地獄先生と陰陽師一家 作:花札
子連れの女……
友達と馴れ合う女……
男とイチャつく女……
幸せそうに笑っている女……
憎い……恨めしい……
全員……あの世に送ってやる!!
緋音が郷子達を送り、病院へ着き中へ入ろうとした時だった。
「あの」
「はい?」
黒いパーカーのフードを深く被った男が、彼女に声を掛けてきた。
「えっと……コンビニって、この辺りにありますか?」
「コンビニですか?でしたら……!」
妖気を感じた緋音は、すぐに話すのをやめゆっくりと後ろへ下がった。
「でしたら……どこです?」
「えっと……
近くに、交番があるのでそこへ」
「酷いなぁ……
人が、道を尋ねてるのに交番に任せるなんて……
無責任すぎるよ!!」
「キャァアア!!」
彼女の叫び声にいち早く気付いた真二と龍二は、すぐに外へ飛び出した。外へ出ると、ハンターナイフを手に持った男が、緋音の上に馬乗りになり彼女を刺そうとしていた。
「緋音!!」
「この野郎!!」
助走を付けた真二は、その勢いのまま男に跳び蹴りを食らわせた。彼が緋音から離れた隙に、龍二は彼女を担ぎ上げ後からやって来た勇二に渡した。
男は頭を抑えながら、ナイフを手に立ち上がり彼等の方を見た。
「お前……」
「いやぁ、刑事さん。
やっと、俺を見つけてくれたね?あんなに証拠を残したのに、全然捕まえに来ないんだもん。
凄く退屈だったよ」
「先生達!!早く、建物の中へ!!
勇二!署に連絡!!」
「もう連絡している!!
こちら、桐島!」
ぬ~べ~達の前に立った輝二は、懐から札を取り出し血を付けた。
「我に力を貸せ!急急如律令!!」
灰色の煙を上げ、中から暗鬼が姿を現した。
「鎌鬼、お前も親父の所に!」
「そのつもりだ!」
「わぁ、妖怪がいっぱい。
アッハハハ!いいね~……さすが、陰陽師」
不気味な光を目から放つ男……その時、彼の前に狼姿の焔が降り立った。
彼の背から飛び降りた麗は、男を見た瞬間彼の後ろへ回り、薙刀を振り上げた。
「麗華!!やめろ!!」
「ハァ……ハァ……」
後ろへ下がった男は、体制を整えると持っていたハンターナイフを構え直し、麗華目掛けてナイフを振り下ろした。刺される寸前、彼女の前に清が降り立ち泡を吹いた。
「清!!」
「早く、麗を!!
焔!!手伝え!!」
狼姿から人の姿へとなった焔は、男の周りに炎の壁を作り上げ、逃げ道を封じた。その直後、周りに明かりが点いた。
「お前は完全に包囲された!柴崎紀之!
四年前の四人の殺害容疑、そして今回六件の殺人容疑で、お前を逮捕する!」
赤いランプの明かりが点いたパトカーから、スピーカーを使い柴崎に言った。その時、彼は力無く倒れた……そして、体から黒いマントを羽織り刀を持った妖怪が姿を現した。
その姿を見た焔と麗華は、一瞬固まりそして思い出した……
「……コイツだ」
一筋の涙を流す焔と麗華……彼女の目に、いつもの光が戻っていた。
その妖怪は、麗華達を見下ろすとその場から去ろうとした。
「逃がすか!!」
「渚!!」
「迦楼羅!」
三人は逃がさぬよう、妖怪を囲った。そして、渚は口から液を掛けた。妖怪は掛けられた液の匂いに耐えられず、地面へ落ちた。弱まる妖怪に、焔と迦楼羅は炎を噴き出した。火だるまになり、もがき苦しむ妖怪に輝二、龍二、そして麗華は槍、剣、薙刀を振り上げた。
「闇に住む邪悪な影よ」
「人の命を吸い取り、生きる道を」
「我等陰陽師が、この場で成敗する!!」
「成敗する!!」
「成敗する!!」
力任せに、三人は各々の武器を振り下ろした。妖怪は悲痛な断末魔を上げながら、黒い煙を上げて消えた……
その瞬間、麗華の髪が白から元の色、紺色へと戻った。息を切らしながら、三人はその場で仰向けに倒れた。
翌日……
病院へ来た郷子と広、そしてぬ~べ~。受付で手続きをすると、三人はある病室へ入った。そこにいたのは、病院ベッドに座り、外を眺める麗華だった。
「麗華!」
「?
