プロサバイバーぐだ子の人理修復(仮)   作:くりむぞー

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お久しぶりです。
立て続けのボックスガチャイベが続いた影響で執筆どころじゃなくなっていました。
あと、ジャンヌ・オルタですが持ってなかったので引いたのですが、ガチで家賃分かかって白目ひん剥いてます。

節分イベについては、200階まで攻略完了しました。
いやー、普段使ってなかったサーヴァントの運用とか色々考えさせられましたね。
割とこういうイベ増えてほしいかもです。
あとインフェルノさんかわいい。宝具重ねたいけど出ない(宝具1

そんなわけで特に戦闘のない話です。どうぞ


徒歩を拒むものたち

 神話生物の細胞か何かが投与され変貌したファヴニールとの激戦を終え、今日のところはこれ以上戦闘は継続したくないという思いを胸に地面へ寝転がった私は、戦闘の爪跡を眺めながら各々休む一同を横目に見て損害状況を軽く整理していた。

 止めを刺したジークフリートは言わずともボロボロで、折角直前ギリギリまで回復させていたのに逆戻りである。まあ、急ぎ応急手当と言わんばかりに回復はさせてはいるが、アストルフォが肩を貸している感じからして戦線復帰は暫く待ったほうが良さげだろう。

 他については、損害はほぼなく軽微であり万が一再襲撃を受けても戦う事自体は問題なさそうだ。――が、二度も三度も強力な竜種を持って来られたとしたら流石に全速力での撤退もやむなしと言える。

 というか、ファヴニール並かそれ以上に強い存在って他に何がいるんでしょうかね。ヒュドラとか九頭竜とかどうなんだろう……誰かドラゴンの格付けランキング的なもの下さいよ。

 

「ドクター、周辺にサーヴァントの反応はありますか?」

 

『君達以外には見当たらないね。例の彼女自体はファヴニールを放置して完全に撤退したと見ていいだろう』

 

『けれども、気配遮断に特化したアサシンを差し向けて疲労しているところを襲撃――ということも十分あり得るわ。警戒は怠らないようにしなさい』

 

 そこまで知恵が働くだろうかと半ば考えつつ、私は兄貴に目配せをして周辺に感知用のルーンを刻んでもらう。私も何か仕掛けておこうかと思ったが残念ながら体力の限界で無理であった。

 

「で、どうするよ嬢ちゃん。この後は……」

 

「追撃は――まず無理だろうから、ジークフリートの回復後に折を見て予定通りディエールに向かおう」

 

「じゃが、向こうにはこちらの現在地が知られとるぞ。直接此処に向かわせずとも道中で待ち構えている可能性も……」

 

 確かにそれは言えている。一度は巻いたが今回のでおおよその進行ルートは察知されてしまっただろう。であれば、ディエールのある方角には間違いなく門番とも言うべきサーヴァントが待ち構えている。

 もっと頭を働かせているのなら、既に通った場所であるラ・シャリテ方面や海へと続くマルセイユにも警戒網を敷いていると思われる。まさに後にも先にも引けない前門の虎、後門の狼のような状況か。

 

「結局は前門をぶち破るしかないわけだが、それとは別に考える必要がある事が存在するね」

 

「――この時代のフランス軍についてね?」

 

「そうだね。マスターもわかっているようだが、彼らを放置していては進むに進めない。ある程度話をつけておかないと竜の魔女以上に障害になりかねない」

 

 現にフランス軍はジャンヌが悪落ちして蘇ったと全体的に認識しており、もう一人ジャンヌが存在しているなんて事はごく一部の助けられた人間にしか知られていない。つまりは、オルタであろうとなかろうとジャンヌと一緒に行動していれば高確率で手先と疑われてしまうわけだ。

 だが、かと言ってこちらのジャンヌを単独で行動させるわけにもいかないので、何とかして事実を認知してもらう必要がある。

 

「実際の戦場で知ってもらうのはリスクが高すぎますから、穏便に済ませたいですね……」

 

『……伝える相手も選ばないとね』

 

 そんじょそこらの部隊のリーダーや兵士に伝えるだけでは、世迷い言と断じられて効果は見込めない。伝えるなら軍の上層部にいる人間かもしくは意見できる人間が求められる。

 

『接触するにしても軍に対してコネがいるようね……』

 

「コネ、ねぇ……」

 

 そんなものは異邦人たる私達にはあるわけがなかった。イス人がインストールされてる神父なら或いはと一瞬思ったが、今更確認しにドンレミへ戻るには時間がかかる上に出向くことで再襲撃が発生する恐れがあった。

