ジャパリパーク召喚 導かれしフレンズたち   作:ロウロウ

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今回は長めです。



さばんなちほー④

「岡、お前はあそこにいる生き物を知っているのか!?」

 

百田はゲートにてサーバルと対峙しているゴルアウスを見ながら聞く。

 

「自分が保護されたエスペラント王国を襲った魔軍の群れ。…その中でも特に強力な魔獣が奴です!」

 

魔獣『ゴルアウス』。それはエスペラント王国が襲撃された際、敵軍が1体のみ投入してきたモンスターだ。その正体は古の魔法帝国が開発、運用していた陸戦用の生物兵器である。莫大な魔力を体内に持っており、それを利用した強力な魔法攻撃を行う事が可能だ。

 

主な攻撃方法は2つ。1つは角から放たれる爆裂魔法。その連射力は相当に高く、戦闘用車両に搭載される重機関銃に匹敵する。

そしてもう1つが口から放たれる球形の爆裂魔法。戦車砲に匹敵する威力を持ち、十分な装甲を纏っていなければ木端微塵は確実である。

 

また、表面を覆う硬い体毛が装甲の役目を果たしており、剣や弓矢は勿論、銃弾さえ容易く弾いてしまう。

 

もはや生きた戦車と言っても過言ではない存在に、話を聞いていた百田たちは息を呑む。

 

「何故そのような魔獣が転移国家であるジャパリパークにいるの!?」

 

この島にいる筈が無い魔獣の出現に、柚崎は疑問を抱く。岡は首を振る。

 

「それは分からないが…兎に角!あれと正面から生身でやり合うのは自殺行為です!彼女にも離れる様に伝えないと……」

 

岡はそう言ってサーバルがいるゲートに視線を変えると……其処に映る光景に固まってしまった。

 

 

 

 

 

「うにゃにゃにゃー!!」

 

サーバルは素早い動きでゴルアウスの攻撃を躱し、その懐に飛び込む。

 

「う~にゃ~!」

 

猫の様な鳴き声を上げながら……何とゴルアウスを下から持ち上げた。あの如何にも重量のありそうな大型魔獣を、サーバルは少しばかり汗を流す程度で持ち上げてしまう。

 

ゴルアウスも、まさかこの小さな”けもの”がこれだけの力を持っていた事に動揺を隠せない。

 

そして…。

 

「うみゃー!!!」

 

一際高い鳴き声を上げ、サーバルはゴルアウスを道の端へと投げ飛ばした。

 

グオォッ…!!

 

ゴルアウスはコンクリートの地面に勢い良く叩き付けられ、悲鳴の様な鳴き声を上げる。地響きが辺りを揺らし、砂煙が発生する。

 

「なっ…!?」

 

「嘘…」

 

「サーバルちゃん…すごい…」

 

驚愕の表情を浮かべる日本勢とかばん。サーバルの…フレンズの並外れた戦闘力に、彼らはしばしの間魅入ってしまう。

 

「はぁ…はぁ…やっつけたかな?」

 

サーバルは道の端に横たわるゴルアウスを見る。

 

「…!?動いた…!」

 

ある程度ダメージは与えたが倒すまでには至らなかったらしい。ゴルアウスはゆっくりと起き上がろうとする。

 

「サーバル!!今の内にこっちに来い!!」

 

「う、うん!」

 

岡の叫びを聞いたサーバルは急いで6人の元へと走り、草むらに飛び込む。

 

グオオオオオオォーー!!

