地獄先生と陰陽師一家   作:花札

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薄暗い部屋の隅に貼られた蜘蛛の巣に、拘束された麗華……


糸を解こうと、手を動かすが解ける気配が無かった。不審な動きをすれば、上で自分を見張っている巨大蜘蛛に何をされるか分からない。声を出そうにも、糸で完全に塞がれ出すことも出来なかった。


(……焔……お兄ちゃん)


その時、床が軋む音が聞こえた。麗華は顔を上げ音の方を睨んだ。
暗闇から姿を現したのは、あの女だった。彼女は麗華に歩み寄ると、しゃがみ込み頬と髪に触れた。


「何を怖がっているの?

大人しくしていれば、何もしないわ」

「……」

「……あの鏡を壊してくれて、本当に助かったわ。

おまけに、こんな体も手に入れられたんだから」

「?……!」


女の背中に切り込みが入った……そして真っ二つに分かれ、そこから蜘蛛の容姿をした女が姿を現した。


「やはり、こっちの方が動きやすい……

あなたに良いことを教えてあげる」

「?」

「あの大きな鏡は、私を封印していたものだったの」

「!?」


本性

「あそこだ!」

 

 

覆面の妖怪が指差す方向に、あの図書室の部屋が映った鏡があった。先に焔達が中へ突っ込み、その次に氷鸞、雷光、雛菊、鎌鬼、渚達と入っていった。

 

 

「出られたぁ!!」

 

「あ、足が地に着いたぁ……」

 

 

覆面の妖怪から離れた焔は、龍二のもとへ駆け寄った。龍二は、ポケットから札を取り出し指を噛み血を付けた。札は煙を上げ出て来たのは、黒い剣が現れその束を握り持った。

 

 

「麗華を探しに行く。

 

お前等ここで待ってろ」

 

「ちょっと待て!危険だ!!」

 

「危険なのはどっちだ!!

 

ここにいる俺等より、あの女のもとにいる麗華の方がよっぽど危険だ!!」

 

「それは分かる!

 

だかな、今行ってお前に何かあれば悲しむのは」

「担任でもねぇくせに、偉そうなこと言うな!!」

 

 

ぬ~べ~の胸倉を掴みながら、龍二は怒鳴った。真二は慌てて仲裁に入り、彼から離れさせた。

 

 

「龍二、落ち着けって!」

 

「一発こいつを殴らせろ!!」

 

「待て待て!殴るな!

 

俺も一緒に行くから!それなら文句ないだろ!?」

 

「必要じゃない暴力は駄目!

 

おじさんから言われてるでしょ!」

 

「……チッ!」

 

 

二人の腕を振り払い、龍二は焔達と共に部屋を出て行った。彼の後を、真二は慌てて追い駆けていった。

 

 

「す、凄ぇ……」

 

「周りが見えなくなるって、ああいうのを言うのね……」

 

「俺も妹いるから、気持ちは分からない訳でも無いが」

 

「でもさぁ、あんなに言わなくてもいいじゃない。

 

何か、ぬ~べ~が意見言うと怒鳴ったり嫌な顔するよね?麗華のお兄さん」

 

「仕方ないよ……だって、酷い扱いされたんだもん」

 

「酷い扱い?」

 

「中学生の頃、担任から酷いいじめを受けてたんです。龍二」

 

「え?!先生が生徒をいじめてたの?!」

 

「信じらんねぇ!!」

 

「教師失格よ!」

 

「それは私も真二も同感。

 

その事があったせいで、龍二教師には凄い反抗的なの」

 

「そうだったのか……」

 

「まぁ、麗華ちゃんのことになるともっと酷いことになるけどね」

 

 

 

階段を上り、三階へ来た龍二達……

 

 

「あ~!!クソクソ!!ムカつく!!

 

あのゲジ眉鬼教師が!!偉そうなこと言うなんじゃねぇよ!!人の気も知らねぇで!!」

 

「壁に八つ当たりするな~。

 

落ち着いたら、屋根裏行くぞ~」

 

「クッソォ!!」

 

「けど、よく知ってたね。この建物に屋根裏があるなんて」

 

「空手のコーチが、ここの卒業生でこの校舎の事で聞いたんだ。

 

 

鍵が掛かってる屋根裏があって、そこには恐ろしい化け物が封印されてるって!」

 

「そういう事を、とっとと話さんか!!己はぁ!!」

 

「す、すみません……以後、気を付けます」

 

 

屋根裏へ続く階段を見つけた真二は、駆け上り懐から針金を出すと、それを南京錠の穴に入れ弄りだした。

 

 

「すぐ開くか?」

 

「ちょい時間かかる。

 

焔達に、見張りさせ」

「させている」

 

「お早い行動で……

 

麗華が心配なのは分かるけど、教師に当たるな」

 

「知ってんだろ!あいつが蜘蛛見たら、どうなるかくらい!」

 

「あ~もう!そう怒鳴るな!

 

寿命縮むぞ!」

 

「っ……」

 

「そりゃあさ、俺も緋音も心配だよ。

 

けど、今回は俺等だけじゃない。麗華の友達もいる。

 

あいつ等を危険な目に遭わせれば、あのゲジ眉先公が黙ってない」

 

「……確かに」

 

「見る限り、あの先公は信用できるんじゃねぇのか?

 

現に、麗華の奴楽しそうに学校行ってるじゃん」

 

「……」

 

「お前に同行は言わないけど、少し妹離れしろよ?

