『ZOIDS Genesis 風と雲と虹と』第四部「坂東燃ゆ」 作:城元太
鎌輪の館の馬場に、濛々たる土煙が舞い上がる。
碧い獅子と、
「殿、私には村雨は扱えませぬ」
「俺もレインボージャークを手懐けるにはまだ苦労しそうだ」
屋敷の縁に腰を下ろすと、茶を運んで来た良子が二人の間の床に膝を着く。
「御無理をなさらぬように。あなた様、何なれば私がレインボージャークを操り都に上ります」
「ならぬならぬ。あんな所にお前を行かせるわけにはいかん。第一、
傍らには、愛らしい乳飲み子が座っている。母の膝に這い上がると、拙い指先で小次郎を指差し屈託の無い笑顔を輝かせていた。
「良正叔父が、あれで諦めるとは思えぬ」
小次郎は未だに憤る獅子と孔雀のゾイドを前に、額の汗を拭いつつ二匹を見上げる。
「村雨にせよ、レインボージャークにせよ、いつ迄も俺や良子だけしか操れぬのでは役に立たん。少しずつも慣れさせねば、これからの戦に備えることは出来ん」
多岐を膝に抱いた良子は、不安そうな顔で小次郎を見つめた。
「やはり、父は攻めて来るのでしょうか」
茶を少し口に含み、小次郎は空を見ながら答える。
「
深い溜息をついて、漸く員経が話に加わる。
「気になる上総と常陸との
土塀と館を隔てる矢倉が
只ならぬ様子に、小次郎は良子と娘を館奥に下がるよう命じ、員経と共にソードウルフ頭部脇に駆けつける。昇降機の到着がもどかしいのか、桔梗は風防を開くと、ひらり、と木の葉が舞うが如く地表に降り立った。
「良兼軍が、水守に向かって結集しております」
第一声は、剣狼達の蒼然たる姿を納得させるに足る報告であった。遅れて昇降機を伝い降り立った文屋好立が、息を切らして補足する。
「上総にあった良兼本来の所領の従類と、常陸の源家の残存部隊、水守の小勢に加え、国香亡き後を襲った貞盛
途中ゆるゆると進み伴類を募り、兵力は次第に拡大。私怨を晴らす為との理由で国衙の禁圧さえ無視したとのことです」
そこまで言うと、好立は俯き肩で息をする。強張った表情のままの桔梗が、員経と小次郎を代わる代わる見つめた。
「孝子、上総勢の兵力はどれほどだ」
「ゾイドにして凡そ二百。猶も増加中です」
「員経、いま集められる兵力は如何程か」
「先の
「烏合の衆では役に立たぬ。至急、各頭領に檄を飛ばし、毅を成して備えを整えよ。良き返答をせぬ者は当てにするな、寝返られるだけだ。
四郎を呼べ、参集する武士達の
孝子、確認するが義父殿の主力はダークホーンでいいのだな」
「先に野本に出陣した機体らしきものと、他
典型的な寄せ集め、烏合の衆だ。
報告を聞きつつ、小次郎は心中安堵していた。編制が混迷している。察するところ良兼に無理強いされて寄せ集められた軍団なのだろう。だが油断は禁物だ。
小次郎は考えを口に出すことなく、未だ猛々しく機体を揺さぶる村雨ライガーを括目した。
「頼むぞ、村雨ライガー」
碧き獅子の双眸は、
上総の軍勢=平良兼の軍が
小次郎の予測した通り、続々と結集する伴類の編制に時を費やしたというのは表向きの理由だが、義父良兼にしてみれば甥の小次郎と事を構えること以上に、娘である良子の夫との軋轢を避けたかったに違いない。父のダークホーンに随伴する良子の弟
「おのれ小次郎、甥の分際で散々我に恥をかかせたな……」
下野国府より
寒風吹き荒ぶ葉月の空の下、平将門は三度目の