鬼ヶ島 太郎と姫子の大冒険   作:越路遼介

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白石の泉

 奇怪々森の大きな雀『じゃのう』。太郎と姫子は彼に案内された入口から篠原の権太桜に向かった。じゃのうは篠原に抜けるのには子供の足でも一寸と言っていたが、その通りで一行がじゃのうの示した洞窟から歩き出し、ほんの一寸で前方から光が見えた。

「みんな、出口よ」

「やっとあの森から抜けられた」

 光に向かい、太郎、姫子、りんご、まつのすけが走り出した。森を抜けた、そう思った時だった。

「あれ?」

 太郎たちは月明かりのみの原っぱのうえにポツンと立っていた。唖然とする太郎。

「何だここ…」

「ありゃあ、さっきの森がどこにも見えねえよ」

 まつのすけも不思議そうにキョロキョロと周りを見ていた。

「落ち着いてみんな、ここが篠原よ」

 ここが…と云う様子で平原を見渡す一行。

「不思議なこともあるものだな。森を抜け出た途端にその森は消えて一面原っぱとは」

 と、まつのすけ。りんごが添えた。

「そういう入口であったから、先の『じゃのう』が長年に渡り番をしていたのだろうな」

「ではみんな、権太桜を探すわよ。別れて探すのは地理にも慣れていないし危険だから、このままみんなで探しましょう」

 一行は原っぱを歩いた。権太桜の近くそのものに出られる道だったのであろうか、それはすぐに見つかった。月明かりに映えた満開の桜であった。

「やったぞ!桜の木だ」

「なんと立派な」

 その幹に触れる姫子。

「思い出すな…。長串村にある太郎桜。春におじいちゃん、おばあちゃん、おつうとみんなでお花見に行って、美味しいお弁当を食べて」

「毎年、姫子が最後まで持たないで寝てしまうんだよね」

「そしておじいちゃんにおんぶしてもらって家に帰って…」

「竜と鬼を退治したら、また行けるよ」

「そうね…」

「ところで姫子、この桜をどうすればいいんだい?」

「ご、ごめんなさい、私知らないのよ」

 りんごとまつのすけは顔を見合った。

「見たところ手がかりもないし…。この桜が入口であるのは間違いないんだけど…」

「それじゃ仕方ない。今日はここで野宿しよう。朝になって明るくなったら分かるかもしれないぞ」

 申し訳なさそうに言う姫子を気遣う太郎。一行は野宿の準備を始めた。火を熾す準備をしながら桜の木を見る姫子。

(本当にどうしたら良いんだろう。ここが入口なのは間違いないけど、どう見てもただの桜。入口なんてどこに)

 

◆  ◆  ◆

 

 夕食後、炎を見つめながら太郎が言った。

「なあ、姫子」

「なに?」

「鬼ヶ島に行ったとして、竜とどう戦えばいいんだろう…」

「そうね、あいつは人に幻を見せる術を使うから」

「まぼろし?」

「うん、それにだまされるようだと勝てないわ」

「そりゃ困ったな。おいらだまされやすいし」

「怖い?」

「こ、怖くなんか」

「無理することはないよ。私だって怖いもん」

「え?」

「龍の宮の乙姫なんて云っても、特別な力があるわけじゃないし動物さんや昆虫さんに守ってもらってばかりだもん」

 乙姫として完全に覚醒したとき、姫子はひのえの雷さえ召還できるはず。しかし姫子自身はそれをまだ思い出していない。今それを姫子に言っても余計に焦らせるだけ。太郎はそのまま黙っていた。しかし姫子の正体が乙姫と分かって少し姫子を遠く感じたが、弱気なことを言う姫子を見て、何か自分の側に戻ってきたようで嬉しい。

