~IS学園・地下指揮所~
地表にアラド達と美雲達、そしてエンシェントセキュリティー社から来たオペレーター達を機体に残ってもらいイチカとマドカは鈴達と共に指揮所へと報告に赴いていた。
その時、ジェフ・ドースの宣戦布告が流れイチカ達は険しい顔を浮かべていた。
「真の平和だと。ふざけやがって」
「全くだな、兄さん」
イチカ、マドカの険しい顔に鈴達は困惑の表情を浮かべる。
「ねぇ、イチカ。さっきの奴が今回の黒幕なの?」
「あぁ、奴だ」(だが、まだその後ろにまだいるはずだ。ヴァルキリーを製造できる技術を奴が持っているとは思えないし)
鈴の問いに応えながらイチカはジェフが本当にヴァルキリーを開発したのか疑っていた。
全員がジェフの宣戦布告に顔を歪めていると、教師の一人がエリシアの方に顔を向ける。
「エリシア先生、エンシェントセキュリティー社から通信が入ってます」
「繋いでちょうだい」
そう言い通信を繋げると、表情が険しいスコールがモニターに映った。
『突然御免なさいね、エリシア』
「いえ、構いません。それでどう言った御用でしょうか?」
『メルダース兄妹を至急エンシェントセキュリティー社に帰還させる為よ。今回の1件、恐らく大きく荒れるかもしれないから、デルタ所属の彼らが必要になる。その為よ』
「そうですか。……私は構いませんが、学園長はそれでよろしいですか?」
エリシアは部屋に居た学園長に問うとコクンと頷く轡木。
「今は非常事態ですが、致し方がありません」
「分かりました。ではメルダース兄妹、それとラブリスさんを本部に戻します。彼女もエンシェントセキュリティー社の一員ですので」
『ありがとう。それじゃあ3人共直ぐに戻って来てね』
そう言い通信は切られた。
「それじゃあメルダース兄妹、それとラブリスさん。3人はエンシェントセキュリティー社に戻ってちょうだい」
「「「了解」」」
敬礼で返事後、イチカ達は指揮所を後にした。
外へと出た3人。イチカとマドカは自分のバルキリーに乗り込みラウラはエンシェントセキュリティー社のヘリへと乗り込みIS学園から飛び立っていった。
飛び去って行くバルキリーの背を千冬は何とも言えない表情で見送っていると、突然ポケットに入れていたスマホが震える。
「? 誰だ『やぁ、織斑千冬。元気してた? いや、してないか。アッハハハハ!』た、束!」
電話に出ると相手は自分を馬鹿にした様に話す束で、千冬はスマホを握りしめる力を強める。
「何の用だ?」
『ん~? なぁに、何時までもいっくんにこだわっているお前にそろそろ自覚させないと、いっくんの邪魔ばっかりしそうだからねぇ』
「自覚だと?」
『そう、自覚。お前、未だにいっくんの事自分の家族だって言ってるんだろ?』
束の問いに当たり前だ!と心の中で思いながら続きを聞く千冬。
『けどさぁ、それ本当に家族として見てる?』
「……何が言いたい?」
『つまりさぁ、お前。
まるで機械の様に淡々と言った口調で告げる束に千冬は奥歯を噛み締める。
「貴様が言えることか! 箒の事を何も『おいおい、あれは自分から突き放してたんだよ? しかも考えることを止め恨む対象であり、都合の悪い時に使える姉としか思ってない。そんな奴、私家族だと思ってないもん』」
淡々と箒の事を家族として見ていないと告げる束に、千冬は戦慄する。
『束さんの家族事情とかは置いといて、少し問題を出そうじゃないか?』
「問題だと?」
『そう、いっくんに関する問題。束さんの出す問題を多く答えられたら、お前はちゃんといっくんの事を見ていたって理解してあげる。けど、答えが少なければお前はちゃんと見ていないって言う事』
そう言い束は問題!と声を上げながら出す。
『いっくんが小学生の頃、作文に書いた将来の夢は?』
「……強い武人」
『ブゥ~、はっずれぇ! 正解は宇宙飛行士でしたぁ!』
「そ、そんな訳が『ホントですぅ。大体今時強い武人とかなるとか何時時代の人だよ』くっ!」
『はい次ぃ! いっくんが初めて篠ノ之道場に来たのはどういう理由?』
「け、剣道を習うため」
『はい残念でしたぁ! 正解はお前が忘れた道具を届けに来たからでしたぁ!』
ハズレと束から告げられる千冬は奥歯を噛み締める。
「さっさと次の問題を出せ!」
『何イライラしてんのさ? もしかして全然答えられないから?「いいから早く出せ!」はいはい、じゃあ次の問題!』
そう言い束は問題を出す。
それから幾分か経った。
『はい、残念でしたぁ! 正解は五反田食堂の店主直伝の肉豆腐でした! これで19問連続不正解ぃ!』
またハズレと言う言葉を聞き千冬の心は既に折れかかっていた。
「……」
『おやおや、もう折れかかっているね。まぁ19問も連続で外してるからねぇ』
そう言いながら束は最後の問題!と声を上げる。
『お前はいっくんの事、ちゃんと見てた?』
最後の問題、千冬は口を開き見ていた。そう言おうとするも口は開くが、言葉が出ない。普段なら出るはずの言葉が出ない。
「あ……え……」
『3…2…1…0! はい、時間切れぇ! おめでとぉ、全問不正解!』
束の馬鹿にした言い方に千冬は怒鳴る気力もなかった。
『お~い、聞こえてるぅ? まぁ怒鳴る気力も湧かないかぁ。自分がどれ程いっくんの事を見ていないか、分かったんだから』
「……お前は」
『ん~?』
「お前なら、…全部答えられるのか?」
『当たり前じゃん。誰からも見向きもされない、姉のお前にもちゃんと見て貰えない。そんな可哀想ないっくんをこの束さんが突き放すと思う? どんな小さなことでも、どうでもいい事でも束さんはちゃんと聞いてあげたし、見てあげた』
束は誇らしそうに、そして懐かしそうな口調で言う。
『これで分かっただろ? お前は結局何もいっくんの事を見てあげてない。ただ繋がりしか見ていない。家族ごっこしか出来ないお前とは違い、アラドさんはちゃんといっくんの事をまるで本当の息子の様に接している。あっちの方が本当の家族だと思えるほどにね』
「……」
束の言葉に千冬は何も返さずただ下ばかりを見つめる。
『……それと今日いっくんに言われた事、お前はどうするんだよ?』
「……私が白騎士であることか?」
『そう。あの時私が頼んだのはミサイルの撃墜のみ。けど、お前はそれだけじゃなく戦闘機やイージス艦も撃墜した。多くの人間を殺したお前は、どう責任を取る? 一応言うけど、こっちはあの時お前との会話内容とか全部録音してある』
そう言われ千冬は近くにある壁に背を預け崩れる様に座り込む。そして空模様が黒くなり始める。
「……公表しろ。そう言っているのか?」
『別に。お前が公表しようがしまいが束さんは知らない。それじゃあばいび~』
そう言い束は電話を切った。千冬は座り込んだ状態で地面にぽつぽつと雨が落ち、地面が濡れていく様子を見ている事しか出来なかった。
次回予告
エンシェントセキュリティー社に帰還したイチカ達。現状の戦力をスコール達と共に確認し、行動を考える。すると突然一人の男性がモニターに現れた。
次回
現状確認~久しぶりだね、キャシー~