地獄先生と陰陽師一家 作:花札
「何だ!?これは!?」
緋音達の姿に気付いた鎌鬼は、通路を開き二人のもとへ駆け寄った。
「すぐに屋根裏へ行って!!
龍二達が危ない!」
「分かった!」
「氷鸞、頼む!」
鎌鬼達の方に向いた氷鸞は、錫杖から冷気を集めそして吹雪を起こした。階段付近にいた妖怪達は一時的に動けなくなった。
「今の内です、早く!」
「氷鸞、ありがとう!」
ぬ~べ~は先に階段を上り、閉まっていた戸を勢い良く開けた。
その光景は、麗華が蜘蛛に食べられそうになっていた時だった。
「麗華!!
俺の生徒に、手を出すな!!」
鬼の手を構えぬ~べ~は、蜘蛛を殴り飛ばした。蜘蛛は悲鳴を上げて壁に激突した。
後から来た緋音は、麗華の体に巻き付いていた糸を解き、腕が自由になった麗華は、口に巻き付いていた糸を取った。
「……!
先生!後ろ!!」
先程殴り飛ばした蜘蛛は、ぬ~べ~に向かって突進してきた。
「先生!」
「まさか、ここで助っ人が出てくるとは……
運が良いのね?」
「ヒッ……」
震えながら麗華は、立ち上がろうと足に力を入れるが、すぐに蹌踉け立ち上がることが出来なかった。
それを見かねた女は、口笛を吹いた。音に気付いた巨大蜘蛛は、麗華目掛けて迫ってきた。
「麗華ちゃん!!」
駆け寄ろうとした時、どこから入ってきたのかもう一匹の巨大蜘蛛が、緋音に向かって糸を吐き動けなくさせた。
鎌鬼はすぐに、渚達の糸を切り裂いた。自由になった渚は龍二達の元へ行き交戦し、雛菊は緋音の元へ行き彼女の糸を切り、蜘蛛に向かって炎を放ち攻撃した。
焔はすぐに、麗華の元へ駆け寄り彼女を抱きその場から逃げた。
「そう何回も、主を盗られて堪るか!!」
「焔!」
「盗れないなら、盗るまでよ!!」
どこからか出て来た巨大蜘蛛は、焔に向かって前足を振り下ろした。焔は炎を吹きながら後ろへ下がった。
「ここは僕が相手を!
焔は、麗華を早く安全な場所に!」
「分かった!」
「逃がしはしない!」
指の鳴らす合図と共に、ドアに向かって無数の糸が出口を塞いだ。
「人を殺したことのある妖怪が、何故人の味方についている?」
「僕の趣味でね。一緒にいちゃ、悪いかい?」
「悪いわね……
人は妖怪にとって、霊力の糧よ?殺せば殺すほど、霊力が増すのよ?特にその子は」
不敵だ笑みを見せた女に、麗華は怯え焔の胸に顔を埋めた。
「その子の霊力、並大抵の強さじゃないわ。
妖怪にとっては、最高級の糧よ」
「んじゃあ、その最高級の糧より遙か上の糧を食わせてやるよ」
腕から血を流す龍二は、女の背後に剣先を向けながら言った。
「あなたとは質が違うの……
あの子がいると、私は蘇られないの」
「そんじゃあ、また深い眠りについて貰おうかな。
一生目覚めない眠りにな」
そう言うと、龍二は剣を勢い良く振り下ろした。女は油断し背中を切られた。悲鳴が響く中、下にいる氷鸞は蜘蛛の巣目掛けて氷の礫を放ち、巣を壊した。
「退路を開いた!」
「先に行け!」
階段を先に焔が飛び降り、その次に鎌鬼と緋音、ぬ~べ~が降り、最後に龍二達が降り全員がいなくなったのを確認した雛菊は、炎の大玉を作り出した。
「燃えて無くなれ!火術業火の玉」
炎の玉を落とすと、雛菊は素早く降り扉を閉めた。屋根裏から聞こえる悲痛な叫び声は、校舎内に響き渡った。
保健室に来た龍二達……
「た、助かったぁ」
「あれ?先生は?」
「別の所だろ……多分、図書室よ」
「……」
息を切らしていた龍二は、焔に抱き着いている麗華の元へ寄り、彼女の頭に手を置いた。その行為に、焔の胸に顔を埋めていた麗華は、ゆっくりと顔を上げた。
「……お兄ちゃん…」
「麗華……」
焔から離れた麗華は、龍二に抱き着きそのまま泣き出した。抱き着いてきた彼女を、強く抱き締めながら龍二は頭を優しく撫でた。
「よかったぁ……」
「しばらくの間は、龍二にベッタリだな」
二人の姿を見て、ホッと一息する鎌鬼だったが何かの気配を感じたのか、立ち上がりドアの前に立った。
同じ気配を察知したのか、麗華は怯えだし龍二にしがみついた。彼女を抱き寄せながら、龍二は鎌鬼に頷いた。
意を決意した鎌鬼が、戸を開けようとした瞬間先に戸が開き外から郷子達が入ってきた。
「お、お前等」
「ここにいたのか!」
「脅かさないで下さい~先生!」
「す、すまん」
「……!
麗華、無事だったのね!!」
「よかったぁ!見た感じ、怪我を無さそうだし一件落着ね!」
「いや、まだ解決してない」
「え?」
「微かだけど、あの女の妖気を感じる」
「まだ生きてんのか!?」
「どうすりゃ倒せるんだよ……」
『ついてきて』
どこからか聞こえた声に、龍二と真二と麗華、覆面の妖怪は耳を向けた。
「ん?お前等、どうかした?」
「ついてきてって」
その時、広の隣から淡い光が現れた。驚いた彼は、慌ててそこから離れた。
「これは……」
『ついてきて……お願い』
「……まさか、華代?」
「?」
「華代って?」
「さっき話した、女の名前だ」
「!?」
「とりあえず、ついて行こう」
麗華を支えながら龍二は立ち上がり言った。支えられ立ち上がった麗華だったが、思うように足に力が入らず、そのまままたその場に座り込んでしまった。
「麗華、大丈夫?」
「……うん」
「さっきので、精神的に参ってるからなぁ」
「あれ?でも麗華って、妖怪に慣れてるんじゃ」
「妖怪にも、不慣れなものもある」
狼姿になっていた焔の背に麗華を乗せた龍二は、自身が着ていた上着を掛けた。
「よし、行くか」
淡い光は、廊下を照らし宙に浮いていた。その光にぬ~べ~達はついて行った。
火が消えた屋根裏……
蜘蛛達は、丸焦げになりひっくり返っていた。その中、倒れていた女の遺体がゆっくりと動き出した。遺体は背中から真っ二つに割れ、どす黒い目を光らせた蜘蛛が、姿を現した。