歌と共に舞うひと夏   作:のんびり日和

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3話

イチカがIS学園に入学して数日が経ったある日、イチカとマドカが教室に入ると、クラスは何かの話題で持ちきりだった。

 

「何かあったのか?」

 

「さぁ?」

 

二人は頭を傾げているとクラスメイトの一人が2人に近付き、挨拶を交わす。

 

「おはよう、2人とも。ねぇ聞いた? 2組に転校生が来るんだって」

 

「転校生? 此処に転校生が来るってそんなに珍しいのか?」

 

「本来は入学式に来るのが多いけど、代表候補生とかだと専用機の受領とかで遅れることが偶にあるって聞いた事があるの。もしかしたら……」

 

「転校生は代表候補生かもしれないと。それで騒然としていたのか」

 

イチカは代表候補生が入学して来ることに対して、全く興味無しと言った表情になり、マドカもイチカ同様興味無しと言った表情で席に着く。

すると教室の前側の扉が開かれ、一人の生徒が入ってきた。

 

「ねぇこのクラスのクラス代表って誰?」

 

「え? えっとあそこにいる彼女だけど……」

 

クラスの一人がそう言うと、生徒は簪の元に行く。簪は空間ディスプレイで何かの作業をしており、近づいてきた生徒に一切目もくれず作業を続けつつ、対応する。

 

「なに?」

 

「あたし2組のクラス代表になった、凰鈴音よ。よろしく!」

 

「そぉ。じゃあそろそろ戻ったら。もうすぐ先生来ると思うし」

 

簪の素っ気ない態度に鈴は、カチンとなる。

 

「……あんた作業を一度止めて、こっちに顔を向けるのが一般常識じゃないの?」

 

「今忙しいから無理」

 

2人の周りが険悪な雰囲気になったところでチャイムが鳴り、エリシアが入ってきた。

 

「はぁ~い、皆さんチャイムが鳴りましたよ。全員席に着きなさい、それと凰さんは早く2組に帰りなさい」

 

エリシアにそう言われ、鈴はしかめっ面を出しつつクラスから出て行こうとすると、1組の男女に目が行く。

 

「この公式はこうやって解くんだ。で、次の問題はこれを応用すれば解けるぞ」

 

「なるほど、航空学はどうしても分からなかったが、兄さんの教え方は旨いから頭にスラスラと入ってくるぞ」

 

男子は、ははは、そうか。と笑いながら、問題が解けた女子の頭を撫でる。女子は照れながら笑みを浮かべている。

 

「……一夏?」

 

鈴は行方不明となった幼馴染の名前を呟き、その男女に近付こうとした瞬間、首根っこを掴まれ上げられる。そして顔を捕まえ上げた人物の方に向ける

 

「凰さん、先生は早く戻りなさいって言ったわよね」

 

其処にはニコニコと笑顔を浮かべつつも、額には青筋を浮かべているエリシアがいた。鈴は小猫の様にガタガタと震え始める。

 

「さっさと教室に戻りなさい!」

 

そう言ってエリシアは鈴を廊下に放り投げると、鈴は、はい!と大声で叫んで自身の教室に戻って行く。

 

「全く、それではSHRを始めます。その前にメルダース君、体を妹さんの方から私の方に向けてね」

 

「あ、はい」

 

イチカは体をエリシアの方に向け、SHRを聞く体制になる。そしてSHRが始まった。

 

 

そして時刻は昼時となり、イチカとマドカは食堂に行こうと立ち上がると、

 

「ねぇちょっといい?」

 

そう言って話しかけてきたのは簪だった。

 

「ん? 別にいいが」

 

「少し相談があるの」

 

イチカは相談?と頭を傾げていると、マドカが一つ提案する。

 

「此処じゃ何だし、食堂のプライベートルームに行かない?」

 

そう言われ、簪は了承し3人は食堂へと向かった。食堂に着いた3人はそれぞれ定食などを頼み、食堂の奥にあるプライベート用の個室に入る。入る際、食堂の入り口付近で人だかりが出来ていたが、3人は気にせず中へと入っていた。プライベート用の個室とは、周りに聞かれたくない事などを特定の友達に相談したい時などによく使われている防音対策が施された個室である。使用には教師に、使用目的などを明確に伝えないと使用できないと言う制限付きだが。今回は簪が、食堂に行く途中でエリシアの携帯に電話し、使用許可を取っている。

 

「で、相談ってなんだ?」

 

イチカはご飯に手を付けつつ、簪に相談内容を聞く。簪は言いづらそうな顔でいたが、直ぐに意を決したような表情で言う。

 

「実は私の専用機がある理由で凍結にされたの」

 

「凍結? つまり開発中止って言う事か?」

 

イチカの返答に簪は頷く。

 

「確か、更識さんの「私の事は簪でいい」それじゃあ簪さんで。で、簪さんって確か日本代表候補生だよね?」

 

マドカの問いに簪は頷き、肯定する。

 

「でしたら本来代表候補生のISの製作が優先されるはずです。けど凍結されると言う事はそれなりの理由があるってことですよね」

 

「貴女の言う通り、向こうから一方的な理由で凍結にされたの」

 

「一方的? どういう理由なんだ?」

 

イチカの問いに簪は、ため息を吐くように答える。

 

「……男性操縦者用のISを作るから君のISは凍結が決まったって言われたの」

 

「はぁ? 何だよそれ、俺知らねぇぞ」

 

イチカは呆れたような表情で答えると、簪は首を縦に振る。

 

「多分そうだと思ってた。だって私もあのクラスで貴方が専用機を持っている事は聞いてたから、必要ない事は知ってたし」

 

「じゃあ何でそんな話が出てくるんだ?」

 

イチカの疑問に簪がその理由を答えた。

 

