歌と共に舞うひと夏   作:のんびり日和

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54話

マクロス・エリシオン ブリッジ

ブリッジには偵察から戻って来たクラリッサ、そしてアリーシャ達とスコール達は持って帰って来た情報の整理を行っていた。

 

「月の方角は真っ赤な嘘。それどころか罠であり、本命は金星だったと言う訳ね」

 

「そのようだな。よし、この情報を元に艦隊を動かす」

 

「お願いするわ。……クラリッサ大尉、部下の事は残念です」

 

「お心遣い痛み入ります。ですが、彼女たちのお陰で敵の位置を特定できました。彼女達は己の仕事を全うしたのです」

 

そう言いクラリッサは一礼した。

 

「敵要塞の位置は特定できた。けど偵察している事が向こうにバレたから恐らく警戒態勢に入っているでしょうね」

 

「月に居た連中も戻ってくる可能性もある。早急に要塞を叩かないとな」

 

「そうね。トロイ各機の飛行隊隊長に伝えて。今から6時間後に要塞に対して総攻撃を仕掛けるって」

 

スコールはそう指示を飛ばしブリッジに居た者達はそれぞれ頷いた。

 

 

ブリッジから戻って来たクラリッサは一人廊下を歩いていると

 

「どうした、クラリッサ?」

 

「…ラウラ隊長」

 

声を掛けてきたのはエンシェントセキュリティー社の制服を着たラウラだった。

 

「私はもう隊長ではないぞ。今はPMCのスタッフの一人だ」

 

苦笑いを浮かべながら、クラリッサに伝えるラウラ。その言葉にクラリッサは申し訳ありません、と苦笑いを浮かべた。

 

「それで、どうしたんだ? 何時になく暗い表情を浮かべていたようだが」

 

そう言いながら近くにあったベンチにクラリッサを座らせるラウラ。

そう問われクラリッサは流石隊長だ、と心の中で思いながら零し始めた。

 

「……申し訳ありません。貴女から引き継いだ大切な部下を二人も失ってしまいました」

 

「……聞いている。敵の要塞が本当にあるのか探るべく向かって一人は敵に発見され、もう1人はお前を逃がすべく足止めになったと」

 

「はい。私はこの戦争でもしかしたら部下が亡くなるかもしれないと、だから大切な部下を守ろうと。そう決心していたのですが、結局私は守れませんでした」

 

クラリッサの目からぽつぽつと涙が零れ始める。

その姿にラウラはクラリッサをそっと抱きしめた。

 

「泣きたい時は思いっきり泣け。部下を亡くしたことは辛いことだが涙を糧に強くなっていけばいい」

 

「うぅっぅう、うわっぁあああぁ!!!」

 

ラウラの言葉にクラリッサは崩壊したダムの様に大声で泣きだし、ラウラはそっとその背を摩り続けた。

 

マクロス・エリシオンと大型輸送機群はデブリを利用しつつ金星へと向かって飛行し、気付けば作戦開始時刻1時間前だった。

その頃、デルタ部隊はブリーフィングルームにて作戦会議を行っていた。

 

「――と言う訳で、俺達は他の飛行隊より先に出る。目的は出来るだけ敵を撃墜するためだ。俺達が出来るだけ敵を片付ければ後から来る飛行隊やIS部隊も楽に敵を片付けられる。そしてある程度片付いたら要塞を攻略する」

 

「具体的には?」

 

「スーパーパックを装備した俺達が中に入って要塞各所を破壊する。ある程度破壊すれば自動的に自爆シーケンスに移るらしい。その後に要塞から脱出しエリシオンに帰還する」

 

「上手くいきますかね?」

 

「やるしかないだろ」

 

不安そうなミラージュにハヤテは檄を飛ばす。

 

「確かにミラージュの不安は俺にもある。だが、俺達がやらなきゃいけない。俺達の世界の技術がこの世界を崩壊させようとしているなら、俺達がそれを止めなきゃいけないんだ」

 

アラドの言葉に全員頷き返す。

 

「よし、それじゃあいくぞ。すべて終わらせるために」

 

「「「「了解!/ウーラーサー!」」」」

 

アラドに敬礼しそれぞれブリーフィングルームから退出しハンガーへと向かい機体に乗り込む。イチカも自身の新たな機体、VF-31Fに乗り込み最終チェックを行おうとすると

 

「いっく~~~~ん!」

 

と、声を上げながら無重力状態の中イチカの元に近付く束が現れた。

 

「束さん?」

 

イチカは近付く束を手を伸ばして引っ張り寄せる。

 

「おっとと、ありがとうね。はい、これ」

 

そう言い束はポケットからイチカのISの待機形態であるドッグタグを手渡す。

 

「そう言えばメンテナンスって言ってましたけど、どう言ったメンテナンスを?」

 

「ん? あぁ、簡単な機体動作のチェックと武装チェック。それとスーパーパックにちょっとした改良をね」

 

「改良? 具体的には?」

 

「追加のSEが収められるようにしたくらいだよ」

 

