実はまさかセイレムにクトゥルフネタが絡んでくるとは思わず、ややスランプに陥っていました。どうアレンジしろって話ですよ。
まあ、時間かけて妄想して2通りの話を考えましたがある片方を選ぶと、外伝が大量生産されるので普通に攻略するでしょう。もちろんシナリオ崩壊しますね。
てか、アビーちゃんとエレシュキガルで予想通りボーナスが吹き飛んだのだわ。
辛いのだわ。
邪悪な進化を遂げたファヴニールの注意をひきつける囮役をジークフリート達に任せ、その間に打倒のための策を講じることを迫られた私達は、攻撃の散発を繰り返しながらやり取りを交わしていた。
「……クソが、心臓狙ってるっていうのにピンピンしてやがるし、畳み掛けてもすぐに再生されちまう」
「なんともまあ、分厚い肉の装甲だこと。これじゃあ竜殺しが限定的にレジストされているかわかんないや」
試しに再度、ジークフリートとエミヤよりそれぞれ通らないとされる竜特攻を持つ攻撃を放ってもらったわけであるが、やはり目に見える形では判断が付き辛かった。カルデア側でもモニタリングしてもらっているも、結果は変わらずじまいでジリ貧まっしぐらである。
「何か、他に手段はないのですか先輩……」
「うーん、こういう時は一点に瞬間最大火力を叩き込むのがセオリーだけども、何の考えもなしにそれをやるのは代償が大きい」
「せめて、弱点を見つけるべきだろうね」
その弱点の筆頭が竜殺しの力であったのだが、出来ないとなれば別の弱点を探り当てる以外に方法はない。 しかし、言うても土壇場で思いつくのは色々と無理があった。
「ええとそうじゃ、ドラゴンには……こおりタイプとフェアリータイプの攻撃が有効じゃったな」
「あら、そうなの?」
いやいや、それはポケットなモンスターの世界での話ですってば。本気になさらないで。
……百歩譲って効果があるとしたら、設定したゲーム開発陣すげえってことになるわ。
「試す以前に、該当の攻撃方法を持ち合わせている人間がいない件について」
「じゃあ、今から召喚すればよくね? いるんじゃろ、そういう知り合いがお主」
「……いなくはないけども、この状況でピンポイントで呼べるわけがないでしょうが。やらせるなら、もうちょっと落ち着いた環境でトライさせてよ」
というか、呼んだはいいが効かずに終わったら最悪だ。呼びつけた私達だけでなく呼ばれた方にも気不味い雰囲気が流れ、険悪ムードになりでもしたら終わりである。もうちょっと確実性を持たせないと。
「――竜殺しの攻撃が通用しないと仮定すると、既にアレは邪竜以外の何かになっている……そこからアプローチを取ってはどうでしょう?」
「混ざった側……要はクトゥルヒ側の弱点で攻めてみようって魂胆か」
『明確にこれだと言えるものはあるのかい?』
そう言われて深く熟考するも、弱点らしい弱点などあったものかという壁にぶち当たる。それと残念な事に、ろくな倒し方をしていないことに今更ながらハッとなって気づいてしまった。もはや、スナック感覚で倒す状態に近いの非常に危ない。でも止められない。
「素の状態で一番効果があったと印象に残っているのは、そうだな……」
「例の如く、フィリピン爆竹?」
「いや―――煮えた濃縮オリーブオイルだ」
「「「はっ?」」」
一斉に何言ってんだコイツ、という視線を向けられるのも致し方ないと自分でもそれはよーくわかっている。
けれども事実は事実なので、ありのままを語るしかあるまい。
「いやね、ろくに武器を用意していなかった時があってね。その時に使った手段が、オリーブオイルを大量に流し込んで内部から焼くっていう戦法なわけよ」
『よく思いついたな、その戦い方……もしや君の発想か?』
「いや、その時に居合わせた料理人が提案して私は実行に移しただけ。まあ、オイルだから一応は油だしよく燃えるよね」
「……無理矢理飲まされた奴、可哀想じゃな」
実際物凄く苦しんでいたのであるが、そんな事はお構いなしに当時の私は点火を果たすと相手をしていた個体はジューシーな音と香りを漂わせながらその場に没してしまった。
――ちなみに、業界では蛸のように調理して食べることが可能ともっぱらの噂です。
「え、食べれるのかよ!?」
「私は食べたことないけどね。……知らず知らずに食べていたなんてこともあるかもしれないが」
「……害はないのかい?」