「そうか、姫子も怖いんだ」

「うん、でも逃げちゃいけない戦いだから。おじいちゃんとおばあちゃんを助けるためにも」

「そうだね、で…姫子」

「なあに?」

 少し深刻そうな顔をしている太郎。ひのえの雷の召還うんぬんは黙っていようと思ったが、これは自分と大きく関わることだから聞きたかった。

「ひのえが言っていた。おいらが姫子の言うことを守らなかったと」

「……」

「それ、どういうことなの?」

「ごめんなさい。今は言えない」

 引かず、もう一度問おうとした太郎に

「太郎さん、時機がくれば姫様は話します」

 りんごが叱った。

「りんご…」

「今は鬼ヶ島に渡ることを第一に考えて下さい」

「…ちぇ、りんごも姫子の味方なんだ。面白くないや」

 太郎はフテ寝するべく横になる。

「私の枕はいりませんか」

「…いる」

 苦笑するりんご。太郎と姫子はりんごのふかふかの毛の枕が気に入っていて、いつも一緒に寝ていた。

「では姫様、私も先に休ませてもらいます」

「ええ、おやすみ」

 

◆  ◆  ◆

 

 太郎はりんごの柔らかな体を枕に眠りだした。りんごも眠りだした。姫子は火を見つめながら考えごとをしているようだ。そんな姫子をまつのすけが見つめている。その視線に気づいた姫子。何か?と目で訊ねた。

「いや、いま何を考えているのかなと」

「ん…。この桜の木で何をすべきなのかを」

「本当に思い出せないんだ」

「ごめんね、ここにくれば何か分かるかなとも思ったんだけど」

「焦ることはないよ。『急いてはことを仕損じる』人間のことわざだろ」

「ありがとう。ゆっくり思い出すわ。でもうまいこと行かないものね。他の記憶ならだいぶ思い出しているのに」

 さらに姫子を見つめるまつのすけ。

「なに?何か聞きたいことでも?」

「な、何でもないよ。でも」

「でも?」

「鬼と竜に挑むのだから、正直もっと勇ましいお姫様と思っていた」

「でも実際に会ってみると守られてばかりの女の子と?」

「い、いや、別にいいんだ。貴女を守るのが俺の仕事だし」

「まつのすけ、貴方はいつ頃ひのえ様のお告げを聞いたの?」

「つい最近の話だよ。でも大変だったんだぜ。猿の里と云うのは簡単に抜けることが許されないんだ。長(おさ)に中々許してもらえなくてね。『お前のような未熟者が役に立つか』とさ」

「じゃあ抜けてきたの?」

「俺の里は一族の先祖が乙姫様から与えられた土地で、ひのえ様を信仰している里なんだ。そして里のどこかに『宮水の泉』があると伝わっていた」

「どこかにある?」

「長も場所は知らなかった。代々の長のみがその場所を知っているんだけど、今から四代前、その場所を伝えられないまま先代が死んでしまい、場所は謎になっていた。結構広い里で今まで誰も見つけられなかった。その宮水の泉を探し出したら旅立ちを認めると言われたんだ」

「では、まつのすけは…」

「うん、何とか探し出した。里の奥のさらに奥に隠し洞窟があった。進入するにも色々と仕掛けがあって苦労した。でも俺がんばったんだ。何とか旅に出て、ひのえ様のお告げに従いたくて」

「なぜそこまでして?」

「俺、ひよし様直系の子孫らしいんだ」

「ひよし…」

「でも里では誰も信じてくれなかった。落ちこぼれだったからね。『一族の誇りであるひよし様の子孫がお前であるものか』と笑われた」

「……」

「いじめられて泣いて帰ると、死んだ母ちゃんがいつも怒鳴ったものさ。『それでもひよし様の血を引く者か』と。親父は先祖の名前に負けて死ぬまで駄目のまんまだった。だから母ちゃん、息子の俺には立派になってもらいたいと思ったんだ」

 火が小さくなったので薪をくべて話を続けるまつのすけ。

「そんな俺にひのえ様がお告げをくれた。『竜を封じる戦いに身を投じる乙姫の元へと行け。それがそなたの定めである』と。俺嬉しかった。誰も認めてくれなかった俺をひのえ様は認めていてくれていたんだと。だから旅に出るためがんばった。そして試験を克服し、長にも認められ旅に出て、お告げにあったようにあの森でずっと待っていたんだ」

