歌と共に舞うひと夏   作:のんびり日和

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28話

「―――では、これにて本日の訓練は終了とする。 解散!」

 

そう教官の声が宿舎前で響くと、宿舎前に居たオペレーター達は疲れ切った表情を浮かべながらもタオルを肩にかけたりその場にへたり込み、息を整える者達で溢れた。そんな中、鈴はと言うと、疲れ切った表情を浮かべながらふらつく足を抑えながら、部屋へと戻っていく。

 

「あぁ~~~。そこそこ鍛えているから付いて行けると思ってたけど、まだまだみたいね」

 

そう零しながら部屋へと戻ってくると、着ていた服などを脱ぎ風呂場でシャワーを浴びに向かう。

 

数分後

 

「――――さぁて汗も流したし、食堂行って何食べよっかなぁ」

 

シャワーを浴び、服を着替え終えた鈴は食堂へと入ると、余り人は居らず何でだろうと首を傾げる。

 

「何で、こんなに人が少ないのかしら?」

 

「ん? おぉ~、君か」

 

そう声を掛けられ鈴は振り向くと、其処には教官が立っており鈴はこんばんわとあいさつする。

 

「あの、なんだか食堂に居る人が少ない気がするんですが……」

 

「あぁ、先程招集が掛けられて基地に居たオペレーター達は会議室に行ったんだ」

 

「そうなんですか。……もしかしてイチカもその招集に?」

 

「ん? メルダースか? 彼には掛けられていない。仮にも彼は世界初の男性IS操縦者だ。それに、君や彼それとマドカはまだ子供だ。だから汚れた戦場に行くのは俺達大人だけでいい」

 

そう言い教官はじゃあ俺は部屋に帰ると言って食堂から去って行った。鈴はその背中を見送りながら、訓練している最中に見せた厳しい顔ではなく優しい顔を見せた事に少なからず驚いていた。

 

「鬼軍曹にも仏の顔ってやつ?」

 

そう呟くと、お腹から腹の虫が鳴り響いた。

 

「突っ立ってても仕方がないわね。さて、ラーメンラーメンと」

 

そう言いながら鈴は食堂の中へと入って行き、何時もと変わらないラーメンを注文する。

 

受け渡し口でラーメンとチャーハンのセットを受け取った鈴はスカスカの食堂の何処で食べようと思い辺りを見渡していると、海が眺められる窓際の席で一人眼鏡を掛けながら読書をしている一人の女性が居る事に気付き、傍へと近寄る。

 

「えっと、ちょっといい…でしょうか?」

 

「ん? あら、あなたは確かイチカの」

 

声を掛けられた女性、美雲は読んでいた本から目を外し顔を上げるとお盆を持った鈴がおり、笑顔で応対する。

 

「何か用かしら?」

 

「えっと、向かいの席に座らせてもらってもいい…でしょうか?」

 

鈴は年上か分からず、慣れない敬語でそう聞くと美雲はえぇ、どうぞ。と言い向かいの席に手を差し出した。

 

「ありがとうございます」

 

「ふふふふっ。敬語、慣れてないなら無理して使わなくても良いわよ」

 

美雲はそう言うと鈴は、照れた表情で頭を掻きながら、それじゃあ止めるわ。と言いラーメンを食べ始めた。勿論ラーメンが美雲の方へと飛んで行かない様に。

そしてあっと言う間に鈴はラーメンとチャーハンを平らげた。鈴自身何時の間に食べ終えたのかしらとほぼ無意識に食べていた。

 

「凄い食べっぷりだったわよ。そんなにお腹空いていたの?」

 

美雲はクスクスと笑いながら聞くと、鈴はあはははは。と苦笑いで答えた。

そして鈴は食後のお茶を貰って来て席で海を眺めたり、チラッと美雲の方を覗いたりする。

 

「何か聞きたいことでもあるの?」

 

「ッ!?」

 

美雲は本から目線をはずさずそう聞くと、鈴は少し驚いた表情を浮かべる。

 

「何で気付いたの?」

 

「そりゃあチラチラとこっちを何度も見ていたら気付くわよ」

 

そう言い本から顔を上げ、眼鏡をはずす美雲。

 

「それで、何か聞きたいことがあるんじゃないの?」

 

「…その、貴女とイチカが付き合った経緯教えてもらってもいい?」

 

鈴は失恋したとはいえ、どうやって2人は結ばれたのか気になりこうして聞いているのだ。

 

「そうね。すこし昔話でもしましょうかしら」

 

そう言い美雲は懐かしむように語り出した。

 

