地獄先生と陰陽師一家 作:花札
どこにいるの?
あれが無くなってから、お友達は消えた。
だったら、私も……
皆を消してやる!!
目を覚ます麗華……辺り見回しながら、体を起こした。傍には兄達とぬ~べ~が、倒れていた。
「……お兄ちゃん……
お兄ちゃん、ねぇ!」
「……うっ」
頭を抑えながら、龍二は起き上がった。彼とほぼ同じようにして、ぬ~べ~達も起きた。
「何だったんだ?さっきの光は」
「さぁ……」
「つか……ここ、どこ?」
縦に長い部屋の中を見ながら、真二は言った。
「……何か、弓道場っぽくない?」
「確かに、そうだな……?」
弓立てに立て掛けられている弓に、龍二は目を向けしゃがみながら下を見た。
「お兄ちゃん、どうかしたの?」
「……この弓。
俺が今、使ってる弓だ」
「いや、当たり前だろう。ここ俺等の」
「名前が違う」
「え?」
「弓道は剣道や薙刀と同じように、防具と武器を用いる武道。
弓道の武器である弓は、ほとんど先輩達が使っていた弓をそのまま後輩が使うことが多い」
「そういえば、そうだな」
「本来、俺の名前が貼ってなきゃいけないのに……
この弓、名前が“神崎”じゃなく“大谷”だ」
「本当だ」
「大谷って?」
「昔いた部員だ。
部室に大谷って名前が彫られた楯が飾られてた」
「ま、まさか……
俺等」
「タイムスリップしたな」
「嘘ぉ!!」
「キャァァアアア!!」
「ウワァァアアア!!」
突然悲鳴が校舎の中から聞こえた。その声に、ぬ~べ~は目付きを変えて、外へ飛び出し中へ入った。
「先生!」
「麗華!勝手に動き回るな!」
ぬ~べ~を追い駆けていった麗華の後を、龍二達は追い駆けていった。
校舎の中では、包丁を片手に持つのっぺら坊に追い駆けられる郷子達が、走り回っていた。
走っている時、郷子は足を滑らせ転んでしまった。
「郷子!!」
慌てて広は彼女の元へ駆け寄り、支えながら立たせた。その時、殺気を感じ取り後ろを振り返った。包丁を振り上げたのっぺら坊が、目の前にいた。
「俺の生徒に、手を出すな!!」
白衣観音経を広げ、のっぺら坊にぬ~べ~は攻撃した。
「ぬ、ぬ~べ~!!」
「お前達、無事か!?」
「アーン、怖かったぁ!!」
巻き付いた白衣観音経を振り払ったのっぺら坊は、雄叫びを上げて油断していたぬ~べ~達に、包丁を振り下ろした。
「氷術氷壁!!」
彼等の前に、氷の壁が作られのっぺら坊の攻撃を防げた。壁を台に黒いマントを着た男が、持っていた大きな鎌をのっぺら坊目掛けて、振り下ろした。体を貫かれたのっぺら坊は、黒い煙を出して消えてしまった。
「大丈夫か?!」
「麗華、助かった」
「こんな所にのっぺら坊って……」
氷鸞を式に戻し、ポーチにしまいながら麗華は、郷子達の傍へ駆け寄った。
「龍二」
「?」
黒いマントを着た男は、のっぺら坊が消えた付近を見ながら、口を開いた。
「ここ、妖怪の住み家だね」
「やっぱりか……」
「早く帰って、輝二に知らせた方が」
「知らせたいのは山々だが、俺等ここにどう入ったか分かんねぇんだよ」
「……そうか」
「とりあえず、ここから避難しよう。
ここにいたんじゃ、何が起きるか分からない」
「だな。一旦弓道場に戻るか。
麗華、行くぞ」
龍二に呼ばれ、麗華は彼の元へ駆け寄った。郷子は広に支えられながら立ち上がり、ぬ~べ~達と共に歩いて行った。
弓道場に着いたぬ~べ~達は、中へ入り床に座り込んだ。
「そういえば、お前達どうやってここに?」
「美術室にあった鏡に吸い込まれたんだ」
「美術室の鏡?」
「突然光って、気が付いたら給食室にいて……」
「そんで、あののっぺら坊にいきなり襲われたの」
「……」
「何が起きているか、チンプンカンプンだな」
「……先公達は、ここに残っててくれ。緋音、ここを頼む」
「分かったわ」
「鎌鬼も頼む」
「了解」
「残れって……何をする気だ?」
「校舎内の探索。
大勢で行ったら、妖怪達の標的にされる」
着ていた上着から、巻かれていた弦を出した龍二は、弓に張り試し引きをした。
「弓はこれでいい」
「素手で引くのか?」
「引きたくねぇけど、この状況だ。かけ嵌めてたら、何も出来ねぇからな」
「待て、俺も行く。お前達だけじゃ危険だ」
「お前まで行ったら、誰がそいつ等守るんだ?」
「っ……」