 

『向こうから来てくれる、なんて事があればいいんだけどね。ははは……』

 

「あるわけなかろう、そのようなこと」

 

「うんう―――ん?」

 

 ノッブの発言に同意しかけたその時、誰よりも早く兄貴が反応を示しこちらへ警戒の言葉を投げて寄越した。釣られて周囲の皆も一気に目つきが変わり、動けるように準備を整え始める。

 

「……サーヴァントじゃ、ねえなこの反応は……人間かコイツは?」

 

「数は?」

 

「指で数えるほどしか居ねえな……大方さっきの戦闘音を聞きつけた兵士ってところかねぇ」

 

 それが本当であるなら一気に警戒レベルは下がるが、どのみちジャンヌには霊体化なりして姿を隠してもらわなければならないだろう。また同時に、接近してくる兵士が何者であるかも判断してもらわなければなるまい。

 

「一般兵なら適当に取り繕う。そうでないのなら相手次第でザ・交渉タイムだ」

 

「はいっ!」

 

「……来るぞッ」

 

 相手方が私達を視界におさめるよりも早く視認してみせると、最初に現れたのは長い黒髪に白銀の鎧を纏った一人の男であった。その後方にはリヨンに行き着くまでに見た兵士と同じ装いの人間が確かに数えるほど付いている。

 

「あれは―――ジルっ!?」

 

『えっ――それは本当なのかい!?』

 

「ええ、彼は……ジル・ド・レェに間違いありません……」

 

 まさかの人物のご登場に戸惑いを私は隠せない。……いやだって、黒幕と同じ名前ですやん。それが堂々と来られたら誰だってビビるでしょうが。

 

「……でも、青髭って言われるほど青髭してないな。青髭フェイスがどんなんか知らんけど」

 

「ええと、多分目玉が飛び出しているような感じかと……」

 

 見た限りではそのような状態にあるわけでもなかった。聞くところによれば興奮しているとそうなるらしく、その度に目潰しをしていたとか。ふーん。

 

「もう一度確認しますが、あの集団は……偽装でも何でもなく生身の人間でしょうか。ドクター」

 

『――ああ、何度もスキャンを掛けたが何か仕込まれているわけでもない只の人間だ。所持品に魔術的なものがある様子も確認出来ない』

 

 だとすると、紛れもなく純粋なフランス軍の兵士なのか。いや、そもそもオルタの背後にいるジル・ド・レェがこの時代の本人かサーヴァントの彼かまだ判断がついていない。……どちらにしても話してみて判別付ける以外に方法はないということか。

 

「直感じゃが、シロじゃろうな。沖田の魂を賭けてもいい」

 

『貴女、直感スキル無いですよね。……あと、この場に居ない人の魂を勝手に賭けないで下さい』

 

「んー、じゃあ信勝の魂」

 

『じゃあ、じゃないでしょうが』

 

 巫山戯たやり取りが交わされている合間に相手方はこちらを視認し距離を詰めてくる。

 勢いを持ってやって来ていないことから話す余地はありそうだが、穏便に済むかどうかは私の駆け引き次第だ。

 頭をポリポリと掻いて面倒くさそうにしながら代表して話をする席につくと皆に合図すると、彼からまず私に声をかけてきた。

 

「――失礼。貴女らに話があるのだが少しよろしいかな?」

 

「……別に構いませんが、貴方は?」

 

 兵士が何だ知らないのかと軽く憤るような姿勢を見せるが、彼はそれを諌めて礼儀正しくジル・ド・レェであると名乗ってきた。反射的にこちらも名乗り、腹の中を探るように様子を窺う。

 

「私は……武芸者を纏め上げながら旅をしている、リツカと言います」

 

「おおっ、するとやはり貴女らが噂に聞く一団でしたかっ!!」

 

 いつの間にか噂になるほどになってたかーって……フランス軍の目の前で戦ったのって片手で数える程度しかなかったはずなんだが、それだけで有名になるとか世間は意外と狭いな。

 まあ、事態の深刻さから対処できる人間を欲しているというのもあるのだろう。出て来る相手が相手だからな、この時代の乏しい装備で収束させ解決するのは酷というものだ。

 

「あの邪竜共をいとも容易く倒していると聞き及んでいますが、もしや先程の爆発は―――」

 

「あー……尋常じゃない大きさの奴を倒した影響ですね。危うく全員丸焦げになるところでしたよ」

 

「しかし、無事なご様子。どのように倒されたのかも気になりますが、避けるのにも何か秘策がお有りで?」

 

