IS学園から飛び立ち暫し飛行した後、エンシェントセキュリティー社の2隻目の空母『アルバトロス』が任務を終え帰還途中だった為着艦させてもらい一同はエンシェントセキュリティー社に帰還した。
数時間後、アルバトロスはエンシェントセキュリティー社に到着し機体を降ろし地下格納庫に停めるとイチカ達は指揮所へと向かった。
道中擦れ違うスタッフ達は忙しなく動いており、所々から怒声も聞こえていた。
「なんか何時もと雰囲気が違うな」
「だな。まぁ仕方ないだろ、オグマ社が全世界に対し宣戦布告をしたんだからな」
何時もと違い慌ただしく動くエンシェントセキュリティー社のスタッフ達をすれ違いながらイチカ達は指揮所へと到着した。
「デルタ部隊、ただいま帰還した」
「ラウラ・ラブリス、同じく戻りました」
指揮官用のデスクに居たスコールに向かいながら敬礼して挨拶するアラド達。スコールも同じく敬礼で返した。
「ご苦労様。帰って来て早々に悪いんだけどブリーフィングを行うから付いて来て」
そう言われスコールの後に付いて行くイチカ達。指揮所から少し離れたブリーフィングルームに到着し中に入ると、束、ナターシャ、オータム、そしていかにも堅気の親父と言った風貌の作業着を着た男性が居た。
「お待たせ、それじゃあブリーフィングを行うから皆デスクの周りに集まって」
そう言われ部屋の中央に置かれているディスプレイデスクの周りに集まる。
「それじゃあ単刀直入に言うけど、我がエンシェントセキュリティー社は今回のオグマ社の宣戦布告に対し真っ向から対立するつもりでいるわ」
スコールの言葉に皆、返事は無いが予期していた様な表情だけは浮かべていた。
「彼等が行おうとしているのは真の平和の為に集うように言ってるけど、実際は力による支配。そんなのは平和とは言わない」
「だな。で、戦う理由は分かった。それで兵力はどうするんだよ、スコール?」
オータムは腕を組みながら聞く。スコールは目線を男性の方に向けた。
「ラッセル。現状のエンシェントセキュリティー社の戦力は?」
「……正直言って無謀に近い。こっちの戦力と言えば航空パイロットがデルタを含めて50人居るかいないか。ISのパイロットは現状スコールを除いて12人。対して向こうは新型の戦闘機、更に例の緑色の戦闘機、ドラケンだったか? まぁ簡単に言えば対IS兵器が大量にある。明らかに戦力的に向こうの方が多い」
「……地上の部隊は「相手は空だ。地上から攻撃できるのは限度がある。それに…」それに?」
ラッセルはしかめっ面を更に険しくし、ディスプレイの画面を変えた。
ディスプレイに映っているのは、ある国に出現したドラケンが上空に向かって飛んで行く映像だった。
ドラケンは真っ直ぐ空へと向かって飛んで行き遂に見えなくなってしまった。
「向こうは多分、宇宙に行けるような機体だ。そうだろ、デルタのリーダー?」
「……あぁ、行ける。だから実質戦力になるのは」
「デルタ部隊の6機、そしてIS部隊の12人のみ」
悔しそうな表情を浮かべデスクに置いた拳を力強く握りしめるスコール。すると束が突然
「いや、もっと増やせるよ」
「「「「「はぁ?」」」」」
突然増やせると言った束の言葉に部屋に居た全員が口を開け束の方に顔を向ける。
「どう増やすのよ。宇宙で活動できる兵器なんて、この世界の何処にも無いわよ」
「甘いなぁ、スーちゃんは。無ければ作ればいい。そして、束さんはそれを成功させたのだぁ!」
人差し指を天井に向かって突き出してどや顔を決める束に、全員怪訝そうな顔を浮かべていた。
「向こうが擬似コアを使ってヴァルキリーを飛ばしているなら、こっちも同じようにすればいい」
「束さん、どう言う事ですか?」
束の言葉に全員首を傾げる。
「だからそのままの意味だよ。今回の首都防衛で意識を取り戻して航空基地に着陸したヴァルキリーあるじゃん」
「あぁ、ありますね。……まさか」
「そう、そのまさか」