 

直後に態勢を立て直したゴルアウスが大きな鳴き声を発し、自分をこんな目に遭わせた忌々しい”けもの”を探し始める。

 

サーバルが隠れた草むらには、朝田たち6人の他に先ほど助けたアードウルフもいた。

 

「さ、サーバルちゃん…大丈夫…!?」

 

「アードウルフ!うん、私は大丈夫だよ!」

 

「ご、ごめんなさい…私のせいで…」

 

アードウルフは安堵と同時に涙を流しながら、自分がゴルアウスに襲われた経緯を話す。

 

ゲートを通過しようとした時、彼女は巨大な毛玉の様な物体を発見し、興味本位でその上に飛び乗ってしまった。実はその毛玉がゴルアウスであり、怒り狂った奴に振り落とされて道の端まで追い詰められたと言う。

 

泣き顔のアードウルフに、サーバルは笑みを向ける。

 

「泣き止んでよアードウルフ。兎に角無事で本当に良かった!」

 

「サーバルちゃん…!本当にごめんなさい…!」

 

より一層激しく泣き出すアードウルフ。サーバルはそんな彼女の頭を優しく撫でてあげた。

 

「…さて、この状況は結構不味いな…」

 

百田の言葉に全員がゴルアウスを見る。今までゲート周辺をうろついていた奴は、サーバルが隠れていると思われる草むらの方へ近付いてくる。

 

「アレは何なんでしょうか?アレもセルリアンですか?」

 

かばんはサーバルに質問する。サーバルは弱々しい声で返答する。

 

「分かんないよ…。あんな毛むくじゃらで、石も大きな目もないセルリアンは初めて見たよ…」

 

「あれはセルリアンじゃない。『ゴルアウス』だ」

 

此処で岡が彼女たちに説明する。

 

「”ごるあーす”って何なの?オカちゃんはアイツを知っているの?」

 

「あぁ。だから弱点の石は無い。…だがセルリアン並に危険な存在なのは間違いない」

 

「石が無い…?じゃあどうやってやっつけるの?」

 

「俺が前に奴を倒した時は軽MAT(01式軽対戦車誘導弾)を使用した。これは奴が戦車並の強さを持っていると聞いたからだ」

 

岡の口から出てきた”せんしゃ”や”けーまっと”と言う言葉に、サーバル、かばん、アードウルフの3人は首を傾げる。話を聞いた百田が難しい表情で考える。

 

「…奴は既に此方に向かって来ている。草むらを出ればすぐに見つかる以上、逃げる事もほぼ不可能だろう…。…だが、我々にはそのような強力な武器は持ってきていない。何か良い方法はないか…」

 

今、彼らが保有する武器の中で最大の火力を誇るのは、対モンスター用に持って来た84mm無反動砲が1門のみ。戦車と同じ能力を持つゴルアウスに対してどれだけ効果があるのだろうか…。

 

そこへ伊藤が自分の考えを伝える。

 

「ですが奴は生き物ですよね?純粋な機械ではなく。なら奴にも他の生き物と同様にあそこが最大の弱点なはず」

 

「弱点…?」

 

百田は伊藤に「それは何だ?」という意味を込めて聞く。

 

「頭です」

 

「…!そうか、脳にダメージを与える事が出来れば奴を倒す事も可能かもしれない!」

 

百田は伊藤の案に賛同しかけるが、そこに柚崎が待ったをかける。

 

「でもそれは奴の真正面に出るって事ですよね?下手すればあの爆裂魔法の餌食になるだけですよ?」

 

「いや、何も正面に出る必要はない。奴の横から頭に向けて砲弾を撃ち込めば…」

 

そこまで考えた所で、百田は言葉を止める。

 

撃とうとする前に角から放たれる光弾の餌食になる可能性が高い。この作戦を成功させるには、誰かが奴を引き付けておく必要があった。

 

だがいくら訓練されているとはいえ、生身の人間が己の身体能力のみで奴の攻撃を躱す事はほぼ不可能だ。岡がエスペラント王国で奴の攻撃をかろうじて躱せたのも、乗っていたバイクの機動力があってこそだからだ。

 

ここでサーバルが手を上げる。

 

「私がアイツを引き付けるよ!アイツは私を探しているみたいだから!」

 

だが、百田は彼女の提案を却下する。

 

「ダメだ。一般人であるアンタにそんな危険な事をさせる訳にはいかない。それよりもアンタには俺たちが奴を引き付けている間に、朝田外交官たちを安全な場所へ逃がして欲しい」

 

