地獄先生と陰陽師一家   作:花札

2 / 41
月明かりが照らす夜道……


月を背に空を飛ぶ獣とその背に跨ぐ、一人の少女。少女と獣は暗い空へと姿を消した。


ぬ~べ~クラスの変わり者

校庭でサッカーをするぬ~べ~クラスの生徒達。

 

審判をするぬ~べ~の隣には、自身のスケッチブックに絵を描く少女が座っていた。前髪をM字に分け、腰まである長い紺色の髪を、耳下で結った彼女は体を伸ばした。

 

 

「コラ、麗華!!」

 

「!」

 

「見学者は、ちゃんと授業を見なさい!!絵ばかり描いてないで!!」

 

「……ちゃんと見てる」

 

「どこがだ!」

 

「ほら!」

 

 

突き付けられたスケッチブックを開くと、そこには、今行われているサッカーの様子が描かれていた。

 

 

「……た、確かに」

 

「見てるとやりたくなるから、気を紛らわすために絵を描いてんの」

 

「……」

 

 

 

「え?麗華のこと?」

 

 

放課後、掃除をする郷子達にぬ~べ~は質問した。

 

 

「あぁ。

 

どうも、扱い方が分からなくてなぁ……困ってんだ」

 

「まぁ、確かに」

 

「あの子を扱い熟す先生なんて、世界中探してもいないわね!家族を別として」

 

「麗華って、どんな奴なんだ?お前達から見て」

 

「そうね~……

 

まず、一人行動が凄く多い」

 

「立ち入り禁止の所に、平気で潜り込む」

 

「忍みてぇに、木に登ったり壁の上を歩いてる」

 

「か、変わった子だなぁ……」

 

「あ!でも、昔は凄い大人しい子だったよ!」

 

「え?」

 

「郷子、それ本当?」

 

「うん。私一年生の時から、ずっと麗華と同じクラスだから。

 

 

今と比べると、全然違うもん。いつも髪を下ろして喋らない子だったよ、三年生まで」

 

「へ~、そうなのか」

 

「四年生の時に何かあったんじゃ無いの?

 

どう?郷子、何かあった?」

 

「それが……

 

麗華、三年の夏から今までずっと休学してて」

 

「え?!休学?!」

 

「何でまた!?」

 

「何でも、持病が悪化して親戚の所でずっと療養してたって話よ」

 

「体育休んでのも、それが原因か?」

 

「多分……」

 

 

場所は変わりここは校庭。

そこでは、鶏小屋の前に座りスケッチブックに鶏の絵を描く麗華の周りに、下級生が集まり彼女の絵を見ていた。

 

 

「凄え!」

 

「今にも動きそう……」

 

 

騒ぐ声などお構いなしに、麗華は鶏をチラチラと見ながら絵を描き続けた。鶏達はそれを知ってなのか、全く動かずジッとしていた。

 

その時、どこからか飛んできたボールが、鶏小屋の金網に当たった。鶏達は驚き、羽をばたつかせながら、鳴き声を上げ暴れ回った。その様子に、麗華は手を止めスケッチブックを地面に置き、転がってきたボールを手にして立ち上がった。

 

 

「あー!また、やっちまった!

 

すいませーん!」

 

「……」

 

「ボール、ありがとうございまーす!」

 

「あんまり、動物小屋に当てないでね」

 

「はーい!」

 

 

ヘラヘラして笑う彼等に、麗華はボールを渡した。受け取った下級生は、そこからボールを蹴り、またサッカーを始めた。

 

未だに暴れる鶏達に、麗華は金網に手を当てて言った。

 

 

「大丈夫だよ。もう……」

 

 

その声に安心したのか、暴れ回っていた鶏達は暴れるのを止め大人しくなった。ホッとした麗華は、スケッチブックを鞄にしまい、帰って行った。彼女に続いて、周りにいた下級生達も帰って行った。

 

 

夜……鶏小屋の隅にいる一匹の鶏。赤く目を光らせそして鳴き声を上げた。

 

 

 

翌朝、鶏小屋は何者かの手により壊されていた。

 

 

「酷い……」

 

「誰がこんなこと」

 

「鶏は?」

 

「多分、もう……」

 

 

野次馬の中にいた麗華は、何かに気付いたのか壊された小屋の裏へ行った。茂みをかき分け、その中を見ると鶏が五匹いた。

 

一羽の鶏を抱き上げて、皆の前に出た。出て来た彼女に、郷子達は駆け寄った。

 

 

「良かった……鶏、生きてたんだ」

 

「こんだけ、小屋壊されてたのに良く無事だったな」

 

「……怪我してる」

 

「え?」

 

「ほら、ここ」

 

 