 秘策も何も全力防御した結果なんだがな。というか、倒し方も到底教えられるようなものではない。真似できるとすればオイルを飛ばすことぐらいだが、私みたいに正確に口元へ流し込むのは困難だろう。ホースみたいのがあればまだわからないでもないが。

 

(どうするのですか、何か答えなければ怪しまれてしまいます)

 

(わかってるって……ああもう、説明しにくい倒し方したツケがこんなところで返ってくるとは思わなんだ)

 

(時代に即した戦い方を今後は少しでも心がけるようにせんとな。儂らがやっているのは戦国時代に戦車持ち出して大暴れするのとそう変わらんしのぅ)

 

(それ戦国自衛隊)

 

(猿の願いを叶えるためにヘリを持ち出すやつ、とかもそうじゃな)

 

(……時空警察懐かしいなオイ)

 

 しょうがないので戦い方の指南については、難しいから無理だと答えて上手く話をはぐらかすとして、どうこの後に話を繋ぐかだ。

 ノーコメントを貫けば会話は途切れ、こちらの印象はあまりよろしくなくなるだろう。そうなれば、目前にいるジル・ド・レェが敵か味方かの判断もつかなくなる。うーん、悩みどころだ。

 

(この状況で彼の出方を見るには―――)

 

(……マスター、いいだろうか?)

 

(むっ?)

 

 鋭気回復中のジークフリートが、唐突に意見があるとこのタイミングで申し出てくる。

 また、傍に座るアストルフォがさも自信あり気に彼の提案に乗ってくれと熱い視線をぶつけてきた。

 ……時間的に何を話すのかは共有している暇はない。ぶっつけ本番のアドリブで勝負で意図を読めということか。――いいだろう。

 

「それについては俺が話そう」

 

「……貴公は?」

 

「オレの名は……ジーク。彼女達が訪れる以前から成り行きでこの地を守っていた一介の騎士だ」

 

「――確か、この街に住んでいた者が避難した際、揃って残った者が一人いると言っていたが……もしや」

 

「ええ、彼のことです。実のところ、ジークの無事を確認するために我々はこの地を訪れたのです」

 

 嘘は言っていないが脚色の入っているフォローを入れ、いかにも友人を助けに来た体を装う。

 そうして、続けざまにジークと便宜上名乗った彼は、事のあらましに関してズガズガと切り込んでいった。

 

「先程、オレ達が戦ったのは巨大な竜種だと伝えたが……やや正確性に欠ける」

 

「というと?」

 

「あの竜種は、竜の魔女ことジャンヌ・ダルクがオレ達を殺すために召喚した存在だった……」

 

「召喚ッ!? それにジャンヌが――!?」

 

 彼の心を揺れ動かすワードが出たことにより、反応が顕になった。内容の真偽は別としてこれが反応を見るのに最適解か……考えたなジークフリート。

 

「あの光景には目を疑ったが、倒した後だからこそわかる――アレは幻ではない。まさしく竜の中の竜ともいうべき存在だった」

 

「それで、ジャンヌは……!?」

 

 誘導は出来ているな……後は此処でなんと答えるかだが、そんなものは既にわかりきっていた。

 

「……落ち着いて聞いてください。実は――」

 

「襲ってきたジャンヌならば何処ぞへと消えた。がしかし、問題はそのきっかけとなった……」

 

「こちらを襲うためでなく、守るために現れた……もう一人の、ジャンヌ・ダルクです」

 

「――はっ?」

 

 思った通りに混乱しているので、畳み掛けて情報を与えてゴリ押していく。

 要するに、現在のフランスにはジャンヌ・ダルクが二人も存在していることを認知してさえ貰えればそれで良いのだから。その上で反応を窺う。

 

「驚きましたよ、同じ顔、同じ容姿を持つ人間が目の前で居合わせたんですから」

 

「ま、全く同じだったのですかっ!?」

 

「少なくとも顔はそっくりでしたね。髪色や服装といったところの細部に関しては異なっていましたが……」

 

「つかぬことを聞くが、元帥……貴方の知るジャンヌ・ダルクはどのような姿をしていた?」

 

「それは……ええと」

 

 当然覚えているであろう特徴を列挙してもらい、隠れてもらっている彼女とすり合わせを行うが、ドン引きするほど的確に身体的情報を捉えていたので認識が阻害されているといった心配はなかった。つーか、元帥本人はジャンヌ・オルタのことを報告でしか聞いていないんかーい。

 

「――なるほど、この国随一で彼女に詳しい貴方が言うのだから間違いないですね。私達を守ってくれた方がまさしくジャンヌだったのでしょう」

 