「そうなんだ」

「でもずいぶんと待ったんで、やっと来た時にはつい待ちぼうけの仕返しをしちゃったよ。ははは」

「びっくりしちゃった」

「えへ、先祖のひよし様に比べれば頼りないかもしんないけど、俺姫様にかすり傷一つ負わせないよう、がんばるよ」

「ひよしもね…」

「え?」

「最初はまったく頼りにならなかったのよ」

「うそ?」

「ホントよ。正直、猿の一族はどうしてこんな弱虫を私の元にと思ったくらい」

「よ、弱虫?」

「ええ、鬼を見れば私を置いて逃げ出すし、強い獣を見れば死んだふり」

「し、信じられない…」

「でも、一番それを悔しがっていたのはひよし自身だった。何とか私を守れる戦士になりたいと影ながら修行を積んで彼は少しずつ強くなり、やがて私には欠かせない戦士に成長したのよ。竜を封じる戦いのときには見違えていて、先頭を切って戦ってくれました」

「そうなんだ…」

「まつのすけはひよしそっくりよ」

「ほ、ほんと?」

「うん、頼りにしているわね」

「ま、任せてくれよ!」

 ニコリと笑い、頷く姫子。

「さあ、火は俺が見ているから、姫様も寝た寝た!」

「うん、そうするわ」

 姫子は太郎の横に行き、同じくりんごの柔らかい体を枕として眠りだした。その寝顔を見るまつのすけ。

「ご先祖様、俺もやるよ。この時代の誇り高き猿の戦士として」

 

◆  ◆  ◆

 

 それから数刻後だった。まつのすけの頭に水滴がポツンポツンと落ちた。

「ありゃ雨だな。ついてない。おい、みんな起きろ!」

 目覚める太郎たち。やがてみんな起きた。強い風が吹いてきて土砂降りの雨となり雷も伴いだした。野宿どころではない。しかし身を隠すにも建物もないし、この木の陰にいるしかない。

「ふう、まいったな。これじゃ寝られない」

 と、まつのすけ。

「仕方ないわ。このままここで身を潜めましょう」

 雨の勢いで桜の花が散る。

「満開のきれいな桜だったのに惜しいな…」

 ハッと太郎が気づいたように言った。

「姫子」

「え?」

「おつうに教わったよね。雷のとき大きな木の下って危ないって」

 姫子も気づいた。一面平野の中に一本だけある大樹『権太桜』。雷に落ちろと言わんばかりの場所である。

「いけない!みんな木から大急ぎで離れて!!」

 太郎たちはすぐ権太桜から離れた、そして次の瞬間!

 

 ピシャーン!バリバリッッ!!

 

 大地を揺るがす大轟音と共に雷が権太桜めがけて落ちてきた。耳を押さえる姫子。

「キャーッ!」

「うわ!危ないところだったんだ」

 間一髪で助かった一行。仲間同士、体をくっつけて雨風をしのぐ。やがて木は燃え落ち、雷雨も風もやんだ。

「台風一過ね。みんな大丈夫?」

「姫様、すぐに着物を乾かさないとお風邪を召します。まずは燃え落ちた桜の木からまだ燃やせそうな木々を見つけて火を熾して暖を」

 と、りんご。

「よし、まずは火を熾そうよ」

 太郎が火打石を用意していると

「ん?」

「どうした、りんご」

 りんごが何かに気づいた。

「太郎さん、宮水の匂いです」

「宮水?どこから?」

「桜の木から匂います。おかしいですね」

 桜に寄る一行、よく見てみると木の中は空洞であり、地下に潜れる。

「姫子、もしかして、この先に…」

「うん」

「ちょっと降りてくる。まつのすけ、一緒に来てくれ」

「よしきた」

「気をつけてね、太郎、まつのすけ」

 太郎とまつのすけは権太桜の下にあった地下の空洞へと入っていった。松明を持ち奥へ奥へと。

「思ったより長いぞ」

 分岐が一切無いのは幸いだった。しばらく進むと、広い空間に出た。その時だった。

「うわっ」

「どうした、まつのすけ」

 と、太郎が振り返るとまつのすけの姿がなかった。地面を見てみると割れ目がある。ここに落ちたらしい。じゃのうからもらった長くて丈夫な蔓。これを使ってまつのすけを助けることにした太郎だが、

「どこに蔓を結びつければ…」

 と、周囲を見た。よく見てみれば、その洞穴は鍾乳洞だった。もっとも太郎の理解の外であったが。鍾乳石の立派な柱があったので、それに蔓を結んだ。もう片方の端末を割れ目に入れた。