「あったらそれらしい情報が1つぐらい耳に届いているはず。ないってことはそういうことなんでしょ」
ショゴスのラーメンというのも聞いたことがあるが、それは知り合いが食べたことがある程度の話だったりで特に語ることはない。
……はい、そんなわけで閑話休題。真面目にオリーブオイル云々が作戦として成り立つかどうかについて吟味するとだが、良い線はいっていると私は思うね。
何せ、外傷はことごとく防がれ与えられていない。であれば内側も含めて傷つけてみるのも一考の余地があるというものだ。
「でも、オリーブオイルはどこから調達するのですか? カルデアにもそんな貯蓄は―――」
「その点については大丈夫。オリーブが生えてないところから大量にオイルを生み出す術があってだな、私が実は会得している」
『――何故、会得したんだい!?』
あーうん、酔っ払ったノリでですよ。……いやはや、覚えたはいいが使う機会なんて滅多になかったのに、まさかこんな局面で役に立つ機会が来るとはね。人生って何が起こるかわからないもんだ。
「で、そいつを奴に飲ませるのはいいが、あのままじゃ素直に飲んではくれねえだろ」
指差した方向には、未だにピポグリフに搭乗中の二人に目掛けて攻撃を繰り出す……もとい吐き出しているファヴニールが長い首を荒ぶらせて暴れていた。
即ち、今この瞬間に割り込んで作戦を発動しても、狙いが定まらないどころかオリーブオイルを飲むことを拒絶される可能性があった。
「アレじゃな、暴れる奴は一度ふん縛ってでも動きを止める必要があるというわけじゃな」
「動きを封じる役と、攻撃役で別れる必要がありますね……私は前者の方の防御役が適任でしょうか」
「だろうね。足止め役には……マシュ、ジャンヌ、王妃、アマデウス、兄貴を振ろう。攻撃役にはジークフリート、アストルフォ、ノッブ、エミヤ、そして私だ」
『私は?』
「マルタは撃破後に伏兵が居た場合に、こちらが立て直すまでの時間を稼いでほしい。遠慮なく相手をタラスクでふっ飛ばしちゃっても構わないよ。シルバについてはそのサポート」
「時間を稼ぐ(物理)」
『あ””!?』
取り急ぎ、空中をリヨン狭しと駆け巡っている二人に念話で作戦の内容を伝えると、総員が配置についたのを機に一旦暫しの休憩に入ってもらった。本当にごく僅かな休憩時間であるがな。
***
「――作戦開始だッ!!」
間髪入れずに、叫びを戦場に轟かせた私は王妃にアイコンタクトを取り、手筈通りに動いてもらうことを要請した。
対し肝心の彼女は、笑顔でそれを許諾するとガラスの馬で天まで登るように駆け、太陽を背にファヴニールへ向けて坂を駆け下りるように一直線に急降下を開始する。
勢い的にそのまま突っ込むのかと早とちりをしかけるが、その予想に反して彼女は騎乗していた馬の上に器用に立ち上がり、一度宙返りをして片足にて尻を蹴った。……途端、蹴られた馬にヒビが大きく入ったかと思えば、大量の杭となって分裂し一斉にかの暴竜に降り注いだ。
例の如く、相手の体を傷つけた瞬間には傷が塞がってしまうも、誰ひとりとして動揺はしない。
「一見すると、すぐに回復されてしまう攻撃に見えるけども―――」
「――狙いはそこじゃない」
傷つけることなく通り過ぎた杭を見れば、それらは後ろに伸びていたファヴニールの巨大な影を正確に捉え、無数に地面へと突き刺さっていた。
すると、それまで暴れまわっていた邪竜は金縛りにあったかの様子で動きが鈍り、わけもわからず硬直をしてしまう。
「俗に言う影縫い……王妃にはこれからもSAKIMORI路線で突っ走ってもらいたいですねぇ」
「フランス国民に怒られやしないかの」
「私の知る限り再評価されてるから大丈夫」
無駄口を叩いている合間に、エミヤと復帰したジークフリートによる斬撃と衝撃が加えられ、作戦に重要な器官たる口を閉じさせまいとダメージが与えられていく。勿論回復はされるが、だからといって苦痛は消えはしないようだ。
「常時口を開けさせているのはいいけど、狙いがブレるか……だったらこっちも動きながら当ててやる」
状況を観察するに定位置から永遠とオリーブオイルを飲ませ続けるのは効率が悪いと判断した私は、ようやく満を持して相棒たる使い魔を彼方より呼び寄せる決意をする。
「It's Show Time!!」
