地獄先生と陰陽師一家 作:花札
とある高原に来た童守小、五年の生徒達……
各々は色々な箇所へ行き、楽しそうに遊んでいた。
木に登った麗華は、辺り一面に広がる山々を眺めた。
「何か、輝三の所みたい!」
「麗華ぁ!
何か見えるぅ?!」
「変わったのは何も!
でも、めっちゃ綺麗だよ!」
一方その頃、ぬ~べ~は律子先生と一緒に、景色を眺めていた。
「良い景色ですね、律子先生!」
「本当に!
あの新しく出来た鉄塔が無ければ、もっと良かったんですけどね……
でも、やっぱり気持ちいいなぁ!やっほーー!!」
「(おお……律子先生、何と美しき声だろう。
山の児玉が、まるでソナタを奏でているようだ)
んじゃ、僕も負けずに……やっほーー!!」
「成仏させろー!!」
「な、何ですか!?今のは?!」
「いや、その……
どうも、この方達が返事したようで……」
近くに立てられた看板をぬ~べ~は、律子先生に見せた。それは『早まるな!自殺者多し』と、書かれていた。
それを読んだ彼女は、彼を叩き走って逃げていった。
昼を食べしばらくした後、皆帰りの支度を始めた。
峠を下りるバス……崖下には、何台もの車が落ちていた。
「な、何か自棄に事故多いわね、この道」
「あ!あそこにまた、一台!」
「カーブが多いからでしょ」
「この辺りは『鬼門峠』と呼ばれ、昔から難所と言われていました。
伝説では、この峠のどこかに霊界が通じる『鬼門』があるからと、されています」
峠を走るバスの中、バスガイドは郷子達にそう説明した。
「鬼門って何?ぬ~べ~」
「何だ、広。そんなことも知らんのか?
鬼門というのは、陰陽道で不吉とされている場所で、そこでは車の衝突事故などが、起こりやすくなるんだ」
「その話なら、従兄弟に聞いたことあるよ!
鬼門に近付くと、陰陽師が体調不良を起こすって」
ぬ~べ~の隣に座っていた麗華は、窓の外を眺めながら顔を真っ青にして話した。
「お前のは単なる、車酔いだ!」
「焔も?」
「帰りてぇ……」
「知らん!!」
「ぬ~べ~!話の続き!」
「ウォホン!
科学的に言えば、そういう場所は地磁気が強くなっていてな。霊界との連絡口になっている。
そこからやってくる妖怪共が、事故を起こす原因なのさ」
「まぁ……この先生、霊の話になると急に元気になるのね。何だか気持ち悪いわ」
バスガイドの言葉に、心に傷を負ったぬ~べ~はいじけてしまった。そんな彼を、郷子は慰めた。
「今でも事故が多いの?」
「そうねぇ……今月に入ってから、もう十人は死んだわね。
生き残った人の話では、事故の直前怪奇現象があったそうよ……何かがドーンとぶつかって」
その時、車の後ろに何かがぶつかったのか、大きな音が車内に響いた。
「な、何だ?!今、物凄い音が?」
「何かがぶつかったんじゃ」
「い、いや……ミラーには何も映ってない」
「それで、それからどうなるの?」
「え?
ええ……その後、急にブレーキが効かなくなって」
その時、運転手が突然顔色を変えて、震えた声で言った。
「ブレーキが……効かない」
「ええ?!」
またしても、車に何かがぶつかったのか、大きな音がした。
「これは……」
「外に何かいる!!」
「ぬ~べ~!!」
「目に見えない何かが!!」
「ゆ、幽霊だ……幽霊がこのバスを狙ってるんだ……
ひー!!」
運転手は恐怖のあまり、バスのドアを開け外へ飛び出そうとした……次の瞬間、彼の体が何か鋭い刃物のような物で千切りにされてしまった。
「う、運転手さんが!!」
「何がいんのよ!!
姿を見せなさい!!」
ポーチから札を取り出し、麗華は窓を開けるとそれを投げた札は光を放ち、見えなかったものを見せた。
それは、事故車に寄生したヤドカリのような妖怪だった。
「キャァアア!!」
「いやー!!お化け!!」
『鬼門ヲ開ケロ……俺ヲ帰セ!!』
「沙裏鬼……
霊界の表層部にて、現世との間を往復するだけの、無害な妖怪なのに……何故!?」
『鬼門ヲ開ケロ!!』
そう怒鳴りながら、沙裏鬼はバスに体当たりした。バスはガードレールに当たり、今にも落ちそうになっていた。
「きゃあ!!危ない!!」
「突き落とされるぞ!!」
「やっぱ鬼門から出入りしてた化け物だ……」
「出てる最中に、何だかの理由で鬼門が閉じちゃったから、帰れなくなって怒ってるんだね」
「それで何で人を襲うのか?!」
「人に問題あれば、妖怪は普通に襲うよ」
『帰セ!!』
沙裏鬼は後ろへ下がると、バスの後部席の車窓を割った。
「キャァアア!!」
「しまった!!後ろをとられた!!」
「運転私に任せて、先生は早くあいつを!!」
「頼んだ!麗華!!」
「焔!!先生の援護!」
「応よ!」
運転席から離れたぬ~べ~は、後ろへ行き沙裏鬼に攻撃した。その間に、車のメーターを見ると80㎞を超えていた。
「もう!!このスピード下げなきゃ、曲がりきれない!!転落しそう!!」
「あと少し行けば、緊急待避所がある!
それまで持ち堪えるんだ!」
「それ聞けば、何とか持ち堪えられそう!
?
先生!!道の向こうに、歪みが見える!」
「?
あれは!!鬼門だ!
だが、磁場が歪んで上手く開いていない!何故だ!」
「……!
そうか……
先生!!多分、その辺に立ってる鉄塔のせいだよ!!」
麗華の言葉に、ぬ~べ~は窓から身を乗り出し鉄塔を見た。
「……そうか。
新しく出来た送電線の高圧電流が、鬼門の磁場を歪めていたのか」
「だから、人に攻撃……
なるほどね!それなら、納得!!」
「だとすると、あの電流を遮断すれば……
麗華!!」
「何!」
「俺は奴をバスから切り離す!!
お前はバスを!」
「避難所に入れるんでしょ!」
「頼んだぞ!」
「アイアイサー!
焔!先生を手伝って!」
「応」
鬼の手を解放しながら、ぬ~べ~はバスから飛び降り沙裏鬼に攻撃し飛び乗った。
「先生!!」
「鬼の手よ!!伸びろ!!」
天高く伸びる鬼の手……伸びた先は電流が走る線を握り切った。すると、歪んでいた鬼門が開き、沙裏鬼は車を捨て鬼門の中へ帰って行った。
ブレーキが効くようになった麗華は、すぐにブレーキを踏みサドルを切り車を止めた。
「と、止まった……」
「た、助かった」
「先生は?!」
「焔!」
道路には、焔の背に乗ったぬ~べ~が親指を立てていた。
「おい……」
「?」
「さっさと俺の背から降りろ!!」
「す、すいません!!」
慌てて降りたぬ~べ~……焔は首を振ると、麗華の元へ駆け寄り体を擦り寄せた。
「鵺野先生!!」
「やぁ!律子先生」
「キャー!!いやー!!怖い!!来ないでー!!」
「へ?」
突然逃げた彼女に、ぬ~べ~は訳が分からずにいた。
しょんぼりして、自分のバスに戻ろうとした時、彼の背中に着いていた沙裏鬼の腕が地面に落ち、それは何事も無かったかのようにスッと消えた。