「まつのすけーッ!!」

「おー」

「この蔓に捉まって登ってこられるか~?」

「ありがてえ、助かったよ」

 蔓を伝って登ってきたまつのすけ。

「やれやれだ」

「もう少し先に行ってみよう」

「がってんだ」

 結んだ蔓を元に戻し、再び奥に進む太郎とまつのすけ。洞窟内の景色に見とれるまつのすけ。

「きれいな鍾乳洞だなー」

「しょうにゅうどう?」

「ああ、俺もよくは知らないけれど、この石がほんの一寸伸びるだけでウン百年はかかるそうだぜ」

「へええ…。まつのすけは物知りだな」

「太郎が知らなさすぎるんだよ」

「言えてる」

 洞窟の先から川の流れる音が聞こえてきた。進んでみると川があった。

「こんな地底にも川があるんだな…」

「しかし流れが早いな…」

 そう言ってまつのすけは恐る恐る川面に手をつけた。そして舐める。

「ただの水だ。太郎、お前も喉の渇きを潤せよ」

「うん」

 流れの早い川だが、入らないかぎり安全である。太郎は川面から水をすくって飲んだ。

「うまーい」

「生き返るなぁ…ってオイ!」

「え?」

 太郎の腕輪が光を帯びてきた。

「この川は宮水の川なのか!?」

 光ってきたのは腕輪だけではない。太郎が川面に触れたゆえか川が光を放ち出した。

「ま、眩しい!」

 しかし、都で見つけた宮水と違い、ひのえが姿を現すことはなかった。

「まつのすけ、どうだった?」

 まつのすけが川の周囲を調べたが、真新しい発見はなかった。

「何もないよ。光る水がずっと流れていくだけだ」

「そうか…。この川の先に白石の泉があるのかな」

「だとしても、この急流じゃ俺たち全員水死だぞ」

「舟を運んでくるわけにもいかないし…弱ったな…」

「とにかく、この川がこの洞窟の行き止まりなんだから、一度地上に出て姫様とりんごに事情を話そう」

「そうだね」

 川が眩しいほどに光っているため、帰る道も少し明るい。

「ん?」

 来る途中には気づかなかった場所に穴があった。大きい鍾乳石の影に隠れていた。

「どうする、太郎」

 太郎は近くに生えていた茸をもいで穴に放った。すぐに水音がした。

「深くないな。それも水の音、この下にもしかしたら白石の泉への入口が」

「しかし水音から言って、あの急流の川に落ちた音じゃない。池か沼だと思うけど」

「ハズレかもしれないけど、他に手がかりはないじゃないか」

「まあ確かに」

 太郎とまつのすけは蔓を丈夫な鍾乳石の柱に巻きつけ、下に降りた。そして見た。

「太郎、これは地底湖だぞ」

 太郎とまつのすけは縦穴の岩肌に突出した岩場に降りた。その下が地底湖、そこまで降りてしまったら登れそうにないので、その足場から様子を見た。

「…?」

「どうした、まつのすけ」

「何かいるぞ」

 すると地底湖の湖面が大きく盛り上がり、黒い物体が出てきた。

「うわぁ~!お化けなまずだあ~ッ!」

「ぼよよ~ん、川の水が急に光ったもんで、びっくらこいて逃げてきたずら」

 どうやら川と地底湖は繋がっているらしい。

「おう、おめえか、茸を投げたのは」

「そうだけど」

「美味え茸をあ~りがとさぁあん、前からずっとず~っと食いたくてたまらんかったずら。俺は三郎っていうずら」

「ずっと前から?」

「ほれ、オメェの後の岩肌にもいっぱい生えているだろ」

 太郎がさっき放ったのと同じ茸だ。

「ところで三郎さん」

「三郎でええだよ、何だ童」

「ここが白石の泉なのかい?」

「ふっふっふ、教えて欲しけりゃ、もっと茸を寄こすずら」

 そうしようと思って、後を向いた太郎、しかし

「いや、ホント美味い茸だわ。鍾乳石に生えるのだから特別なんかな。何の味付けがされてなくても素材の持つ旨みだけで主役を張れる」

 しばらく奇怪々森にいたせいか、食べ物に対する講釈ぐせがついていたようだ。まつのすけがその場にあったきのこをみんな食べてしまった。あぜんとしている太郎。