エルダーサインが刻まれた宝石がやたらとデカイ指輪を取り出した私は、天にそれをかざして同じ紋章をしたゲートを開く。そうして何かが飛来する気配を感じ取った私は感覚に任せて飛び上がり、次の瞬間――着地を呼び出した存在の上でバランス良く行った。
「キー!」
「おっす、久し振りシャンタク丸。元気してたか」
呼び出したのは、私が成実の腕を手に入れてから使役できるようになった馬の顔にコウモリのような羽を持つ神話生物……通称シャンタク鳥であり、過去の戦いから負った隻眼めいた傷が特徴的な個体であった。
彼は見慣れない土地に呼び出されたことに対して短く説明を求めて鳴きつつ旋回をする。
「すまんね、訳あって結構昔のフランスまで来ちゃってるんだ。んで、今はあの不思議な事が起こっちゃった邪竜を討伐するクエストを皆で敢行中。オーケー?」
「キィ!」
大体わかったというニュアンスで返され、つまりは回避し続けてればいいんだろうと受け取られると、そこに追加注文で的確に相手の口元が狙いやすいようにポジショニングしてくれと頼み込んだ。
「さーて、やっちゃいましょうか」
準備を整え、今……必殺の構えを私は大きく取った。
「むっ、あの構えは――アースの構え!!」
「知っているのですか!?」
「うむ……一般社会とは結界で隔絶している森の民が使う大自然の力じゃ」
『えっ、じゃあ藤丸君は実は森の民……?』
『なわけないでしょ。さっき言ってたじゃない教えてもらったって』
正直な話、ピンポイントでオリーブオイルが出るアースなんて教えてもらいたくはなかったんですけどね、酔いつつも料理振る舞おうとしたら必要なオリーブオイルがないことに気がついて、その事を漏らしたら今のこれですよ。彼らは元気にしてっかなーとふと思ったが、人理焼却でもう答えは出てたわ。畜生め。
「自然の恵みの力を思い知れ―――」
片足の膝をついて安定化をはかり、手を重ね合わせた後に私は集められたエネルギーを一点に集中させて目をくわっと見開きながら放つ。
「橄欖(かんらん)の鼓動!!!」
解き放たれた良い香りのするオリーブオイルの水流は渦を巻いて直線状に進み、流し込まれるようにファヴニールの口の中に吸い込まれる。
当然ながら、突然飲まされ始めた謎の液体に困惑を隠せずに暴竜は抵抗とばかりに動かしづらいであろう首を振り、溶解液もしくは火炎を吐こうと試みる。
だが、それが命取りであったと気づくのは実際に行動を移してからであった。
「……自ら導火線に火を付けることになるとは思わなかっただろうな」
「焼けるほど喉が痛くなるって、こういうことなんだろうね」
吐き出す以前に恐らく気管内で出火が始まったことで、自業自得のダメージが発生し始める。
改めて苦痛から逃れようとしているようだが、そうすることさえ彼には許されない。何故ならば、構わず継続してオリーブオイルが注がれ続けているからだ。
「こぼしたオイルにさえも出火が始まって、二重の火炙りですか……」
「どれだけ強靭な外壁を持とうとも、内部から攻め込まれたらどうしようもないということだ。別の言い方をすれば他国との戦争より、自国での内乱のほうがよっぽど恐ろしいって感じだね」
「……そう、ですね」
「ジャンヌさん……」
思うように吐き出せない状態にありながらも繰り出された火炎からマシュと共に皆を守るジャンヌは、思うところがある表情をした。
されど、向き合ったからこそ今の自分がいるのだと思い直し、旗を握る手の力を一層強めた。
「今のこの状態ならどうだッ!?」
「放てぇ!!」
どこまで弱体化しているかを推し量るために、ノッブが火縄銃で全体的に隅々まで狙い撃ち、一方の兄貴は急所と思われる部分へえぐり押し込むように槍を突っ込ませた。
「どうだ!?」
『再生のスピードが落ちている……内部的なダメージの方にリソースを割いているからか?』
「だとすれば、チャンスです先輩ッ!!」
「わかった!」
確実にダメージが浸透しつつあることを視認し、待機していたアストルフォ達に合図を送った。
「――行くよッ、黒のセイバー!!」
「ああ、わかった!!」
今度こそ邪悪なる竜を討ち取ってみせるという覚悟を秘めて、一人の勇者は加速を付けたピポグリフから送り出され……歪んだ因縁を断ち切るべく剣に全身全霊の魔力を込めた。
「……令呪を以て命じる! 今こそ邪神暴竜ファヴニールを討て、ジークフリート!!」
「うおおぉぉぉぉぉおおおおお―――ッ!!!」
