※今話には皆さまからご応募頂きました不死人が登場します(なんと七人!)
ルカティエルとバンホルト、そして数十人の不死人たちを囲い、奇跡『穏やかな平和の歩み』を行使した闇の騎士たち。忌むべき神々の力を解放した彼らのこの包囲から逃れる術など無く、ルカティエルたちは絶体絶命かに思われた。
しかし、それは突如として現れた一人の巨漢によって覆される。
「ぉおおオッッ!!!」
地面に浮かんだ白き言葉から現れたその男は、獣を模した兜から覗く眼光を鋭く光らせる。そして両手に握られた得物『赤錆の曲剣』と『赤錆の直剣』を振るい、瞬く間に二人の闇の騎士の首を落とした。
「なっ!?」
「何だ、こいつは!?」
混乱する敵兵など意に介さず剣を振るい、次々とその首を落としてゆく。
男の名はヴァンガル。かつての戦場における戦いぶりは味方さえも震え上がらせたという逸話を持つ、猛獣の如き強さを誇ったフォローザの勇士である。
「む、何事か!?」
斬り暴れるヴァンガルに翻弄される闇の騎士たちの様子に、バンホルトが訝しげな声を上げる。
「よく見えないが、今が好機に違いない!」
“奇跡”によって逃げる事もままならない状況だったが、ヴァンガルの登場により敵兵は混乱の只中にいる。この機を逃す手はないとルカティエルは盾を構え、そして周囲にいる不死人たちへと向けて大きく声を張り上げた。
「固まれ!盾を持つ者は外側へ、持たない者は内側へ!!」
『 ッ!! 』
ルカティエルの声を聞いた不死人たちの行動は速かった。
小盾、中盾、大盾。あるいは幅広な特大剣を持つ者たちは前に出て、そうでない者たちは彼らの背に隠れるように。この場に居合わせた数十人の不死人たちはこれまでの戦いで得た経験を元に、ルカティエルの思い描いた通りの陣形を取る。
「なっ……!?」
ヴァンガルの猛攻に気を取られていた闇の騎士たちの内の一人が目を見開く。
そこには巨大な『甲羅』があった。
頭と手足を隠した亀の如く、全方位を己の盾で固めた不死人の集団。不揃いで隙間も目立つが、即席にしては十分すぎる陣形だ。
「くそっ、崩すぞ!!」
おおおおおおっ!!とルカティエルたちに殺到する敵兵。無数の剣や槍、槌などを振り下ろされるも、完全に守りに入った彼らは生半にはやられない。
「ぬぅ……ルカティエル殿、この後は!?」
「考えがある。バンホルト、お前はこれから言う事を皆に伝えてくれ!!」
構えた盾越しに伝わる衝撃に顔をしかめながらも、ルカティエルは次の一手を口にする。それを受けたバンホルトは陣の内側に引っ込み、その策を全員に伝えるべく人込みをかき分けていった。
一方の闇の騎士たちも痺れを切らしたのか、武器を振るう方とは逆の手にタリスマンを構え始めた。“奇跡”の効果が切れる頃合いを見計らい、再び行使しようというつもりだ。
ヴァンガルの奇襲により同胞の数は減らされてしまったが、ルカティエルたちが固まっているお陰で狙う範囲は小さくなった。これならば今いる者たちだけでも十分にやれると見た闇の騎士たちは互いに目配せをし、タイミングを見計らい一斉にタリスマンを頭上に掲げる。
―――その瞬間を見逃さなかったルカティエルが、大きく叫んだ。
「今だッ!!」
直後。
がばっ!!と
パイク、パルチザン、ウィングドスピア。何の効果もないごく普通の槍だが、絶妙なタイミングで突き出された穂先は、敵兵にとって十分な奇襲効果があった。
「がはっ!?」
「ぐっ、小癪な……!」
槍の奇襲は敵兵を絶命させるには至らなかった。が、一瞬でも怯めばそれで充分。たたらを踏んだ闇の騎士たち目掛け、これまでのお返しだとばかりに不死人たちが攻撃に転じる。
「行けぇえええええええッ!!」
「「「 おおおおおおおおおおおおおおおおっ!!! 」」」
ルカティエルの声に合わせ、不死人たちが走り出した。手にした武器を振り上げ、奇跡を行使させる暇も与えずに次々と斬り伏せてゆく。
「ハァッ!!」
「ぎゃっ!?」
窮地を脱した不死人たちは皆、思い思いの戦場へと散って行った。
この逆転劇の立役者であるルカティエルもまた次なる戦場を探して、周囲へと目を配らせる……と、ここで彼女に駆け寄ってくる者がいた。
「上手くいったようだな、ルカティエル殿!」
「バンホルト、無事だったか!」
「はっは!