そう言い束はポケットからある物を取り出しデスクに置く。それは野球ボールほどの大きさのもので光り輝いていた。
「博士、まさかこれって」
「そう、今回着陸したヴァルキリーに装着されていた擬似コア」
「「「「!?」」」」
突然束が取り出したものが、今回の騒動の原因とされる擬似コアでしかも、なんの悪びれもしない感じで出したのだ。
「ちょ、ちょっと勝手に持ち出してきたの!?」
「だってぇ、危ない代物なんだよ? これが日本政府の連中の手に渡ってみなよ。あいつら喜んで大量生産するよ」
そう言われ、何とも言えなくなるスコール達。
「えっと、Dr篠ノ之。もしかして他の機体のも?」
「うん。着陸した機体全部抜いてきた」
そう言われスコールは、若干眩暈を引き起こし顔に手を当てる。
「もう、勝手に行動しないでよ。バレたらどうするのよぉ」
「大丈夫、大丈夫! 証拠なんて何にも残ってないし」
そう言いながら笑う束に全員ガックシと肩を落とすのであった。
「それじゃあ、話を戻すわよ。束、その擬似コアをどうするの?」
「簡単だよ。これを私が模倣してこれと同じような物を作る。そしてそれを既存の戦闘機に組み込んで宇宙でも戦えるようにすればいい。また戦闘機を作るとなると時間もかかるからね。断然こっちの方が早い」
そう言われ、確かに。と納得の表情を浮かべる。だが、ラッセルだけは違った。
「おいおい篠ノ之博士。機体はそれで何とかなるが、パイロットはどうする? 今うちに居る連中だけじゃあ足りないだろ」
ラッセルの言葉に、束の口が尖る。
「其処なんだよねぇ。無人機にするっていう手もあるんだけど、データ採取を行ってあらゆるパターンとかを入力しないと上手くいかないから時間を要するから使えないんだよねぇ」
束の説明にまた暗礁に乗り上げた。皆そう思いながらどうするか思案していると、部屋に備えられている内線用の受話器が鳴り響く。スコールは受話器を手に取り耳に当てた。
相手は指揮所に居た通信スタッフであった。
『会議中申し訳ありません、スコール司令』
「別に構わないわ。それで、どうしたの?」
『実は、スコール司令のお知り合いと言う方から映像通信が入っているのですが、いかが致しましょう?』
「知り合い? 名前は何て言ってるの?」
『えっと、ビンセントと言っていました』
通信スタッフが言った名にスコールは若干驚いた顔を浮かべるもすぐに応対した。
「分かった。繋いでちょうだい」
『了解しました』
そう言うと部屋に備えられている壁の大型ディスプレイに一人の男性が映し出された。
『久しぶりだね、キャシー』
「えぇ、本当。久しぶりね」
スコールは画面に映った男性に向け懐かしそうな表情を浮かべていた。
「あの、スコール司令。えっと、キャシーって誰ですか? あとあちらの男性は?」
イチカ以外、他の面々も茫然と言った表情を浮かべておりスコールを見ていた。
「あ、そう言えば言ってなかったわね。私のスコールって言うのはコードネームで、キャシーは昔使っていた名前の一つ。で、画面に映っている男性はNATOの最高事務総長、『ケビン・ネイマー』。私の元夫よ」
「「「「「……はぁーー!!!???!」」」」」
スコールの淡々と言った説明にブリーフィングルームに居た全員が驚きの余り、声を張り上げた。
「も、ももも、元旦那!?」
「け、結婚していたのか、スコール!?」
「キャシーって名前、初めて聞いたぞ!?」
古くから付き合いの長いマドカやオータム、そしてラッセルはそう声を漏らし、イチカ達は声を上げた後茫然と言った表情を浮かべていた。
「随分昔の事よ。まだ若かった頃に彼と出会って恋に落ちて結婚。けどお互い仕事で忙しくてまともな結婚生活が出来なかったから、円満離婚したのよ」
懐かしそうに説明するスコールにケビンも懐かしいな。と呟きながら同じ表情を浮かべた。
「それで、わざわざ貴方が此処に連絡した理由はなに?」
『うむ、君は例のオグマ社の放送は見たかね?』
