のような態度と対応をしていた。

 最早ライアンにはついていけない状態故にボーっとしていたが、門が開き、ヴィヴィオとアインハルトがそこに入っていったのを見たジークが、足を動かさないライアンの脇腹を小突いた。

 

「何しとるん。はよ入るで」

「わ、わかった……」

 

 呆れたジークの声に何とか意識を現実に戻して門の中へ入る。

 門の中は簡易的な家が、沢山並んでいた。それが未曽有の災害によって多数の家が壊れ住人の暮らす場所がなくなった際に使われる筈だった物である事が、簡易住宅の設置訓練もした事のあるライアンは分かった。

 店らしき物はなく、完全に人が住むだけの街、という印象がライアンの中で根付いた。それを物珍しく見ていると、横に並んで歩いていたジークが声をかけてきた。

 

「そんなキョロキョロ見ても、今更珍しくもあらへんやろ、こんな光景」

「そ、そうなのか?」

「どこもかしくもこんな感じや。本当はこんなん取っ払って、子供達もこんな閉鎖的な場所からは出してやりたいんやけどな……」

 

 ジークの言葉の端々からは、無念の感情が受け取れた。それは、人の上に立つ者としての、ここを管轄する者としての言葉なのだろう。ここまで来ると、知り合いが仕掛けたドッキリだとは、到底思えなくなった。

 そして、これから、あの平和なミッドに戻れるのか。そんな考えを受かべると、深い絶望を感じてしまうので、ここは流されて現状を把握する事にした。

 

「そういえば、ヴィヴィオは自分の事を聖王って名乗ってたけど……」

「あれは、ヴィヴィちゃんがそう決心したからや。スカリエッティのナンバーズによって虐げられる市民達を守るために。ナンバーズとスカリエッティを打倒するために、オリヴィエとしてではなく、今代のゼーゲブレヒトとして戦うって。それにウチ等は手を貸して、ヴィヴィちゃんに人は集まった」

「ゆりかごから助けたときは子供でしたが……立派になりましたよ、本当に」

「そうなのか……」

「こうやって荒廃した世界には、救世主が必要なんです。人柱が必要なんです。あの子は、それを一人で引き受けた……私達は、それを三分割した内の一つを背負ってるんです」

「最悪の場合の、悪意の掃きだめになるため、皆を生かすために、な。だからこその聖王なんや。ちなみに、ハルにゃんは最初、それにブチ切れて最終的には殴り合いに発展したで」

「じ、ジーク!」

「だって事実やもん」

 

 ヴィヴィオの名と、聖王という肩書。それが途轍もなく重いものだというのは、アインハルトとジークの言葉から読み取れた。そして、その経緯に秘められたヴィヴィオの決意と、三人の志というのは、とてもじゃないが、笑うことは出来なかった。

 だが、分かったことはある。ヴィヴィオは、例えどんな事になっても、優しいのだと。あの人の娘なのだと。

 

「まぁ、ウチ等が名乗りあげてからは早かったで? 信用を得るためにドゥーエを倒して、ドゥーエの統括していたこの地区を開放して、壁を作った。ここは保護区シュトゥラ。誰でも受け入れて保護したるってな。そしたら皆助けを求めてここに来た。それを見て、あの二人は宣言したんや。ヴィヴィちゃんは聖王だと。ハルにゃんは覇王だと。この世界に生きる人々の最後の希望となると。で、後はウチの知り合いとかに声をかけて、支配されてない土地を保護区にして、一般人は保護しとる」

 

 どうやら、スカリエッティの動乱によって混乱したこの世界は、ヴィヴィオとアインハルト、そしてジークの手によって、現在の形を保っているらしい。

 素直に凄いと思うし、尊敬する。人の上に立つ者として、王として立った二人と、それに付き添うことにした目の前の黒い少女の事を。

 そんなライアンの事を知ってか知らないでか、ジークは前を歩き談笑している二人に合流すると、三人での談笑に入った。それを見てライアンは若干の疎外感を感じてしまったが、仕方ないか、と割り切った。

