地獄先生と陰陽師一家   作:花札

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麗……それは、何だ?

これが……人の赤子……


可愛い……


何故、この子だけ別なんだ?


お主は、龍に似たのだな。龍も絵が上手いだろ?




嫌じゃ!!ここを離れたくない!!

約束した!!麗と……麗と約束した!!


この地を……この場所を……この家を……守るって!!


嫌じゃ……


そうだ……麗を、探せばいいのだ……




見つけた……探したぞ……


麗……


昔の家族

真っ二つに割れた鬼の面は、地面へと落ちた。

 

 

「!?」

 

「……嘘……だろ」

 

「こんな事が……あり得るのか……」

 

 

桃色に染まった目は、輝二をジッと見つめていた。攻撃しようとした鎌鬼に、迦楼羅は前に出て止めた。

 

 

「親父、どうしたんだよ!」

 

「……違う」

 

「違うって?」

 

「敵じゃ……ない」

 

「え?」

 

 

攻撃をやめたその時、それは手で合図を出しその合図を見た大狼は、口から炎を吐いた。迦楼羅は、全員を守るようにして前に立ち、その炎を自身が放った炎の力で押し消した。

 

 

「……妾は、紅蓮と麗を迎えにきた」

 

「その子達は違う!!

 

 

清!!」

 

 

その名に反応したのか、清はふと輝二を見つめた……しばらく見つめると、紅蓮の背中に麗と共に乗るとそこから飛び去った。

 

 

「清……」

 

 

 

空を飛ぶ清と麗……清は腰に着けていた巾着袋から、古びた櫛を出し、それを見つめた。

 

 

「やっと……見つけた」

 

「見ツケタ?何ヲ?」

 

「お主のことだよ。

 

さぁ、戻ったら髪の毛を梳かしてやる……紅蓮、お主の毛もだ」

 

 

 

「清は、俺の母さんの式神なんだ」

 

 

院長室に集まったぬ~べ~達……彼等の手当てをしながら、輝二はあの妖怪について話していた。

 

 

「母さんって事は……」

 

「麗華とお兄さんのお祖母ちゃんって、事だよな?」

 

「でも、麗華からお祖母ちゃんの話、聞いたこと無いよ」

 

「無くて当然だ。

 

もう、この世にいないんだから」

 

「え?!そうなの!?」

 

「確か、小六の時だよな?おじさん達が死んだのって」

 

「うん……

 

 

丁度、卒業式を終えた頃だったかな……」

 

「……祖母ちゃんって、何で死んだんだ?」

 

「事故で……白狼共々……」

 

「……

 

 

その後だったよな……お前が中学、別の所に行ったの」

 

「あそこに残ろうにも、兄さんはもう家持ってたから、引っ越しが出来なかった……あの当時、俺達はまだ中学生だったから、家に残るのは無理だったし……

 

 

泣く泣く、離れることになったんだよ」

 

「その際、式神達を解放させたんだ。

 

そして、新たに主を付けさせた」

 

「誰に付けたんだ?おじさんにつけたの?」

 

「いや、俺の兄が父さんの式を母さんの式をもう一人の兄が引き取ったんだ……

 

 

でも、清だけば頑としてそこを離れたくないって拒んだ。俺も兄さん達も、ずっと説得した……でも納得してくれなかった……

 

 

引っ越し当日……可哀想だったけど、あの家全体に結界を張ったんだ……どんな妖怪も通さない結界を」

 

「……それから、その清ってどうなったんだ」

 

「分からない……

 

 

風の噂で、しばらくの間あの家付近にいたらしい……でもいつしか、来なくなってそれっきり……」

 

「……」

 

「……あれ?

 

だとしたら、何で清は麗華のこと知ってたんだ?」

 

「そうそう。

 

麗って呼んでたよね?あの人の姿をした、妖怪を」

 

「それに、龍二のことも知ってたみたいだしな」

 

「それは……主の名を、言ったまでだよ。

 

麗華と龍二の名前は、二人の字を一文字取っているんだ。

 

 

母さんの名前は、神崎麗子。

父さんの名前は、神崎龍輝」

 

「……本当だ。

 

だから、麗と龍……」

 

「あの妖怪のことは分かったが……もう一人の妖怪は、一体」

 

「……

 

 

 

 

あれは、妖怪化した麗華です」

 

「?!」

 

 

 

古びた社……中で座っていた麗は、割れた鏡に映る自身に興味津々見つめ、色々な動きをしていた。

 

 

「コラ!動くな!

 

梳かせぬだろ!」

 

 

後ろにいた清は、そう言いながら麗の肩を強く叩き大人しくさせた。それを傍で見ていた紅蓮は、また動こうとした彼女に顔を近付かせ頬を舐めた。

 

 

「操られた振りをして、面白いか?」

 

「……やっぱ、バレてたか」

 

「あの技は、妖怪には効かぬ……何が目的で、一緒にいる?」

 

「主の傍を、離れたくない……それだけだ」

 

 

伸ばしてきた麗の手に、焔は自身の体に触れさせた。彼女は焔の頭を嬉しそうに撫でた。

 

 

「今の主は、人間だった頃の記憶は、何一つ無いぞ?」

 

「それでもいい……俺は、麗の傍にいるって決めてんだ」

 

「……」

 

 

二人の姿が、一瞬別人の姿と重なって見えた。

 

 

(……麗……紅蓮)

 

 

 

 

「嘘よ!!