「えぇ。というよりも世界中の電波をジャックして放送していたのよ? いやでも見るわよ」
そう言いため息を吐くスコール。
「それで、もしかしてそれが関係しているの?」
『あぁ、私から君達エンシェントセキュリティー社に依頼を出したい。オグマ社の暴挙、これを止めて欲しい』
ケビンは真剣な表情でスコール達に顔を向けた。
「……私達だけで止めろ。そう言っているの?」
『無論君達だけじゃない。NATOも参加するつもりだ。彼等の隠れ家を見つけたらすぐにでも其処に「残念だけど、彼等はもしかしたらこの地上に居ないかもしれないわ」どう言う事だね?』
ケビンはスコールから地上にはもういないという言葉に首を傾げた。スコールは今まで話し合っていた事をケビンにも話すと、ケビンは険しい表情を浮かべる。
『なるほど、彼らは地上ではなく宇宙に居る可能性がある。そう言う事かね?』
「恐らく。けど、問題は本当に宇宙に居るかどうかよ。そんな宇宙基地みたいな物、存在するはずが『いや、一つだけある』どう言う事?」
『これは極秘事項に当たるものだが、もはやそのようなことを言っている猶予はないし、説明するよ』
そう言いケビンはあるデータをディスプレイ上に出した。
『これは随分昔、私がNATOの事務総長になる前に計画されていた物だ。プロジェクトの内容はこの先の未来、万が一宇宙で戦争が勃発した時にそれを止める基地が必要と言う事で宇宙に基地を立てる計画が立案、実行された。当時のNATO所属の各国が技術を出しあって建設が行われていたが、計画は途中で中断。理由は計画されていた予算よりもさらに大幅に超える事が後から分かった為だ。そして途中で中断された宇宙基地はその後放棄されたんだが、3年程前から行方が分からなくなっている。恐らくその基地を拠点にしているんだろう』
ケビンの説明に全員、その基地か?と思い考えこむ。
「……可能性が出てきた以上、やるしかないわね」
そう呟きスコールは決意した顔を浮かべ、部屋に居た全員を見渡す。
「これよりエンシェントセキュリティー社は戦闘準備態勢に移行。デルタを含む航空部隊及びIS部隊は宇宙に上がる。束、例の件しっかり頼むわよ。人員はウチとNATOの人員で「まだ問題があるぞ、スコール」……まだ何があるのラッセル?」
「戦闘機をどうやって宇宙にあげる? それに燃料の問題もあるぞ」
「いや、燃料は擬似コアから供給すれば問題無いよ。けど流石に戦闘機を宇宙にあげるのは難しいかな」
ラッセルの問題、燃料は問題無しと答える束。だがもう一つの輸送方法だけは難色を示していた。
『アメリカのフロリダ州にある試作のマスドライバーはどうだろう? 確か大型の宇宙輸送機もあったはずだ』
「あぁ、あれ。使えるの?」
『整備は必要だろうが、早急に準備するよう伝える』
「束、どう言う物か知ってるの?」
「結構前に実験用に造られていた物で、大型宇宙輸送機もその実験用の為に建造された物だよ。あの大きさなら1機に15機は入るはずだよ」
「……15機。それが何機あるの?」
「確か5機ほどだったかな? 何機か実験用って事で製造して、それで2機ほどが本格的に使用を考えて造られたけど、マスドライバー計画が中止になって放置されてる」
思い出しながら話す束にスコールはそう。と返し、ケビンの方に顔を向ける。
「ケビン、直ぐに動かないといけないから此方で選抜した航空部隊を送るわ。それと整備の為に博士も送るわ」
『分かった。すぐにNATO所属国に緊急招集を掛ける』
そう言ってケビンとの通信は切れた。
「…忙しくなるわ。皆、頼むわよ」
「「「「了解」」」」
そう言いそれぞれ準備の為部屋から出て行く。
次回予告
エンシェントセキュリティー社に依頼後、ケビンはNATO所属国を招集しエンシェントセキュリティー社と共にオグマ社を止めることを伝えた。
だが各国高官は難しい顔を浮かべていたが、ある国が名乗り上げた
次回
緊急招集