支配少女の日常は色彩に充ちる   作:八又ノ大蛇

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 ヴィラン連合が好きです。


第一章 雄英高校入学
一空~暗闇に映えるは牡丹~


 

 春の訪れを感じるようになる季節。

 しかし夜はまだ空が高く冷たい外気に厚着を着る人々が行き交う。街の賑わう喧騒、離れないように手を繋ぐ家族や恋人達。

 それらとは逆に路地裏は静寂に包まれ、まばらに歩く人々は皆顔を見られることを恐れているように伏せている。そこには活気の文字はなく錆び付いた通りだ。

 

 そこに人陰が佇んでいた。

 

「あぁ~……今日も空が澄んでいる」

 

 見上げれば空一面を覆い隠す曇り空は今にも雨が降りだしそうだ。だが少女は「綺麗だ、美しい」と嬉しそう頬に弧を描き、軽快な足取りでステップを3つ踏み屋根の上に飛び上がる。

 両手を空に掲げ愉快そうにクルクルと回る。すると青みを帯びた長い月白色の髪が風に流れる。

 

「こんな素晴らしい夜には……」

 

 少女はピッタと止まり、後ろを振り向く。藍色の瞳に写るは五人のヒーロー達。個性を発動させいつでも攻撃可能な体勢である。

 だが、少女は顔に張り付けた笑顔そのままに目を細めヒーロー達に話しかける。

 

「《赤が映える》。君達もそう、思うだろ?」

 

 まるで明日の天気を聞くように気軽に笑いかける少女にヒーロー達の警戒心はピークに達する。

 

「お前が……【チラバラシ】なのか!?」

「ハッハハ……なんだいそれ?何とも適当なネーミングだね。もっと良いのは無かったのかい?」

 

 【チラバラシ】発見された遺体全てが四脚がもげ、肉片が飛び散っていることから付けられた名前だ。暗い路地裏や人通りの少ない場所や時間に犯行に及ぶ殺人犯として新聞乗っている。だが目立った目撃情報も特徴は無く。

 【ヒーロー殺し】と呼ばれる者とは違い、ヴィランだろうがヒーローだろうが一般人だろうが関係なく殺す愉快犯としてヒーロー達が血眼になって探している。

 

 捕獲が望ましいが、殺害も視野に入れるべきではないかとの意見も出ている。

 

「貴女は何でこんな酷い事をしたの!罪の全くない一般人まで殺すなんって!」

「……何でねぇ~。……そうだなぁ~……君はさぁ、手を繋いでラブラブ発情カップルを見て何を思う?」

「はぁ!?なにを言っているの!?」

「まぁまぁ、怒らずに。答えてよ」

「……微笑ましいじゃないの……」

「……フッフフ……。流石ヒーロー様だ」

 

 女性ヒーローは怪訝そうに眉をしかめ、チラバラシと思わしき少女を睨む。しかし少女はニヤニヤと笑い、女性ヒーローに向け大袈裟いに拍手をする。

 だが「私は……ね」と電源が切れたようにフッと顔から表情が抜け落ち。能面のような感情の読み取れない無表情になり、舞台役者さながら両手を広げこう宣言する。

 

「生憎とそうは思えないのだよ!苛ついてムカついて仕方ない!カップルだろうが関係なく幸せそうなヤツら全てが憎くて憎くて堪らないのだよ!」

 

 単純であり、子供じみた発言にヒーロー達は暫し惚ける。そしてジワジワと怒りの感情が染み出てくる。理不尽極まりない理由にならない理由で殺されたもの達がいることに抑えきれない感情がヒーロー達を支配しする。

 

「貴女だけは許さないわ!」

「ここで捕まえて牢獄送りにしてやる!」

「お前ほど酷いヤツを俺は見たことがない!」

「子供だろうがこれだけのことをしたんだ痛い目をみてもらうぞ!」

「覚悟しなさい!」

 

 ヒーロー達がいっせいに飛びかかり少女を捕まえようとする。その事に少女は再び先程の何倍も深く黒い笑顔を作り手を横に振る。

 

