地獄先生と陰陽師一家   作:花札

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必ず……必ず、また会える。

待っていれば、必ず……


大きな力

弓道場から逃げてきたぬ~べ~達は、教室に身を隠していた。

 

 

「こ、ここは安全よね?」

 

「悪いけど、ここは安全な場所はないと思った方がいいよ」

 

「嘘……」

 

「おい、怖がらせなくても」

 

「隠すより、はっきり言った方がいい。

 

自分達がどれだけ危険な立場にいるかを、実感した方が今後のためじゃないかと、僕は思うけど」

 

「……」

 

「まぁ、今の所嫌な気配は感じないから、大丈夫だと思うよ」

 

 

その時、床を軋む音が聞こえた。鎌鬼は鎌を構え、ドア付近に立ちぬ~べ~と緋音は、広達の前に立ち構えた。

 

 

勢いよく開けてきたのは、上の道着を脱いだ真二と片腕だけ道着を脱いだ龍二だった。彼等の背後には、狼姿の渚と焔がいた。

 

 

「龍二!?」

「真二!?」

 

「お前等……何で」

 

「道場が襲われたのよ!」

 

「それで、そっから逃げてきたんだ!」

 

「見たところ、怪我は無いみたいだな」

 

「そういえば、麗華は?」

 

「さっき妖怪と戦って外れた」

 

「え?!」

 

「今から探しに行く!

 

渚、焔、来い!」

 

「探すなら、皆で行った方が!」

 

「そうよ!

 

ぬ~べ~、いいわよね?」

 

「……そうだな。

 

皆で」

 

「そんなの駄目に決まってんだろ!!」

 

「!?」

 

「全員ここにいろ!

 

探すのは俺等だけだ」

 

「待て!まだ敵がいるかもしれないんだぞ!!」

 

「んな事は分かってんだよ!!

 

けどこっちは、一人で泣いてる妹を探すんだ!!危険も承知の上だ!!」

 

「俺からすれば、麗華は大事な生徒だ!!見捨てるわけにはいかない!!」

 

「何が大事な生徒だ……

 

生徒のことを信じてねぇくせに」

 

「え……」

 

「どうせ教師なんざ、自分の評価しか考えてねぇんだろ?

 

だから、片親しかいない生徒を勝手に問題児にすんだろ!」

 

 

そう怒鳴ると、龍二は渚達と共に教室を出て行った。

 

 

「……ったく、龍二の奴は」

 

「麗華ちゃんのことになると、キレやすくなるんだから」

 

 

 

その頃麗華は、美術室へ来ていた。

 

 

「……お兄ちゃーん!

 

皆ぁ!どこぉ?」

 

 

中へ入った瞬間、突然扉が勢いよく閉まった。麗華はポーチに手を入れ、一枚の札を出し指を噛み血を付けた。

 

札は煙を上げ、中から出て来たのは薙刀だった。それを手にした麗華は構えた。

 

 

「……あれ?

 

妖気はあるのに……」

 

 

辺りを見回す麗華……すると彼女の背後から、何者かが糸を伝い降りてきた。その気配に気付いた麗華は、すぐに振り返り薙刀を振り下ろした。

 

斬られたのは、巨大な蜘蛛だった。それを見た瞬間、麗華は震え出し、腰を抜かしたのかその場に座り込んだ。

 

 

「……あ……

 

アァァアアアアア!!」

 

 

彼女の叫び声と共に、目映い光が校舎を包み込んだ。中を彷徨っていた妖怪達は、その光に導かれるかのようにして向かいだした。

 

その凄まじい霊力に、ぬ~べ~と鎌鬼は教室を飛び出した。二人の後を緋音達は慌てて追い駆けていった。

 

 

「ヒック……ヒック……

 

お兄ちゃん……焔……どこ……」

 

 

ふらつきながら立ち上がった麗華は、教室を出ようと戸を開けた。だが目の前にいたのは、金槌を持った大男だった。大男は出て来た彼女目掛けて、金槌を力任せに振り下ろした。

 

麗華はすぐに避け、ポーチから青と黄色の札を出し、指を噛み血を付けた。

 

 

「我に力を貸せ!急急如律令!!」

 

 

冷気と雷を放ち出て来た氷鸞と雷光は、持っていた錫杖と刀で攻撃を防いだ。

 

二人の邪魔をしないよう、後ろへ下がろうとした時、足を何かに取られ地面に尻を着いた。

 

 

「痛ったぁ……!?」

 

 

足下に絡まっていたのは、蜘蛛の糸だった。恐る恐る振り返ると、先程倒したはずの蜘蛛が、四つの目を動かして自分を見ていた。

 

 

「……た……助け」

 

「麗様!!

