地獄先生と陰陽師一家 作:花札
鉄棒で逆上がりの練習をするまこと。ふと隣の鉄棒を見ると、何かが垂れ下がっており、それはまことの方に振り向いた。そしてニタァっと不敵な笑いを浮かべた。
「ウワァァアア!!」
まことは叫び声を上げながら、そこから逃げていった。
彼がいなくなったと同時に、それはスッと消えた。
翌日……
校庭に集まるぬ~べ~クラス。
「今日の体育は、鉄棒のテストだ。
まず手始めに先生が、お手本を見せてやろう!」
「え?!先生、鉄棒なんてできるの!?」
「俺、除霊しか能のない霊能お宅だと思ってたよ」
「お前等なぁ!
学生時代、“鉄棒のぬーちゃん”と呼ばれた俺の実力、見せてやる!
見よ!片手大車輪!」
「おおー!!」
「トカチェフ!」
「凄え!!」
「カッコイイ!」
「意外だ!
あの先公に、こんな爽やかな一面があったとは!」
次々に技を見せるぬ~べ~の目に、授業で校庭に出ていた律子先生が入り、格好いいところを見せようと調子に乗り始めた。だが、律子先生の胸を見ながらやっていたせいで、謝って手を離しそのまま地面に顔面着地。
その情けないぬ~べ~の姿に、見ていた律子先生は呆れて溜息を吐いた。
顔を真っ赤にしたぬ~べ~は、逆上がりをする生徒達を見ながら、評価を着けていった。
「全く、すぐ調子乗るんだから!」
「うるさい!
次、神崎麗華!」
「ヘーイ」
立ち上がった麗華は、鉄棒の前に立ち逆上がりをしようと構えたが、逆上がりなどやらずに一回転すると、その勢いのまま棒の上に立った。
「おおー!」
「コラ!!逆上がりをせんか!!」
「出来ません」
「和やかに言うな!!」
「文句の多い先生だなぁ。
自分だって、さっき逆上がり以外の技やってたじゃん」
「俺はいいんだ!
次!木村克也!」
「ハーイ」
軽々と逆上がりをやった克也に続いて、まことが鉄棒の前に立った。
「……
先生」
「?」
「やっぱり、鉄棒やめた方がいいのだ」
「へ?」
「この鉄棒には、河童がいるのだ……
昨日一人で練習してたら、出たのだ……祟りがあるかもしれないから」」
「て、鉄棒に河童……」
言葉を繰り返し言った途端、全員笑い出した。
「まこと~嘘吐くんなら、もっとマシな嘘吐けよ~!」
「要するに、鉄棒出来なくて恥じかくのが嫌なんだろ?
ったく、しょうも無い……
麗華を見てみろ!鉄棒できないことを堂々と言ったぞ!」
「そう言うなら、一回転ジャンプしてよ。
偉そうに言うって事は、出来るんでしょ?」
「出来るわけねぇだろ!」
「嘘じゃないのだ!!
確かに僕は鉄棒は苦手だけど、嘘を吐いてサボろうとする様な卑怯者じゃないのだ!!」
「だいたい河童っていうのは、川とか沼に出るもんで……
何か言ってやってよ!先生」
「分かった。
今すぐ鉄棒を使用禁止にしよう!」
「ええ!?」
「何で!?どうして、こんな話信じるワケ!?」
「危険があると分かった以上、放っておく訳にはいかない。
皆も、今日から鉄棒に近付くな!
予定変更!今日の体育は、マラソンにする!」
「え~!!」
「嫌だぁ!!」
「先生、今から見学に入りまーす」
昼休み……使用禁止と書かれた札が下がる鉄棒を前に、ぬ~べ~はダウジングを手に調べていた。
調べる彼の前に、鼬姿の焔が通った。彼に気付いたぬ~べ~は、去って行く焔を目で追い駆け振り返ると、そこに麗華がいた。
「校長達、カンカンに怒ってたよ」
「いいんだ。
生徒が見たって言うからには、ここを調べないとな」
「……フーン」
その様子を、まことは影から見ていた。
そして、昼休みが終わる頃、まことは鉄棒を使い地面を思いっ切り蹴っていた。その様子を、広は遠くから見ていた。
「出ろ出ろ!河童!出るのだ!!」
「あいつ……」
立ち去ろうとした時だった……地面から突然、河童が現れまことを地面へ引きずり込んでしまった。
「ぬ~べ~!!まことが河童に!!」
慌ててぬ~べ~に知らせに行った広は、彼と共に裏庭にある古井戸へ向かった。そこには既に麗華が、ロープを繋げ降りようとしていた所だった。
「麗華!何でお前が!?」
「この井戸の水脈が、鉄棒の下まで続いている」
「え?!」
「それだけじゃない!
この水脈は学校の裏の明神沼まで、繋がってる!河童はその沼の主だ」
「さっすが!先生!」
「そ、その沼の主が何で鉄棒の邪魔するんだ?」
「分からない」
「河童って、本来は水神だったのが落ちぶれて妖怪化した奴だって聞いた」
「元が神だけに、その霊力も侮りがたいものがある。
着いたぞ!ここが鉄棒の真下!」
狭い道を歩いてきたぬ~べ~達が辿り着いた場所は、拾い空洞になっていた。
「な、何でこんな広い穴が!?」
「地下水脈の流れが、長い年月を掛けて少しずつ岩を削っていったんだ。
気をつけろ!敵はどこに潜んでいるか分からないぞ!」
注意したその時、後ろから何者かが広の頭を鷲掴みにした。
「わあぁぁあ!!」
「広!?」
「立野!?」
「麗、下がれ!!」
フードにいた焔は人の姿になり、麗華を後ろへ隠した。ぬ~べ~は鬼の手を構え、河童を攻撃しようとした時だった。
「待って!!
その河童君は、悪い妖怪じゃないのだ!!」
「まこと!!無事だったのか?!」
「ど、どういう意味だ?!」
「その河童君は、僕達を守ろうとしてくれたのだ!!
コイツから!!」
懐中電灯を照らした先にあったのは、不発弾だった。
「こんなものが、校庭の真下に……
?な、何?!この揺れ」
「……!上は、鉄棒か!!」
「そっかぁ……地盤が脆いから、ちょっとの振動で崩れ易くなってんだ」
「よし!
このまま、爆発させるか!」
「阿呆!!上の奴等が、死ぬ!!」
「もう間に合わない!!一か八かだ!!
南無大慈大悲救苦救難!白衣観音に封ぜられし鬼よ!!その力を示せ!」
鬼の手を出したぬ~べ~は、地面に手を向けた。鬼の手は地面を貫き、鉄棒で遊んでいた生徒達は、その手に驚き逃げ出した。
「ヤバい!さっきので、地盤が!」
「水に潜れ!!」
「焔!行くよ!」
広達を連れ、ぬ~べ~は潜った。次の瞬間、爆弾のスイッチが入り爆発した。
学校から黒い煙が上がった頃、明神沼から広達は出てきた。
「よ、よく助かったな……」
「ああ。あいつが引っ張って連れて来てくれたおかげだ」
ぬ~べ~が向く方向には、あの河童がいた。
「あの爆弾から、子供達を守る為に鉄棒をやらせまいとしてたんだな」
「良い妖怪なのだ!君は」
河童はニタっと笑うと水に潜り、そのまま姿を消した。
数日後……
体育館で卓球をするぬ~べ~クラス。鉄棒が壊れ代わりに卓球になったはいいが、まことが得意だと言っている傍ら、細かい運動が苦手な広は天狗が出るからやめようと、ぬ~べ~に訴える日がしばらく続いた。