 そして、簡易住宅の住宅地を抜け、ヴィヴィオ達はボロボロで、何度も修復された痕跡のある管理局の地上本部に入っていった。中にはスタッフらしき人は居らず、ヴィヴィオ達についていくと、会議室にヴィヴィオ達は入っていった。

 ライアンも会議室に入ると、そこは会議室特有の長い机と大量の椅子は撤去され、小さなテーブルと幾つかの椅子が置かれた簡易な部屋になっていた。

 

「……ここが、私達の活動拠点。部屋は別にあるけど、基本的にはここで待機している感じかな」

「他にも、事務仕事や苦情の処理等をしてますね」

「言うなら仕事部屋や」

 

 三人は己の物らしき椅子に座り、適当な椅子に座れと即す。それに従い、空いていた椅子に座ると、ヴィヴィオが書類を取り出し、机の上に置いた。

 

「えっと……ライアンさん、でしたっけ。一応、さっきまで貴方が話していた事を詳しく話してもらってもいいですか?」

 

 ヴィヴィオが先ほどまでの優し気な表情から一瞬で厳しい顔つきに表情を変え、ライアンを見据える。まるで、嘘を言ったところで分かるからな、と忠告しているようだった。それは他の二人も同様で、膝の上に手を置いて瞼を下しているアインハルトも、腕を組んでいるジークも、同じような雰囲気を醸し出していた。

 

「……な、なにを」

「私達も、腹に一物を抱えた人間を管轄下に置きたくないんですよ。いつ背中を撃たれるか、分かったものじゃありませんし」

 

 その雰囲気に一瞬ビビッてしまい、思わず声が出てしまったが、アインハルトはそれの答えを、簡潔に話した。

 

「ウチ等はそれを聞いて馬鹿馬鹿しい、夢物語だって言うと思う。けどな、ライアン。人に信用してもらうには己の全てを話す。それが一番や」

「隠し事を話した人間の表情っていうのは、案外分かるものなんです。だから、話してください」

「でも、ヴィヴィオ……お前は俺を信用してくれるって……」

「確かに、私は信用しています……いえ、信用したいんです。そう、私の中の私が、叫んでるんです……だから、話してください。その叫びを受け入れさせてください」

 

 アインハルトは完全に信用していないから口調がかなりトゲトゲしいが、ジークとヴィヴィオは、まるで子供をあやすかのように、相手を安心させるような声色で告げてきた。だが、怖い。己の知っている物を全てぶちまけ、それを否定されてしまう事が。今までの人生があり得ないの一言で両断されてしまうことが。だが、その恐怖に屈してしまっては三人の信用を完全に失ってしまう。自分の身に何が起こったのかを知るための要素を、失ってしまう気がする。

 それに、ヴィヴィオ本人は覚えていないのかもしれないが、あのなのはと喧嘩していた、高町ヴィヴィオは彼女の中でまだ生きているのかもしれない。そう思った時には口は既に開いていた。後悔しないように。やらないよりも、やって後悔するために。このヴィヴィオの信用を得るために。

 

「俺は……俺の知っている歴史は、こんな荒廃した物じゃない。もっと、綺麗な物だった」

 

 そんな皮切りで、ライアンは己の知っている十年前を。なのはから聞いたその前を、一から話した。

 機動六課の事。それを引っ張った三人の若きエース達の事を。その三人の輝かしい軌跡を。そして、それに助けられたヴィヴィオと、そのヴィヴィオに惹かれていったアインハルトの事を。そんな二人の前に立ちふさがったチャンピオン、ジークの事を。

 それを聞いていた三人は至極真面目な顔をしながらそれを聞き、アインハルトは途中から何かを思いついたのか、端末を使って何かを調べ始めていた。だが、ライアンは止まらなかった。きっと、何とかなると信じていたから。

 

「……言いにくいですけど、ハッキリと言いますね。私達の知っている人の中に、高町なのは、フェイト・T・ハラオウン、八神はやての三人は居ません」

「それに、P.T事件も闇の書事件も聞いたことがあらへんな……でもって、それらを本当の事だと思いこんどる。やっぱ何か怪しい薬でも極めてるんとちゃうん?」

「……やっぱり、信じられないよな」

 

