クラス代表戦から数日が経ち、学園はGWに突入した為イチカとマドカはISの整備をする為エンシェントセキュリティー社へと帰ろうとしていた。
「忘れ物は無いよな?」
「あぁ。ナイフも持ったし、拳銃も腰のホルスターに入ってるから大丈夫だ」
そう言いイチカとマドカは部屋から出て学園の門へと足を向ける。その途中前方から簪と鈴が歩いてやってきた。
「あら、あんた達どっか行くの?」
「あぁ、ISの整備の為一度エンシェントセキュリティー社に帰るんだ」
「イチカ君とマドカちゃんの所属しているPMCだっけ? 気を付けてね」
簪にそう言われイチカはおう。と短く返事をしてマドカと共に歩き去って行く。
「それにしてもアイツがPMCにねぇ」
「鈴はあの2人がPMC所属だって知らなかったの?」
「えぇ。イチカは昔から戦闘機の操縦ゲームは結構得意だってのは知ってたけど、まさか本当の戦闘機のパイロットになってたのは今の今まで知らなかったからね」
簪はふとマドカのことを言ってない事に気づき聞く。
「マドカちゃんは?」
「マドカは私が昔あいつと遊んでいた時には見たことが無いわ。前に聞いたら生き別れた妹だって、言ってたからそれで初めて知ったのよ」
そうなんだ。と簪は呟き、仲の良い兄妹で羨ましいと思ってしまった。
「そうだ、簪。この後暇?」
「え? う、うん特にすることは無いけど。どうして?」
「レゾナンス近くに新しいケーキ屋が出来たの知ってる? あそこのケーキ食べ放題の券を友達から貰ってね。で、これ3人1組の券だからアンタともう一人誘って行こうかなと思ったんだけど。どう?」
簪は幼馴染の子が喜びそうと思い、鈴の提案に乗り自身の幼馴染を呼びに鈴と共にその場を後にした。
学園の門へと着いたイチカとマドカの元に一台の車が停まった。
「よぉ、お二人さん。お迎えに来てやったぞ」
そう言い運転席から顔を出したのは栗色の髪の女性だった。
「お久しぶりです、オータムさん」
「久しぶりオータム」
そう言い2人は後部座席へと乗る。
「それじゃあ出すぞ」
そう言いオータムは車を発進させ空港へと向かわせた。車の中では先日学園を襲撃してきたISについての話題が出ていた。
「で、束さんは先日襲撃してきたISについて何か言ってました?」
「……いんや、何も言ってないぜ。」
オータムは何かを隠すかのような言い方をし、イチカはそれを見過ごさなかった。
「オータムさん、何か知ってるんですか?」
「オータム、別に話してもいいと思うぞ」
イチカとマドカの言葉にオータムは深く息を吐き、答えた。
「わーったよ、話してやるよ。あの機体は1年程くらい前に俺達を襲ったISに酷似していた」
「襲った? どういうことですか?」
イチカの問いにマドカとオータムは苦虫を潰すような顔で話し始めた。
「俺達は昔『亡国機業』と言う組織に所属していた。目的はISを戦争利用しようとしている国からISを強奪だ。もちろんきれいごとな仕事じゃないことは知ってる。だがこれ以外の方法は知らなかったし、これ以外の方法はなかった。そんなある日だ、あいつ等が襲ってきたのは―――」
オータムは悔しそうな顔で思い出すように呟く。
「当時、俺達は本部で休息をとっていた時に突然攻撃を受けたんだ。勿論俺達は迎撃に出たが、強力なビーム砲を装備し、更にあちこちに組織の人間を派遣していたから本部には迎撃に出れるほどの戦闘員はいなかった。その為すぐに本部は陥落、重役のほとんどを殺されたが、俺達は何とか逃げ切ったのだが何機かに追尾され遂に追い付かれここまでと思っていた。だが突然黒色のISが何処からともなく現れ追尾していたISを撃退した。そのISが現れてすぐに人参型ロケットが現れ束が出てきたのだ。そして束は俺達3人を保護し、襲ってきた連中を仕返すために各地に隠れた工作員を集めるため束と共に行動していたんだ。」
「そんなことが」
「それでオータム。今エンシェントセキュリティー社にはどれほどの人員が集まったんだ?」
オータムは悔しそうな顔を浮かべながら息を吐く。
「まだ戦闘員と非戦闘員を合わせても半分くらいだ。しかも戦闘員だけにするとまともに戦えるほどの人数はいねぇ」
「……そうか」
マドカは仕返しはまだ無理かと思い座席に深く座り込む。
オータムはニヤリと顔をマドカに向けた。
「そう落ち込むな、マドカ。何時か俺達に攻撃した連中に報いを受けさせてやるからよ」
そう言われマドカも口元を少しだけ上げて、分かってると呟く。
「と、そろそろ空港に着くぞ」
そう言いオータムは車を空港の滑走路内へと進め、大きめの輸送機へと車をその中へと入れた。
「C-130ですか。よく手に入りましたね」
