魔法少女リリカルなのはEXTRA SEQUENCE   作:黄金馬鹿

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戦闘機人になって過去へレッツゴー


第七話

 戦闘機人化の手術。それは、たったの数時間で終わった。それほどまでに、スカリエッティは戦闘機人化の手術に慣れていたし、肉体に全くの異常を感じさせない程の精度だった。そして、頭も弄られなかった。

 手術の関係上、バリアジャケットの解除とポケットの中の物、N2Uを預け、完全な非武装状態で上半身の服を脱ぐ事になった。が、幸いにも手術中は頭だけは自由に動かせる状態にし、ホロウインドウで適当な映画を見せてくれる程自由を利かせてくれた。そのため、手術中は暇を感じなかったし、頭を弄られる心配も無かった。

 そして、肝心な戦闘機人化の手術だが、これは腕や足をナンバーズやスバル、ギンガのように機械化させ、超人的な戦闘能力を持たせる、という物ではなく、体の中に機械を埋め込み、リンカーコアの出力をリンカーコアの無理がない程度に高めさせ、ISを作動させるための機械を、スカリエッティでなければ破壊も接触も感知も出来ない場所に埋め込むだけの、戦闘機人化手術にしては簡単でなおかつコンパクトなタイプだった。戦闘機人化というよりも、人為的にリンカーコアを強化し、ISを使えるようにした。行ったことはたったそれだけだった。

 手術の最中、それを逐一報告され、そしてISの発動方法と名前を聞かされたため、過去に飛んでからISを手探りで使わせる、等という羽目にならなくてよかった、とは思う。

 だが、この手術によって魔法の威力は確実に増したし、ISも使えるようになった。なのは達にはまだ遅れると思われるが、闇の書相手でも多少の時間稼ぎは可能になっただろう。

 

「さて、手術は完了。傷跡は完全に消した。後は麻酔が切れるまで待っていれば傷が開くこともない」

「……なんか、お前は医者になった方がいい気がしてきた」

「これは戦闘機人を生み出す過程で身に付けた物だ。私の本文は科学者だよ」

「うっせーマッド」

「ハッハッハ。そんな生意気な事を言うのなら、君の性欲を三百倍にしてただの性欲魔人にしてやろうか」

「すっげー地味だけどすっげー嫌だから止めろォ!!」

 

 麻酔はまだ一時間程度は効き続けるだろう。その間は魔法も使えなければ体も動かない。つまりは完全なる無防備。

 映画も二本目に入り、丁度半分程度が過ぎた。後は麻酔が切れ次第、スカリエッティから受け取った遡行機で過去に戻り、過去改変を改変する。

 昨日からずっとバリアジャケットだったため、過去改変前に来ていたトレーニングウェアでは落ち着かないが、そんな気持ちを映画を見て忘れる。映画に集中しつづけていると、視界の端にいたスカリエッティが何やらワタワタと忙しなく動き出し始めた。まさか、手術ミスでも起こしていたのでは、と一瞬想像し、血の気が引く。

 取り敢えず、それだけ慌てている理由は何なのか。唯一動く頭を動かし、口を開いた。

 

「スカリエッティ、何があった?」

「敵襲だ。まっすぐここに敵が向かってきている」

「はぁ!?」

 

 まさか、ヴィヴィオ達が? と思ったが、ヴィヴィオ達はライアンを信じて送り出した。こんな時に総攻撃を仕掛けてきたとは考えにくい。

 それに、ここはスカリエッティの基地だ。そんな発覚してから数時間でここに攻めてくるとは到底思えなかった。

 ならば、誰だ。ライアンが頭を悩ませていると、スカリエッティはライアンの寝ている手術台をカプセルのような物で閉じ込めた。

 

「おい!?」

「恐らく、君の麻酔が切れない内にここは駄目になる。一応、護衛としてノーヴェとチンクをここに呼び出しているが、彼女達でも勝てない可能性がある」

「そ、そんなにヤバい敵なのか?」

「ヤバいで済む事ではないね。プレシア女史の駆動鎧、どこぞの星の原生生物、廃棄した筈の私のガジェットドローンが大挙して押し寄せている。この急造の基地の防衛力じゃ抜かれる」

 

