地獄先生と陰陽師一家 作:花札
「何なんだよ!?あれ!
Aって、一体何!?」
「子供は知らない方がいい……」
「何で隠すんだよ!!」
「……」
「!なぁ、麗華!
お前、今朝通り魔が出たって知ってたよな?!」
「あ、うん……」
「それと今起きてる事って、関係あんじゃねぇのか?!」
「そ、それは……」
「どうなの!?麗華!」
「……」
「関係はあるよ」
「え?」
灰色の背広を着た男は、郷子達にそう言った。
「話していいの?
あれって、子供には極秘だって……!」
言う麗華の頭を、紺色の背広を着た男は叩いた。
「あれほど、仕事の資料を見るなって言っただろ!!
何回言えば分かるんだ!!」
「じゃあ広げて置かないでよ!!
お兄ちゃんも読んでたから、読んで良い資料だって思うじゃん!!」
「龍二はいいんだ!!高校生だから!」
「ズルいぃ!!」
「ズルくない!!」
「輝二、麗華ちゃんの説教はそれくらいにしとけ。
麗華ちゃんも、もう仕事の資料見ちゃ駄目だよ」
「はーい」
「……ゴホン!」
灰色の背広を着た男が咳払いをして、再び口喧嘩をしようとしていた二人は、慌てて口を閉じた。
「では続きを……
Aはもう何十年も捕まっていない殺人鬼です」
「え!?」
「下校中の子供ばかりを狙って、百人以上も惨殺した通り魔。
各街には戒厳令がしかれ、恐怖のあまり学校を休む生徒が続出した」
「それで、大人達は真実を子供達に隠すことを決めたんだ。
“A”のことは単なる噂……作り話と信じ込ませたのさ。皆が安心して登校できるようにな」
「そして、もし奴が現れたら子供達を速やかに帰らせて、学校の先生方と協力して大人達だけで対決することに決めたんだ」
「子供が知ってはいけない、大人の秘密って事か……
あれ?何でお兄ちゃんは知ってたの?」
「龍二は一度、そのAを見掛けたことがあったから、その時に」
「ふーん」
「外の様子を見てくる。
鍵を掛けて、誰も入れるな!」
そう言って、ぬ~べ~達は教室を出て行った。
「しっかし、お前凄いなぁ!」
「ん?何が?」
「警察に刃向かうなんて!
俺、怖くて絶対出来ない」
「刃向かって何が悪いのさ!
皆は、親に刃向かったこと無いの?」
「……え?!」
「さっきの人、父さんだもん」
「ど、どっちの人?!」
「紺色の背広着た刑事さん」
「じ、じゃあ……
そこにいる、スパイみたいな奴って」
「こいつは暗鬼。父さんの式神」
暗鬼は郷子達に目を向けるが、再び逸らした。
廊下を歩くぬ~べ~達。
「先程は、お恥ずかしいところをお見せして、失礼しました」
「い、いえ」
「全く……他人様の前で、親子喧嘩は止せ」
「悪い……」
「?親子喧嘩?
失礼ながら、あなたは……」
「改めて、申し上げます。
童守警察署刑事課警部の神崎輝二です」
「同じく刑事課警部の桐島勇二です」
見せられた警察手帳には、はっきりと“神崎輝二”と“桐島勇二”と書かれていた。
「神崎……
!?神崎って……まさか麗華の」
「父です。
娘がいつもお世話になっております」
「いえいえ!そんな!