あ!郷子!立野!」
「何だ、結構元気そうだな?」
「まぁね。昨日熱下がって、今日は起きられて」
「ビックリしたよ!入院だなんて」
「へへへ……ごめん」
「体の方は、もういいのか?」
「うん……今夜、まだ残ってる妖力を牛鬼達にあげれば、もう元通り!
何か、ごめんね。私色々迷惑掛けちゃったみたいで」
「良いって!良いって!」
「麗華が無事なら、それでいいって!ねぇ!」
「そうそう!」
「ありがとう!ヒヒ!」
「それにしても、今朝のニュース凄かったわよ!
連続殺人鬼が捕まったって!」
「そうそう!
テレビに、お兄さんとおじさんが映ってたぜ!」
「そりゃあね!お兄ちゃんが犯人の顔を見て、それを頼りに父さんが捕まえたんだもん!
映って当然!」
楽しそうに広達と話す麗華を、清は病室の外から見ていた。そんな彼女に、薬を持ってきた茂は声を掛けた。
「そんな所にいないで、中に入ったらどうだい?」
「べ、別に良い。
妾は、ただ……」
「……罪悪感でもあるの?麗華ちゃんを、妖怪にしたって」
「……ただ、麗に会いたかったんだ……
それに、あやつは妖気が溢れていた……いっその事、妖怪にして妖気を全て、放った方が良いかと思って」
「妖怪にした」
「……」
「まぁ、外から見ればあまり良くはないけど……
僕は、良かったと思うよ。妖気で苦しむ麗華ちゃんを見たくなかったし」
「……だけど、輝は」
顔を下に向ける清……その時、病室からヒョッコリと麗華が顔を出した。
「あ!あん時の妖怪じゃん!」
「!」
「ギギーとは、違う妖気を感じたからまさかと思ったけど!
どうしたの?」
「い、いや……その……」
モジモジした清は、手に持っていた何かを麗華に渡すとその場から姿を消した。
「あの子は、恥ずかしがり屋さんだね」
「……!」
麗華は渡された物にふと、目を向けた。それは桃色の翡翠で出来た小さい桃の花だった。
「お見舞いに来たんだろうね。
勇気を出そうとしたけど、先に友達が来たから行けなかったんだろうね」
夜……
病院の屋上で、自身の髪を梳かす清。その時、後ろから小さい紙袋が差し出され、驚き振り返った。そこにいたのは、大きな饅頭を食べる輝二だった。
「輝二……」
「食べる?
輝一兄さんのお店で作ってる、特大お饅頭」
「……輝一は、和菓子屋になれたのか」
「なったなった。
兄さん、お菓子作りは上手かったから」
「……」
「……帰ってきて……くれるかな」
「え?」
「その……俺、仕事に集中しちゃうと周りが見えなくなるから……麗華と龍二を、見失っちゃいそうだから……その」
「昔みたいに、尻を叩いて欲しいのか?」
「そ、そんなんじゃ!」
「お主、昔からそうだろう?
麗にいつも尻を叩かれて」
「清~!」
「でも、良いのか?」
「良いに決まってんじゃん!」
「お主が良くとも、麗と龍は!
妾は、麗を……麗を、妖怪に」
「いたぁ!」
屋上のドアを勢い良く開けた麗華は、声を上げながら嬉しそうに二人の元へ駆け寄った。
「父さん、見っけ!」
「麗華!寝てなきゃ駄目だろ?」
「もう平気だよ!
明日は、皆が待ちに待った祭りだもん!休んでなんかいられない!」
「祭り?」
「神楽舞のことだよ。
ほら、母さんよく舞ってただろ?」
「……あの舞、出来るのか?」
「もちろん!」
「麗華は妖怪達の中じゃ、アイドルだからね」
「ヒヒ!」
満面な笑みを見せる麗華の顔が、麗子の顔と重なって見えた。
(……麗)
「ねぇ!清も来るんでしょ?」
「え?そ、それは……」
「来なきゃ駄目!」
「け、けど」
「はいはい、言い訳は麗華の舞を見てからね」
「輝二!!」