地獄先生と陰陽師一家   作:花札

14 / 41
淡い光と共に辿り着いた場所は、広い教室だった。奥の壁には、黒髪を長く伸ばした少女が眠る鏡が置かれていた。


「これは……」

「あ!光が!」


淡い光玉は、スッと消えてしまった。それを見た麗華は、焔から降りふらつきながら、鏡を触った。すると鏡の中にいた少女は、ゆっくりと目を開けた。


「華代!」

『……黒輝。

やっと、話せる』

「なるほど……

麗華が邪魔だというのは、この子を目覚めさせないためだったのか」

『あなた方を呼んだのは、あの妖怪を倒せる力があると分かったからです。

特にこの子には、私と同じ力があります』


華代は麗華に目を向けながら、そう言った。


「同じ力?」

『ここへ来てから、強大な力を発揮しませんでしたか?』

「……あ」


龍二達とはぐれていた時、巨大蜘蛛に襲われそうになった時、底知れぬ力が体から放たれた様な感覚を、麗華は思い出した。


「あれって、私の力じゃ」

『あなたには、まだまだ知られぬ力が眠っています。

それを狙う者は多くいます』

「確かに。


麗華は生まれ付き、霊力が高かった。小さい頃そのせいで、何度か酷い目に遭った」

「そうだったの?」

「うん……そうだったらしい」

「らしいって、覚えてないのか?」

「う~ん……小さい頃の事、よく覚えてないんだよねぇ」

「お前、記憶力滅茶苦茶いいくせに、思い出の記憶はないのか?」

「だって覚えてないんだもん」

「無駄話はいいから、話聞け」

『あの妖怪を倒し、この鏡を壊せばあなた方は元の世界に戻れます』

「壊すって……華代」

『私は死んだ者。

この世に生きてはいけない者よ』

「……それが、お前の望みか?」

『えぇ』

「……頼む。

あいつを……あの蜘蛛を倒してくれ!」


「そう簡単に、いかせないわ!」


決着

声が教室に響いたと同時に、教室の戸が開き外から無数の蜘蛛が入ってきた。

 

 

「キャア!!巨大蜘蛛!!」

 

「お前達、下がれ!」

 

 

ぬ~べ~は鬼の手を構え、郷子達を自身の後ろへ隠した。蜘蛛達は、彼等を逃さない様に取り囲んだ。

 

 

「さっき燃やしたはずなのに!!」

 

「あれごときで、この私が死ぬわけがない」

 

 

彼等の前に糸を引き降りた女の姿は、先程と違っていた……姿形は巨大な女郎蜘蛛になっていた。

その姿を見た麗華は、震えだし焔から降りると龍二にしがみついた。

 

 

「さぁ、その子を渡しなさい!

 

そうすれば、あなた達に危害は加えないわ」

 

「誰が渡すか!!」

 

「そう強く言っていられるかしら?」

 

 

口から糸を出すと、それは郷子達の体に巻き付き吊し上げた。

 

 

「キャァアア!!」

 

「取引と行こう……その子を渡せば、この子達は返」

「そう思い通りに、行くと思わないでね?」

 

 

上にいた鎌鬼は、鎌を振り回し糸を切り裂いた。落ちた郷子達を、氷鸞と雷光は受け止めぬ~べ~の元へ置いた。

 

 

「氷鸞!氷の壁!」

 

 

ぬ~べ~達を中心に、氷鸞は氷の壁を作り上げた。その間に麗華は、一枚の札を出し指を噛み血を付けた、札から煙が上がり、そこから薙刀が現れ出た。

 

 

「そっから見てろよ?

 

俺等の実力を」

 

「実力?」

 

「麗華は俺の後ろに付け」

 

「うん」

 

 

構える四人……

二人の真上から蜘蛛が、毒針を放った……だが、その毒針は焔と雛菊の炎で燃やされた。

 

 

「我等の主に攻撃しようとは」

 

「いい度胸してるじゃねぇか?」

 

「雛菊!渚!鎌鬼!その辺にいる雑魚共の始末、任せた!」

 

「承知!」

「分かった!」

「了解だよ!」

 

「氷鸞!雷光!焔!私達の援護をお願い!」

 

「はい!」

「分かりました!」

「応よ!」

 

「出でよ!管狐!」

 

「さぁ、反撃返しといきますか!」

 

「小癪な!!」

 

 

女郎蜘蛛は口から無数の糸玉を放った。その攻撃を、麗華達の前に立った焔と雷光は、同時に炎と風の攻撃をし、糸玉を燃やした。

 

 

「っしゃぁ!!」

 

 

緋音に向かって、突進してきた蜘蛛に彼女は手から光る玉を出し放った。玉に当たった蜘蛛の体は燃え上がりひっくり返ってた。

 

 

「何だ?!あれ!?」

 

「緋音の母方の家は、代々気功術を得意とする祓い屋なんだよ!」

 

「そういう事!」

 

「やっぱ、無理!!」

 

 

薙刀を振り回し、蜘蛛を切り裂いていた麗華は、狼姿になっていた焔の背に飛び乗った。

 

 

「……!

 

焔、鏡の所に!」

 

「応!」

 

 

炎を吹き出しながら、焔は華代が眠っている鏡の前まで、麗華を連れて行った。麗華は傍に立つと薙刀を刃を鏡に向けていった。

 

 

「それ以上攻撃するなら、この鏡を壊すよ!」

 

「そうだ!そうだ!」

 

「その鏡を壊せば、アンタなんて怖くなんかないわよ~だ!」

 

「フフ……壊せればだけどね?」

 

「?……!」

 

 

突然地面から、蜘蛛の足が突き抜け麗華を地面に引きずり込んだ。彼女に続いて、氷の壁に包まれていたぬ~べ~達も地面へ引きずり込まれた。

 

 

「どうなってんの!?」

 

「これで、鏡は壊されまい」

 

 

空いた穴の下を見ると、蜘蛛の巣に絡まった麗華達がいた。

 

 

「麗華!」

 

「龍二、早く麗華を!」

 

「悪い、ここを頼む!

