働くIS魔王様   作:サダーオ

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魔王、休日の予定をたてる

翌日、貞夫と芦屋が起きるとすでに、恵美の姿は部屋から消えており、テーブルの上には恵美が作ったであろう朝御飯と一枚の書置きが置いてあった。

貞夫はおもむろに書置きを見ると、[クソ魔王へ、今回は貸しにしといてあげるから感謝しなさい。後、健康的な生活を心がけなさいよ。]と書かれている。

 

 

「ツンデレか……それに朝飯まで作ってくれるなんてな。」

 

 

「ふむ、どれ毒見を……これは、敵ながらなかなか、勇者のくせに……」

 

 

貞夫も芦屋に続き、テーブルに置いてあるキュウリとタコの酢の物や玉子焼きに手を伸ばす。

 

 

「……美味いな、なんか複雑な気分だけど。」

 

 

「はいはい魔王様、ご飯を用意しますので準備をしてください。」

 

 

「たまには学食以外って言うのもいいもんだな……」

 

 

そう言って貞夫は歯磨きなど、軽い身支度を整える。

 

 

「魔王様、ご飯の準備ができましたよー」

 

 

「そういや芦屋、玄関でこんなのみつけたんだけど。」

 

 

「うちの部屋の鍵ですね。なぜそんなところで……」

 

 

「多分部屋から出るときに部屋の鍵を閉め、ポストから投げ入れたんだろう。」

 

 

「流石は勇者、品行方正なことで……」

 

 

「お前だったらどうするんだ?」

 

 

「決まっています。鍵を掛けて、そのまま鍵を持ち帰ります。」

 

 

「お前悪魔だ。」

 

 

「悪魔ですが何か?」

 

 

その後、朝食を摂った貞夫は、学生寮の部屋に戻り支度をしようと自身の部屋の扉に手をかけ、まだ鍵がかかってないことがわかると、そのまま部屋の中に入る。

そこには、身支度をほとんど済ませた一夏が少しやつれた顔で出迎えてくれた。

 

 

「おう、昨日は変なところ見せてごめんな。」

 

 

さすがに二人にあれほど言われたのなら仕方がないと思いながらも、その原因が気になった貞夫は思わず口に出してしまう。

 

 

「なぁ、なんで昨日あんな修羅場になってたんだ?」

 

 

「え?ん~……よくわからねぇんだよ俺も。」

 

 

「なんて言われて、なんて返したんだ?」

 

 

貞夫の言葉に一夏は、鈴にずっと酢豚を作って上げるという言葉に、ずっと酢豚を奢ってもらえるのか助かると返したと言い、流石の貞夫も呆れてしまう。

 

 

「おま、それはなんというか……」

 

 

「んなっ、貞夫には意味がわかるって言うのかよ?」

 

 

「とりあえずアレだ。少女漫画読め、千冬先生が持ってるから今度貸してもらえ。」

 

 

「そんなことじゃわからねぇっての!どういう事なんだよ、教えてくれよ貞夫!」

 

 

「こればっかりは自分で気づけ、じゃないと俺はお前をバカと呼ぶ!」

 

 

「え、なんだよそれ?一体どういう……」

 

 

「いいからほら、先に学校行け。」

 

 

その言葉に、しぶしぶながらも一夏は荷物を持ち、部屋から出て行く。

貞夫はそんな一夏を、生暖かい目で見守っていた。

 

 

 

学校に到着し、貞夫は自分の席に着くと、千穂が話しかけてきた。

 

 

「真奥さん、昨日のメールのことで少し話したいことがあるんですけど……」

 

 

「あのメールのこと?いきなりだったからびっくりしたよ……それで、どうしたの?」

 

 

貞夫の対応にモジモジしながらも千穂は応える。

 

 

「えっと、ちょっと学園では話せない内容で……日曜のバイトってシフト重なってましたよね?帰りにでも話、聞いてもらっていいですか?」

 

 

「あぁ、それじゃバイトが終わった後に話を聞くよ。」

 