 分かっていた。この世界は既にライアンの知っている物ではないと。あの瞬間、世界が白黒に染まってしまった瞬間に何かが起こったのだと。

 もしかしたら、この世界はなのは達の存在しない世界なのかもしれない。そんな事を思ってしまい、泣きそうになってしまうと、アインハルトが口を開いた。

 

「……いえ、もしかしたら、彼は嘘は言っていないのかもしれません」

「え? どういうこと、ハイディ」

「今、管理局のデータベースを洗ってみたのですが……ありました。P.T事件と闇の書事件。それも、彼の言った年と日付ピッタリで」

「ほ、本当なのか!?」

 

 思わず声を荒げてしまう。

 P.T事件と闇の書事件があったのなら、少なくともフェイトとはやては存在する。そして、その二人の橋渡しとして、なのはも存在する。

 あの平和な時に戻れなくても、あの三人がいてくれるのなら、例えナンバーズ全員が相手だとしても、ヴィヴィオ、アインハルト、ジークの三人が協力したら平和な時を作れる。そんな希望とともに叫んだが、アインハルトの表情は暗かった。

 

「ですが……こちらを」

 

 そう言い、アインハルトはホロウインドウをライアンに見せた。そして、そのその内容に絶望した。

 

「そんな……嘘だろ? 全員死んでるなんて……ッ!!」

 

 そう。その内容は、その二つの事件に関わった者は、全員死んでいるという事が書かれていたのだ。

 まず、最初に目についたのはフェイトだった。彼女は途中まではライアンの知る道を歩んでいた。だが、最後。時の庭園にて虚数空間に落ちていく母、プレシアに手を伸ばしたその時、謎の魔力弾によって背中を押され、虚数空間へそのまま落ちていった。その使い魔、アルフもフェイトの後を追っていったという。

 P.T事件の被害は、それだけだった。だが、それ以上に悲惨だったのは闇の書事件だ。

 そこも、フェイトが存在しないだけで、途中までは同じだった。だが、最後の闇の書との決闘にてなのははユーノ、クロノと共に挑み、敗北。そのまま闇の書に殺されている。しかし、それでも止まらない闇の書をアースラ艦長、リンディは己の全魔力を使い、足止めと封印を試みる物の、失敗、敗北、死亡。その直後、闇の書は偶然地球に居合わせたギル・グレアムのデバイス、デュランダルの氷結魔法によって永久凍土の中に封印された。が、その直後、アースラが謎の爆発。乗組員は全員死亡した。

 この報告書はギル・グレアムの使い魔が書いた物らしく、事務的に纏まっていた。

 

「これは管理外世界で起きた事件の記録……つまり、彼の知りえない物の筈です。しかし、彼はそれを知っている。これは、完全に仮設で有り得ない事ですが……」

「ライアンさんは、この事件がハッピーエンドを辿った歴史で生きていた人……?」

「つまり、並行世界の住人って事やな。それか、薬極めてるかや」

「ですが、彼には薬を使ったような痕跡は見えません」

「じゃあ、スカリエッティの手先、ってのはどうや?」

「有り得ません。彼が一般人の記憶を改造して送り込むようなみみっちい男ですか?」

「それもそうだね。あの男はやる時はもっと派手にやるからね。私の時みたいに。私とゆりかごの時みたいに!」

「自虐やめーや」

 

 そんな三人の会話は、ライアンの耳には入ってこなかった。彼の頭は、その重く苦しい事実を受け止めるだけで精一杯だった。

 あの三人とその関係者が悉く死んでいる。それは、機動六課の設立が無かったことになり、その機動六課の功績とも言えるJS事件の解決も、恐らく無かったことになる。管理局のトップ3とも言えるあの三人が存在せず、彼女等の意思と力を継いだスターズ分隊とライトニング分隊もいない。彼女等のレリック回収から繋げ解決したJS事件は誰にも発見される事なく、スカリエッティの奇襲染みた攻撃によって、管理局は成すすべなく崩壊したのだろう。

 

