歌と共に舞うひと夏   作:のんびり日和

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50話

突如として現れたウィンダミアきってのエース、白騎士。

デルタ部隊の面々は険しい顔を浮かべていた。

 

「まさか、生きていたのか?」

 

『いや、そんなまさか!』

 

『兎に角、今は敵だ。 急いで撃墜しないと!』

 

イチカ達は急ぎ白騎士の後を追う。追いかけて行く中、マドカは自身のISコアに宿っているキースに話しかけていた。

 

【おい、あの機体はお前のなのか?】

 

【確かに機体は俺のと似ている。それに操縦技術も似ているが、あれは違う】

 

【どう言う事だ?】

 

【分からん。だが、確かなのはあれは風を捉えた飛び方じゃない】

 

キースの話に疑問の表情を浮かべているマドカ。すると

 

『マドカ! 背後に回られているぞ!』

 

ハヤテの叫び声にハッ!となりマドカは背後に目を向けると、白騎士の機体が迫っていた。

 

「クソッ!」

 

そう叫びスラスター全開で回避飛行に移る。

 

「マドカ! デルタ2、これよりデルタ6の援護に向かう!」

 

『デルタリーダー了解。デルタ5、お前も行け!』

 

『了解!』

 

イチカ、そしてハヤテは急ぎマドカの救援へと向かう。

白騎士の猛攻を必死に避けながらマドカは反撃しようと隙を伺うが、それが全く見えない。

 

「避けるので、精一杯だ」

 

苦渋に満ちた顔で必死に機体を操作して避けるマドカ。

 

『マドカ、俺達が引き離すから頑張れ!』

 

「兄さん。わか『ビー、ビー、ビー』ミサイルアラート!?」

 

放たれたミサイルに急いでフレアを放ち、機体を方向転換させ避けるマドカ。だが、その先を読んでいたのか、白騎士からバルカンが撃たれる。

 

「っ!?」

 

翼部分に被弾し、機動性が落ちる機体。それでも避けようとした瞬間、数発のミサイルが接近していた。

 

「不味い!?」

 

避けようとするも、間に合わずミサイルは当たろうとした。だが

 

『させるかぁ!!』

 

その叫びと共にイチカのカイロスからバルカンが火を噴き、ミサイルを破壊する。だが一発取りこぼしマドカの機体に命中した。

 

「うわぁあぁあ!?」

 

ミサイルは機体に直撃した。マドカの機体は近くに漂っていた小惑星に不時着した。

 

『マドカ!? このぉ!』

 

マドカが落ちたのを見たイチカは怒りが込み上がり白騎士にドッグファイトを挑んだ。

 

『イチカ、待て!』

 

ハヤテの制止を振り切りイチカは白騎士にドッグファイトに持ち込み、デブリを躱しつつ追いかけるが、イチカの顔は苦渋に満ちた顔だった。

 

(反応が悪い。機体が全然思うように動かねぇ!)

 

そう思いながら白騎士を追うも、思うように機体が動かない事に険しい表情を浮かべるイチカ。

すると突然白騎士の機体がデブリに隠れる様に移動する。イチカもその後を追うが、白騎士を見失ってしまう。

 

「何処に? 【イチカ、上だ!】 なにっ!?」

 

メッサーからの忠告にイチカは上に顔を向けると、その先にガウォーク形態でレーザー砲を向けている白騎士を確認した。

すぐに回避しようと機体を動かすが、間に合わず攻撃を受けた。

 

「ぐわぁあぁ!??」

 

片翼にダメージを受け飛行できなくなるカイロス。白騎士は止めとばかりにレーザー砲を向けると駆け付けたハヤテの攻撃に阻まれる。

 

『イチカ、無事かッ?』

 

「あぁ無事だが、機体はもう動かない。イジェクトしてISで『いや、その必要は無いかもしれねぇ』なに?」

 

『白騎士の奴が戦域から離脱しやがった』

 

鋭い視線を白騎士が去っていった方に向けるハヤテ。

 

「そうか。っ! マドカは!?」

 

『大丈夫だ。命に別状は無いらしい』

 