 

渚!焔!」

 

 

地面から飛び降りた龍二を、後から来た渚は背中に乗せ、下へ下りようとした。だがその道を、無数の巨大蜘蛛達が塞いだ。

 

 

蜘蛛の巣に貼り付けられた麗華は、起き上がり立ち上がろうとしたが、足に糸が絡み立つことが出来ないでいた。

郷子達にも、手や足に糸が張り付き身動きが取れないでいた。その時、何かの音と気配に気付いた麗華は、辺りを警戒した。

 

 

「……!

 

キャァアア!!」

 

 

郷子の悲鳴に、広達は顔を上げ彼女の方を向いた。巣の上には大量の蜘蛛が、糸を伝って自分達に迫ってきていた。

 

 

「ギャァア!!く、蜘蛛の大群!!」

 

 

逃げようとする広達だが、糸は完全に彼等の体に張り付き取れなくなっていた。

 

 

「大地の神に告ぐ!!汝の力、我に受け渡せ!その力を使い、この地を守る!!

 

出でよ!建御雷之男神(タケミカヅチ)!」

 

 

どこからともなく、雷が広達を襲おうとしていた蜘蛛達を次々に攻撃していった。麗華の傍に来た焔は、糸を切り裂き彼女を背に乗せると、龍二の元へ行った。

 

 

「百雷白虎やるぞ!」

 

「分かった!」

 

 

二枚の札を持つ龍二に、麗華は立ち上がりポーチから二枚の札を出し構えた。

 

 

「いくぞ!」

 

「応よ!」

 

「「大地の神に告ぐ!!何時の力、我に受け渡せ!!その力を使い、この地を守る!!

 

 

出でよ!建御雷之男神(タケミカヅチ)!!」」

 

 

札から放たれた雷は、全ての蜘蛛に当たった。雷のおかげか、広達の体に巻き付いていた糸が切れ、自由になった。麗華は口笛を吹き、上から氷鸞と雷光を呼んだ。

 

 

「先生達をお願い!」

 

「分かりました!」

「はい!」

 

「麗華!!先行くぞ!」

 

「あ!待って!!」

 

 

上に登ってきた龍二と麗華は、渚達から飛び降りると武器を構えて女郎蜘蛛の前に立った。

 

 

「とっとと終わらせるぞ!」

 

「応よ!!特大の管狐、出してやるよ!!

 

出でよ!!管狐!!」

 

 

筒から出てきた管狐は大きく、鳴き声を上げながら女郎蜘蛛の足を噛み千切った。それに続いて、緋音は聞こう術を放ち、弱まった彼女に向けて、龍二と麗華は剣と薙刀を力任せに振り下ろした。

 

真っ二つになった女郎蜘蛛は、断末魔を上げながら霧の様に消えていった。すると、突然地面が崩れ始めた。

 

 

「が、学校が崩れ始めてる!?」

 

「そうか……アイツがいなくなったから、この世界が消えようとしてるんだ!」

 

「何!?」

 

「ま、まだ死にたくない!」

 

『ここへ飛び込んで!』

 

 

華代の声と共に、鏡が光った。

 

 

『この鏡は、あなた方の世界に通じています!

 

さぁ、早く行って!時間がありません!』

 

「……一か八かだ。

 

俺が先に行く!お前達は、俺の後について来い!!」

 

「ちょっとぬ~べ~!!」

 

「え~い!!当たって砕けろだ!!

 

郷子!行くぞ!」

 

「待って、広!」

 

「お、俺も行くぞ!」

 

「ちょっと、私を置いて行かないでよ!!」

 

 

ぬ~べ~達が去って行く背中を見る麗華達……氷鸞達を札に戻すと真二と緋音は先に行き、麗華と龍二は焔と渚の背に乗った。そして華代がいる鏡を叩き割った。

 

叩き割った鏡は、激しく光り出し麗華達を包み込んだ。

 

 

『ありがとう……』




「おーい、大丈夫か~?」


誰かの声と体を揺らされ、麗華はゆっくりと目を開けた。目の前にいたのは、懐中電灯を持った警察官だった。


「あれ……」

「行方不明の子供と思われる、六人の子供と男性を見つけました。あと警部の」


警察官がそう報告しているのを聞いた麗華は、辺りを見回した。そこは学校の裏だった。


警察署に来たぬ~べ~達……迎えに来た親に、ぬ~べ~は頭を深く下げながら謝っていた。親達は子供が無事で何よりだと、言いながら彼を慰めていた。


「しっかし、驚きだよなぁ。

もう、十一時回ってたなんて」

「本当。

ほんのに一時間か二時間しか経ってなかったと思ってたのに」

「これも妖怪の力って奴か?どうだ?なぁ、麗華」


隣りに座っていたはずの麗華は、いつの間にかいなくなっていた。彼女だけじゃなく緋音も真二もいなかった。


「あれ?麗華達は……」

「すみません!」

「はい?」

「ここにいた人達は?」

「彼等なら、先程親御さんが迎えに来て、帰りましたが」

「え?!いつの間に!?」

「やはり、麗華は忍だ」

「だな」

「アンタ達ね……」



夜……眠る龍二の布団が少し動いた。それに気付いた彼は起き、後ろを見た。

自分に引っ付き眠る麗華がいた……はいでいた布団を掛けて龍二は、彼女の手を握りながら再び眠りに入った。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告