「ISの導入で、軍縮となった国から安く買い取ったってよ。因みにパイロットはウチの元工作員だよ」
そう言いながら車から降り、奥へと行くオータム。イチカ達もオータムに続き奥へと進み座席へと座る。すると機内アナウンスが流れ始めた。
『アテンションプリーズ、当機は間もなくエンシェントセキュリティー本社へと向かいます。お客様はシートベルトをしっかりと締めてください。なおシートベルトランプが消えるまでは座席から立たたないでください。センキュー!』
「……パイロットの方ってあぁ言う性格なんですか?」
イチカは困惑した表情でオータムに聞くと、我関せずと明後日の方向に顔を向け
「知らん」
とだけ呟いた。その間に機体は動き出し速度を上げ高度を上げた。イチカ達は本を読んだり椅子を幾つか倒して仮眠をとったりとエンシェントセキュリティー社到着までの時間を潰した。
そして暫くして機体の高度が下がり始めるを感じ、イチカは窓から外を見るとエンシェントセキュリティー社本社を置いている航空基地が見えた。その様は自身とマドカが出た時とは違い、様々な駆逐艦にフリーゲート艦、更に航空母艦まで置かれていた。地上には色々な戦闘機、更には戦闘ヘリまであった。
「戦闘ヘリまで調達したんですか」
「凄いね」
「お前らが居ない間に本格的なPMCとして活動を始めたからな。と言っても人員不足が問題だがな」
オータムの呟きを聞いていると、地上の一角に戦車など大型戦闘車両もあった。
「地上用の戦闘車両とかも用意したんですか」
「航空と海上だけ戦力を集結しても地上戦力が無ければ、仕事にならないからな」
そう言われイチカはなるほどと思いつつ席へと着く。そして機体は滑走路に着陸しC-130はそのまま近くの格納庫へと機体を入れた。イチカ達は機体から降り指令室が置かれている地下へと降りて中へと入ると、中にはスコールが指示を出していた。
「そうよ、南アフリカに恐らくまだ潜伏しているはずだから必ず見つけて」
『了解です。ですが……』
「分かってるわ。また殺されているかもしれないって言うんでしょ。今ここで死んでいると決めつけるわけにはいかないの。私達は一人でも多くの仲間が必要なの」
『…分かりました。全力を尽くします!』
そう言い画面に映っていた女性工作員は通信を切り、スコールはふぅ~。と息を付くように席へと座る。
「ただいま戻りました、スコールさん」
そう呼ばれ後ろにいたイチカとマドカに笑みを浮かべ出迎える。
「あら、2人とも今戻ったの? ごめんなさいね、バタバタして気付かなかったわ」
「いや、気にしないで下さい。人員が不足しているのはオータムさんから聞きましたから」
そう言いイチカとマドカはスコールが見ているディスプレイを眺める。ディスプレイには世界地図が出ており、所々に赤い点が打たれていた。
「この赤い点が亡国機業の工作員が潜伏している場所なんですか?」
「! そうよ。オータムから聞いたの?」
「えぇ。スコールさん達が亡国機業と言う組織に所属してISを正しい使い方をしない国から奪っていると聞きました。そしてIS学園で現れたIS群に襲われたと」
スコールはそう。と呟き自身の右手を眺める。
「ねぇイチカ君。この手、何処かおかしなところがあると思う?」
「? いや、特にありませんが」
イチカがそう言いと、スコールは第1関節部分を何かをすると、そっと腕を取り机の上へと置いた。
「!? スコールさんそれって…」
「えぇ。あのIS達に襲われた際に第一関節から右腕を撃ち落とされたのよ。その後博士に助けてもらった際に義手を作ってもらいこうして今も仕事が出来ている状態なの」
「そうだったんですか……」
イチカは悲観に見ているとスコールは明るい笑みを浮かべる。
「そんな顔を出さないの。別に命が奪われたわけじゃないんだから。ほら、博士にISを診せに行ってらっしゃい。今日帰ってきたのはそれが目的でしょ」
そう言われイチカとマドカは指令室を後にした。
イチカ達が出て行った後、スコールは腕をはめ直し感慨深い顔を浮かべる。
「本当にやさしい子ね。束が目を掛ける訳が分かるわ。さて……」
スコールは先ほどの顔から真剣な表情を浮かべ指示を出す。
指令室を後にして束のいる研究室へと入ると束はパソコンで何かしらの打ち込みをしていた。そして2人の気配に気づき笑顔で出迎えた。
「あ、2人ともお帰り~。何かいろいろあって大変だったみたいだね」
「えぇまぁ。束さんISの整備お願いできますか?」
そう言いイチカとマドカはISを差し出すと、束はアタッシュケースに2人のISをしまった。
「はい、確かに預かりました~。それじゃあ2人共暫く休んでいていいよ~」
そう言われイチカとマドカは研究室を出てそれぞれの部屋へと休みに行った。
