書きながらムズいなぁと思います。
ーー空は青くて綺麗だねーー
ボヤける視界に荒れる呼吸音。体の節々が悲鳴を上げ、頭に何度も何度も激痛が走る。
ーー僕は大きくなったらーーーーになりたいんだーー
ごめんなさい、ごめんなさい。許してください。未だに動く口で紡ぐ言葉は謝罪。
ーー私とーー時は全力でお願いーー
感覚のない足に力を込めてもガタガタと震えるばかりで目の前の光景を見ることしか出来ない。
ーー笑ってよーー私達は貴女のことがーー
腕が鉛のように重い。手に持つ刃物が生暖かく今すぐ捨ててしまいたい。あぁ、嫌だ。これはとてつもなく嫌だ。
思考が曖昧になり霧がかかり霞がかる。
【四罪忌・機奇】彼女には家族と呼ぶべき対人関係がなく、親戚もおらず血の繋がりがあるものが誰もいない。普通なら孤児院に入ればいいと思うだろうし、大人の助けなしに子供が生きれる訳がない。
しかし彼女は孤児院に入ることを嫌い独立している。故に彼女の生活費は全て自分で稼がなければならない。家賃、水道費、食費、学費等など言えば切りのないぐらい人が一人、ある一定の基準に生活するには何かとお金がかかる。
成人した大人でも難しいことを齢十三歳の子供がするのは到底不可能だろう。だがその理屈を押し曲げ彼女はそれをやってのけ今年十六歳になる。彼女それやってのける才能があった。
ただそれだけ、だがあまりにも無茶であり秀才、天才と呼ぶにはまだ生ぬるい、そう鬼才だ。無論それまでに裏の仕事に手を出していないかと言えば否定の意だろう。
しかし、そうしなければ生きれないのであれば、誰が彼女を咎める事が出来ようか。
それ故に彼女が、鳴り響く目覚ましを掴み壁に投げつけることもまた仕方なのないことだろう。
目覚まし時計はガンッと音をたて乱雑物が転がる床に落ち音を止める。
「んっ…………眠っ……」
機奇は目を擦りながらベットから這いで、比較的ましなクローゼット地帯に足を向ける。二日前に殺したヒーローのことをにステインに語るのに夢中になりつい遅くなってしまった。
首を擦りながら服を着替え、出かける準備をする。今日は雄英高校の模試を受ける日だ。
「……面白いといいのだが」
冷蔵庫に入っている紙パックのジュースにストローを通し、鞄を肩にかけ扉をでる。機奇が外に出れば自動的に個性により扉のロックがかかる。
個性、今や人口の八割が個性をもつ超人社会だ。そのなか彼女また個性を持つ。
機奇の個性それは【支配】だ。
ありとあらゆるモノを支配することが出来る。支配したものは支配下となり自身の意思により操ることが可能になる。その支配対象は彼女の想像力によるところが大きく支配するイメージが大事になる。
端から見ればプロヒーローでも十分に通用する強力な個性だ。だが力が適していたとしても意思までもが相応しいとはならない。
「可愛い子がいるといいなぁ~」
彼女の思考はヒーローのそれとは真逆に位置する。ヴィランも真っ青になるほどに残虐なのだ。人を殺そうとも何とも思わないどころかその行為を楽しんでいる。その性格は彼女の過去に関することが大きい。
そんな機奇がヒーローを目指す若者が集まる雄英高校の受験を受けに行くのはただの暇つぶしに他ならない。
好みの子がいれば、仲良くなっていたぶって殺したいと考えている。中学の時はあまり好みの子が学校にいなかったから適当にムカついたヤツを吊し上げをしていた。
生徒なら悪さをしたところを写真に納めネットに晒し、教師なら結婚しているなら誤解を受けるような写真を捏造しばら蒔いた。
そう言った悪いところがなく友達とも関係も良好な子は個人情報をヤバそうなサイトに載せる。これだけで拐われ監禁や身代金を要求される事態になる。
彼女はどうしようもなく歪んでいた。人の幸せが妬ましくて羨ましくて憎らしくて仕方無いのだ。一種の病気と言っても良いだろう。なのだが、彼女が疑われるとこと苛められることは無かった。
腐った部分を一切表に出さず、いつもニコニコと人の良さそうな笑顔を絶さず完璧に演じていた。寧ろ嫌われるどころか成績優秀、文武両道で先生からの覚えもいい真面目な生徒。委員長を毎回指名されるほど人付き合いも優れた人物だ。
故に誰も彼女が昨日同級生を殺した人物だとは想像しない。友達が突然死んで悲しく落ち込んでいる生徒の肩を叩き励ます慈愛に満ちた人としての模範生。
その評価を聞くたびに彼女は更に歪みを深み、喉の奥で笑う。
「フッフフ……いい子がいれば今度ステインさんに聞かしてあげよう~」
こんな機奇だがいったって普通の感性も持っている。一人で食事をするのは寂しいや服が血で汚れるのは嫌だとか寝るときはフカフカのベットで寝たいとか当たり前のことだ。
だからかより、この事実を知るものがいれば歪だと思うだろう。
「楽しみだ……じっくりと時間をかけ殺すに値する者がいればいいなぁ……」
薄く笑い機奇は雄英高校に向け歩を進める。
「わぁ……凄いなぁ」
筆記試験を終え会場に移った受験生一同。彼らの彼女らの目の前にあるのは丸々一個抜いたような街だ。ビルや家に道路と住めるのではないかと思うほど見事だ。それと同時に資金は大丈夫なのかと思う。
事前にボイスヒーロー【プレゼント・マイク】こと山田氏により説明された試験内容を機奇は頭の中で思い出す。
一、街の中にヴィランとして配置されたロボを破壊すればポイントが貰える。Aタイプ1ポイント、Bタイプ2ポイント、Cタイプ3ポイント。それとは別の0ポイントのお邪魔虫ロボがいる。
ニ、他の受験生の妨害行為は禁止。
三、時間内により多くのロボを排除する。
「ロボかぁ~……あんまり楽しくならないなぁ……」
機奇の声に眉をしかめる受験生達。しかし回りのことなど全く見向きもしない機奇は呑気に手をブラブラさせ「暇だ、暇」だと言っている。
《ハイ、スタート!!》
プレゼント・マイクの機械越しの声が会場に響く。それと共に困惑する受験生。
《どうしたあ!!?実践じゃカウントなんざねぇんだよ!!走れ走れ!!匙は投げられてんぞ!!!》
意味を理解するのに数秒を要し、受験生達はいっせいに駆け出す。その中に深緑色の少年が取り残されていたが、彼も遅れて後を追うように慌てて走り出す。
今スタート地点に立つ受験生は一人を除き存在しない。
「……皆元気だなぁ~」
アクビを噛み締めながら、一人ぽっつんと残った機奇も静かに歩きだす。