 それヤバいどころの問題じゃないのでは、そう考えた直後、この手術室のドアが開き、そこからチンクとノーヴェが急いで入ってきた。二人とも武装しているが、かなりボロボロになっていた。

 

「チンクさん、ノーヴェさん!」

「さっきぶりだな。だけど、あんまりゆっくり話している時間はないぞ」

「外は駆動鎧と原生生物とガジェットが大量だ。聖王達も異変を嗅ぎ付けて外にいるセイン、ウェインディ、ディエチと協力しているが、先に入り込んだ奴等がここに向かってきている。後数分でここに来てしまうだろう」

 

 チンクとノーヴェは冷静に現状を報告する。スカリエッティはそれを聞き、顎に手を置いて黙っている。

 誰が、どうしてこんな事に。そんな事をライアンが考えていると、この部屋の外から爆発音が鳴り響いた。一瞬、スカリエッティが自分を抹殺するために自演していると考えたが、スカリエッティの表情とチンク、ノーヴェが予想以上にボロボロな事から、決してこれは自演ではなく、スカリエッティか、ライアンか。そのどちらかを殺すためにこの騒動は起きていると分かった。

 爆発音を聞き、ノーヴェがドアから少し離れた場所に立ち、チンクが大量のナイフをその後ろで構える。しかし、スカリエッティは動かない。

 そして、二度目の爆発音が聞こえたとき、スカリエッティが動いた。

 

「……恐らく、狙いは君だろう。ライアン君」

「俺か……」

「そして、襲撃犯は過去改変の犯人だ。そいつは、過去の改変を防ぐために君を抹殺しに来たに違いない」

 

 過去改変の犯人。まさか、そいつがこの荒廃したミッドチルダに隠れ潜んでいたのか。そう思うとゾッとしてしまう。が、スカリエッティは現状を冷静に判断すると、一度カプセルを開け、ライアンの手に遡行機を取り付け、N2Uを握らせ、脱いだ上着をライアンの上に被せた。

 

「な、何を?」

「この遡行機は過去に飛びたい本人にしか起動できないように設定をしてある。これによって君はP.T事件の前日……ユーノ・スクライアがジュエルシードを落とす前日の地球、海鳴市へ遡行する」

 

 スカリエッティは焦った様子でライアンに説明をし続ける。そして、三度目の爆発音が鳴り響く。その爆発音は徐々に近く、大きくなっていた。

 

「体が動くようになったらこのボタンを押すんだ。そうしたら、君は意識を失い、過去へ飛ぶ。そして、これは時空を超える通信機にもなっている。私はこの時代から君をアシストさせてもらう」

「そ、それは分かったが……」

「麻酔が切れるまでは残り三十分だ。体が動くようになったらすぐに遡行するんだ。いいかい、これは一方通行の遡行だ。一度行えばこの時代には戻れない。それをしっかりと理解した上で押したまえ」

 

 スカリエッティは矢継ぎ早にそう告げると、すぐにカプセルを再び閉じた。そして、更にその上から真っ黒なカプセルが二重で閉まり、外の世界とライアンを断絶した。その中からライアンがスカリエッティの名前を叫ぶが、聞こえていないのか無視しているのか、スカリエッティは声を返さない。

 

「チンク、ノーヴェ。君達はその命尽きるまで彼を守れ」

 

 しかし、スカリエッティの声は、かなりクリアに聞こえてきた。

 が、その言葉は、ライアンからは信じられない内容だった。

 死ぬまでライアンを守って戦え。スカリエッティのその言葉にライアンは言葉を失った。同時に、断ってくれ。そう思った。

 が、二人の声は簡単に予想できた物だった。

 

「分かりました、ドクター」

「任せておけ。ドクターは早く避難を」

 

 二人はその言葉に何も聞き返さず、ただ頷いた。

 こんな、会ってから数時間程度しか経っていない男のために戦い続けて死ぬ。それを二人は二つ返事で了承したのだ

 

「あぁ。頼んだよ、二人とも」

「おい、待てよ! 命尽きるまでってなんだ! 答えろよ、スカリエッティ!!」

 

 そして、スカリエッティの物らしき足跡が遠ざかっていく。ライアンの声に答えず。

 その直後、かなり大きな爆発音が鳴り響き、カプセルに何かの破片が当たる音がけたたましく響いた。

 