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 

千穂がそう感謝を述べると、彼女の後ろからセシリアが現れ、二人に話しかけてくる。

 

 

「ちょっと、お二人で何の話をしているんですの?」

 

 

セシリアの言葉にしどろもどろになる千穂、その様子を見た貞夫は空気を読んで応えた。

 

 

「ちょっと休日のバイト後に、どこか寄ろうって話をしてたんだよ。」

 

 

「バイト後ということは学園外で、ということですの?」

 

 

「あぁ、窮屈な学生生活に少しの気晴らしをと思ってな。」

 

 

「そうですの……その、私も少し気晴らしをしたいと思っていたところですの。」

 

 

セシリアの言葉に、貞夫は自分の言動が裏目に出たと後悔し、千穂もどこか焦りを見せていた。

その時、窓ガラスがカタカタと震え、小さい地震が発生する。

 

 

「お、地震か……ちーちゃんの言ってたのってこれ?」

 

 

貞夫が千穂に耳打ちをする。

千穂は首だけ振って否定し、もっと大きなものだと思いますと貞夫に耳打ちする。

小さな地震が収まると、セシリアが思い出したように声を上げる。

 

 

「最近、地震が頻発している様な気がしますわね……そう言えば先日、変な声が聞こえましたの。」

 

 

その言葉に、千穂が反応する。

 

 

「それって、男の人のですか?」

 

 

「あら、佐々木さんもご存知ですの?」

 

 

「実は、その事を真奥さんに相談しようとしてたんです。」

 

 

「なるほど、私も休日ご一緒してもよろしいですか?」

 

 

「俺は全然かまわないぞ。」

 

 

セシリアの言葉に潔く了解を出す貞夫。

一方の千穂は少し残念そうな表情をしている。

 

 

「さっきから何の話してるんだ?」

 

 

そこに、一夏が話の輪に加わってくる。

 

 

「あぁ、今週の休日遊ぼうかって話になったんだ。一夏もどうだ?」

 

 

貞夫は言葉に出してからしまったと思い、どうするか悩むが、一夏の口から無理だという言葉が出ると、貞夫は安堵して胸を撫で下ろし、千穂とセシリアもほっと胸を撫で下ろすのであった。

その時丁度千冬が来て、ホームルームが始まる。

 

 

ホームルームの内容は、ほとんどが来週のクラス対抗戦の事であった。

 

 

「来週の月曜日がクラス対抗戦だ。ちゃんと時間までにアリーナに来るように、遅刻など無いようにな。」

 

 

その言葉に、クラス全員が元気よく返事をする。

更に注意事項があるのか、千冬が言葉を続ける。

 

 

「後、真奥とオルコットは専用機は少しの間こちらで預かる事となったので、放課後にでも持ってきてくれ。」

 

 

「どういう事ですの?」

 

 

「理由は、真奥のISが変化したのは皆知っているな?」

 

 

その言葉に皆頷く、対セシリア戦で変身した貞夫のラファール・リヴァイヴは緑色の訓練機の姿から、漆黒のISと変身したのだ。

 

 

「そのIS、ラファール・リヴァイヴだが、あの後真奥に展開してもらったが、訓練機の姿に戻っていた。」

 

 

千冬の言葉にクラス中がどよめく、変身して元に戻るISなど、今まで見たことも聞いたこともなかったからである。

 

 

「その為、真奥のIS及び、真奥のISと戦闘経験のあるセシリアのISも共に精密検査をかけることとなった。」

 

 

「期間はどのくらいですの?」

 

 

「一応は精密検査なんでな、クラス対抗戦の朝には返す予定だ。因みに、ちゃんと各々の開発国チームの技術班がやってくれるので、技術の漏洩は心配しなくていい。」

 

 

「そうですの……わかりましたわ。」

 

 

「真奥もそれでいいな?」

 

 

「自分はOKですよ。」

 

 

「なら放課後、職員室に来てくれ、そこで正式に受け取る……この話はこれで終わりだ。授業を開始するぞ。」

 