蒼の大剣を肩に担ぎ、豪快に笑うバンホルト。相変わらずの偉丈夫ぶりに頬を緩ませつつ、ルカティエルは今後の動きを手短に伝える。
「私はこれから前へ出る。お前はどうする?」
「無論、共に行こう……と言いたいところだが、少しばかり寄り道をしようと思う」
「寄り道だと?」
「ああ」
そう言って、彼は視線をある場所へと向ける。
そこには、他の者たちよりも頭一つ大きな巨漢がいた。両手の得物を振り回し、豪快に敵を蹴散らしている勇士の姿に、バンホルトの双眸がギラリと輝く。
「
言い終わるや否や、バンホルトは走り出した。邪魔な敵兵を片端から斬り飛ばし、その勇士―――ヴァンガルのいる場所を目指して、一心不乱に駆けてゆく。
「うおおおおぉぉおおおおおおおおおおおおおっっ!!!」
「!?」
野太い雄叫びにヴァンガルが振り返るや、すれ違うようにして彼の前へと躍り出たバンホルト。
瞬時に味方であると判断したヴァンガルは、彼と背中を預ける形で闇の騎士たちを睨みつける。
「そなたは……?」
「某の名はバンホルト!貴公の勇気ある姿に感銘を受け、馳せ参じた次第!」
役者がかった名乗りもそこそこに、バンホルトは鼻息を荒くして戦意を高めてゆく。
しかし、それも当然だろう。武と礼を重んじる砂漠の国ウーゴの武人である彼にとって、自分たちを救ってくれた者へ何の恩も返さないというのは、どうしても我慢ならない事なのだから。
「義を見てせざるは勇無きなり!故にこのバンホルトッ、しばし貴公と共に戦おう!!」
「……良いだろう、バンホルトとやら」
一方的な共闘の申し出をヴァンガルは素直に受け取る。
幾多の戦場を経験してもこれまで出会った事のないタイプの男に、彼にしては珍しく口元に笑みを湛え、こう言った。
「共闘といこう」
窮地に陥ったとて、それは不死人たちにとって必ずしも絶望するような事ではない。
それに、この場に集まったのは皆ファーナムの呼びかけに応じた者たちだ。半端な事で折れるような
久しく同じ不死人と戦っていなかった闇の騎士たちは、愚かにもその事を忘れかけていたのだった。
「がっ……!」
ずるり、と闇の騎士の腹部から引き抜かれる大剣。血を流し息絶えたその者の周囲には多くの同胞がいるが、皆武器を向けたまま動けずにいる。
「くそ、なんだこいつは!?」
「いくら斬っても倒れやしねぇ!」
その目に宿る感情は畏怖。常人からは化け物とすら言われる不死人だが、その大剣を持つ不死人は闇の騎士たちから見ても十分に異質だった。
全身を黒い鎧で固め、同じく黒いフードで隠された素顔は見る事が出来ない。いくら斬り付けても倒れず、獰猛に剣を振るう姿はデーモンすら彷彿とさせるほどだった。
「次はどいつだ」
「ッ……舐めるなァ!!」
自分たちが劣勢であるという状況に業を煮やした闇の騎士が叫びを上げ、不死人へと突貫する。
剣と剣が交差し、火花を散らして鍔迫り合いとなった。その瞬間を待っていたかのように、無防備となった不死人の背中目掛けて幾つもの剣や槍が突き立てられる。
「いい加減、死ね!」
「化け物めっ!!」
不死人に群がる闇の騎士たち。普通であればすでに勝負は決しているが、これまで散々同胞を殺された彼らは、それでもなお追い打ちをかけた。
最初に斬りかかった闇の騎士が『ダークハンド』の力を開放し、不死人の胸を穿つ。人間性を吸い尽くし、確実に息の根を止めようという魂胆だったのだが……。
「なっ……馬鹿な!?」
それでも倒れない。