「来やがった!!」

「後衛は姉に任せろ! IS、ランブルデトネイター!!」

 

 二人の声が響いた。その直後、爆発音が鳴り響き、再び何かの破片がカプセルに当たる。直後、ノーヴェの叫び声が響き、肉が砕け散る音と機械が砕ける音が鳴り響いた。そして、チンクとノーヴェの叫びと何かが破壊されていく音が響き続ける。

 それが大体数十分。かなり長いこと響いた。外から聞こえるノーヴェとチンクの声は衰える事がない。そして、麻酔が切れ始めたのか、指が少し動くようになった。が、その瞬間だった。

 ノーヴェの、叫びとは違う声が聞こえたのは。

 

「やばっ」

 

 直後。機械が砕ける音がした。

 まさか、ノーヴェがやられたのでは。そんな最悪な想像が頭の中を駆け巡る。そして、爆発音が響いたその後、チンクの声が聞こえた。

 

「ノーヴェ……ッ!! 姉より先に逝ってしまったか……!!」

 

 その言葉で、何があったのかが一瞬で把握できた。

 ノーヴェが死んだ。圧倒的な敵の数という暴力に押し負け、死んだ。

 その事実にライアンが呆けていると、ライアンを無理矢理現実に戻すような、チンクの悲痛な叫びが響いてきた。

 そして、それから数分が経っただろうか。体の感覚も徐々に戻ってきた頃。チンクの声が聞こえてきた。

 

「……限界か」

「チンクさん!?」

 

 そんなチンクの声が聞こえた直後、何か軽い物がカプセルにぶつかった。チンクがカプセルに寄り掛かってきたのは声の近さからすぐにわかった。

 

「お前の声は聞こえていない。だから、一方的に言わせてもらうが、このカプセルはそう簡単には壊れない。私が死に、奴等の攻撃が集中しても、このカプセルは麻酔が切れるまでは耐えれるだろう」

「じゃあ逃げてくださいよ!! 自分の命を大切にしてくださいよ!!」

 

 だが、この声も届いていないのだろう。チンクはライアンの声に何も返さず、言葉を紡いだ。

 

「そうだな……過去に戻ったら、せめて妹達だけでも、平和な時間を過ごせるようにしてくれ。そのためなら、私も協力をするだろう」

「チンクさん……!」

「では、お別れだ。私はもう腕も無いのでな、もう抗う事も出来ない。だから、せめてお前の旅の無事を……妹達の平和を祈らせてもらおう」

 

 チンクはそう言うと、黙ってしまった。

 その数秒後。カプセルに物凄い衝撃が走り、その近くからは何かが砕け散る音が響いた。きっと、その音はチンクの断末魔の代わりだったのだろう。

 それを理解した瞬間、ライアンの目から涙が溢れてくる。あの優しかった二人が、逝ってしまった。もっと守るべき物はあっただろうに。そんな涙を許さないといわんばかりにカプセルが揺れる。衝撃が響いてくる。が、カプセルは壊れない。

 チンクの言った通り、かなり頑丈なようだ。そして、麻酔も徐々に切れてきた。少しだけなら、腕も動くようになってきた。

 それから数分。衝撃と揺れに耐えながら麻酔が切れるのを待っていると、外側の、黒いカプセルにヒビが入った。後一分も経てば、黒いカプセルは完全に破壊されて、ライアンは外の光景を見ることになるだろう。

 だが、もう遅い。ライアンの手は動く。対面する前に、過去に戻らせてもらう。

 

「……チンクさん、ノーヴェさん。貴女達も、絶対に助けますッ!」

 

 そして、遡行機のボタンを押した。

 直後、ライアンの意識は暗転した。

 ここから、ライアンの物語は始まる。過去を救い、未来を取り戻す物語が。

 

 

****

 

 

「……防げなかった、か。まぁいいわ。あの程度、誤差に過ぎないんですし。後は過去の私に託して、今は聖王達と愚民共を抹殺……そして、最後は――」




さぁ、最後に出てきたのは誰でしょうか。ヒントは与えません!

次回からはチンクとノーヴェという犠牲を払った過去改変の改変のスタートです。

あと、今回の話のオリキャラはライアンだけです。過去改変を行った人物も原作キャラの一人です。とだけ言っておいて長いシンキングタイムを与えましょう!
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