「まぁ、君。そういう事や。こればっかりはウチ等もどうにも出来んわ」

「ショックだろうし、私達もまだ半信半疑だけど……今は何とか今を生きないと」

「取り敢えず、彼にはこちらの歴史を話してみましょう。もしかしたら、彼は戦力になってくれるかも……」

『おっと、その前にこちらの話をしたいのだが、いいかな?』

 

 アインハルトがこの世界の歴史を話そうとしたその瞬間、聞き覚えのない声が聞こえてきた。そして、次の瞬間、会議室にある大型モニターの電源が一人でに入り、そこにはある男の顔が映された。

 その顔はライアンには馴染みのない顔だった。しかし、ヴィヴィオ、アインハルト、ジークにとっては憎くて憎くて堪らない。そんな相手だった。

 

『スカリエッティ!!』

 

 三人は立ち上がり、その名を叫んだ。それに驚き、立ち上がりながらライアンも叫んだ。

 

「す、スカリエッティ!? アイツが!?」

 

 この世界の混乱の原因、スカリエッティ。それの顔が大型モニターには映されていた。

 スカリエッティはその様子が可笑しかったのか、クツクツと笑った。

 

「何の用なの、スカリエッティ」

『おっと、聖王君。今回の用事は君ではない。そこの彼……ライアン・レギルスだ』

 

 そのスカリエッティの言葉に、三人の視線が一瞬でライアンに向く。

 まさか、本当にスカリエッティの手下だったのでは。そんな思想を孕んだ視線だったが、それはスカリエッティ自身に否定された。

 

『いや、彼は私の事を知らない。私も彼の顔を見たのは今日が初めてだ。つまり、初対面という事になる』

「た、確かにそうだけど……俺に何の用だよ、スカリエッティ」

 

 その言葉を聞いて、いい声だ、とスカリエッティは返した。

 

『何の用、か……ならば単刀直入に言わせてもらおう。ライアン君。この世界を元に戻してみたくはないかな?』

 

 スカリエッティの提案。それは、この世界の否定であると同時に、ライアンの知る平和な世界を取り戻さないか、という提案でもあった。

 

「……ど、どういう事だ」

『君は時間改変の影響を受けない人間、特異点だ。君は過去へ遡る事によって高町なのは、フェイト・T・ハラオウン、八神はやての三人を救うことで、この腐った世界を元に戻すことが出来る』

 

 その言葉を聞いても、ライアンの頭の中の疑問は増える一方だった。それはヴィヴィオ達も同じだった。

 

『つまり、だ。君の知っている歴史は正しい。しかし、今現在の歴史は君の知る歴史とは違う……即ち、それは何者かが過去を改変した、という事なのだよ』

「過去を、改変……!?」

 

 ライアンの知る歴史は、フェイトが死ぬことによって狂った。狂ってしまった。

 だが、思い出す。フェイトの死因は何かを。

 

「……まさか!?」

『そうだ。フェイト・T・ハラオウンの死因は未来から時を渡ってきた何者かによる者だ。それも、相当な恨みを持った何者かの、ね』

 

 そう。フェイトの背中を押した魔力弾を放った人物。それは報告書の中では出てこなかったし、なのは達から聞いたP.T事件の内容にも、彼女等の過去を映画化した物でも、あれ以上の人間は出てこなかった。

 つまり、その魔力弾を放った人物。それこそが、この時間改変を行った人物なのだろう。

 

「……でも、何でそれを俺に教える。お前は自分の野望を達成したんだろ。それに、何でお前がフェイトさんの事を知っている!!」

『一気に聞かないでくれるかな。では、まずフェイト・T・ハラオウンに関する質問について答えよう』

 

 一番優先度が低いものをピックアップしてくる辺り、性格が歪んでいる。絶対に調べたからだ、の一言で済ませてくる。

 だが、その予想は見事に裏切られる事になった。

 

『それはだね。私も特異点だからだよ、ライアン君』

「なっ……!?」

『何でか、と聞かれたら、昔にそんな実験を興味本位でやっていたからに過ぎない。だからこそ、私も覚えているのさ。フェイト・T・ハラオウンにザンバーの腹でホームランされ、逮捕されたあの時間を。機動六課をね』