致命傷を幾つも重ねているというのに、不死人はそれでも膝を突かないのだ。
驚愕し、立ち尽くしてしまった闇の騎士。その手を不死人は強く握り締める。
「っ!!」
「残念だったな」
不意にかけられたその言葉に、闇の騎士が顔を上げる。そこにはフードがめくれ上がり、亡者の素顔を晒した不死人が己を見下ろす姿があった。
「俺から奪えるものなど、もう何もないぞ」
―――実体 古いネームレスが現界しました―――
「ひっ……!」
完全に戦意を喪失してしまった相手にも容赦せず、古いネームレスは無慈悲に『喪失者の大剣』を振り下ろした。
身体を斜めに両断される闇の騎士。また一人、無残に殺された同胞を目にして動きを止めてしまった背後の騎士たちだったが、突如その身に受けた攻撃に悲鳴を上げる。
「ぁが!!」
「ぐぅっ!?」
ドドドドッ!と、彼らの身に襲い掛かったのはクロスボウによるものだった。雷と火の魔力を内包したボルトを嵐のようにお見舞いされた闇の騎士たちは身体をのけ反らせ、その隙を突かれ振り返った古いネームレスの手によって、まとめて斬り払われてしまう。
血を噴き出す死体など見飽きたとばかりに血振りをする古いネームレス。その脇をすり抜けるようにして、一人の不死人が彼の真横を走り去っていった。
「ヒャッハァ!!良いねェ、的だらけだ!!」
―――実体 乱れ射ちビルゴアが現界しました―――
「次、次ぃ!!」
両手に『アヴェリン』を装備したビルゴアは他の事など眼中にないようで、歓喜に満ちた声と共に次なる標的を求めて行ってしまった。
「……次に会ったら斬ってやる」
……撃たれた事については、納得いっていない様子だったが。
誰もが近接主体の攻撃に徹している訳ではない。戦場後方では弓や魔術、闇術を主に使う不死人たちが集まり、団結して敵兵との交戦を繰り広げていた。
彼らは大盾持ちの不死人たちに壁となってもらい、その後ろから攻撃するという戦術を取っている。誰もが一級の戦力持ちというこの戦場において、この一団は難攻不落の城塞と化していた。
「ふッ!」
バンッ!という大弓特有の強い反動で放たれた大矢が戦場を駆け抜け、闇の騎士の胸を穿つ。
勢いのままに吹き飛ばされ、地面に磔となり沈黙。それを確認した大弓の持ち主は小さく息を整え直すと、次の大矢へと手を伸ばした。
―――実体 流浪の傭兵アンルガが現界しました―――
「全く、こうも多いと流石に嫌気が差すな」
得物である『アーロンの大弓』に大矢を番えつつも、敵の多さに愚痴をこぼすアンルガ。その呟きは両隣で黙々と矢を射続けるシュミットとシェイ……ではなく、彼から少し離れた場所で杖を唸らせる不死人へと向けられていた。
「そうも言っていられないだろう。自分たちが取れる手段の中では、恐らくこれが最適解だろうさ」
頭のみ黒衣のフードを被り、それ意外をアーロン装備で固めたその不死人は、魔法強化した『叡智の杖』から魔術を放ちながら悠々と返答した。
―――実体 城塞の魔砲台 ジズが現界しました―――
戦場で出会い、こうして共に戦っているアンルガとジズ。見ず知らずの相手を呼び出し、あるいは呼ばれる事もしばしばな不死人たちにとって、すぐに呼吸を合わせる事は難しくない。
それが例え今回のような
が、ここで闇の騎士たちも戦術を変えてくる。
「撃て、撃てぇ!!」
最も敵を屠っているアンルガとジズに狙いを絞り、重点的に攻撃を仕掛けてきたのだ。敵側は弓や魔術、更には呪術や奇跡までも使用し、夥しい暴力の奔流が二人に牙を剥く。