「そう、ですか」

 

束の改良した内容にイチカは何処か引っ掛かる思いを浮かべながら受け取ったドッグタグを胸にかける。

 

「それじゃあいっくん、気を付けてね」

 

「えぇ、全部終わらせてきます」

 

イチカはそう言いながらヘルメットを被りキャノピーを閉める。閉める際、イチカは束にサムズアップを見せると離れた束はニンマリと笑みを見せながら敬礼した。

 

『デルタ部隊、カタパルトに移動してください!』

 

放送が流れると、イチカは気を引き締め機体をエレベーターの元に移動させる。

エレベーターが上昇していく中、通信が入りそれに出ると画面に美雲が現れた。

 

「どうした?」

 

『ごめんなさい、ちょっと声が聞きたくなったからかけたの』

 

心配そうな表情で胸の部分に手を組み美雲に、イチカは心配をさせまいと笑顔を浮かべる。

 

「いや、謝る必要なんかねえよ。……必ず生きて戻るからな」

 

『……えぇ、絶対に帰って来て』

 

美雲はまだ少し心配そうな顔を浮かべていたが、最後は笑みを浮かべ通信を切った。

 

「……必ず生きて帰る。そうだろ、メッサー?」

 

【生きて帰れるかはお前の腕次第だ。だが、今のお前なら行ける。そうだろ、()()()?】

 

「っ!?」

 

突然メッサーが白騎士と言った瞬間、イチカは心臓が跳ね上がるような感覚をおびる。

 

【ふん、気付いていたのか死神】

 

「な、なんでてめぇが居る、白騎士!」

 

【説明するのは構わないが、掻い摘んでやるぞ。まず、俺は死神と同じくISコアにどうしてか宿っていた。そしてお前の妹、マドカのISに搭載され常にお前達の行動を見ていた。そしてマドカが撃墜され負傷した際、アイツはお前を守りたい為にあの博士にある事を頼んだ。それがお前のISに追加で搭載されたスーパーパックにISコア()を載せる事。そして博士は俺を追加武装に組み込みSEを大幅に増やした。黙っていたのは、只驚かそうと思ってだそうだ】

 

キースの説明にイチカは驚愕の表情から一切顔が変わらず、只茫然と胸のドッグタグを見つめていた。

 

「……お前が何で居るのかは、分かった。だが、あの時現れた白騎士は何だ?」

 

【それは分からん。ただ言えるのはあの機体は確かに俺の飛び方だが、風を読んでの飛び方ではない】

 

「風を、読んでない?」

 

イチカはキースの言葉に首を傾げた。だが、暫し考え込んで何処か納得のいった顔つきとなった。キースの飛び方は大胆であり、そして繊細な操縦で敵を翻弄する。イチカはあの時の白騎士の機体の動き、そして自身が向こうの世界で見た白騎士の動きを重ね合わせた所、所々違うのが分かったからだ。

 

「…確かに、お前の言う通りあの機体はお前と動きは若干似ているが、細かなところが違う。じゃああの機体は一体誰が操縦しているんだ?」

 

【さぁな。それについては奴と戦って勝てば分かるだろ】

 

「チッ。あぁ、やってやるさ。絶対に墜としてやる!」

 

イチカはそう決意を決めているとエレベーターは上昇を終えた。機体をカタパルトに固定すると、通信が入る。

 

『これが最後の戦いになる。皆、絶対に勝つわよ!』

 

スコールからの檄に皆心を決めカタパルトから飛び出した。

 

 

 

 

その頃オグマ社が占拠した要塞司令部では、多くのスタッフ達が慌てた様子で各部署に連絡を行っていた。

 

「だから、何時でも出られるように準備しておけって、言ってるんだよ!」

 

「おい、この作戦マップ前に使った奴じゃないか! 今回は此処に来るんだぞ!」

 

「パイロット達を催眠させる薬の在庫何処だよ!」

 

「そんなもの知るかよ! 倉庫とか段ボールひっくり返して探せ!」

 

怒号飛び交う中、指令室上にある指揮官室からそれを眺めていたジェフ、そして仮面をかぶった者がその光景を見ていた。

 

「まさか隊長機の者の洗脳が解けるとは思いもしませんでした」

 

「仕方あるまい。だが、次は抜かるんじゃないぞ」

 

「はっ! 同じ失態はもう起こしません」

 

仮面をかぶった男は威圧感を放ちつつ部屋から退出していき、ジェフは冷や汗を流しつつ、深々と頭を下げながら見送った。

 

 




次回予告
エリシオン、そして大型輸送機から飛び出した連合軍は要塞に向け攻撃を開始した。
両者激しい攻防の中、イチカ達デルタ部隊は先行して攻撃を行っていた。そんな時、白騎士の機体が現れ、イチカはドッグファイトを仕掛ける。
イチカが奮闘している光景を見た美雲は、イチカの為に用意した歌を歌い出した。
次回
導きの歌~あなただけの歌を歌うわ!~
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