 

 そういえば言っていた。フェイトはスカリエッティをザンバーの腹でホームランしたと、笑い半分で。

 その事はこの場では話していない。それに、今思い出した事だ。つまり、これはライアンしか分からない物の筈。だというのに、スカリエッティはそれを知っている。それが指し示す事は、スカリエッティは嘘をついていない、という事だ。

 

『で、何故私が君にこの事を教えたか、だね。それは、『つまらない』からさ』

 

 スカリエッティは、敵に塩を送った理由を、つまらない。その一言で済ませた。ますます意味がわからない。

 

『私はマッドだが科学者だ。それも、結果ではなく過程を楽しむ、ね。だから、気に入らないのさ。牢屋の中で世界が白黒になった数秒後、気を失ったと思ったら世界を支配している時間が作られた、なんてね。だから、私は君に接触した。下手人を討ってもらうためにね』

「それは……」

 

 言葉が出なかった。彼は、自分の成し遂げれなかった物を成し遂げた世界を、つまらないの一言で切って捨てようとしている。それが、ライアンには理解できなかった。

 

『……君はゲームをやるかな?』

「え? あ、あぁ……」

『例えば、RPG。君はその日発売の新作RPGを買ってきて、ウキウキしながらゲームを起動した。しかし、そのゲームを起動したらいきなりLv99の状態で、エンドロールと後日談が流れ始めた。どうだい、そんな状態のゲームが面白いかい? 満足かい?』

「いや……つまらない。満足もしない」

『だろう? 君にとっては不思議かもしれないが、私にとってはそういう感覚なのさ、今回の時間改変は。実につまらない。中身のない実験……ただの結果なんて、実に面白くない。もし、私が特異点でなければ、こんな事は微塵も思わなかっただろうね』

 

 その気持ちは、分からないでもなかった。彼の出した例えは、そのまま彼に当てはまってしまうのだろう。そして、彼はそれを不愉快に感じてしまうのだろう。 

 だから、だからこそ、彼は――

 

『だから、君には改変してほしいのさ。この時間改変を』

 

 彼は、どこまでも、過程を楽しむ人間なのだろう。それ故に、彼はマッドと呼ばれるのだろう。

 

「……けど、お前はそれが楽しいのか? 俺が時間を戻して、楽しいのか? それに、俺に頼まずにお前が行くのは駄目だったのか?」

『悪いが、私が過去に行くと、また時間が壊れる。私が二人存在してしまえば、JS事件はより手の付けられない物になるからね。それもそれで面白いのだが、それ以上に私は過去の改変をこの目で見たいのだよ』

「過去の改変を……?」

『あぁ。今回は見ぬ内に終わってしまったからね。だから、私は特異点による過去改変をこの目で見たいのさ』

「どうやって」

『過去の君を映す機械に、時空を多少ずらす装置は完成している。それで私は君を観察しよう。時には力も貸そう』

「その利点は」

『面白そうじゃないか。特異点による過去改変の改変。ポップコーンとジュース片手に大スクリーンでゆっくりと観るには丁度いい題材だ。ついでに、牢屋の中で立てる仮説も底が見えなくなる位になりそうだからね』

 

 この男は、完全に自分の興味本位で。自分の趣味で。自分の楽しみのために、ライアンを動かそうとしている。それはその場にいる全員がわかっていることであり、危険だと思わせた。

 だが、ライアンは縋りつきたかった。僅かな希望に。高町なのはと共に過ごした、あの時を取り戻すために。

 

『タイムマシン……遡行機は完成している。先に告げておくと、これは完全に過去への一方通行の機械だ。一度使えば、もうこの時代に直接戻ってこれない。君は過去の改変を止めても、その時代の住人として生きていくしかないのだよ』

「……」

『明日、もう一度通信しよう。その時までに、答えを決めておくといい』

 

 そう告げると、スカリエッティは通信を切った。

 会議室には、暫く不気味なほどに静かな空気が流れ始めた。その流れを変えたのは、以外にもアインハルトだった。

 