「あー。残しておかなくて悪かったな。あんまり美味しかったんでよ」

「お、お前!」

「そんなに怒るなよ。今度卵でも取ってきてやるから」

 のんきなまつのすけ。湖面からドスの利いた声がしてきた。

「…貴様には地獄すら生ぬるいずら」

「え?」

「貴様の髪の毛一本もこの世に残さんずら」

「え、えっ?」

 真っ黒い三郎が、見る見るうちに真っ赤になっていく。かなり怒っている。

「まつのすけ、逃げるぞ!」

「貴様の血は何色ずらーッ!!」

 蔓を伝って上にあがり、一目散に逃げる太郎とまつのすけ。

「うおおおっ!食いもんの怨みは恐ろしいずら!この猿!天に帰るときが来たずらーッ!!」

 そう言って三郎は地底湖の中に潜っていった。と、それと同時に洞窟、そして姫子たちのいる地上も揺れた。

「地震!こんな時に!」

 洞穴に向かって大きく叫ぶ姫子。

太郎、まつのすけーッ!!」

 弱い箇所からどんどん崩れ出す洞穴の中。

「あの馬鹿なまず!俺たちを生き埋めにする気かよ!」

 真っ青になって出口に駆けるまつのすけ。太郎は人間なのに猿のまつのすけと同じ早さで走って逃げる。さすが野生児。そして二人が走る、すぐ横の壁が崩れ落ちたと思うと

「え…ッ!?」

 

◆  ◆  ◆

 

 火急の時なのに、思わず立ち止まった太郎とまつのすけ。それはそうだろう、彼ら二人が見たのは、とても洞穴から見える光景とは違う。山と川の緑豊かな風景、青い空と白い雲、そこに一際美しい建物がある。それは白く輝く大理石の神殿、その中央に清水を湧き出す泉の祭壇がある。呆然と立ち尽くす太郎とまつのすけ。やがて地震が止んだ。太郎は一歩そこに踏み入れて周りを見た。

「ここが白石の泉なのか…?」

 まつのすけも入ってきた。

「奇怪々森を抜けたときと同じか。どこか違う世界と繋がっているんだな。…ん?」

 空から大きな羽音が聞こえてきた。上を見た二人。

「うげ!」

 それは見たこともない大きな鳥だった。眼光鋭く太郎とまつのすけを睨む。

「だぁーれだー」

「いや、あの、おいら太郎と言って」

「何人たりとも、ここに立ち入ることは許さぬ。去れ」

 太郎とまつのすけは元の洞窟に押し戻された。仕方なく二人は姫子とりんごの待つ権太桜の入口へと帰った。

「二人ともお疲れ様、何か見つかった?」

 姫子から渡された清水を飲み干し答えた太郎。

「不思議な場所に出た。そこが白石の泉なのかは分からない」

「では少し休んでから行きましょう。二人ともだいぶ疲れているようだし」

「い、いや姫様、疲れはそうでもないんだけど、その白石の泉に化け物がいて」

「化け物?」

「とてつもないでかい鳥だよ。通してくれないんだ」

 と、太郎。

「でかい鳥…。私もそこへ連れて行って」

 姫子とりんごも伴い、さっきの場所に向かった一行。そして到着。

「ここよ…!」

 走り出して中に入っていく姫子。

「姫子危ないぞ!」

「ここが白石の泉なのよ」

 再び大きな鳥がやってきた。

「だぁーれだー」

 だが、姫子を見るや

「そのお姿、その首飾り…。乙姫様!」

「おはな!」

 大きな鳥は雉の姿となった。ちなみに女である。

「ここでずっと番をしてくれていたのね。長い間ありがとう!」

「恐縮です姫様」

「おはな、私たちと一緒に戦ってくれますか」

「無論です。姫様、竜は益々力をつけています。早く封じなければ」

「そうね。もはや一刻の猶予もありません。鬼ヶ島に行きましょう」

 かつて乙姫を助けた犬、猿、雉の末裔たちがついに揃ったのである。

「皆さん、この泉に飛び込んでください。鬼ヶ島に到着できます」

 太郎、りんご、まつのすけは頷いた。

「行こう!鬼ヶ島へ!!」

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