「勿論メルダース君が専用機を持っている事を研究員の人に言ったけど、上からの指示だから無理だって言われた。で、誰からの依頼なのか聞いたら」

 

「織斑千冬だろ?」

 

「え? 何でわかったの?」

 

マドカの推論に簪は驚いていると、イチカは舌打ちする。

 

「全く、問題事しか起こさないなあいつは」

 

「だね。兄さんはお前の弟じゃないって今度は体で教えてやろうかな」

 

「止めとけ、後処理がめんどい」

 

突然二人が物騒な事を言いだし、簪は流石PMCに所属してるだけの事はあると思っていると、イチカが突然スマホを取り出し、何処かに電話を掛け始めた。

 

「あ、もしもし、イチカです。はい、実はさっき聞いた話なんですが、自分の専用機が許可なく作られているって聞いたんです。はい、何処のかですか?ちょっと待って下さい」

 

イチカは耳からスマホを離し、簪に顔を向ける。

 

「簪さん、簪さんのISが作られている会社の名前は?」

 

「倉持技研って言う研究所だけど」

 

企業の名前を聞いたイチカはスマホを耳に戻し、話を続けた。

 

「倉持技研って言う企業みたいです。で、依頼したのが織斑千冬みたいです。はい、では後はそちらでお願いします。はい、失礼します」

 

イチカはそう言って電話を切る。

 

「えっと、何処に掛けてたの?」

 

「何処って、俺が所属しているPMCの社長だ。正式に抗議の電話出しておくって言ってたよ」

 

そう言い、簪は行動が早いと思っているとマドカがあることが気になり、簪に質問を投げる。

 

「そう言えば、簪さんのISは今どうなってるの?」

 

「今は学園の整備室の一つを借りて、そこでISを組み立ててる」

 

「え!? まさか一人で作ってるの?」

 

マドカの問いに簪は頷き、肯定した。

 

「一人で作るなんて、無茶だよ」

 

「大丈夫。機体自体はもうほとんど出来てるんだけど、システムがまだ出来てないの……」

 

簪はそう言い、落ち込む。イチカとマドカはどうするかと悩んでいると、そのシステムのどこがまだなのか聞く。

 

「そう言えば、システムと言うが結構あるんだが、何処の部分のシステムなんだ?」

 

「歩行、飛翔などは出来ている。武装もある程度出来ているけど、ある発射システムがまだ出来てないの」

 

「発射システム?」

 

「マルチロックオンシステムって言う、複数の目標にロックオンしてミサイルを発射するシステムなんだけど、どうしても複数の目標にロックが出来ないの」

 

そう言うと、イチカは自身のISに積んでいるシステムもマルチロックシステムだよなと思い、ディスプレイを展開する。

 

「なぁ、簪さん。そのシステムなんだが、俺のISにそれと似たシステムを積んでいるんだが」

 

「え!? 本当に!」

 

そう言い、イチカが展開しているディスプレイを見ようとするが、イチカが寸でで止める。

 

「お、おい! 少し待てって。今から見せられないところを塗りつぶしていくから」

 

そう言い、イチカはディスプレイ上に出ているマルチロックシステム以外の部分を見られないように塗りつぶしていく。

 

「はい、これがそのシステムの内容だ」

 

そう言いディスプレイを簪の方に向けると、簪は食い入る様に見る。

 

「……す、凄い。これ私が構想していたシステムとほぼ似てる」

 

「そうなのか?」

 

「うん。……羨ましいな、ちゃんとシステムまで作ってくれる研究員が居る所で」

 

簪は落ち込みながらそう呟くと、イチカはふむ。と手を顎に添え暫く考え込むと、おもむろにスマホをもう一度取り出し、またどこかに電話を掛ける。

 

「あ、もしもし。うん、マドカも元気にしているよ。所で今大丈夫? うん、実はクラスの代表候補生のISが凍結されたって、社長から聞いてる? うん、それ。実はその子の機体自体は出来てるらしんだけど、あるシステムがまだ出来てないらしくて、そのシステムが俺のISに積んでる、マルチロックシステムと同じものらしんだ。それでそのシステムデータをコピーして渡してもいいかな? 良いの? ありがとう。うん、分かった。ちゃんと帰りますよ、それじゃあ」

 

イチカは電話を切り、簪に電話の内容を伝える。

 

「簪、そのマルチロックシステムのデータ、コピーとってもいいぞ」

 

「本当に! けど良いの? 企業のデータだよねこれ」

 

「さっき掛けた相手は、こいつを作ってくれた博士だよ。で、聞いてたと思うが、二言返事でOKが出たんだ。それとメールにこれを送ってくれたよ」

 

そう言ってイチカはあるソフトを簪に送る。

 

「これは?」

 

「一人でISを作るって事は、色々不具合が隠れている可能性があるから、その不具合を発見してくれるソフトらしい。重宝してくれってさ」

 

そう言われ、簪は手を貸してくれたイチカ、そしてその博士に心から感謝した。

 

「……ありがとう。本当にありがとう!」

 

そう言い簪は頭を下げる。

 

「まぁ、クラスメイトが困ってるならそれを手助けするのが、クラスメイトだからな」

 

「うん、私も出来ることがあれば手伝うよ」

 

そう言われ簪は涙ぐみながら、ありがとう。と何度も言いながら頭を下げた。




次回予告
教室でイチカとマドカが勉強していると、一組の箒がやって来た。そしてイチカを2年前行方不明になった織斑一夏ではと聞くが、イチカは知らないと言う。箒はしつこく聞いていく内にマドカのイライラが限界を超え、箒を気絶させ廊下に放り捨てる。それから数日後クラス代表が行われた。
次回クラス代表戦~クラスのみんなの想いを背負ってるんだから頑張らないと~
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