 

その後の授業も無事に終え、放課後になりバイトも無く暇を持て余していた貞夫は、なんとなく一夏の練習を見にアリーナまで足を運んだ。

観客席から眺めると、一夏がセシリアと箒に教えてもらっている光景が目に映っていたが、その光景は教えるというよりは虐めているといった方が合っているようなものであった。

 

 

「うわぁ、一夏ずっとあんな訓練受けてたのか、あんなので本当に大丈夫なのかね?」

 

 

そう一人呟くと後ろから声がかかる。

 

 

「一夏が少し練習したぐらいで、私に勝てるはずないでしょ。」

 

 

その言葉に反応し貞夫が振り返ると、そこにはツインテールの転校生が立っている。

 

 

「確か……凰だっけ?こんなところで何してんだ?」

 

 

「あいつの無様な姿を眺めに来ただけよ。そして本番で叩き潰す為の情報収集も兼ねてね。」

 

 

「お前じゃ余裕じゃないのか?」

 

 

「いくら相手が一夏だったとしても、手を抜いたりはしないわ。」

 

 

「まぁ、程々にしないと愛する一夏に嫌われちまうぞ?」

 

 

「な、ななな、何適当なこと言ってんのよ!?」

 

 

「まぁ俺には関係ないけど、人間関係は難しいから直せる内に直さないと大変なことになるぞ?」

 

 

「わ、わかってるわよ……忠告どうも!」

 

 

そう言って鈴は踵を返し戻っていった。

貞夫はその後少しだけ見学していたが、一夏が振り回される姿を見かねて寮に戻っていった。

一夏の訓練も終わり、部屋に戻ってきて早々膝をつく一夏に貞夫は手を差し伸べる。

 

 

「おつかれさん一夏、お前ここ最近いつもあんな感じなのか?」

 

 

「あぁ……あの二人の訓練はなかなか堪えるぜ。」

 

 

「まぁ、そんなお前の為に俺が食事を取ってきておいたから、さっさと食ってシャワー浴びて寝ろ。」

 

 

「っな……。」

 

 

貞夫の言葉に感動したのか、一夏は口を抑えながら震えている。

 

 

「な、なんかさ、俺……この学園でお前が一番女子力高いような気がするよ。」

 

 

「なんだいきなり気持ち悪いな、接客業している身としては、相手を思いやるってことが少し得意なだけだ。」

 

 

「いやほんと、サンキューな、明日もあるしさっさと食って体綺麗にして寝ますか!」

 

 

その後、食事もシャワーも済ませ、一夏と貞夫はベッドの上で各々の作業をしている。

 

 

「なぁ貞夫、今思えばさ……俺ら二人一緒でこの部屋で寝るのって、かなり久しぶりなんじゃないか?」

 

 

「そうか?まぁ、最近は色々あったしな……ってか疲れてるんだろ?早く寝ろよ。」

 

 

「いやそれがさ、修学旅行のテンションになっちゃって眠れねぇんだ。」

 

 

「なんだそれ、んじゃ少し話すか?何の話がいい?」

 

 

「やっぱ修学旅行って言ったら恋話だろ!」

 

 

「そういうもんか?」

 

 

「そういうもんなの!っと言うわけで、貞夫は好きな女子とかいる?」

 

 

「今はいないな、そもそも恋なんてしている場合じゃないしな。やりたいこともあるし……。」

 

 

「やりたい事?企業を立ち上げ社長とか、はたまた世界征服でもする気か?」

 

 

「小学生みたいな夢物語だなそれ……そんな事より一夏の方こそどうなんだ?好きな人とかいるのか?」

 

 

「え?特出して好きな子はいないかな。今はISの事でいっぱいいっぱいだ。」

 

 

「そうだな……それでも一夏、いつかお前を思っている子達に答えてやるんだぞ。」

 

 

「貞夫が言うことか?」

 

 

「「え?」」

 

 

そうして二人の話は深夜まで及んだという。

 

 

 