「くそっ……ジズ!」
「っ、不味いな。このままだと……!」
削られてゆく大盾。すぐさま他の不死人たちが駆け付けて守りの強度を高めるが、多様な攻撃の嵐を前にして防戦一方となってしまう。
そして、その時が来た。最後まで踏ん張っていた大盾持ちの不死人が倒され、遂に難攻不落の城塞は瓦解してしまった。
「突撃ぃぃいいいいいッ!!」
先導する闇の騎士の声に従い、何人もの敵兵が押し寄せてくる。
チッ、と舌打ちを鳴らすアンルガはアーロンの大弓からセスタスへと武装を切り替え、正面切っての肉弾戦へと戦法を切り替えようとする。無謀としか言えないその行動に、ジズがせめて援護だけでもと杖を構えた―――その時。
「アッハハハハハハハハハハハハァァーーーッ!!!」
「!?」
と、ジズの隣から飛び出す者がいた。
ねじくれた角を持つ山羊の頭骨にも似た、術師の仮面を被った一人の不死人。彼は闇の騎士たちの前へと躍り出ると、左手の『クァトの鈴』を高らかと掲げ、特大の闇術を解き放った。
―――実体 渇望のソウダルクが現界しました―――
「『絶頂』!!!」
直後、現れた闇の塊。それは先頭を走っていた闇の騎士へと直撃した。
「うっ、おおぁああああああああっっ!?」
「なんっ……ぐぉあああ!?」
爆発四散する肉体。闇の残滓と臓物を周囲に撒き散らすだけでは飽き足らず、衝撃によって後方にいた敵兵までもが悲鳴と共に吹き飛ばされる。
余りに突然の出来事に周囲の者が沈黙する中、いち早く放心から復活したアンルガが大声で叫ぶ。
「呆けるな!立て直せ!!」
「っ、お、おう!!」
彼の一喝により、倒れた敵兵へ追い打ちをかけるべくアンルガ率いる不死人たちが走り出す。
ジズもまた杖から月光の大剣へと持ち替えて、彼らの後を追う。その途中で『絶頂』を放った張本人たるソウダルクが倒れていたので、助け起こそうと駆け寄ったのだが……。
「ふ、ふふ……やはり『絶頂』は良い……!」
(うっ……)
と、何やら恍惚とした様子でぶつぶつと呟いているのを目撃したため、思わず足を止めてしまう。
そんなジズなど気がついてもいない風に、ソウダルクはただ一人余韻に浸るのであった。
「ふふふ……あぁ、最高だ……!」
「があぁッ!!」
不死人たちが様々な戦闘を繰り広げている中、ベートは闇の騎士たちと相対していた。
ガレスと二人がかりで青き戦士と戦っていたが、一瞬の不意を突かれ敵兵の波に晒されてしまった。それから彼はずっと一人で戦っているのだが、戦況は非常に不味い。
青き戦士との戦闘で負傷した傷が尾を引き、真綿で首を絞められるが如く全身に傷を重ねていったベートは、本来の俊敏さを失っていた。すでに両拳は砕けかけ、自慢の両脚も鉛のように重い。
それでも攻撃の手は緩められない。先程までの快進撃に危機感を抱いた闇の騎士たちは確実にベートを潰すべく、常に複数で斬りかかっているのだ。
(畜生、キリがねぇ!)
倒しても倒しても一向に減らない敵の数。それと比例するようにこちらの体力は削られてゆき、いつ倒れてもおかしくない有様だ。その事実を何より許せないベートは怒りの形相で歯を食い縛り、立ちはだかる闇の騎士たちを睨みつける。
「ハァ、ハァ……クソがァッ!!」
しかし、毒づいたところで状況は変わらない。
失血により視界までもが霞んでゆく中、遂に踏み出した足がもつれる。戦場において致命的な隙を生み出すそれは、闇の騎士に接近を許す好機を与えてしまった。
(しまっ……!?)