「私とイチカが初めて会ったのは、ある料理店なの。友達とそこにご飯を食べに行った際にイチカと会ったの。それから暫くしてイチカが今の義父の子供になってデルタ小隊、つまり今イチカが所属している部隊に配属されたわ。そして月日が流れていく中、イチカは強くなっていった、そんなある日イチカにとって兄貴的な存在だった仲間が亡くなったの」

 

「亡くなった…。戦死と言う事ですか?」

 

「えぇ。しかもイチカの目の前で」

 

美雲の口から出た言葉に鈴は言葉を失った。

 

「……」

 

「それから暫くイチカは塞ぎ込む様になった。……イチカが塞ぎ込んでいた姿を見た私は、最初自分でも分からなかったけど、彼を抱きしめて慰めていたの。どう声を掛けてあげたらよかったらいいのか分からなかった私は、貴方だけの責任じゃない。あの場に居た全員が責任を感じている。もし辛く押しつぶされそうなら、私が貴方を支えてあげるから。そう言って彼を抱きしめたの」

 

美雲はその時の光景を思い出しながらそう呟いた。鈴はそうなんですか…。と呟き自分では恐らくできない。そう感じた。

鈴自身、IS学園に通い始めて命の危機を感じる様な出来事は何度もあった。だが、イチカはそれ以前から命の危機を何度も感じながらも戦場に立っていたかもしれない。そう考えれば自然とこの2人が惹かれ合うのは当たり前だ。

 

「そうだ鈴さんとイチカの出会い、私にも教えてもらってもいいかしら?」

 

「え? あたしとイチカの出会い?」

 

美雲からの突然の問いに鈴は首を傾げるも暫くして語り出す。

 

「あたしとイチカが初めて会ったのは、私が小学4年の頃。父の仕事の関係で日本に来た際転校した先にイチカが居たの。当時周りから可笑しな日本語で喋っているあたしはいじめの対象にされていたの。けど、イチカがその苛めていた奴らを二度と私を苛めない様にしたらしいの」

 

「一体どうやって?」

 

「友達から聞いた話じゃ、イチカと友人何人かとそのいじめっこグループとで殴り合いをしたらしいの。結果はイチカ達の勝ち。勿論学校じゃあ問題になりそうだったけど、いじめっ子グループにやられていた被害者たちが一斉にイチカ達の味方になってその親達もイチカ達の味方になったの。更にウサギって言うハンドルネームで学校の掲示板にいじめっこグループの住所やら家族構成が載せられたらしいのよ。結果学校に居られなくなったいじめっ子グループとその家族は逃げる様に引っ越していったのよ」

 

その話を聞いた美雲は、昔から色々やんちゃさんだったのね。とイチカの過去を知りクスクスと笑う。

 

「その頃位だったわね、あたしがイチカに一目惚れしてたのは」

 

鈴はそう零し、お茶に口を付ける。美雲はえっ?と少し心配とした顔を浮かべた。イチカの事がまだ好きなのではと。

 

「あ、心配しなくても大丈夫よ。あたしの初恋はもう終わったから。今はアイツに付き合っておけばよかったって後悔させる位綺麗な女性になろうって決めたから」

 

そう言い鈴は笑みを浮かべて席を立つ。

 

「さて、それじゃああたしは部屋に戻るわ」

 

「そう。それじゃあ私も部屋に戻るし一緒に戻りましょうか」

 

そう言い美雲も席を立ち食堂から出た。暫く廊下を歩いていると角からイチカが出てきた。

 

「ん? よぉ、もう夕飯とったのか?」

 

「あたしはね。そう言えば美雲は?」

 

「私はまだよ。今日はイチカが手料理振る舞ってくれる約束でしょ?」

 

「わかっているって。そう言えば鈴、お前明日帰国するんだろ?」

 

「えぇ。そうだけど、なんかあんの?」

 

「いや、偶には弾にも会いに行ってやれよって伝えたくてな」

 

そう言うと鈴は呆れた様な溜息を吐く。

 

「そう言うならアンタもでしょうが…」

 

「いや、俺はもう別名「名前が変わってもアンタはあいつ等の友達でしょうが。時間があったらアンタも会いに行ってやりなさいよ」……あぁ、分かったよ」

 

「じゃああたしは明日早いからね、もう寝るわ。それじゃあ!」

 

そう言い鈴は手を振って部屋へと戻って行った。

 

「…明るい幼馴染さんね」

 

「あぁ、俺と他の友人グループの中で一番明るい奴だよ。落ち込んだ奴が居ればすぐに明るくさせるいい奴だよ」

 

そう言いイチカは美雲と共に部屋へと戻って行った。




次回予告
長い夏休みは終わりイチカ達は学園へと戻って来た。そしてスコールからある女性に会いに行って欲しいと頼まれていたイチカはその女性が居る場所へと向かった。
次回

二学期始動!
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