地獄先生と陰陽師一家 作:花札
霊霧魚を退治しようとするぬ~べ~だが、霊気の霧の中では、全く歯が立たなかった。
攻撃しても切りがないことに気付いたぬ~べ~は、生徒達を連れて学校の中へと逃げ込んだ。
学校の中へ入ったぬ~べ~は、五年三組の教室へ入り鍵をかけた。
「広、卵を産み付けられたのは何人だ?」
「八人だ。
晶と克也とまこと」
「これからが大変ですよ?鵺の先生」
二人の話を聞いていた玉藻は、壁に寄りかかりながらそう言った。
「何が大変なんだ?」
「霊霧魚の卵は、日没と共に孵る。
もし、日没までに霊霧魚を倒さなければ……」
「卵を産み付けられた奴らは、全員食い殺される……」
「日没までって……あ、あと三十分しかないわよ…」
郷子の言葉に、ぬ~べ~は動揺の顔を隠せないでいた。
「……いや、待て。
一つだけ、方法はある」
考え込んでいたぬ~べ~が、顔を上げて生徒達に言った。
「何だよ?その方法って」
「説明は後で話す。
悪いが、誰か体育館から網を持ってきてくれ」
「網?」
「そうだ。何でもいいから、網になっている物をありったけ持ってきてくれ。作戦の説明はその後だ」
「分かった」
「体育館に行くなら、念のため雷光を連れてって。
雷光、お願い」
「はい」
「じゃあ皆、頼んだぞ」
「任せとけって!」
広が返事をすると、それを合図に数名の生徒が教室を出て行った。
「バレーボールのネット、サッカーのゴール、野球のバックネット……その他もろもろ。
言われた通り、ありったけの網を持ってきたぜ。先生」
「ご苦労」
「雷光、お勤めご苦労様。もう戻っていいよ」
「しかし……」
「大丈夫!
あとは自分で出来る」
「……はい」
渋々と雷光は札の姿へとなり、麗華の手元へと帰った。
「ククク……
そんな網で、いったいどうやってあの巨大な霊霧魚を?
奴の力を侮ってはいけませんよ?奴は」
「それ以上口出しするな、テメェのその喉を切り裂くぞ?」
喋っている玉藻の喉に、焔は自身の爪を立て当てた。その行為に驚いた彼は、喋るのを止め黙り込んでしまった。
黙ったのを気に、ぬ~べ~は鬼の手を出し、網に鬼の霊気を流し込んだ。
「なるほど。
霊力を網に封じ込めるわけですか。
これなら、霊体を捕まえることもできる……考えましたね」
「黙れ化け狐」
「おやおや、化け狐呼びですか……
あなたは、礼儀というものを弁えたらどうです?特に女性に仕えているというなら」
「余計なお世話だ!」
「この網を繋ぎ合せて、大きな網を作るんだ。
そして、校庭の周りの木に張り巡らせて、底引き網の要領で奴を斬りの外に引き出す!」
「まさか、校庭で漁業をやる羽目になるなんて……」
「でも捕まえた後、どうするの?
アイツは、殺してもすぐに再生するんでしょ?」
「それは」
「霧の中から出せば、いけると思うよ。
言ってたでしょ?あいつはこの霧の中を泳ぐ怪魚だって。
ということは、海の魚と同じように、霧の中から引き揚げられたら再生能力は失われるんじゃ」
「その通り。
霊霧魚はもともとは、深海魚が妖怪化したもの……
だから太陽の光に弱い。霧の外に出て太陽の光を当てれば、彼女が言った通り、再生能力は失われる」
「そっか、深海魚は暗闇の中でしか生きられないのから……」
「なぜ、そんなことを教えてくれる?!」
「私はあなたの力を知りたいんです。無限に霊力を高められる、その能力の秘密をね」
「生憎、そんな力は持っていない。
あるのは、死んでも子供達を守らずにはいられない……自分でも抑えきれない気持ちだけだ」
「……」
「麗華、俺が網を仕掛けている間、こっちの指示は頼んだ」
「うん!」
麗華に頼むと、ぬ~べ~は網を持って窓の外を飛び下りて行った。
霧の掛かった校庭を走り抜けていくぬ~べ~……
中には、卵を産み疲れて寝ている霊霧魚の姿があった。
(占めた!今の内だ)
ぬ~べ~は急いで、木に登り網を幹に結んで行った。
最後の網を結んだぬ~べ~は、木の天辺へ登り手を挙げて合図を出した。
「合図が出た!
皆、引っ張って!!」
「せーの!!」
合図を見た麗華の掛け声と共に、広達は一斉に網を引っ張った。網に乗っていた霊霧魚は霧の外へ引き上げられ、叫び声を上げた。
「釣れたー!!」
「見ろ!!
日光に当たった途端、アイツの身体から煙が!」
「日没まで、あと十分はあるぞ。大成功だ!」
「ヤッホー!!ぬ~べ~ばんざー」
「気を抜くな!!こっちに来る!!」
暴れていた霊霧魚は、広たちがいる教室目掛けて突進してきた。麗華はすぐに広達の前に立ち、手に持っていた薙刀を霊霧魚目掛けて振り下ろした。
「消えろ!!」
「ギャアアアア!!」
すさまじい声を上げた霊霧魚は、攻撃してきた麗華を睨みさらに突進してきた。
「火術!火炎玉!」
焔が放った火玉に、霊霧魚は驚き再び霧の中へ入ってしまった。