「いやしかし、ジャンヌが二人に……一体どうして? 悪魔と契約したという噂は――」

 

「事実かどうかは私達でもわかりかねます。ですが、逃げた竜の魔女を追って消えたジャンヌはこう言いました」

 

 自らが招いたに等しいこの状況を終わらせるために、期間限定で遣わされ蘇っているのだと。

 であるからして、もしフランス軍が事態の収束に奔走しているのであれば被害を出さないためにも大人しくしていて欲しいと。

 

「ジャンヌ……」

 

「元帥、今の話を信じるのですか……?」

 

 取り巻きの兵士が不安げに声を彼にかける。その意見はごもっともで、初対面の人間の言葉を真に受けるのは警戒心がなさすぎるというものだ。

 

「すべてを信じていいかは私にもわからん。……だが、私とて竜の魔女がジャンヌだと受け入れたくないのだ」

 

「――つまり?」

 

「今の証言が真であるか確かめるために、もう一度竜の魔女について事細かく調べなおす。戻り次第、竜の魔女を見たという者の聴取だ」

 

 処刑直後というタイミングだけになかなか言い出せない人間もいると理解したのだろう。……いつの時代も情報共有は大事やね。勝手に噂が独り歩きすると真実は霞んでしまうからな。

 参考までに私がスケッチした似顔絵と違いについての情報を描いた用紙をサンプルとして渡しておくことにする。

 

「貴女方はこれからどうするおつもりで?」

 

「……一時とはいえ助けられた恩もありますから、探すついでにまた襲撃を受けている場所に顔を出すつもりです」

 

「そうですか……」

 

「もしまた会えたら伝えたい事はありますか?」

 

「いえ、それには及びません。機会があれば、自分自身で伝えようと思います」

 

 それでなければ意味が無いとさも言いたげに彼は答える。

 ……ここまでの会話の中で何度も様子を確かめたが、ノッブが言った通りで彼はシロであるようであった。

 すると狂気に陥ったのはジャンヌが死んだ直後からではなく、その後にあった出来事……恐らくはルルイエ異本を手にした時からだという仮説が成り立つ。もっとも、この正しくない歴史ではあっているかは確かめようがないが。

 

 その後、二言三言会話を交わした私達は、彼らが退くのを見届けてやや張り詰めていた空気を元に戻した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「……彼のビフォーアフターっぷりが益々気になったな、早く会ってみたい」

 

「興味本意で黒幕に会いに行こうとすんじゃねえよ」

 

「てへっ」

 

『それはさておき、これでこちら側の彼女が一緒に行動していても不思議ではない大義名分が一応得られたね』

 

『絶対にフランス軍から襲われないという保証がついたわけではないけれど、気休めにはなるわ』

 

「……ありがとうございます」

 

 フランス軍の動向もこれである程度はコントロール出来たことだろう。発言通りに行動さえしてくれれば、こちらの憂いもなくなる。

 気を取り直して、戦闘後の休憩へと入った私達はジークフリートの回復具合を目安に次の場所……ディエールへ移動する算段を立てた。

 

「車にそろそろ乗り切れる人数じゃなくなってきたな。エミヤー、投影でもう一台どうにかなんない?」

 

『無茶を言うな。せめて修理可能な廃車ぐらいは提供してくれ』

 

『出来るだけ近代の特異点がないと調達は無理じゃないかなー』

 

「なら、それらしい特異点があったらそこ優先して攻略しようか」

 

「……完全に車での移動を前提とした人理修復になっていますね」

 

「だって楽じゃろ?」

 

 車が駄目なら自転車かバイクでも構いませんぜ。前者だとめちゃくちゃシュールだが、やってみたい面白さはある。

 

『変な集団に見られるから止めてちょうだい』

 

「今でも変な集団じゃろ」

 

「その意見はごもっともで」

 

 時代錯誤も甚だしい私らである。ま、統一感出したら出したで余計怪しまれるかもだが。

 

「――私、バイクというモノに乗ってみたいわ!」

 

「……宝具弄れば実現可能なのでは?」

 

 ギロチンブレイカーって強そうなマシンっぽいしね。なお、馬よりも轢く力が強そうなので相手は大惨事間違い無しである。

 既に色々と歯止めが効かなくなっている彼女は何処へ向かおうとしているのか悩みつつ、今日という日はまた過ぎていく。

 




余談ですが、第二部序があんな展開になるとは思わなくて混乱しましたが、
我がカルデアでは「何がロストベルトだ、こちとら超人類史やぞ!」というスタンスで行くことにしました(適当

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