イチカがデルタ小隊に入隊して2年が経った。その間に色々な出来事があった。惑星アル・シャハルでヴァ―ル発症者による暴動が起きた際、一人の少女を助けるためにVF-171を扱った、ハヤテ・インメルマンのデルタ小隊の入隊。そしてハヤテが救助した少女がフォールド細菌を抑制出来るフォールドレセプターと言う受容体を持っていて、ワルキューレに新たに入団したフレイア・ヴィオン。
そして、惑星アル・シャハルで初めて遭遇したアンノウンの正体、ウィンダミア王国との戦争。
戦争が始まって暫くしてから、デルタ小隊のエースパイロットだったメッサーの死。メッサーの死はデルタ小隊のみならずワルキューレ達にとっても悲しい別れだったが、それでも全員前へと進んだ。
そこからは更に苛烈を極め、遂に惑星ラグナから撤退を余儀なくされた。だがそれでもデルタ小隊、そしてワルキューレ達は前へと進むことを止めなかった。そして遂に惑星ラグナの奪還、そして終戦をもたらすことが出来た。
「はぁ、はぁ、はぁ」
終戦から数日が経った今も、街は倒壊している建物が目立っていたが、それでも着々と復興が進んでいるのが見て取れた。そんな中イチカは夜中にも関わらず、ある場所へと向かって走っていた。そして走り続けて到着したのが街が一望できる展望台だった。展望台には一人の女性が海風を受けた髪を靡かせながら立っていた。イチカは女性に息を整えながら近付く。
「すいません、お待たせしました」
イチカがそう言うと女性が振り返った。
「それで、イチカ。私を此処に呼んだ理由は何かしら?」
女性がそう質問すると、イチカは大きく鼓動する心臓を落ち着かせながら自分の想いをぶつけた。
「美雲さん、ずっと前から貴女のことが好きでした。だから俺と付き合ってください!」
そう言いイチカは思いっきり頭を下げ、手を前へと差し出す。イチカの前にいた美雲は驚いた表情を浮かべるが、直ぐに悲しそうな表情を浮かべる。
「……駄目よイチカ。私は普通の人じゃない。だから貴方の言葉は嬉しいわ。けど私じゃなくマキナ達の方がきっと貴方には似合うはずよ」
美雲の言葉にイチカは反論した。
「そんなことを言わないでください! 例え貴女がクローンだろうが何だろうが俺はそんなこと関係ない。ただ美雲・ギンヌメールと言う一人の女性に恋をしたんです!」
「!?」
イチカの詞を聞いた美雲は驚きつつもそれでもと言い、断ろうとする。
「……それでも、それでも! 私と貴方とでは……」
「……美雲さん」
胸の前でギュッと手を握り涙を零す美雲を、イチカはそっと抱きしめた。美雲は突然イチカに抱きしめられたことに驚く。
「以前、俺がメッサーが死んだのは俺のせいだと自責していた時に、貴女はこうして俺を慰めてくれましたよね」
メッサーがデルタ小隊を助けるために、自分のバルキリーを駆使して白騎士と壮絶なドッグファイトを繰り出している時、イチカはその場所からほど近い場所で同じように敵とドッグファイトを繰り出していたのだ。そしてイチカが敵を倒したと同時に、メッサーが死んだのだ。それ以来イチカは、自分がもっと早く敵を倒してさえいたなら、メッサーは死なずに済んだんだ。と、自責の念に押さえつけられていたのだ。そんなイチカを救ったのは、他ならぬ美雲だった。ロッカールームで落ち込んでいたイチカを、そっと美雲は抱きしめ――――
『貴方は十分戦った。けどあなた一人の責任じゃない。皆それぞれ責任を感じているの。だからあなた一人だけじゃないわ』
その言葉を聞いたイチカは目元から涙が溢れ、溜まらず声を荒げながら泣いてしまった。美雲はただ黙ってそっとイチカを抱きしめていた。
それからイチカは立ち直り、メッサーの次に凄いパイロットになると目標を掲げ、前進しだしたのだ。そんなイチカは何時の間にか美雲と一緒にいることが多くなり、段々と美雲と一緒にいると胸の高鳴りを覚え、自分は美雲に恋したのかと思ったのだ。勿論美雲も同じ感覚を持ち始め、歌った時とは違う胸の高鳴りに不安を覚え、ワルキューレメンバーのカナメに相談したら――――
『美雲、それってもしかしたら恋かもしれないわよ』
そう言われ、初めて感じたこの胸の高鳴りが恋だと知らされ、美雲は悪くないと思った。だがウィンダミア王国の元宰相ロイド・ブレームに捕まった時に、自身がクローンの人間だと知らされた。その結果、自分の今思っているこの恋は紛い物だと思い込んでしまった。それは助けられた後も、心の中で引っかかっていたのだ。
「……確かにそんなことがあったわね」
「美雲さん。貴女が普通の人じゃなくても、ちゃんと心で感じられたなら、貴女は歴とした人です。だから辛いことがあっても、俺があなたの傍で支え続けます」
イチカの真剣みを帯びた目を見て美雲は、心の中に仕舞っていた思いが沸々と込み上がってきた。
「……私歌を歌うくらいしか、得意なものは無いわよ?」
「それでもいいです」
「料理とかあまり得意じゃないわよ?」
「俺が時折教えてあげます」
「こう見えても嫉妬深いところがあるわよ?」
「どんとこいです」
美雲から投げられる質問に、イチカは胸を張ってこたえる。
「それじゃあ最後に、……こんな私でもあなたの傍にいてもいい?」
「勿論です」
その言葉を聞いた美雲は胸にあった手をイチカの腰に手を回す。
「ありがとう……イチカ。そして大好きよ」
「俺も貴女のことが大好きです。美雲さん」
そう言って二人はギュッと抱きしめ合っていた。
数分程抱きしめ合った二人は、自宅へと足へ向ける。イチカは美雲を家へと送り届け、自分も家へと帰ろうとした。
「それじゃあ、美雲さん。また明日」
「えぇ、また明日ねイチカ」
イチカは頬を赤く染めながら家へと帰り、美雲も頬を赤く染めながら家へと入ろうとした時、2人の女性が家の柱の影から現れた。
「マキナ、それにレイナも。どうしたの2人ともこんな時間に?」
出てきたのはマキナとレイナだった。
「今日、いっちーが走って何処かに行くのを見つけちゃってね」
「それで、もしかしてっと思って、後を付けたの」
美雲は2人の言動から、自分とイチカの告白現場を目撃されたと分かった。
「……そう」
「ねぇ、くもくも」
マキナに呼ばれ、美雲はマキナを見ると、マキナは挑戦的な顔つきで高らかに宣言した。
「いっちーとくもくもが付き合っても、絶対にいっちーは私達が奪うからね!」
「負けない!」
2人の宣言を聞き、美雲は2人もイチカに惚れていると分かると、笑顔になる。
「そう簡単にイチカは渡さないわよ。イチカと私の絆は誰にも切れないんだから」
「言ったな~! 絶対に負けないからね!」
「ワルキューレのメンバーでも、恋愛事ではライバルだから」
そう言い、互いに健闘し合う為、握手を交わす。
だが全員知らなかった。運命の時が刻々と近付いていることに
次回予告
デルタ小隊に珍しく、哨戒任務が回ってきたため全員出撃する。そんな時、謎のエネルギー反応を感知したイチカはその場所へと向かう。するとこの世界に来た時と同じ穴が突如出現しイチカはその穴へと吸い込まれる。そしてその穴の先は自分がいたISの世界だった。
次回帰ってきてしまった世界~この世界に帰ってくるって、不幸すぎるだろ~