「何で!?さっきだって見たでしょ!私ならアイツの動きに付いて行けるし、アイツを投げ飛ばす事だって出来たんだから!きっとモモタちゃんたちの助けになる筈だよ!」

 

「ダメだ!」

 

執拗に食い下がるサーバルを百田は一喝する。サーバルはその気迫に一瞬だけ気圧されるが、俯いて再度口を開く。

 

「…嫌だよ」

 

「サーバルさん。分かってくれ。こればっかりは…」

 

「私、何となくだけど分かるんだ…。ここで私が出ないと、此処にいる誰かが大変な事になるって…」

 

野生の勘というやつだろうか。サーバルは自分があの魔獣を引き付けなかった時に起きる最悪の未来を直感で感じ取っていた。

 

サーバルは顔を上げて全員の顔を見る。

 

「私、嫌だよ。お友達が傷付くなんて…絶対に嫌」

 

「サーバルさん…」

 

かばんがサーバルを見つめる。

 

「それに、アイツをこのままにしてたら、パークのみんなが危ないんだよ?放っておくなんてできないよ」

 

そう言ってサーバルは立ち上がり、一行に背中を向ける。

 

「さ、サーバルさん…!?」

 

「ま、待て!」

 

ゴルアウスの元に向かうサーバルの腕を、百田が掴んで止めようとする。サーバルは後ろを振り返ると、優しい笑顔を見せる。

 

「…私、いつも『ドジー』とか『全然弱いー』ってみんなから言われるけど…みんなを守りたいって気持ちは誰にも負けないよ」

 

「お、おいっ!!」

 

「ごめんね!」

 

サーバルはその高い身体能力で百田の手をあっさりと振り払い、ゴルアウスへ向けて走り出してしまった。

 

「サーバルさん!!」

 

「サーバルちゃん…!」

 

かばんとアードウルフが叫ぶ。サーバルはそれに答える事無く走り続ける。

 

「あぁ、もうっ!…岡、我々も行くぞ!無反動砲を用意しろ!伊藤と柚崎は朝田外交官たちを安全な所へ!」

 

片手で頭を掻き毟りながら、百田は岡たちに指示を飛ばす。岡たち3人は『了解!!』と叫び、それぞれ与えられた指示を迅速に遂行していく。

 

 

 

 

 

「こっちだよ!」

 

…!!!

 

突然目の前の草むらから飛び出してきた何か。それは自らが探していた”けもの”だった。ゴルアウスはサーバルを捉えると、素早く動き回る彼女に口から爆裂魔法をお見舞いする。

 

「うにゃ!」

 

得意のジャンプ力でそれを躱し、自分たちがいた草むらとは反対側にゴルアウスを誘導する。そこへ奴の後方から百田と岡が飛び出す。

 

(モモタちゃんとオカちゃんだ!)

 

見ると2人は何やら大きな筒を担いでいる。あれでゴルアウスを倒すのだろう。

 

(私が引き付けておくから急いで…!)

 

発射準備中の2人に心の中で話し掛けるサーバル。そこへゴルアウスが再度口から爆裂魔法を放つ。

 

「うわっ…!!?」

 

再びジャンプで躱そうとしたサーバルだったが、爆風に体を煽られ、バランスを崩して地面に転んでしまう。

 

 

 

 

 

「サーバルさん!!」

 

地面に倒れるサーバルをかばんは目撃する。ゴルアウスが止めをさそうと彼女に近付いていく。

 

(まずい…!このままじゃサーバルさんが…!)

 

何かサーバルを助ける方法はないかと周りを見回すかばん。

 

「…!?これは…」

 

その時、自分の手に持っている物が目に入る。それは先ほど入手した地図だった。

 

「そうだ…!」

 

それを見て何か思い付いたかばんは、慌てて地図を折り始めた。

 

 

 

 

 

ようやくこの忌々しい”けもの”を仕留められる…。ゴルアウスはそう思い、サーバルに引導を渡すべく口を大きく開く。

 

「うぐっ…」

 

鈍い痛みに耐えながらゆっくり立ち上がるサーバル。…無駄だ。体勢を立て直す前に、貴様は我が魔法で骨すら残らず消えるだろう。

 

ゴルアウスは特段強力なものをお見舞いしようと、口内の光球のさらなるチャージを続ける。…だが、その行為が彼(彼女?)の運命を分ける事になった。

 

…?