それを聞いたイチカはそうか。と少し安堵の息を吐いた。

白騎士の撤退と同時に戦っていた他のドラケン達も撤退し、残ったのは意識を取り戻し戦闘を中断したドラケンと連合軍のみだった。

戦闘終了後、遭難救助活動を始めたIS部隊は稼働しているGPSを情報にイジェクトしたパイロット達を捜索したり、機体に生存者が居ないか確認作業を行った。

今回の戦闘で連合側は15機の戦闘機が撃墜され、10人ものパイロットが戦死となった。残りの5人は何とかイジェクトに成功し宇宙空間に漂いながらも救助されたが、爆風の衝撃などで腕や脚に打撲や骨折になり医務室に放り込まれた。

 

イチカはマクロス・エリシオンの医務室へと来ており、頭や腕を包帯で巻かれベッドの上で寝ているマドカに申し訳なさそうな表情で立っていた。

そっとイチカはマドカの頭を撫で、手を降ろす。

 

「ごめんな、マドカ」

 

そう呟き、イチカは医務室から出て行きハンガーへと赴いた。そしてイチカは自身の機体の前へと着くと、機体を見上げた。

イチカの機体は右翼が真っ黒に焦げており、配線などが黒焦げになっていたりした。整備班長曰く、修理には時間を要するから出撃は無理かもしれないと。

 

「……俺じゃあ白騎士を倒せないのか?」

 

イチカは小さくそう呟き、やるせない気持ちで手を握りしめているとそっとその手を覆う手が現れた。

突然の事に驚いたイチカは顔を向けると其処には美雲が居た。その顔は悲しそうな表情だった。

 

「……マドカの事、聞いた。無事で、良かったわ」

 

「……あぁ、本当に良かった」

 

淡々と言った返しに、美雲は握っていた手を放しギュッとイチカに抱き着く。

 

「み、美雲?」

 

「イチカ、また一人で抱え込もうとしてるでしょ?」

 

そう問われイチカは「えっ?」と心臓を一瞬跳ね上げた。

 

「マドカが撃墜されたのは自分の所為だと、そう思ってるでしょ?」

 

「……そんなこと「イチカ、私の顔を見て」……」

 

イチカはそっと目線を美雲の方に向ける。其処には先程の表情とは変わり、真剣な表情だった。

 

「マドカが落ちたのは、貴方の所為じゃないわ。あの状況じゃもっと悲惨なことになっていたかもしれない」

 

「だがあの時、マドカに迫っているミサイルを全部落してさえいれば、マドカは負傷なんかさせずに「人間は完璧じゃない。出来るのは大きな被害が起きないよう抑制する事と、小さくすることくらいしかできない。完璧に被害を無くすことなんて出来ないわ」……」

 

「イチカ、メッサーの時みたく一人で抱え込まないで。約束したじゃない、一人でもう抱え込まないって。貴方の傍には沢山の仲間達が居るし、私もいる」

 

「……美雲」

 

美雲に諭され、イチカはまた一人で抱え込もうとした事を自覚し、自然と涙を零す。

 

「ごめん、また無自覚に抱え込もうとしてた」

 

「大丈夫。貴方が無自覚に抱え込もうとしても、ちゃんと私が傍で支えるから」

 

そう言い真剣な表情から朗らかな表情を浮かべ、ギュッとイチカに密着する美雲。

暫く抱き合っていた2人は惜しみながらも離れてイチカの機体を見上げた。

 

「それで、次の戦闘はどうするの? 機体もこの状態じゃあ…」

 

「あぁ、恐らく無理だ。予備の機体があるか今整備班長に聞いてもらっていて「それなら当てがあるよ、イッチー」マキナ、それにレイナ。当てがあるってどう言う事だ?」

 

二人の背後からマキナとレイナが現れて機体に当てがあると言う。

 

「付いて来て」

 

そう言われイチカと美雲はマキナ達に案内されながら格納庫奥へと案内される。そして布が被せられた機体の前へと連れて来られた。

 

「マキナ、この機体は?」

 

「何時か必要になると思ってずっと整備班の人達とレイレイとで整備、改修してたの」

 

そう言いマキナとレイナは布を捲った。

 

「ッ!? この機体は!」

 

「うん、イッチーが今必要だと思う機体だよ」

 

イチカの目の前に現れた機体。それはかつてデルタでエースと言われ、そしてイチカの兄貴分的な人物、メッサーの機体V()F()-()3()1()F()だった。

 




次回予告
新たなイチカの機体、それはメッサーの機体だった。マキナとレイナはイチカに何故メッサーの機体を渡すのか説明する。
その頃、マドカは目を覚ますが自身の怪我の状態により戦闘には参加できないことが分かり、ある決断をする。
次回
再び広げる翼

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