 

雷光、ここを頼む!」

 

「任せろ!」

 

 

大男から離れ、氷鸞は錫杖から氷の礫を出しそれを蜘蛛に投げ付け攻撃した。蜘蛛は鳴き声を上げて痛がり、その隙に麗華の足に絡んでいる糸を切った。

 

 

「さぁ、これで大丈夫です!」

 

「うわぁーん!」

 

 

泣き出した麗華は、氷鸞に抱き着いた。抱き着いてきた彼女を氷鸞は抱き上げた。雷光はそれを見ると、大男に雷を食らわせ退路を開き手で合図をして、氷鸞と共に走り出した。

 

 

廊下を走る氷鸞と雷光……角を曲がった時、バッタリ真二達と出会した。

 

 

「ひょ、氷鸞!!」

 

「真二様……よかった」

 

「早くここから逃げて下さい!!」

 

 

雷光がそう言った時、金槌を振り上げた大男が姿を現した。鞘に入ったままの刀を手に、雷光は大男の金槌を受け止めた。

 

 

「あいつ、さっきの!!」

 

「妖怪屋敷か!ここは!

 

出て来い!管狐!」

 

 

筒から出て来た管狐は、大男に向かって炎を吹いた。火に怯んだ大男は、後ろへ引いた。

 

 

「ギャァアア!!こっちからも来てるぅ!!」

 

「ぬ~べ~!!」

 

「お前達、下がってろ!

 

南無大慈大悲救苦救難!鬼の手よ!今こそその力を示せ!」

 

 

鬼の手を出したぬ~べ~は、迫ってくる妖怪達を攻撃した。だが倒しても倒しても、妖怪はぞろぞろと出て来ては彼等に迫ってきた。

 

 

「くそ!キリが無い!!」

 

「ぬ~べ~!後ろ!!」

 

 

後ろから飛びかかる一匹の妖怪に、ぬ~べ~は出す術も無く佇んでいた。

 

 

「頭下げて!!」

 

 

その声にぬ~べ~は郷子達の頭を下げさせ、自身も頭を下げた。その頭上に薙刀を持った麗華は、飛び越えて妖怪の群れを一網打尽にした。

 

 

「氷鸞、氷の壁作って!!」

 

「分かりました!」

 

 

手に冷気を溜めた氷鸞は、両腕を広げ双方に放ち氷の壁を作った。妖怪と戦っていた雷光と真二は後ろへ下がった。

 

 

「全員、歯を食い縛ってて!」

 

 

ポーチから少量の粉が入った瓶を取ると、それを地面にばらまきマッチに火を点けそれを粉に落とした。

 

 

“ドーン”

 

 

「え?」

 

「な、何?」

 

「……!!

 

ワァァアアア!!

 

 

床が消え、広達は下へ落ちた。全員が着地すると、氷鸞は下へ降り、抜けた床を氷で塞いだ。

 

 

「痛ったぁ……」

 

「何でいきなり、床が抜けるのよ!!」

 

「文句は後!速く走って!!」

 

「もう嫌!!」

 

 

文句を言いながらも、郷子達は立ち上がり走り出した。氷鸞は白い煙を出し、それを見た鎌鬼達麗華と共にその場から立ち去った。




宿直室に逃げ込んだ麗華達……鎌鬼はドア付近に座り、神経を尖らせ外を見ていた。


「も、もう追ってこないよね?」

「……今の所、追ってくる気配は無い」

「はぁ……走りっぱなしで、疲れた~」

「喉渇いたぁ」


そう言いながら、美樹は部屋に設置されていた水道の蛇口を捻った。だが、水は出ては来なかった。


「旧校舎だから、水は出ねぇと思うぞ」

「嘘ぉ!!」

「喉カラカラなのに~」

「コップはあるのになぁ……」


部屋に置かれていた棚の引き戸を開けながら、広はがっかりして言った。


「コップがあるなら大丈夫」

「え?」


コップを取り出すと、緋音は氷鸞の前に置いた。彼は一つ一つ錫杖から出す水で洗い、水を注いでいった。


「凄え!!水が!」

「氷鸞は、氷と水の神だから!な!」

「式神って便利ね!

お水、頂きまーす!」


水の入ったコップを受け取ると、美樹達はそれを一気に飲んだ。飲む彼等を見ながら、緋音は隅で蹲っていた麗華にコップを持って、歩み寄った。


「麗華ちゃん、お水」


顔を上げた麗華は、緋音からコップを受け取り一気に飲み干した。

そんな彼女の姿を、ぬ~べ~は水を飲みながら見ていた。


(……さっきと比べて、異様に霊力が高い。

それに、凄い乱れている……どうなってんだ?


さっきの霊力と、関係があるのか?)

「……ねぇ、お兄ちゃんは?」

「龍二なら、お前を探しに焔達と」

「え……

探さなきゃ!」

「いや、ここにいろ。

また行き違いになったら、大変だ」

「……」

「大丈夫よ。龍二は強いから」

「……うん」
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