 

その時、ゴルアウスの目の前を紙飛行機が通過する。ゴルアウスはそれが何なのか分からず、興味を持ってその紙飛行機を眺めつづけた。折角チャージしていた魔力も、他の事に興味が移った事で消えてしまう。

 

「サーバルちゃん!!今の内だよ!」

 

別の方向からサーバルを呼ぶ声が聞こえる。

 

「はっ…!!」

 

それを聞いたサーバルは、よそ見をしているゴルアウスに跳躍して急接近すると、光り輝く手を振り下ろした。

 

グオオオオォ…!!!

 

その一撃は強力で、鋼の様な体毛に覆われた体に強い痛みを走らせる。ゴルアウスは怒りにまかせて角から爆裂魔法を放つが、サーバルは全て躱して距離を取る。

 

再度サーバルに攻撃を加えようとした時、ゴルアウスは草むらに隠れているかばんの姿を確認した。

 

……そう言えばさっきの”あれ”は奴の方向から飛んできたような…。

 

そこでゴルアウスは理解する。先ほどの紙飛行機が、視界に映っている少女の仕業である事を。

 

下種が…!!

 

偉大なる魔法帝国の兵器たる自分が惑わされた事に怒りが湧き上がったゴルアウスは、唸り声と共にかばんに顔を向ける。

 

「うわあぁっ!!?た、食べないでください…!!」

 

「「「かばんさん(ちゃん)!!」」」

 

叫び声を上げるかばん。アードウルフ、伊藤、柚崎の3人は身を呈して彼女を護ろうとする。ゴルアウスは4人纏めて吹き飛ばしにかかる。

 

だが口を大きく開けた直後、横から何者かが滑り込み、両手で口を押さえ付けられた。

 

…!!?

 

再び邪魔が入った事に動揺を隠せないゴルアウス。

 

「カバ!!」

 

乱入者の正体はカバだった。サーバルが嬉しそうな声を上げる。

 

「私に大口勝負を挑もうなんて…いい度胸してますわね!!」

 

カバはそう言ってゴルアウスを地面に殴りつける。サーバルよりもさらに強力な一撃は、ゴルアウスの頭を固いコンクリートの地面にめり込ませてしまった。

 

「す…すごいパワー…」

 

「強すぎでしょ…」

 

それを伊藤と柚崎は呆然と眺めながらも、かばんとアードウルフを連れて敵からさらに離れる。

 

「装填完了!問題なし!!」

 

「良し!みんな離れろ!!」

 

岡と百田が無反動砲の発射準備を終え、全員にゴルアウスから離れるように指示する。

 

「てーーーーっ!!!」

 

岡の担ぐ無反動砲から放たれた砲弾。それは身動きが取れなくなったゴルアウスに容赦なく襲いかかった。

 

…!!!!

 

頭部の横側に着弾した砲弾により、魔獣ゴルアウスは声にならない断末魔を上げて倒れた。

 

 

 

 

 

ゴルアウス撃破後は色々あった。

 

泣きながらサーバルに抱き着くアードウルフ。そのままかばんに近付き、彼女の作った紙飛行機をすごいすごいと褒めるサーバル。無事困難を乗り越えられた安心感からその場に座り込む岡、伊藤、柚崎の3人。無茶な行動をしたサーバルを叱ろうとする百田を説得して止めさせた朝田とカバ。

 

「1人で今回の様な無茶はすんなよ」

 

そう言って百田はサーバルの頭を指先で軽く小突く。ポカンとする彼女に、彼は笑みを浮かべてさらにこう言った。

 

「ありがとな。…あとアンタの戦いぶり、すごかったよ」

 