 

あいつだって、数年経てば俺等と同じ高校生になるし、大学生にもなる。先を行けば結婚して母親になる。

 

 

それまで、兄貴がベッタリじゃ変われるもんも変わらねぇよ」

 

「けどあいつは!」

 

「気持ちは分かる。

 

けどよ、麗華だって大人の階段登ろうとしてるんだぜ。少しは遠い目で見守れるようになれよ。昔とは違うんだからよ」

 

「……」

 

「よし!開いたぞ」

 

 

南京錠が外れ、真二は龍二とアイコンタクトを交わすと、ゆっくり戸とを開けた。

 

 

「薄暗くて、何も見えねぇ」

 

「雛菊、鬼火」

 

 

龍二と入れ替わった雛菊は、口から小さな火の玉を出すと、それを扇で煽りながら少しずつ大きくし部屋の中を照らした。

 

 

「……何の気配も感じない」

 

「マジかよ……ここじゃなかったのか」

 

「調べるだけ調べよう。

 

もしかしたら、移動した後かもしんねぇ」

 

「だな」

 

「鎌鬼達は、下を見張っててくれ!

 

焔、渚!来い!」

 

 

屋根裏へ登ってきた龍二達の後から、焔と渚は登り中を見回した。

 

 

「……?

 

龍、ここおかしい」

 

「え?」

 

「麗の気配が凄いするのに、近くにいない」

 

「気配?

 

俺は感じねぇけど……龍二は?」

 

「さっきからビンビンに感じてる。

 

この近くにいるのは確かなんだが……」

 

(本当、綺麗な兄妹愛)

 

 

中に入ってきた彼等を、女は天井の柱から眺めていた。彼女の傍には、糸で拘束された麗華が座っていた。

 

 

「声を上げたり、騒いだりしてみなさい……

 

あなたの首が、飛ぶわよ?」

 

 

背後から触肢を首に当てられていた麗華は、恐怖の余り震え上がっており、身動きが取れないでいた。

 

 

『上』

 

 

どこからか聞こえた声に、龍二と真二は気付きその声の通り上を見た。

 

天井の柱に座る女と、彼女の隣に座る麗華の姿があった。

 

 

「麗華!!」

 

「あーあ、見付かっちゃった」

 

 

女が指を鳴らすと、どこからか唸り声が聞こえたかと思えば、二人の背後から金槌を持った大男と手の長い妖怪が攻撃してきた。

 

 

「その子達に勝てたら、この娘は返してあげる。

 

ただし」

 

 

女が目で合図すると、麗華の後ろにいた巨大蜘蛛は尻を動かし、雛菊と焔、渚の体に糸を絡ませ動けなくさせた。

 

 

「渚!!焔!!雛菊!!」

 

「その三匹の妖怪に頼らず、自分達の実力で倒しなさい」

 

 

大男が振り下ろしてきた金槌を龍二は剣で受け止め、手長妖怪に真二は筒を向け管狐を出し攻撃した。

 

前のめりになった麗華を、蜘蛛は体に巻かれていた糸にさらに糸を絡ませ、天井柱から吊した。

 

 

「逃げようだなんて、考えないの。

 

さぁ、仕上げをしましょうか」

 

「!!」

 

 

後ろの巨大蜘蛛は、鳴き声を上げながら触肢を麗華の体に回した。

 

 

「んー!!んー!!」

 

「あなたがいなくなれば、私は封印されない……永遠にね」

 

「麗華!!

 

うわっ!」

 

「麗!!クッソ!」

 

「この糸のせいで、技が出せん!!」

 

「ならば、炎で燃やすまで!!焔!」

 

「おっしゃぁ!」

 

「させはしない」

 

 

女の合図に、巨大蜘蛛は尻から糸玉を放った。玉は三人の口に当たり壁にくっついた。

 

 

「これで、技も出せはしない……

 

さぁ、お食事の時間よ。ゆっくり味わいなさい」

 

 

蜘蛛の牙が体に突き刺さろうとし、麗華は涙を流して目を頑なに閉じた。




龍二達が部屋を出て行き数十分が経とうとしていた頃、図書室にいた緋音は、ある一冊の本を手に取り読んでいた。

そこには、かつて神社に供えられていた鏡に封印された妖怪のことが書かれていた。


「……これって。

先生!」


緋音から書物を受け取ったぬ~べ~は、読みながら郷子達に解釈していった。


「ここにあった神社には、元々強い妖怪を封印していたらしい」

「強い妖怪?」

「さっきの女じゃねぇのか?」

「いや違う……

昔、女郎蜘蛛が妖怪化し女に化けては、人を食らっていた。それを聞いた不覡は、女郎蜘蛛を手下にしていた大蜘蛛と共に、鏡に封印したらしい」

「神社が壊された時、そんな気配は」

「おそらく、壊される前に不覡が別の場所に封印し直したんだろう。

そして、再びこの地に封印した」

「そのまんま、そこに封印しとけばいいのに」

「封印するには、その力に適応できる結界を張らなきゃいけないの。

その結界を張るには、体力かなり消耗するって、聞いた事があるわ」

「その通り。

……!?」

「な、何……この強い妖気」


顔色が突然変わった緋音とぬ~べ~に、郷子達は交互に見ながら声を掛けようとしたが、何かを察した緋音は教室を飛び出した。


「あ、緋音さん!?」

「お前達、ここにいろ!」

「ちょっと!ぬ~べ~まで!」


彼女の後を追い駆けながら、ぬ~べ~は鬼の手を出しある場所へと向かった。
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