イチカは部屋で少し休んだ後、格納庫へと向かうと自身のバルキリー『VF-31A2』が置かれていた。この機体だけは束以外の整備は禁止とされていたのだ。
「久しぶりだな」
そう言いイチカは機体を撫でるように触る。
「久しぶりに乗るか」
そう呟き、イチカはパイロットスーツに着替えに行く。暫くして着替え終えたイチカは機体の元へと戻ると、機体近くでパイロットスーツを身に包んだマドカが地面に座っていた。
「マドカ? 何してるんだ其処で?」
「あ、兄さん。いや、この機体って2人乗りできるんだよな?」
そう聞かれイチカは頷く。イチカはマドカはこの機体に乗りたいというのは直ぐに気づいた。
「……後ろの席に乗れ。その代わり機械には触るなよ?」
「う、うん!」
マドカは無理と断れると思っていたが乗せてもらえると嬉しくなり、普段使わない了承の言葉を出す。
そして2人はコックピットに乗り込み滑走路に出るためのエレベーターへと乗る。
「管制室、こちらデルタ2。空中散歩に行きたいから離陸許可を貰いたい」
イチカがそう通信すると、管制室にいる管制官から返答がきた。
『こちら管制室。デルタ2、空のお散歩の許可を出す。風速は5ノット、優雅な空のお散歩を楽しんできてくれ』
「デルタ2、了解」
そう言いイチカはスロットルを踏み込み、バーナー全開で滑走路を走り空へと上がった。
「ひゅー。良い飛び方だな、あのパイロット」
戦闘機のメンテナンスをしていた整備員の一人がそう呟くと、周りにいた整備員たちも頷いた。
「あぁ、まるで風に乗ってるみたいだったぜ」
空へと上がったVF-31A2は雲の上辺りまで上がっていた。
「す、凄い。此処までISで上がったことなんかない」
「そりゃあこの機体だったらこのまま大気圏を突破して宇宙でも活動できる機体だからな。お前が着ているスーツが俺と同じものだったら宇宙に上がれたんだがな」
「そ、そうなのか!?」
マドカは後ろから目を輝かせていた。
「さて、そろそろ帰るぞ」
そう言いイチカは基地へと帰ろうとしたところでマドカがある提案を出してきた。
「兄さん、最後に戦闘機の何か技を見せてくれないか?」
そう言われイチカはふむ。と考え込み、頷く。
「分かった。だが余りやりすぎるとお前の体に負担が掛かるから簡単な技だけな」
そう言いイチカは操縦桿を握りしめ、機体を急速反転させ降下した。
「うおっ!」
マドカは突然かかったGに驚きつつ持ち手をしっかりと握りしめる。イチカはそのまま海面まで降下し機体上部を一気に持ち上げ、海面擦れ擦れを飛行する。
「うおっと!? す、凄い」
マドカは放心したように呟き、イチカはそのまま基地へと帰還した。帰還し、機体を地下の格納庫へと仕舞い、機体から降りたイチカとマドカはそのまま部屋へと帰ろうとした時、マドカは興奮したように話しかけてきた。
「兄さん、今日は楽しかったぞ! またアレに乗せてくれ!」
「別にいいぞ」
そう言うとマドカはやったー。と手を高らかに上げ、イチカは女の子らしい所もちゃんとあるんだなと思いつつマドカと共に部屋へと帰って行った。
GWが終わり、イチカとマドカは本社を後にし学園へと戻ってきた。教室へと入ると既に何人か教室におり、簪も既に教室で本を読んでいた。
「おはよう簪さん」
「あ、おはようイチカ君、マドカちゃん」
イチカとマドカは簪と談笑していると、一人の生徒が会話に入ってきた。
「ねぇねぇ今職員室で聞いたんだけど、転校生が1組に来るんだって」
「転校生? また珍しいな」
そう言っているとチャイムが鳴りそれぞれ席へと着く。
そして教室内にエリシアが入ってきた。
「はぁ~い、皆おはよう。それじゃあSHR始めるわよ」
そう言いエリシアはSHRを始めた。
そしてSHRを終えた後、エリシアは教室を出ようとしたところで、ある事を思い出し体をもう一度生徒達へと向けた。
「多分もう知ってると思うけど1組に新しい生徒が2人ほど来ているらしいわ。興味があったら見に行ってみたら」
そう言い教室から出て行ったエリシア。暫くしてイチカのスマホに一通のメールが届き差出人を確認すると、エリシアからだった。
「えっと何々、『転校生の一人が男に見せた女だから注意するように。詳細は添付した資料を確認するように』……なるほどね」
そう呟き、イチカは嫌だ嫌だと思いながらスマホを仕舞った。
次回予告
教室で本を読んでいると金髪の男子が現れ、挨拶してきた。イチカは適当に挨拶を返し終了した。そして放課後寮の部屋へとマドカと帰るときに、今度は銀髪の小さな少女が現れた。そして織斑一夏じゃないのかと聞いてくるが、知らないと言いその場を去って行った。
次回転校生~面倒このうえなし~