あんな素直で聞き分けの良い娘さんを、教え子に持って幸せ者です!ハッハッハ!」
(嘘が見え見えだ、この先公)
「扱いにくいでしょ?麗華。
父親の俺でも手を焼くくらいですから」
「いえいえ!そんな!」
「話はいいから探すぞ」
「あ~、はい」
「そういえば先生」
「はい?」
「先程、Aに襲われた女の子は青を答えたと」
「え、えぇ。そうです」
「確か、Aは見つけた子供に質問するって言っていたな。
青が好き?赤が好き?白が好き?って」
「まさか、色事に殺害って事ですか」
「えぇ。
青と答えれば、水に落とされて殺される。
白と答えれば、体中の血を抜かれて殺される。
赤と答えれば、血塗れにされて殺される……」
「……まさか」
勇二と輝二は足を止め、顔を合わせると踵を返して駆け出した。その後をぬ~べ~は、慌てて追い駆けていった。
教室でぬ~べ~達の帰りを待つ郷子達。
「Aって、本当に何者なのかしら……」
「ぬ~べ~なら、勝てるわよね?」
「無理かもね」
「え?何で?」
「だってAって、人間だもん」
「嘘!?妖怪じゃ無いの!?」
「父さんの資料に書いてあった奴だと……
元々は普通の床屋さんだったみたいだよ。
けど、子供の悪戯が原因で店は全焼。Aは体に大火傷を負ったんだって。
だから子供を、凄く憎んでるらしいよ」
「そんな理由で……
関係ない子供まで殺す?そんなの変よ!」
「そう言われても、恨み辛みってそういうもんだよ」
「そんな……」
「もしその当時の子供が、悪戯なんかしなければAという奴は出て来なかった。
恨みも無く、定年を迎えても尚町の人から愛される床屋の亭主になってたはず」
「……人間相手に、ぬ~べ~勝てるかしら」
「そのために、父さん達がいるんだよ!」
開いていた窓の傍に行く郷子……その時だった。
「白が好き」
「?……!!
キャァアア!!」
「郷子!!」
窓に身を乗り出した郷子を、上から現れたAは彼女の腕を縛り、首に穴の開いた硝子の棒を刺し、逆さ吊りにした。
「郷子!!」
「暗鬼!お願い!」
「諾!」
暗鬼と入れ違いに、Aは窓から教室へ入り残っている広と麗華に目を付けた。
「赤が好きと言った子は……」
「く、来るなぁ!!」
「立野!!
焔!お願い!!」
フードから出て来た焔は、人の姿へとなり鎌を振り上げたAに体当たりをした。吹っ飛ばされたAは、机に当たり体勢を崩した。
「立野!今の内に先生達を!」
「わ、分かっ!!
麗華!!前!!」
ハッとして、振り返ると目の前に鎌を勢い良く振り下ろすAの姿があった。焔は二人の前に立ち腕で鎌を受け止めた。
「焔!!」
「赤が好きと言った子は、血塗れにされて殺される」
「立野!!逃げて!!」
鎌を振り上げるA……当たる寸前、輝二と勇二が彼目掛けて跳び蹴りを食らわせた。Aは怯みその場に崩れ倒れた。
「麗華!!」
「父さん!」
抱き着いてきた麗華を抱き寄せ、自身の後ろへ隠し輝二は立ち上がったAを睨んだ。
「広!!郷子!!麗華!!」
「先生!!」
「ぬ~べ~!!」
「警察だ!!もう逃げられないぞ!!」
「……赤が好き?青が好き?白が好き?」
「まだ、やる気か!?」
「勇二!!早く、皆を!!」
「分かった!」
「迦楼羅!頼む!」
ポケットから出て来た迦楼羅は、黒い忍の格好に赤い額当てを巻いた男の姿になった。それと共に輝二は、内ポケットから札を取り出し、指を噛み血を付けた。
「我に力を貸せ!急急如律令!!」
中から出て来たのは、青い髪に銀色の簪を付け、青い生地に白い菊の花の模様を写した羽織の着た女性が、姿を現した。
「丙!すぐに焔の治療を!」
「あいよ!」
「麗華、焔達の傍に」
「うん!」
動こうとした麗華に、Aは逃がすまいと鎌を振り下ろした。その鎌を、輝二はどこからか槍を出しそれで受け止めた。
「悪いけど、娘には指一本触れさせないよ……迦楼羅!」
拳に溜めていた炎を、Aの腹部を殴った。腹部から燃えたAは暴れ回った。
暴れ回る彼から、輝二は麗華を担ぎドア付近にいた勇二に渡し、槍を構えた。炎に包まれたAは、開いていた窓から外へ悲鳴を上げて転落してしまった。
童守病院に来たぬ~べ~達……
血を抜かれ気を失っていた郷子は、病室のベッドの上で目を覚ました。
「ぬ~べ~……
あいつは、本当に人間だっのか?もしかしたら」
「分からないよ」
病室の隅に立っていた勇二は、静かにそう言った。
「分からないって……」
「けど、人間はあまりに心が醜くなると妖怪化するかもしれないね」
「人間から妖怪になるのは、極稀だけどね」
「……」
警察の霊安室で、横になるA……
すると彼の手が動き、そして赤いマントを羽織り、立ち上がった。
そして、Aはそこから姿を消した。