「……私は、反対です。あんな男の提案、飲むべきではありません」

「ウチもや。あの男、生理的に信用できへん」

 

 それもそうだろう。この二人にとって、スカリエッティの言ったことは完全に夢物語。しかも、信用の出来る要素の一切ない。

 だが、ヴィヴィオだけは違った。ヴィヴィオだけは、二人とは違う言葉を発した。

 

「……私は、ライアンさんに任せるべきだと思う」

「正気ですか?」

 

 ヴィヴィオの言葉に、アインハルトが辛辣な言葉を口にする。

 しかし、ヴィヴィオはその言葉に屈せず、理由を話す。

 

「……私、ライアンさんを見つけてからずっと、違和感を感じてたの。今が正しいのか。今の私が正しいのかって」

「ヴィヴィオ……」

「なんでか分かんないけど……私、ライアンさんの事を初めて見たとき、初対面だとは思わなかった。ずっと前からの知り合いに会ったかのような感覚だった。その答えが、今、スカリエッティの言葉で分かった気がするの」

 

 この三人の中で、一番交友が深かったのは間違いなくヴィヴィオだ。なのはから紹介された時から、なのはの居ない時も時々彼女の練習には付き合っていた。なのはの身内の中で、彼女の次に親交が深かったのは、ヴィヴィオだ。

 

「ライアンさん……貴方は、過去が改変される前の私と知り合いだったんですよね?」

「あぁ……君と君のママには、よくさせてもらったんだ」

「……私には、その記憶はないんです……けど、貴方に言いたいことがあるんです。多分、これは過去を改変される前の私の言葉だから……」

 

 ヴィヴィオは、翠と赤の瞳をライアンに向けた。そして、意を決して口を開いた。

 

「ライアンさん。私かなのはママか……どっちかを選んで」

 

 そして、ヴィヴィオは手を伸ばした。

 その言葉の意味は、すぐに分かった。

 今のヴィヴィオを取り、なのはを捨てて共に戦う道を取るか……なのはを取り、ヴィヴィオを切り捨て、なのはを助けるために過去へ戻るか。

 きっと、この言葉は、改変される前のヴィヴィオの言葉なのだろう。十六歳になり、子供らしさの抜けてきたヴィヴィオの、プロポーズ。過去の改変によって言うことが出来なかった、あの時のヴィヴィオの気持ちそのもの。それが、このヴィヴィオの口から出てきた。

 ここでヴィヴィオの手を取れば、これから先の人生は、ヴィヴィオと共に背中を合わせ戦っていく事になる。だが、取らなければなのはを助け、なのはと同じ時を生きる事になる。そして、ヴィヴィオとライアンの時は離れ、ヴィヴィオが十六歳の時にはライアンは三十九歳になる。もう、ヴィヴィオと同じ時は生きていけない。

 なのはは、十も歳の離れたライアンが本当に好きだった。だから、あの時のヴィヴィオの誘惑を全力で阻止した。そして、ヴィヴィオもライアンの事が好きだった。だから、あんな誘惑をした。今更ながら、自分が鈍感なのがとても憎く思えた。だが、あの親子の、自分を巻き込んだドロドロとした三角関係を知らなくてよかった、とも思えた。

 だが、このヴィヴィオの手を取っても、きっとヴィヴィオとは恋仲になれない。取らなくても、なのはとは恋仲になれない。

 これは、ライアンの好意によって決まる。ヴィヴィオと共に生きるか、なのはと共に生きるか。

 

「俺は……」

 

 このプロポーズの答え。それは、たっぷりと一分悩んでようやく決まった。

 ライアンはヴィヴィオの手を――




  ヴィヴィオの手を

  ニア取る
   取らない

ここの選択肢でなのはルートかヴィヴィオルートに移行します(なお、くっつくとは言っていない)

まぁ、過去改変起こったら改変された方はパラレルワールド化云々とかあると思いますが、そこは某時を駆ける列車に乗るヒーローの世界みたいに、改変が戻されたら全部元に戻ると考えて頂ければ。過去行きは一方通行ですけど
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