引き延ばされる一瞬。
大槌を振り上げた闇の騎士が髑髏の仮面越しに笑みを深めるのを幻視し、ベートが焦燥と怒りが入り混じった表情を浮かべた―――次の瞬間。
バッ!!と、彼の後方から巨大な黒い影が飛び出した。
「!?」
その驚愕はベートか、それとも闇の騎士のものか。
何が起きたのかも分からないベートを他所にその黒い影は彼の目の前に着地すると、勢いよく身体を
「なっ……!?」
いつの間にか危機から脱したベートは、そこでようやく目の前の存在を理解した。
巨大な蠍の下半身に、戦士らしき鎧を身に着けた上半身。歪な槍を握る手と、その肌は血の通っているようには見えず、しかしその立ち姿には明確な戦意が感じ取れる。
―――蠍のターク。それがベートを助けた者の正体だった。
『―――ォオオオッ!!』
タークはベートを振り返る事もせず、ただ目の前の闇の騎士たちへ突貫する。その長大な武器でひと息に敵を薙ぎ払う姿は、さながら『深層』に潜むモンスターのように苛烈だ。
「なっ……ぎゃぁああっ!!」
「ッ……ンだ、こいつは……!?」
困惑するベートだったが、そこへ更に二人の不死人がやって来た。
一人は兜を除き、およそ戦闘向きとは思えない聖職者のような衣服を纏った者。もう一人はゲルムの大兜と、堅牢な岩の如き超重量の鎧に身を包んだ者。
前者は『グランランス』を、後者は『妖木の杖』を手に、タークに続いて敵兵へと攻撃を仕掛ける。
―――実体 墓守の聖人 オルフが現界しました―――
―――実体 負けず嫌いのエルスが現界しました―――
「うおおぉぉおおおおおおおおおおっっ!!」
猛々しい雄叫びを上げながら、グランランスを手に走り出すオルフ。
「ぎゃっ!!」
「ぐあぁ!?」
三人ほどをグランランスの錆に変えたところでオルフの進撃は停止した。彼は素早く『古竜院の聖鈴』を取り出すと、息もつかせぬ動きで奇跡『神の怒り』を解放する。
彼を起点に吹き飛ばされる闇の騎士たち。紙切れのように宙を舞う同胞に気を取られた敵兵は、エルスの放った魔術『ソウルの結晶槍』によりソウルへと還っていった。
「くそっ!!」
厄介な魔術使いを始末すべく、曲剣を手に駆け寄る闇の騎士。遠距離主体の相手は総じて接近戦が不得手であるとの判断だったのだろうが、それが運の尽きだった。
「まぁ、そう来るだろうね!」
そう言ってエルスはあっさりと杖を仕舞い、今度は『古き混沌の刃』を手にする。そうして近付いてきた敵の懐に入り込むや否や、一刀の元に斬り伏せて見せる。
崩れ落ちる闇の騎士を跨ぎ、彼は『竜の聖鈴』を掲げた。行使するのは『固い誓い』。自身と周囲の仲間の攻撃力、防御力を一時底上げする奇跡である。
「っ! 悪いな、助かる!」
「良いさ、気にするな!」
エルスの気の利いた行動に素直に感謝を述べるオルフ。心強い味方に勢いを付け、彼は再びグランランスを唸らせる。
その加護はタークにも、そしてベートにも向けられた。タークは今まで以上に苛烈に立ち回り、見る見るうちに敵兵の数を減らしてゆく。その光景を、ベートは立ち尽くしたまま見ていた。
否、ただ立ち尽くしている訳ではない。ぼろぼろの拳を固く握りしめ、己の無力さを痛感していたのだ。
「クソ……ッたれ……!!」
自他共に強さを要求する一匹狼。
己の窮地を救われるという行為が、彼の内側に消え残る『傷』を、再び呼び起こそうとしていた。
同じ頃、リヴェリアとレフィーヤは突如目の前に現れた長身痩躯の騎士たち―――ロイエス騎士たちに困惑しながらも、彼らが敵ではない事に安堵の息を吐いていた。
「リヴェリア様、この人たちは……?」
「……分からない。が、ファーナムの仲間と見て良いだろう」
四人のロイエス騎士はすでに敵兵たちと交戦を開始している。
斧槍や大斧、直剣を手に戦う彼らは勇敢そのもの。次々と襲い掛かる闇の騎士たちに対し余りに多勢に無勢だが、一切怯んでいる様子はない。その雄姿にレフィーヤは杖をぐっと握り締め、自らを奮い立たせる。