 

だって、麗華は人間よ!!」

 

 

輝二の言葉に、郷子はそう怒鳴った。

 

 

「そう……見た目は普通の女の子。

 

 

けど、ある日を境に麗華は人と妖怪の間に立っているんだ」

 

「何で……どうして!!」

 

「娘は、産まれた時から俺等より霊力があった……

 

でも、気にはしなかった……確かに妖怪は寄ってくる。けど、麗華は皆そいつ等を『友達』にしちゃうんだよ。

 

彼女を餌として狙ってくる妖怪達は、『友達』が追い払ってくれる……だから、気にも止めなかった。

 

 

あの日が来るまで……」

 

「あの日って?」

 

「……お袋が、殺された日」

 

「え……殺されたって……」

 

「ぬ~べ~、どういう事?」

 

「お前達は、席を外せ。

 

ここからは、大人の話だ」

 

「嫌よ!!除け者は!」

 

「そうだ!!麗華は、俺達を何度も助けてくれた!」

 

「それとこれとは話が違う」

 

 

説得に困っていたぬ~べ~を、助けるかのようにして勇二は話した。

 

 

「君等が、麗華ちゃんを助けたい気持ちは分かる……

 

でも、現に君等のことを攻撃した……無論、俺達にもだ」

 

「それは……」

 

「話を聞いて、もし……君等に何かあってからじゃ遅い。

 

市民に怪我を負わせれば、俺も輝二も立場が危うくなる」

 

「……」

 

「あなた達は、私が送るわ」

 

「……はい」

 

「頼んだぞ、緋音」

 

「うん。

 

行こう」

 

 

緋音に背中を押されながら、二人は渋々帰っていった。

 

 

二人が帰ってた後、輝二は話を続けた。

 

 

「殺された当時は、まだ気付かなかった……

 

しばらくした後だった……一部の妖怪から、奇妙な噂話を聞いた。

 

 

長い白髪の女の子が、この辺りに出現したと……俺は迦楼羅と一緒にその妖怪を探した。

 

でも、見つからなかった……

 

 

 

 

数年後だった……その女の子が、麗華だと分かったのは」

 

「何で分かったんだ?龍二」

 

「……襲われたんだよ……俺が」

 

「え?」

 

「丁度、部活帰りだった……家に帰ってきたら、いきなり攻撃された。

 

 

意味が分からず、戦おうとしたけどすぐに分かった……相手が、麗華だって」

 

「龍二から連絡を受けて、すぐに家へ帰った……

 

帰ってきた時、麗華は妖力を抑えるので手一杯になってた……苦しそうに息をして……

 

 

抑え込めなければ、麗華は妖怪になる……そう思い、一部の妖力を封じたんです……その時の記憶と一緒に」

 

「だから麗華ちゃん、小さい頃の記憶が曖昧だったのか」

 

「その後、体を慣れさせるために彼女を兄の元へ送ったんです。

 

そして、自分で抑えられない分の妖力をこの勾玉で、制御していたんです」

 

 

そう言いながら、輝二は内ポケットから勾玉のアミュレットを出した。

 

 

「だから、学校を」

 

「えぇ……元々、麗華は学校が苦手のようでしたし。

 

良い機会だと思い、兄の元へ行かせてそこで修業するのも、良いかと……」

 

「……」

 

「元に戻す方法は、無いのか?」

 

「あるにはあるけど……出来るかどうか……

 

 

それに、やる前に清を説得しないと」

 

「だな……あの様子じゃ、麗華ちゃんを本当におばさんと」

 

「違うと思う……」

 

「?」

 

「清は……清は、分かってるんだと思う。

 

母さん達は、もう帰って来ないって……いないって事を。でも、信じられないんだ……

 

俺もそうだった……兄さんの家に越してきてから数ヶ月の間、二人が死んだのを受け入れられなくて」




清の膝に頭を乗せ、気持ち良さそうに眠る麗……眠る彼女の頭を、清は撫でていた。


「……母親みてぇだな……お前」

「そうか?

昔、麗にも良くこうやって撫でた。


妾を式神にした時からだ」

「……お前の主って、どんな奴だったんだ?」

「一言で言うなら、強い女。


涙一つ見せぬ、強い女だった……

麗は、霊力が高かった……そのせいで、親からあまり良い扱いをされなかった。いつも一人だった」


掠り傷をそこら中に付け、桜の木の根元で白狼の紅蓮と共に自身の薙刀の手入れをする麗子の姿が、清の目に映った。


「……麗はいつも言っていた。


人を信用したって、ろくな事がないと……その気持ち、妾にはよく分かった」

「……」

「だから……妾はこの地を、守りたいのだ。

悪しき心を持った、あの男から」

「あの男?」

「気付いておらぬのか?


見た目は人の姿をしているが、皮を剥げば現れる……


お主等は知っているはずだ……あの、四年前の犯人を」
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