抱いていた鶏を麗華は地面に置き、羽を広げさせ裏を郷子達に見せた。何かで引っ掻かれたような切り傷が、そこにあった。

 

 

「本当だ……良く気付いたね?」

 

「何となく」

 

 

ウエストポーチから、消毒液を出した麗華は、それをティッシュに締め込ませ、その傷に当てた。鶏は痛そうに声を上げ、麗華の指を突っついた。

 

 

「れ、麗華!血が」

 

「大丈夫だよ。慣れっこだし!」

 

 

郷子に笑いながら、麗華は言った。しばらくすると鶏は突っつくのを止めた。手当てを終えた麗華は、ガーゼを取り出し、それを破り消毒された傷に巻いた。そこへ生徒に呼ばれたぬ~べ~が駆け付け、小屋を見て麗華を見た。

 

 

「これは酷い……?

 

麗華!指から血が!」

 

「あー、これ。

 

大丈夫!薬塗っとけば、治るよ!」

 

「いや、そうだが……?」

 

 

麗華の膝に座る鶏の体に巻かれたガーゼに、ぬ~べ~は目にした。ふと彼女の周りを見ると、四羽の鶏が麗華に寄り添うようにして座っていた。

 

 

(……不思議な子だ)

 

 

その後、壊された小屋の周りにロープを張り立ち入り禁止の札を立てた。鶏達は仮のケージに入れられ、その日を過ごした。

 

 

「なぁ、ぬ~べ~」

 

「ん?」

 

「あの鶏小屋壊したのって、やっぱり妖怪の仕業か?」

 

「それはまだ検討中だ。

 

……?」

 

 

職員室の窓を見ると、鶏達が入ったケージ前に、麗華が座り込んでいた。

 

 

「あいつ……」

 

「麗華って昔から、ああやって動物の絵を描くのよねぇ」

 

「そうなのか?」

 

「うん。

 

小一の時からずっと。飼育小屋の所に行っては、絵を描いてんのよ」

 

「……

 

!そうだ!なぁ、郷子!ぬ~べ~!」

 

 

放課後……校庭に集まるぬ~べ~クラス。

 

笛を鳴らしたぬ~べ~は、ドッチボールを手に全員を見て話した。

 

 

「今から皆で、ドッチボール大会やるぞー!」

 

「何でまた?!」

 

「まぁ、皆の親睦を深めるものだ。

 

チームは、赤組と白組に。正々堂々と戦おう!」

 

 

チームに分かれる一同……麗華は広と美樹のチームにいた。

 

 

「頑張ろうぜ!麗華!」

 

「う、うん……」

 

 

少し戸惑っている様子の麗華に、広は軽く疑問を持ちながらも、ゲーム開始のホイッスルの音と共に声を出しながら始めた。

 

 

相手チームにいた勝は、投げられてきたボールを麗華目掛けて投げた。

 

 

「麗華!ボール!」

 

「え?……うわっ!」

 

 

驚きながらも、麗華は難なくボールを受け止めた。

 

 

「凄え、勝のボール取ったぞ」

 

(……遅いボール)

 

「お、俺のボールが」

 

「……!麗華、投げろ!」

 

 

広の掛け声に、麗華はボールを思いっ切り投げ飛ばした。ボールは勝の顔スレスレに通り過ぎ、外野にいたまことの顔面に激突した。

 

 

「あ!まこと!」

 

「ヤバい……手加減がまだ……

 

小林!」




保健室……


両方の鼻に鼻栓を入れ、まことは鼻上に湿布を貼られていた。


「はい、これで大丈夫よ」


保健の先生から手当てを受け、まことは広達と一緒に教室へ戻っていった。

教室では、麗華が待っており彼女は、まことに頭を下げながら謝った。


「本当ごめん、小林」

「いいのだ。ドッチボールだし」

「……でも」

「気にしない気にしない!」

「そうよ!ドッチボールなんだから、こんなの当たり前よ」

「……」

「僕も大丈夫なのだ!」

「まこともこう言ってることだし、早速ゲーム再開」
「ごめん……」

「?」

「そろそろ、帰らないと……」

「え?そうなの?」

「うん……待ち合わせしてるから」

「待ち合わせ?誰と?」

「お兄ちゃんと。

父さんが帰り遅いから。学校終わった後いつもお兄ちゃんの学校に行くか、待ち合わせて買い物しながら帰るんだ」

「へ~……あれ?

お前、母ちゃんは?」

「あ、それは」


話そうとした時、ポーチから音が鳴った。ポーチを開けた麗華は、そこから携帯を取り出し画面を見た。


「ヤッバ!早く行かないと!

ごめん、話はまた今度」

「あ、あぁ」

「あ!

ドッチボール、楽しかった!」


嬉しそうに言って、麗華は教室を出て行った。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告