そんな彼にサーバルは、「モモタちゃんもすごかったよー!」と言って笑顔で抱き着くのだった。

 

 

 

 

 

――――

 

 

 

 

 

ジャパリパーク さばんなちほー ゲート

 

 

――夕刻。

 

夕焼け色に染まるゲートの前に立つ7人の男女。

 

「…じゃあ、気を付けてね!じゃんぐるちほーでも図書館に行きたいって言ったら、フレンズの子が次の”ちほー”まで案内してくれるはずだから!」

 

アードウルフとカバを見送った後、サーバルはかばんたちと別れの挨拶をする。

 

「色々とお世話になりました」

 

朝田が代表して礼を述べる。サーバルはニコッと笑い、かばんを見る。

 

「かばんちゃん。さっきは本当にありがとう!おかげで助かったよ!」

 

「いえ…僕はそんな…。皆さんと違って大して何も出来なかったですし…」

 

「そんな事ないよ!あんなの私なら絶対に思い付かないもん!かばんちゃんはあんなに凄い技を持っているんだから、何があっても大丈夫だよ!」

 

サーバルはかばんの作った紙飛行機を抱えながらゆらゆらと揺れる。

 

「サーバルさん…」

 

かばんは自然と笑みが零れるのを感じた。

 

「何の動物か分かったら、またさばんなちほーにも寄ってね!…あと今度会った時は”サーバルさん”じゃなくて、”サーバルちゃん”って呼んでね?話し方ももっと普通に。…もうお友達だから!」

 

かばんだけでなく、6人全員に向けてそう言うサーバル。

 

「はいっ!分かりました!」

 

かばんは力強く返事をする。日本勢もコクリと頷く。

 

「じゃあアサダちゃんたち!かばんちゃんをお願いね!」

 

「はいっ、お任せください」

 

かばんは朝田たちの提案により、最後まで一緒に行く事になった。セルリアンやゴウルアスの様な危険生物がいる以上、彼女を一人で行かせるわけにはいかなかった。

 

かばんがサーバルに頭を下げる。

 

「ありがとうございます。…じゃあ、行きますね」

 

「うん…」

 

かばんたちは歩き出す。

 

「……」

 

かばんたちは一度止まって振り返る。サーバルが此方に手を振っていた。

 

「………」

 

もう一度振り返ると、また手を振ってくれた。かばんたちも彼女に手を振り、それ以上は振り返る事なく、前だけを向いて歩き出した。

 

 

 

 

――――

 

 

 

 

ジャパリパーク じゃんぐるちほー

 

 

既に太陽は地平線の彼方に沈み、暗闇が辺り一帯を支配する。6人は深い森の中に造られた道路を進んでいく。

 

(こんな小さな島なのに…何故こんなに気候や植生に違いがあるの…?)

 

明らかにおかしい…。そう思いながら柚崎は後ろを歩くかばんを見る。

 

「……」

 

その顔は少しばかり悲しそうだった。サーバルとの別れが余程寂しいのだろう。彼女がサーバルと一番仲が良かったのだ。無理もない。

 

(それにしても…)

 

ここで柚崎は、かばんに対して感じていた違和感が気になる。

 

(かばんちゃん…彼女と一緒にいると何故だか凄く懐かしい気分になる…。…そう言えばあの夢の女性も…)

 

其処まで考えたその時――。

 

「…!!」

 

伊藤が何かの接近に気付く。しばらくして微かに足音が聞こえてくる。

 

「隊長、みなさん。何か近付いて来ます」

 

「!?」

 

伊藤の言葉に全員が警戒態勢になる。朝田とかばんを護るように囲み、周囲を見回す自衛官たち。

 

ぴょこっ。

 

その時、かばんの後ろの草むらから大きな耳が現れた。それに気づいたかばんが叫ぶ。

 

「うわあぁぁぁっ!?た、食べないでくださ…!!」

 

「食べないよー!!」

 

それに対するツッコミが返ってくる。

 

「「「「「「「………」」」」」」」

 

一瞬だけ沈黙が辺りを支配する。

 