そして時間が過ぎてゆき、日曜の昼頃、貞夫は芦屋と真耶、千冬を伴って警察署入り口に置いてある長椅子に腰掛けていた。

 

 

「まさか、バイトの制服から身元を割り出すとは……やるな日本の警察!」

 

 

「付き合わされたこっちの身にもなってほしいな真奥?」

 

 

「でもでも、何も無くてよかったですよね?私も何事かと心配しましたよ~」

 

 

「私一人でもいいかと思ったのですが、イマイチ勝手がわからなかったので、同行していただいたお二人には感謝します。」

 

 

事の発端は日曜の朝、魔王の携帯に木崎からの連絡が入ったことが始まりであった。

木崎は、貞夫が置いていった制服の名札を警察が発見し、警察が貞夫に事情聴取がしたいという旨を貞夫に伝え、今日のバイトは休んでいいと言って電話を切った。

その後マグロナルドから少し離れた警察署に保護者兼身元保証人として真耶や千冬、芦屋を連れて向かった。

貞夫は通された部屋で調書を済ませ、最近この辺りで通り魔などの物騒な事件が多発していることを聞き、自身の特定へと至ったボロボロになった制服を貰い、全て終えた一行は警察署の前で休憩しているところである。

 

 

 

「しかし真奥、貴様……なぜこの事を黙っていた?」

 

 

「本当ですよ真奥君!織斑先生は怖いと思いますけど、私にぐらい相談してくれてもよかったんですよ?」

 

 

二人とも心配しているのだろうが、真耶の言動に千冬が彼女の肩に手をかける。

 

 

「ほぉ、山田先生……今の発言について少し話しませんか?出来れば私の部屋で……な?」

 

 

千冬の言葉に顔を青ざめる真耶、貞夫と芦屋に助けを求めるが、二人はそんな彼女に合掌し見送った。

二人が去った後、不意に貞夫が声を上げる。

 

 

「あ、そういやこれからちーちゃんとセシリアに会う約束があったんだった。」

 

 

「ほぉ、デートですか魔王様?」

 

 

「ばっ、ちっげーよ!二人の悩み事を聞くだけだよ!」

 

 

その後、二人は待ち合わせ場所の近くに来ていた。

 

 

「して魔王様、その佐々木さんとオルコットさんとはどこで何時に待ち合わせて何時におかえりですか?」

 

 

「お前は俺のおふくろか……ちーちゃんがバイト終わってから準備するのに時間かかるから5時に駅前のロータリーで待ち合わせだよ。」

 

 

「まだ時間がありますね……では魔王様、行きましょう。」

 

 

「は?どこに?」

 

 

そうして貞夫は芦屋に連れられ、少しおしゃれな服屋に立ち寄り、試着室で芦屋が出す服やズボンを何回も試着していた。

最後に貞夫が着て出てきた服は、全体的に落ち着きのあるシンプルな仕上がりになっていた。

 

 

「ふぅむ……これはなかなか。」

 

 

「っていうか、こんな服買う金どこにあったんだよ?結構な値段するだろこれ……」

 

 

「このような一大事な時のために、私の財布には常時5万円ほど用意してあります。」

 

 

「そんな大金を常にだと……まぁそれはいい、そもそも一大事ってな……約束っていってもお茶して話聞いてさよならだぞ?別にこんな……」

 

 

「何をおっしゃいます!年頃の女の子は深刻な悩みを気心の知れた友達以外には絶対に話しません、両親にもです!それなのに魔王様には話した……その意味がわからない魔王様ではありませんよね?」

 

 

「わ、わかります……はい。」

 

 

「それに、魔王様は制服以外では、たださえ安いユニシロばかり買うんですから……そんなのでダサい格好でデートに行かせるわけにはいきません。」

 

 

「お、お前……アパレル業界ナンバーワンのユニシロと俺に謝れ!」

 

 

貞夫の切実な思いがショップの中を反響したのだった。

 

 




最近忙しいこともあり、元から遅い更新速度が急激に低下しています。
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