結んだ仮契約による恩恵という名の後押しを受けて落陽の輝きは増し、やがて一体の竜と一人の英雄の距離は目と鼻の先となったのであった。
「さらばだ我が生涯の半身よ、そして受けるがいい―――
横を通り過ぎるのではなく自らファヴニールの内部へと侵入したジークフリートは、内側から外側に刃を届かせて下へ下へと進む。内部はきっと灼熱のトンネルになっているであろうに、彼は気ににも留めずに突っ込んで行った。
「再生の原因は……そこか」
問答無用で斬る中で、侵食され心臓と呼べる器官ではなくなったモノを垣間見て、同情にも似た感情が湧き上がるが感傷に浸っている余裕はない。
ジークフリートは魔力を放出されている大剣を構え直し、完全消滅させるべく心臓に突き刺した瞬間に魔力をありったけ爆発させた。
その弾みで、邪竜の全身には胸を中心として亀裂が入り、光景を目にしていた者達は一斉に防御態勢をとった。
「耐ショック防御!!!」
「はいっ!!」
より強固な護りを張り巡らして輝きに包まれる目前から身を守る一同。
どのくらい時が流れたのかわからなくなるまでそれは続き、ジークフリートの安否が気になり始めたところでようやく収まる様子を見せた。
「……どうなったのかしら?」
「ロマニ、魔力反応は確認できる?」
『待ってくれ……爆発の影響で反応が乱れて――お、この反応は彼か』
「彼?」
どっちの彼なのかとわからずに困っていれば、答えの方が先にこちらへとやってきていた。
目に飛び込んできたのはピポグリフ、ということは騎乗しているのはアストルフォであり……その片手にはややボロボロな竜殺しの英雄の手がきちんと握られていた。
「おーい、みんなー!」
「アストルフォ!! ……彼は無事か!?」
「――うん、この通りっ!!」
「っ……黒の、ライダー、あまり……揺らさないでくれないか」
「あ、ごめん」
手綱ではなく彼を握った手をブンブン揺らすところが彼らしいなと思いつつ、帰還中にミスで落されないように私は助け舟を出してフォローする。
また、その途中で撃破したはずのファヴニールがコンティニューしてこないかと気を配っていたが、間違いなく因縁には終止符が打たれたようで、それらが確定した後に私達はどっと疲れを表すようにその場に倒れ込んだ。
***
「……今の爆発は」
その頃、リヨンを奪還せんと重武装で進軍していたフランス軍のある部隊は、到着を目前と控えた矢先に目的地にて膨大な光が溢れ出していることを目にしていた。
「元帥、あれは一体――」
「私にもわからんが……何者かが争っていたのではないだろうか」
元帥と呼ばれた白銀の鎧を着た長髪の男は、微かに漂う戦いの匂いを感じて状況を誰よりも早く予測した。
「我々よりも先にですか!?」
「ああ。聞くところによれば、各地に攻め入っている竜を退ける一行が最近現れ始めたと聞く。もしかするとだが、その彼らが一足先に到着していたのやもしれん」
「すると、その集団は……」
「無事であるならば現在もあの場にいる可能性が高いだろう。だが、逆であるならば――」
相手をしていた存在との交戦は免れないだろうと彼は押し黙った。
ともなれば、迂闊に総員で突撃を行うのは問題であると判断し、どう行動をすればいいのか思考を巡らせた。
「よし、こうしよう……私と足が早く身軽な数名がまず先に偵察として内部に侵入をする。残りは後方で待機し、いずれかの急ぎの報告があるまで動くな」
「それは危険では……」
「何を今更、今やこの国の何処もが危険だろう。であれば、より危険だとわかっている地に部下だけで行かせられるものか」
壊滅寸前のところを何とか保たせまとめ上げている男はそう言って幾人かを選抜し、我先にとリヨンへ歩を進めていく。
……彼の者の名は、ジル・ド・レェ――奇しくも一連の騒動を引き起こしている元凶の同じ名を持つものであり、狂い果てる前のその過去でもある人物であった。
でも僕は、オリーブオイル!()
はいそんなわけで、何故か1話が最近配信され始めたアレのネタが入ってますね。
だって、クトゥルヒで検索したらオリーブオイルで茹でて食べられるってあったんだもん……かけるもとい飲ませるしか無いじゃない。
あと、「泣きながらオリーブオイルを紹介する照英なもこみち」なんて画像があったのが悪いです(笑)なんであるんだよ(
そんなわけで次回もお楽しみに