「「「「「「サーバル(さん)(ちゃん)!?」」」」」」

 

驚いた様に叫ぶ6人。彼らの視線の先には、先ほど別れたばかりのサーバルがいた。

 

「どうして…?」

 

かばんが尋ねる。

 

「えへへ…。やっぱり、気になるからもうちょっと付いて行こうかな~って…。それにパークで何か異常が起こっているみたいだし、図書館にいるハカセに聞けば何とかなるかな~と思ったんだ」

 

「サーバルさん…」

 

「ほらっ、約束でしょ!次会った時だから、サーバルちゃんって呼んで!話し方も!」

 

それを聞いたかばんがクスリと笑う。

 

「さっき別れたばっかりじゃない」

 

「ちゃんと1回別れたからいいの!」

 

「…どうせダメだと言っても付いて来るんだろ?」

 

サーバルとかばんのやり取りを見ていた百田が口を開く。今日1日で、百田はサーバルの性格を嫌と言う程理解していた。一応確認も兼ねて彼女に尋ねる。

 

「勿論!」

 

彼の予想通りの答えが返ってくる。

 

「じゃあまた案内を頼めるかな?…サーバルちゃん?」

 

朝田がサーバルの前に出て喋る。サーバルは笑顔で頷く。

 

「よろしくね!サーバルちゃん!」

 

「改めてよろしくお願いするわね、サーバルちゃん」

 

「まぁ、短い間だけど…よろしくなサーバル」

 

「うん!」

 

百田以外が改めてサーバルと挨拶する。朝田が賛成した以上、自衛官である百田はそれに従うしかない。

 

だが、不思議と嫌な気分はしない。むしろ楽しくなりそうだと思い始めていた。それにあの戦いぶりから考えて、彼女はとても頼りになる筈だ。

 

「…戦うにしても絶対に1人ではなく…俺たちと一緒の時だからな?基本は無理をせず逃げろよ?」

 

「うんっ、分かった!」

 

百田は頷き、手を差し伸べる。

 

「…よろしく、サーバル」

 

「うん!よろしくね!」

 

サーバルは満面の笑顔で百田の手を取る。

 

「さっ!行こ行こ!」

 

「は、はい!」

 

サーバルはかばんの背を押して歩き始める。残る5人も同様に歩き始めた。

 

 

 

 

 

「そう言えば…」

 

岡は何かを思い出し、ボロボロになった1冊のノートを取り出す。

 

「それってさっきの…」

 

伊藤がそれをまじまじと見る。そのノートはゲートにあった事務所らしき建物から入手した物だった。

 

「少し気になってな…」

 

そう言って岡はノートを開く。どうやらスクラップ帳のようだ。中には切り取られた新聞の記事が貼られていた。

 

「英語か…?…いや、ドイツ語やフランス語…色んな国の言葉で書かれている」

 

記事の言語にはまるで統一性がなかった。

 

「ですが、これで少なくともジャパリパークが地球から来た可能性が高くなりましたね。…私たちの地球とは別次元でしょうけど」

 

「そうだな…」

 

伊藤の言葉に頷き、岡は次々とページをめくっていく。

 

「…!!?」

 

するとある記事に目が留まった。英語で書かれていたが、岡はすぐにその内容を理解し、驚愕の表情を浮かべる。

 

「た、隊長!みんな!これを…!」

 

慌てて朝田たちに報告する。

 

「えっ…!?」

 

「なっ…!?」

 

「これって…!」

 

「まさか…本当にこのジャパリパークは…!」

 

朝田たちもスクラップ帳の記事に注目し、彼と同様の反応をする。

 

「…かばんちゃん。アサダちゃんたち何で驚いているの…?」

 

「僕も分からないよ…。一体どうしたんだろう?」

 

そんな彼らの様子を、サーバルとかばんは疑問符を浮かべて見ていた。

 

 

 

 

 

その記事にはこう記されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『2015年1月○日。日本国、消失』

 

 




プリンセス「次回、じゃんぐるちほー」

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