「緋音と鎌鬼だけじゃ、対処しきれねぇよ」
「た、確かに……」
「そんじゃ、行ってくる」
「あぁ……って、麗華も連れて行く気か!?」
矢が入った筒を背負った麗華を見ながら、ぬ~べ~は龍二に言った。
「自分の妹を連れて、何が悪い」
「いやいや、危険だろ!」
「ここに残す方が危険だ!」
「だからってなぁ」
「それに麗華は、攻撃用の式神を持ってる。
いざという時、必要だ」
「はぁ……」
「二時間くらいしたら、帰ってくる。
じゃあな」
戸を開け、三人は外へ出て校舎の中へ入っていった。
「三人なら、大丈夫ですよ」
心配していたぬ~べ~に、緋音は優しく言った。
「えっと、君は……」
「日野崎緋音と言います。
薙刀部所属で、鈴海高校生徒会の会計をやっています」
「だから、袴か」
「部活を抜けたもので……
それから、龍二の事ごめんなさい」
「へ?」
「龍二、麗華ちゃんのことになると色々見え無くなっちゃうから」
「あ、はぁ……」
「まぁ、龍二だけじゃなく真二も私も、麗華ちゃんに何かあると、周り見え無くなっちゃうんで」
「付き合い長いんですか?」
「小さい頃かずっと。
幼馴染みなの」
「へ~」
緋音達が他愛のない話をしている頃、龍二達は廊下を歩いていた。
「凄い古いね」
「まぁ、昔の校舎だからな。
あんまり、離れるなよ」
「はーい」
「……?」
何かの気配を察知した真二と龍二は、足を止めた。麗華はポーチに手を入れて、辺りを見回した。
「麗、上だ!!」
「龍、上だ!!」
焔達の掛け声に、龍二は麗華を抱き上げて真二と共にそこから離れた。それとほぼ同時に天井から岩が落下し、その上に覆面をした妖怪が降り立った。
「妖怪か!?」
「そこの娘だけを引きずり込んだはずだが……
余計な者までついてきたか」
「なぜ麗華を狙った」
「その娘、妖力が高い……
あれを壊すには、その娘の力が必要」
「あれって?」
「話は無用。その娘を渡して貰おう」
「嫌なこった!
出て来い!管狐!」
道着の懐から、竹の筒を出した真二は管狐を出した。管は咆哮して、覆面の妖怪を攻撃した。
「あー!ズルい!
私もぉ!!」
ポーチから二枚の札を出すと、麗華は指を噛み血を出し札に付けた。彼女に続いて、龍二も札を出し指を噛んだ。
「我に力を貸せ!急急如律令!」
「我に力を貸せ!急急如律令!」
三枚の札が赤、黄色、青と光り出し、そこから冷気、雷、炎を放ち現れ出てきたのは、人の姿をした氷鸞と雷光、そして赤い花魁の格好をし、茶色い髪を赤い椿の飾りを付けた簪で纏めた女性だった。
「無駄な戦闘をするくらいなら、さっさと娘を渡せ」
「いちいちイラつくな!!」
「私達も戦う。焔!」
「応よ!」
フードの中から出て来た鼬姿の焔達は、人の姿へと変わった。
「渚と氷鸞は水だ!雷光と雛菊は風!」
「四人が攻撃し終えたら、焔は黒い煙!」
「了解!」
「はい!」
「分かりました!」
「応!」
四人が各々の攻撃をし、的が怯んだ隙を突き焔は口から黒い煙を吹いた。
「戻れ管!」
「真二、行くぞ!」
「応!」
式を戻すと、龍二達は狼姿になった焔と渚の背に飛び乗りその場を逃げた。
煙が晴れ辺りを見回す覆面の妖怪……そこにいたはずの麗華達は、既にいなくなっていた。
「逃げたか……(娘がいなければ、あいつは)」
弓道場にいた緋音と鎌鬼、ぬ~べ~は氷鸞達が使った技の妖力に気付き、道場の外を見た。
「……緋音、ここを」
鎌鬼が立ち上がった次の瞬間、突如ドアが壊された。中に入ってきたのは、金槌を持った大男だった。
「な、何だ?!あの妖怪は!?」
「ここは私達に任せて、先生は早く皆を連れて裏口から!」
大男は雄叫びを上げると、金槌を振り下ろしてきた。鎌鬼は緋音を下げ鎌で、それを切った。
「妖怪の類いではあるが、何かに操られてるって感じだね」
「じゃあこの校舎には」
「もっと強力な妖怪がいる。
少し力を解放する。巻き添えを食らわないように、緋音は皆と」
「分かったわ」
裏口へ向かう緋音を見送ると、鎌鬼は手首に嵌めていた腕輪を外した。すると禍々しいオーラを放ち、容姿を変えた鎌鬼は、襲ってきた大男に向かって大鎌を振り下ろした。
吹き飛ばされ、壁に当たった大男は気を失った。鎌鬼は腕輪を嵌め直すと、裏口から外へ出て行き緋音達の後を追った。