地獄先生と陰陽師一家 作:花札
眠っていた麗華は、スッと目を開けると体を起こした。
(凄い妖気……)
その時、突如ドアが破壊され外から獣の妖怪が入ってきた。
「!?」
「グルルル……」
目が無いのか、獣は鼻を動かしながら辺りをキョロキョロと見回した。麗華は薙刀を出そうと、ポーチに手を掛けた時、突然後ろから手で口を塞がれた。
後ろに目をやると、そこにいたのは静かにするように言うようにして、口に人差し指を当てた牛鬼だった。
傍には郷子達が、身を潜めながら獣を警戒していた。
「ど、どうする?」
「音を立てずに、外に出ろ」
「あ、あぁ……」
「安土、誘導しろ」
「分かった」
指で合図しながら、安土は郷子達を誘導した。全員が外へ出て、最後に広が出ようとした時だった。
壊されたドアの破片を、彼が踏んでしまった……その音に、獣は広達の方に体を向けると鼻を動かしながら、彼等の方に向かった。
咄嗟に麗華は、机を思いっ切り叩いた。そしてポーチから、札を出し自身の血を着けた。
「我に……力を貸せ!
急急如律令!!」
札は煙を上げそこから出て来たのは、氷鸞と雷光だった。彼等は、突進してくる獣に攻撃を食らわせた。怯んでいる獣に、氷鸞は氷の息を吹き付け凍らせた。その隙に、安土は郷子達を外へと逃がし、牛鬼達と共に廊下を駆けていった。
霊水晶から保健室を見るぬ~べ~……
「肉眼では見えないが、この部屋の空間に亀裂がある」
「そこが開いて、麗達が……」
「可能性は高い。
開くには、この亀裂を作った本人がいないと……」
「そんなら、こじ開けるだけだ」
手に炎を纏わせ、拳を作ると焔はその亀裂を殴った。だが亀裂が広がっただけで、穴は開かなかった。
「クソ!開かねぇ!」
「当たり前でしょ!」
場所は変わり、別世界の家庭科室へ来た郷子達。
「これから、どうする?」
「どうするって……外に出れば、妖怪がそこら中にいるのよ!」
「けど、いつまでもこのままじゃ……」
「保健室……」
「え?」
「保健室に行けば、何とかなる」
「……確かに、そうだ」
「じゃあ」
「安土、こいつ等を全員保健室へ連れて行け」
「分かった」
「氷鸞、牛鬼の援護に」
「分かりました」
廊下へ出る牛鬼……彼は姿を変えると、手に毒槍を出し構え音を立てた。するとその音に導かれたのか、黒い霧が上がり、その中から人の姿をした妖怪が現れた。
白い上下の服を着て、首輪を付けた青年……
「……人?」
「まさか、人に妖気を浴びさせたの?」
「え?」
「麗華、それって……」
「……話でしか聞いたことないんだけど……
強い妖気を浴びた人間は、半妖になるって」
「半妖?
半分人で半分妖怪って事か?」
「うん……それに、かなり危険」
「え?危険?」
「半妖は、理性を失っている奴が多い。
あれば、話で終わるんだけど……無ければ……」
「無ければ?」
「……私達、全員お陀仏」
「……」
「人……妖気」
「?」
歩み出す半妖……すると、口から糸を吐き、その糸は牛鬼の腕に絡んだ。
「牛鬼!!」
「兄貴!!」
「早く行け!!」
「私達は、後から行きます!」
「分かった」
馬になっていた雷光の背に広達を乗せ、麗華は妖怪化した安土に担がれ、二人は駆け出した。
階段に差し掛かった時、前に妖怪が現れ攻撃してきた。
「うわっ!攻撃!」
「しっかり掴まってろ!」
「え?ちょ、ちょっと!!」
妖怪を飛び越えるかのようにして、二人は跳び上がり階段を飛び越えていった。
「す、凄え……」
「し、死ぬかと思った……」
「そのまま突っ切って!!
安土!」
彼から降りた麗華は、札を出しそれに自身の血を付けた。札は煙を上げそこから出て来たのは、薙刀だった。束を掴むと、雷光を攻撃しようとする妖怪達を次々に滅多切りした。
「だ、大丈夫なの?!動いて!」
「人間、気合いがあれば何とかなるんだよ!」
「……」
階段を一気に駆け下り、保健室へ着くと麗華はドアを勢い良く開けた。
部屋の中央に、微かだが亀裂が入っていた。
「ここだ!」
亀裂を見た麗華は、薙刀を振り上げ力任せにそこを叩いた。だがその亀裂はビクともせず、薙刀を弾き飛ばし持ち主の彼女までも飛ばした。
「麗華!」
「無駄だ……」
開けっ放しのドアの外から、聞こえてきた声……
前にいた麗華は、恐る恐る振り返った。巨大蜘蛛の姿で立つ半妖……顔は人間だが、体は蜘蛛その者だった。
「きゃー!!」
「わぁー!!」
「見つけた……
妖気」
麗華を見つめる半妖……恐怖のあまり、彼女は腰が抜け近付いてくる彼から逃げようと、後退りした。
「麗殿!!」
「麗華!!」
「邪魔はさせん!」
金切り声を上げると、その声に導かれたのか無数の妖怪達が保健室へ、集まった。
「ギャー!!妖怪!!」
「助けてぇ!!ぬ~べ~!!」
「チッ!合戦するぞ!!
