地獄先生と陰陽師一家 作:花札
登校中の道、克也が手に抱えていた卵を見た広は、卵を指を指しながら質問した。
「へへ。昨日森の中にあった壊れた祠の所に落ちてたんだぜ」
「フゥ~ン」
「それにしても、この卵大きいわねぇ」
「妖怪の卵だったりして」
「ハハハ!そりゃあねぇだろ?」
「とにかく、ぬ~べ~に見せたらどう?克也?」
「駄目だ!!
せっかく見つけたのに、ぬ~べ~に見せてもし、取り上げられたら損するじゃんか?!」
「何が損するの?」
突然克也の後ろから声がし、驚いた克也は慌てて卵を後ろへ隠ながら振り返った。
そこにいたのは、大あくびをする麗華だった。
「何だ……麗華か…」
「どうしたの?眠そうな顔して」
「また夜更かしでもしたのか?」
「違う……
昨日の夜、森の中にあった祠が壊れたって妖怪達が騒いでて……気になって今朝見に行ったら、そこに封印されてたはずの卵が、無くなってたんだ」
「え?」
「卵……」
卵という言葉を聞いた郷子達は、克也の後ろに隠してあるものに目を向けた。克也もみんなに釣られて、後ろに隠している卵に目をやった。
「まっ、別にいいんだけど。
私も、その卵が何の卵かは知らないし」
「そ、そう」
「お!ぬ~べ~だ!」
腰を曲げ、眠そうな目をして大あくびをするぬ~べ~が、別の道から現れた。
「おっはよぉ!!先生!!」
「ふぁああぁ~……皆おはよう…」
あくびをしながら、ぬ~べ~は広の挨拶に答えながら、先へ歩いて行った。
「良いか?絶対このことは秘密だぞ」
通り過ぎたのを見た克也は、麗華とぬ~べ~に聞こえぬように郷子達に言った。
教室……
「というわけで、中大兄皇子と中臣鎌足は……」
社会科の授業をするぬ~べ~……
席で、違うことをしていた麗華は、教室内に漂う妖気と獣の臭いに、顔を顰めていた。
(凄い妖気……
あの男だな)
後ろで教科書を読みながら、生徒と共に授業を受ける金髪の長い髪を耳下で結った玉藻を麗華は見た。
彼女とは別に、ぬ~べ~は玉藻がそこにいるのが気にくわぬ顔をしながら、授業をしており黒板に書かれる字が殴り書きへとなっていた。
「794年、大化の改新で蘇我蝦夷と入鹿の兄弟を」
「鵺野先生」
説明している最中、突然玉藻は教科書を持ちながら立ち上がりぬ~べ~を呼んだ。
「はいはい、何ですか?玉藻先生!」
「大化の改新は645年です。794年は平安京。
さらに」
「蝦夷と入鹿は兄弟じゃなくて、父子だよ。先生」
玉藻の後に続くかのように、麗華は教科書を見ながら言った。ぬ~べ~は顔を赤くして下を向いてしまい、その様子を見た生徒達は大ウケをした。
「やーい!間違えてやんの」
「先生のくせに、生徒と教生に教えられてちゃ世話ないね!」
「アイツ、妖怪のくせに何でも知ってんだなぁ」
「人間社会に、災い起すための勉強でもしてるのよ」
「努力家なのか―。偉いなー」
「アンタの髑髏狙ってんのよ!あいつは!」
郷子と広が話している声を聞いた麗華は、疑いの目を玉藻に向けた。
(頭蓋骨……何で、立野の?)
放課後……
「えー、申し訳ないが……
今日は俺達のクラスが、草刈の当番だったということを忘れてて……
すまんが、放課後残ってくれ」
突然その事を言われた生徒たちは、嫌な声を上げながら、ぬ~べ~を責めた
「しっかりしてよ!」
「ドジ!」
「ハハハ!困った担任だね。僕も手伝うよ」
笑いながら、生徒達の輪に入った玉藻……
そんな玉藻を見た生徒達は皆、彼を囲い一緒に校庭へ出て行った。
「たぁまぁもぅ!!」
「押さえて!押さえて!」
今にも殴りかかろうとしたぬ~べ~を、慌てて郷子と広が止めた。
その頃克也は、校舎の裏に着けられていた非常階段に座り、今朝持ってきた卵を見ていた。
「どうしようかなぁ……
やっぱり、ぬ~べ~見せるか……うわっ!!」
あまり気が進まなかった克也は、意を決意して卵を見せようと立ち上がり、階段を降りようとした途端、足を滑らせ卵を地面へ落してしまった。
卵は落ちた拍子に皹が入り、突然光りだし割れてしまった。
その割れる音に気付いたぬ~べ~は、音がした方へ駆けると、裏の校舎から血相を書いて掛けてきた克也が出てきた。
「先生!!」
「克也、何があったんだ?!」
「卵が、卵が!!」
「卵?」
すると、校舎裏から、歪な色をした煙が舞い上がってきた。
「煙だ!」
「何?!火事でも起きたの?!」
「違う……」
郷子と広の後ろにいた麗華が、二人の横へ立ちそう言った。それに気付いた広は、彼女に顔を向け話しかけた。
「違うって、何が」
「あれ、煙じゃない。
霊霧だ!!」
「霊霧?」
「何なの?それ」
「霊気の霧だ……!!
