地獄先生と陰陽師一家 作:花札
センター街を歩く広達。
他愛のない話をしていると、何やら人が群がっていた。気になり人混みをかき分ける見に行くと、そこにいたのは……
「この、クソガキ!!」
「よっ!」
制服を着た男の拳を、軽々とバク転しながら避ける麗華がそこにいた。
「へっへーん!お前の攻撃なんざ、見え見えなんだよ!」
「こっっのぉ!!」
「あれ、麗華だよな……」
「だな……」
「こんなとこで、何やってんだが」
手に地面を着いた麗華は、その手を軸に回転して攻撃してきた男の体に蹴りを入れた。顔面に蹴りを受けた男は、蹌踉けその場に尻を着き麗華は、彼を背に立った。
顔を手で抑えながら立ち上がった男は、彼女に向かって隠し持っていたナイフを振り下ろそうとした。その時、ナイフを振り上げた腕を、背後から何者かに掴まれ阻止された。
「人の妹を、何刺そうとしてんだ?」
「え、えっと……こ、これは」
「龍二ぃ!麗華、捕獲したぜぇ!」
いつの間にか肩車をされた麗華を見せながら、彼と同じ制服を着た男が言った。
「さぁて……一暴れするか」
翌日……
「『鈴海高校の生徒、万引き常習犯を捕まえる!』
凄え!これ、昨日の事じゃねぇか」
郷子が持ってきた新聞の切れ端を見ながら、広は驚いていた。
「麗華が相手にしてた高校生、万引きの常習犯だったのか!?」
「しかもあの高校生、警察も手を焼くほどの問題児だったらしいわよ!」
「ふぇー」
「あれ?そういえば、麗華は?」
「まだ、来て」
「刷り込みセーフ!」
チャイムが鳴ったと同時に、麗華は教室へ刷り込み入ってきた。その直後、ぬ~べ~も教室へ入ってきた。
「今日もギリギリセーフ!」
「何がギリギリセーフだ!
もう少し早く来んか!!」
「遅刻してないんだから、いいじゃん。
これくらい大目に見てよ!」
「あのなぁ!!」
「まぁまぁ、先生!
この記事読んで、今日の所は大目に!」
そう言われ、ぬ~べ~は広からあの新聞の切れ端を見た。
「何だ、これ今朝の新聞に載ってた記事じゃ」
「なんと!それに、麗華が関わってんだよ!」
「何?!」
「私達、昨日その現場見たのよ!」
「ほ、本当か?麗華」
「昨日?
あぁ!昨日の弱っちいくせに、偉そうにしてた高校生!
うん!相手にしたよ!」
「常習犯って書いてあるが、何で相手にしたんだ?」
「昨日たまたま、あの辺り通り掛かったらあいつが万引きするところを、目撃して。
それで、相手に!」
「それで相手にって……お前なぁ、犯人はナイフを持ってたって書いてあるぞ!
危ないだろ!」
「平気だよ!刺される寸前、お兄ちゃん達が助けてくれたから!」
「だからってなぁ……」
放課後……
「しっかし、ぬ~べ~みたいな人が、この学校に呼ばれるとは」
二軒の四階建て校舎が建つ校門の前に、ぬ~べ~は広達と立っていた。
「お前等なぁ……
俺は仕事でここに来たんだ。さぁ、早く帰った帰った!」
「そんな水くせぇこと言うなよ!」
「鈴海高校って言ったら、今朝の新聞に載ってた生徒に会えるかもしれないじゃない!」
「っ……
頼むから、仕事の邪魔だけはするな」
「ハーイ!」
来校者と書かれた名札を首から下げ、広達はぬ~べ~が話をしている間、校舎を見回り体育館と道場近くを歩いていた。
「デケぇ」
「本当……あ!ねぇ、見てみて!」
美樹が指差す方向に目を向けると、道場の中で道着を着た生徒達が、何かの練習をしていた。
「凄え……」
「何の練習してるんだろう?」
「あれ?郷子に立野達じゃん!」
聞き覚えのある声に、広達は振り返った。そこにいたのは、スポーツドリンクを飲む男と、タオルを持った麗華だった。
「麗華!?」
「何でアンタがここに?!」
「お前、神出鬼没だな……」
「何だ麗華、友達か?」
「学校の友達」
「ふーん……」
「滝沢!練習始めるぞ!」
「あ、はい!
麗華、頼む」
容器を麗華に渡すと、滝沢という男は道場へ入った。
「あの人、昨日万引き犯捕まえた人じゃ」
「そうだよ」
「嘘ぉ!!」
「麗華、あの人と知り合い?」
「うん。
この学校の生徒会の書記・滝沢真二」
「滝沢さんて言うんだ、あの人」
「麗華のお兄さんじゃないの?」
「違う違う、あの人は」
「麗華!タオル!」
道場からヒョッコリと顔を出した真二に、麗華は手に持っていたタオルを丸め、思いっ切り投げた。彼は難なくキャッチして礼を言いながら、再び中に入った。
「そういえば、何で皆ここに?」
「ぬ~べ~の仕事でここに!」
「仕事?