雷光!麗華を頼む!」
「承知!」
人の姿へと変わった二人は、武器を手にして突っ込んできた妖怪達を叩き切っていった。
その間に、半妖は部屋の隅にいる麗華に近寄った。
半妖の前足が、麗華に触れた時だった。突如彼女の胸が、光り出した。半妖はそれに驚き、思わず後ろへ下がった。
「こ、この光……(まさか、優華?)」
麗華は服の下に隠していた勾玉を取り出し、それを首から取ると手に握りながら、立ち上がり薙刀を怯んでいる半妖に向かって、力任せに振り下ろした。
半妖は、足を切り落とされ悲痛な叫び声を上げながら、暴れ回った。
暴れ回る半妖に、廊下から氷の槍が突き刺さった。放たれた方に目を向けると、そこに怪我をした氷鸞と牛鬼がいた。
「兄貴!」
「その亀裂に向かって、攻撃しろ!!
雷光!氷鸞!」
「はい!」
「はい!」
亀裂に向かって、二人は雷と氷の技を放った。亀裂は広がり、そこに向かって安土と牛鬼は、毒槍を突き刺した。
亀裂は黒い雷を放ち、人一人が入れる大きさになった。その先には、ぬ~べ~と拳に炎を纏わせた焔が立っていた。
「お前等!先に行け!」
「で、でも……」
「グズグズするな!」
「うわっ!」
怖じ気着く郷子達を、牛鬼は無理矢理亀裂の穴へと押し入れた。
「全員、入った?」
「あぁ」
息を整える麗華……ポーチから数枚の札を出すと、それを半妖に向けて投げた。半妖の周りには薄い結界が張られ、半妖は徐々に人の姿へと変わった。
「俺は、一体……」
「もう、人としては生きられない」
「……」
「どうする?ここで、妖怪として生きるか……
もしくは、あの世へ逝くか」
「……もう、生きるのは良い。
あの世へ逝かせてくれ」
「うん……
縛久羅仙久羅仙且主結願菩提羅且那……
祓い給え、清め給え、急急如律令……
この者の魂を浄化し給え」
半妖は光の粒となり、消えていった。
彼をあの世へ逝かせると、麗華は薙刀をしまい氷鸞達と共に穴へ飛び込んだ。
亀裂から出て来た広達……彼等に続いて、牛鬼と安土、そして氷鸞と雷光が出て、その上に麗華が降りた。全員を出したと同時に、亀裂は跡形無く消えてしまった。
「お前等、無事か!?」
「ぬ~べ~!!」
「怖かった~!!」
ぬ~べ~に抱き着く郷子達……その傍で、麗華は氷鸞と雷光、そして薙刀を戻した。次の瞬間、彼女は力無く倒れた。
「麗華!!」
「麗!!」
「……酷い熱だ!
すぐに茂の所に!」
「焔!」
学校の外へ出ると、焔は狼の姿へとなった。その上に、牛鬼は麗華と共に乗り、それを確認すると焔は飛び立った。彼の尾に安土は掴み、共について行った。
ぬ~べ~達は、タクシーを呼びすぐに病院へ向かった。
病院のベッドで眠る麗華……
「麗華!!」
連絡を貰ったのか、血相をかいた龍二が病室へ飛び込んできた。彼女が眠るベッドの周りには、郷子達とぬ~べ~、安土達がいた。
「あ!お兄さん!」
「麗華、もう大丈夫そうですよ!」
「……良かったぁ」
「龍二」
「話がある」
そう言いながら、牛鬼は安土と共に龍二を連れ病室を出て行った。
庭へ出た三人……
「何だよ、話って」
「……麗華が付けてるアミュレットが、光った。
強力な妖気を放って」
「……」
「あれって確か、優華のじゃあ」
「……お前等も知っての通り、麗華は俺等より妖力が高い。
その為、様々な妖怪から狙われている」
「それは知ってる……」
「お袋が死んでから、あいつの妖力が一気に上がった」
「?!」
「制御が利かなく、一度だけ半妖になりかけた」
「そんなことが……」
「あの勾玉は、妖力が高かったお袋に親父が送った物だ」
「じゃあ、あれば妖力を抑える制御装置みたいな物か?」
「まぁ、そうだ」
「取ると、どうなるんだ?」
「……自身で制御が出来れば、問題は無い。
けど、あいつはまだそれが出来ない。
取れば、半妖になる可能性は高い」
「……」
病室へ戻ってきた龍二……中へ入ると、郷子達は既に帰っており、傍には起きた麗華と彼女に撫でられる狼姿の焔がいた。
「あ、お兄ちゃん」
「起きて、大丈夫なのか?」
「平気。熱も下がったし」
「そうか……でも、まだ寝てろ」
「いいよ。
それよりお兄ちゃん!
私ね!今日、母さんの声聞こえたんだよ!」
「え?声?」
「うん!
母さんが傍にいるから、勇気を出してって!そのおかけで、今日蜘蛛の妖怪と戦えたんだ!」
「……」
嬉しそうに笑う麗華。その表情に釣られて、龍二は笑みを溢して彼女の頭に手を乗せた。