「リヴェリア様!私も、あの人たちの援護を!」
「っ、待て!お前はまだ出るな!」
「えっ!?」
飛び出しそうになったレフィーヤの足を、リヴェリアの声が制止させる。何故止めるのか、と疑問を抱くエルフの少女に、ハイエルフの王女は冷静に現状を説明し始めた。
「奴らは雑兵だ。お前が一人二人倒したところで、大した痛手にはならないだろう」
「で、でもっ、あの人たちは私たちの為にっ!」
「お前の言いたい事はよく分かる。だからこそ、自分のすべき事を見失うな」
そう言って、リヴェリアはレフィーヤから視線を外す。次に彼女が見たのは、多くの闇の騎士たちを引き連れた魔術師グリッグスの姿だ。
ロイエス騎士たちの登場により先ほどまでの魔術の猛攻は止まった。標的を彼らへと変更したらしく、グリッグスの放つ魔術はリヴェリアたちへと向いてはいない。これを好機と見た彼女は、自身が思い描く戦術をレフィーヤへと告げる。
「私たちは一先ずここから離れ、身を隠す。彼らが足止めをしてくれている間に、出来うる限り最大の魔法で敵を討つ」
「でも……でもっ!」
「わがままは聞かないぞ……お前も理解できるだろう、
「っ!!」
その言葉にレフィーヤは押し黙る。
彼女の瞳が映したのは、痛々しく血を流すリヴェリアの姿だ。この傷を刻んだのは、全てグリッグスの放った魔術によるものである。
「私の防護魔法を貫通する程の魔法を次々と使ってくる。そんな敵を相手に、お前は並行詠唱で太刀打ち出来ると思うのか?」
「………」
「そんな事は私でも無理だ。だからこそ、確実に倒す為の準備が必要なんだ……分かるな」
「………はいっ」
少女の身体に流れる気高いエルフの血が、
今は前に出る時ではない。魔法使いとしての本分を忘れるなという、
「よく言った、レフィーヤ」
決意を固めた弟子の頭を優しく撫でたリヴェリアは振り返り、自分たちを守って戦ってくれているロイエス騎士たちへと声を張り上げる。
「ここは任せる!すまないが、もう少し耐えてくれ!!」
彼女としてもこの決断は容易なものではなかった。オラリオが誇る探索系ファミリアの一角【ロキ・ファミリア】の幹部勢であるリヴェリアが、易々と仲間の命を危険に晒せる訳がない。
そんな事など知る由もないはずなのに、ロイエス騎士たちは彼女の心情を理解しているかのように、力強く頷き返すのであった。
―――我々の事は気にするな、行け。
「……ありがとう」
騎士の名に恥じぬ言葉を
そんな二人を、グリッグスは慌てた様子もなく見送っていた。
「グリッグス殿、奴らが逃げますっ!!」
「追いかけますか!?」
「……いや、いい」
闇の騎士たちが慌てた調子で問いかけるも、グリッグスはそれに否と答える。
「先にこの騎士たちを倒してしまおう。彼女たちを追うのはその後だ」
そう答えたグリッグスの口元には笑みが浮かんでいる。
“王”の側近でもあるが、それ以上に一人の魔術師でもある彼の心には、リヴェリアとレフィーヤが何をする気なのか……という、好奇心が芽生えていた。
(良いだろう。見せてくれ、君たちの魔術を)
―――それを打ち破り、師の……老ローガンの魔術の偉大さを思い知らせてあげよう。
~今回登場した不死人~
古いネームレス リーバー様
乱れ射ちビルゴア 様
流浪の傭兵アンルガ 医療教会長レグド様
城塞の魔砲台 ジズ 灰の魔術師様
渇望のソウダルク £‰t#∮H婀?u様
墓守の聖人 オルフ 池ポチャ様
負けず嫌いのエルス サンラク様
以上の皆さまです。本当にありがとうございました。
※【乱れ射ちビルゴア】を考えて下さいました方は、ご本人様がハーメルンのアカウントを消されたようなので、お名前を書く事が出来ませんでした。ご容赦下さい。
※【捨て身のガラハ】という不死人を考えて下さいました方は、設定の書かれたコメントが消えてしまったので、よろしければメッセージにて設定を再度お送り下さい。(強要ではありませんので、無視して頂いても構いません)
以上、失礼致しました。