先生、何か来る!!」
麗華の言葉に、ぬ~べ~は前方を見た。
すると、霧が薄くなり中から魚のような容姿をした三つ目の妖怪が姿を現した。
「な、何あれ?!」
「麗!!ここは危険だ!!」
フードの中にいた焔は、只ならぬ霊気に危険を察知し鼬姿から人へと姿を変えると麗華の傍に付いた。
そんな麗華と焔を見た玉藻は、疑いの目を向けた。
(何だ?あの妖怪……私と同じ人の姿をしているが……まさか、私と同じ種族か?)
「玉藻、あの妖怪何なのか知っているか?」
麗華に目を向けていた玉藻に、ぬ~べ~は目の前にいる妖怪について質問した。
「あれは、霊霧魚です
まさか、こんなところでお目にかかるとは」
「霊霧魚?」
「霊気の霧の中を泳ぐ怪魚ですよ。
頭は悪いが霊気は、ズバ抜けている奴だ。霧を辺り一面にまき散らし、その中に入った者を尽く……」
説明していると、霊霧魚は突然霧の中を泳ぎだし、逃げ惑う生徒たちに何かを腹から噴き出してきた。
背中にかかった者を生徒を見ると、背中に着いた水の様なものにゴルフボールぐらいの大きさをした卵が何十個と浮き出てきた。
「卵を産み付けた!!」
「その通り。
奴は最初は人を食わず、まずは自分の仲間を増やすための餌にするのさ。
あの卵が孵化した瞬間、何百という稚魚が肉を食い破る。今残っている生徒など、二時間もあれば食い尽くしてしまうでしょうね?」
「何だと?!くそっ!
南無大慈大悲救苦救難!鬼の手よ!今こそその力を示せ!」
右手に嵌めていた手袋を取り、ぬ~べ~は鬼の手を露わにし霊霧魚に攻撃した。
だが、霊霧魚の身体に出来た傷は、すぐに再生してしまった。
「再生するの?!あいつ」
「この霧の中にいる限り、霊霧魚は無敵です」
「ベラベラ喋ってる暇があるなら、お前も戦え!
我に力を貸せ!!急急如律令!」
腰に着けていたポーチから札を取り出し、指を噛み血を出し付けた麗華は、それを投げた。投げた札は黄色く光り煙を上げながら侍の姿をした雷光が姿を現した。
「こ、これは?!」
「霊霧魚!再生する能力があるから、出来ないくらい叩き切りな!」
「はい!」
腰に着けていた鞘から、二つの剣を取り出し雷光は、霊霧魚目掛けて攻撃をした。雷光と共に、ぬ~べ~も攻撃の手を休めることなく鬼の手で攻撃をした。
「その式神……」
二人が、攻撃をしているのを見ていた玉藻は、麗華が出した雷光を見ながら、彼女に話しかけた。近寄ってくる彼に警戒した焔は、狼の姿へとなり唸り声を上げながら、攻撃態勢へ入った。
「焔、やめて」
「これは、白狼一族の狼ですか?」
「そういうお前は、妖狐?
教室にいた時から、獣の臭いと霊気が漂っててお前を疑ってたけど……正解?」
「……正解です。
私は、ある目的でこの人間の世界へ来たのですが、その目的を果たす前に面白いことを見つけましてね」
「面白いこと?」
「人ですよ。
人は、見ていると面白い。それにあの鵺野先生の左手に封印されている鬼にも、興味がありましてね」
「……
それじゃあ今起きていることが、お前にとって好都合って事?」
「全くその通りだ。
鵺野先生が、自分の生徒を助ける時、その霊力が無限に高めることができる。
私は、そんな鵺の先生の力の秘密を知りたいんです。
例え、何人の犠牲者が出ようと」
話を聞いた麗華は怒りの目で、玉藻を睨んだ。彼女と共に聞いていた焔は怒りからか、今にも玉藻に飛び掛かろうと、牙を剥き出しにしながら彼を睨んでいた。
「さて、あなたのご質問にお答えしましたので、こちらも質問させてもらいます。
あなたは、何者です?」
「……
平安時代の霊媒師と呼ばれた男、安倍晴明の家系陰陽師の血を引く者……名は、神崎麗華」
「陰陽師でしたか。通りで式神が使えるわけか」
「麗華!!避けろ!!」
ぬ~べ~の声にハッとした麗華は見上げるとそこに霊霧魚がいた。霊霧魚は麗華目掛けて、腹から卵が入った水を噴き放った。
「麗!!」
その攻撃に、焔は麗華を口に銜えその攻撃を避けた。彼女は焔の牙を使い、彼の背に飛び乗ると霊霧魚に目を向けた。
霊霧魚は、麗華を無視して別の生徒に攻撃しようとした。襲い掛かってくる霊霧魚に鬼の手で攻撃した。霊霧魚は鬼の手により真っ二つになったが、霧のせいでまた再生し始めていた。
「キリが無い。一旦、学校の中へ行くぞ!!」
ぬ~べ~の言葉に、外で逃げ惑っていた生徒達を学校の中へと誘導し逃げ込んだ。