 このときヒーロー達は目の前の悪に対し感情を熱し過ぎた。理性で判断出来れば応援を呼びにいくべであったのだ。少女は一般人はともかく、ベテランのヒーローや凶悪なヴィランを手にかけているのだから。それは一人の時もあれば五人六人と複数の時もある。

 一対多数の戦闘になろうがそれは勝利を納めてきたということに他ならない。

 

 だからこそ、彼ら彼女らヒーロー達の運命は決まった。

 

「妬みだよ、妬ましいよ。本当に羨ましいよ。私からすると君達も妬みの対象だ。だから……」

 

 少女は花が咲いたような笑顔でヒーロー達にこう言う。

 

「私の為に死んでくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『またもや【チラバラシ】か!?ヒーロー五人が死亡!!』

 

 新聞、ネットニュースの見出しはこれだ。凄惨な死体で発見されたヒーロー達の身元探しは困難を極めた。なぜなら遺体は人かどうかも分からないほどにグチャグチャに切り刻まれまるでミンチになっていたのだから。捜索する方も気が滅入る状態であった。

 

「ハッハハ…………爽快なヤツらだったなぁ~」

 

 コーヒーが入ったコップを片手に新聞をバシバシ叩き、笑う少女。場所は廃墟と化した建物の屋上。

 

「ねぇ、【ステイン】さん?」

「……煩い【機奇】」

 

 顔の半分を覆うマスクをした黒髪の男。世間一般ではヒーロー殺し呼ばれるその人だ。彼は武器の手入れをしながら機械チックな椅子に腰掛ける少女を【機奇】と呼び鬱陶しいそうに「話しかけるな」と言う。

 だが、少女はお構いなしにコーヒーを啜りながら独り言のようにけれど問いかけるように話す。

 

「一番最初に私に攻撃してきた女性ヒーローはね、まずその長い髪をチョキンと散髪して。次に捕らえた仲間の前で服を剥いで指、手、腕、足、と順々に潰してあげたんだぁ~。それはそれは、甲高い悲鳴を上げてくれてたいへん可愛らしかったよ」

 

 次に男のと、殺害したヒーロー達の殺し方を淡々と笑いながら話す少女にステインはため息を吐きたい気分だった。場所を替えども何故か当然のように場所を突き止め挨拶程々に昨日は誰を殺しただのを言ってくるのだ。

 それはステインが相槌を打とうが打つまいが関係なくたらたらと話すのだ。いったいどうして欲しいのか全く検討がつかない。電柱にでも壁にでも話してろと思う。

 

「そうだ、はい」

「あぁ?何だこれは……」

「何って、クッキーだけど?高級だし味は保証するよ」

「そうではなく、何故俺に渡す」

「一人で食べてもつまらないじゃないか」

「…………要らない」

 

 どこから取り出したのか、出された高級そうな器に入ったクッキーにステインは目を武器に戻す。だが機奇は器を持ったままコップを地面に置き、椅子から降りステインの隣の地面に座る。

 

「まぁ、そう言わずにさ。一人で食べる食事は味気ないものなのだよ」

「…………クッキーはご飯とは言わないだろ」

「それはそれ、一緒に食べてくれたらここを立ち去るからさ」

「…………」

「ここに~、この街のヒーロー達の個性が書かれた紙があります~」

「……一つだ」

「うん、ありがとう。一つと言わずにたくさん食べてよ」

 

 機奇は先程の笑顔とは質の違う、その年の少女がするような純粋な笑みでステインに笑いかける。その笑顔から目を離すようにクッキーを一つ口に放り込む。

 甘さ控えでしっとりとしたクッキーだ。機奇の差し出したコップを受けとり、それを流し込むように飲む。そして自然と口からため息が溢れる。

 

「……はぁ……」

「おや、お疲れかい?」

 

 再び溢れそうなるため息を飲み込み、早く去れと思うステインであった。

 




 不定期更新です。【四罪忌・機奇】(しざき・きき)と読みます。
 あと全く関係ないですが、この小説「支配少女の日常は色彩に充ちる」の元のタイトルは「灰色の空の下に枯れ花」でした。結構気に入っていたのでしたが弟に意味不明と言われ変えました。
 どうです!分かりやすくなったでしょう!

弟「あんまり変わってない」
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