あ~、あれかな?」
「あれって?」
「麗華、何が知ってんの?」
「心当たりならあるよ」
「え?!何々?!」
「うんとね!」
「話すな!それ以上!」
後ろから袴姿の男が、麗華の口を手で塞ぎながらそう言った。
「あれ?この人、昨日の万引き犯を蹴り飛ばしてた」
「お前等……確か、麗華の」
「クラスメイトでーす!」
「やっぱり……
何でここに?」
「先生の仕事についてきたんです!」
「仕事?
あの校長、ついにインチキ霊媒師に頼んだな」
「インチキじゃないわ!!本物よ!」
「へいへい、そういう事にしときますよ。
そろそろか……真二!」
麗華の兄に呼ばれると、真二は部員に何かを言いながら、タオルを持ってやって来た。
「おっ待たせぇ!!」
「緋音迎えに行って、さっさとやるぞ」
「了解!」
「お兄ちゃん!私も!」
「来てもいいが、危ないことはするなよ」
「ハーイ!」
「何だ?どっか行くのか?」
「ん?えっとね……
生徒会のお仕事!」
笑みを見せた麗華は、先に行った龍二達の後を追い駆けていった。
「鏡の世界……ですか」
校長はぬ~べ~にお茶を出しながら話をした。
「はい……この新しい校舎が建つ十年ほど前は、旧校舎があり、そこの踊り場にはとても大きな鏡がありました。
しかし、旧校舎が取り壊され新しい校舎が建ってからおかしな事ばかりが、起こるようになりました。
誰もいない夜に、階段を駆け上る足音や昼間突然ドアが開いたり、水場のないところで水が流れ出ていたりと……奇々怪々な事ばかり」
「その、鏡はどうされたんですか?」
「校舎が壊されたと同時に、そのまま。
やはり、霊の仕業なのでしょうか」
「まだ断定は出来ません」
「そうですか……
あ、そうだ……この事件と関係があるかどうかは分かりませんが、少々ご覧になって貰いたいものがあります」
そう言うと、校長はぬ~べ~をある場所へ案内した。
案内された場所……そこには、四階と三階の踊り場に着けられた大きな鏡が飾られていた。
「これは……」
「先程話しました鏡の一つです」
「え?二つあったんですか?」
「はい。
一つは壊された旧校舎に。もう一つはここに。
七不思議と言いますか……この鏡と壊された鏡は、二つで一つだったらしいんです」
「二つで一つ……」
「詳しくは知りませんが……」
「校長先生!ちょっと」
「あ、はい。
それでは鵺野さん、お願いしてもいいですか?」
「はい。お任せ下さい」
呼ばれた教員と共に、校長はその場から去って行った。
一人になったぬ~べ~は、水晶玉と数珠を手に、鏡を調べ始めた。
“キ―ンコーンカーンコーン……キ―ンコーンカーンコーン”
学校全体に鳴り響くチャイム。美術室に着ていた広達は、音に気付き顔を上げた。
ふと、壁に飾られていた鏡に目を向けた……その時だった。
突然鏡が光り、広達を包み込んだ。光はすぐに収まった……だが、そこにいたはずの彼等の姿は、どこにもなかった。
「?」
何かを気配を察したのか、ぬ~べ~は鏡に背を向け上を見た。
(……何だ、今凄い妖気を)
「あれ?先生!」
聞き覚えのある声に、ぬ~べ~は振り向いた。そこにいたのは、階段を降りてくる麗華と兄達だった。
「麗華!?」
「あれ?先生一人?
他の皆は?」
「いや、あいつ等は校舎内を歩いてるはずだが……」
「そんなはずは無いわ。
生徒が行方不明になるからって、最終下校時間を今は五時にしているもの」
「さっき俺達が見回りしたけど、誰もいなかったもんな?」
「残ったいる奴等は、速攻帰したし……
残っているとしたら、俺等四人と先公達が数人残ってるだけだ」
「あいつらが勝手に帰るはずが……」
『助けて』
どこからか聞こえた、弱々しい声……麗華は、鏡の前に立ちそれを見た。
「麗華、どうかしたか?」
「声……」
「?」
「さっき、ここから声が……!!」
指を指した麗華の手を、鏡から白い靄の様なものが掴んでいた。抵抗する暇もなく、麗華はそのまま鏡の中へ引きずり込まれ、彼女の腕を兄は掴み引っ張ったがびくともせず、そのまま一緒に引きずり込まれた。
「龍二!!」
真二が叫んだと同時に、鏡が突然光だし彼等を包み込んだ。