千冬による、クラス代表決定戦の日程決定から翌日。
再びのホームルームで、千冬が代表決定戦当日の予定を伝える。
「アリーナでの観戦席は自由に使ってもらっても構わない、だができるだけ1箇所に固まってくれ。」
注意事項にクラス全員が返事をする。
「それとだ織斑、お前のISだが、準備まで時間がかかるぞ?」
「へ?」
いきなり言葉をかけられた一夏は、間抜けな返事を返してしまった。
少し呆れながらも、千冬は言葉を続ける。
「予備の機体がない、だから……学園で専用機を用意するそうだ。」
その言葉に、クラス内が騒がしくなる。
ただでさえ、数の少ないISが、専用機として割り振られるのだ。
クラス内では、1年のこの時期に?、私も専用機欲しいなど、様々な言葉が飛び交う。
しかし、当の本人は特に変わった風もなく、疑問を口にした。
「専用機があるって、そんなに凄いことなのか?」
何もわかってない一夏だが、そんな一夏の前にドヤ顔のセシリアが来た。
「それを聞いて安心しましたわ!クラス代表の決定戦、私と貴方では勝負が見えていますけど、さすがに私が専用機、貴方が訓練機ではフェアではありませんものね。」
「お前も専用機ってのを持ってるのか?」
「ご存知無いの?よろしいですわ……庶民の貴方に教えて差し上げましょう!この私、セシリア・オルコットはイギリス代表候補生……つまり、現時点ですでに専用機を持っていますの!世界にISは僅か467機、そのなかでも専用機を持つものは、全人類60億の中でも、エリート中のエリートなのですわ!」
セシリアの力強い自己主張を無視しながら、一夏と席が隣な貞夫は、一夏に説明をする。
「ISってのには、コアって言う一番重要な機関があるんだ。人間で言うところの心臓かな?それの総数は467個で、コアは現在、篠ノ之束って奴しか作れないんだと、でも本人は467個目以来、コアを作ってないらしいんだ。」
「へぇ~、そんなに少ないのか、貞夫って物知りなんだな。」
「いや、一応常識問題だぞこれ……ついでに言うと、コアは467個を世界中の国家、企業に割り振ってるから、一つの国に多くても十数個しかないんだ。だから、専用機を持ってる奴は凄いんだぞってドリルは言いたいらしい。」
貞夫が話し終わると、千冬が再度、説明してくる。
「IS専用機は国家、或いは企業に属する人間にしか与えられない……しかし、状況が状況なのでお前には、データ収集を目的として、専用機が与えられるんだ。」
今までの話の流れで、一人の女子が、千冬に束と苗字が同じ箒は関係者なのかと質問する。
その言葉に対し、千冬は特に何事もないように答えた。
「そうだ。篠ノ之はあいつの妹だ。」
その言葉にクラスが今まで以上に騒がしくなる。
知っていた一夏と、おおよそ予測のついていた貞夫は特に驚きはしなかった。
だが、それでもクラスはヒートアップしていき、箒に束の事について聞こうとする女子も増えてきた。
箒も耐えられなくなったのか、大きな声で応える。
「あの人は関係ない!私はあの人じゃない、教えられることは何も無い。」
その一言に静まり返るクラス、これ以上深追いは出来ないと思ったのか、今度は貞夫へと矛先が向く。
千穂が、今まで疑問に思っていたことを口にする。
「それじゃ真奥さんは?真奥さんも男性IS操縦者ですよね?専用機とかあるんですか?」
その質問に、千冬が沈黙する。
言葉を選んでいるのか、少し時間がたってから千冬が応える。
「真奥の場合、諸事情により、専用機の用意はしていない……しかし、それに類似する手段が適応されるかもしれん。」
その言葉に一番びっくりしたのは他でもない、貞夫であった。
「え?俺、専用機なんて要らんですよ?男性のデータは一夏だけでいいんじゃない!?」
「かもしれんと言ったろう、それに関して真奥、お前には放課後、生徒指導室に来てもらう。いいな?大丈夫だ、時間は取らせない、簡単な説明と、お前の意思を確認したいだけだ。」
「え、はい……」
断れるはずもなく、貞夫は了承する。
それに反応したのか、さっきまで黙っていたセシリアが突っかかってくる。
「あら、貴方も専用機を持てるのかしら?もし訓練機だったとしたら、こちらは1つだけの武装で相手をしてあげましてよ!」
「あ~はいはい、そのドリルで戦うんですね。凄いハンデですねーウレシー。」
「んな!?貴方、いい加減に私を侮辱するのはやめていただけます!?」
「うっせ!四の五の言ってないで全力で来い!負けたときの言い訳なんざ聞きたくないしな!!」
「わ……わかりましたわ!このセシリア・オルコット、全力で貴方をたたき潰して差し上げますわ!!」
その後、千冬が真耶へ授業をしろとアイコンタクトをし、真耶が授業を始める。
貞夫は授業中、千冬が言っていた類似する手段と言うものがどういったものなのか、ずっと考えていた。
放課後になり、生徒指導室に向かう貞夫、部屋に入ると既に千冬が椅子に座っていた。
「よし、まずは扉を閉めろ……後、お前に聞きたいことがある。」
千冬の言葉に、今まで以上の重みを感じた貞夫は、真剣な表情を作り千冬を見る。
「俺で答えられることなら、なんでも。」
「まず、専用機については学園側では用意していないと言ったな?」
「それはホームルームでも聞きました。ですが、類似する手段というのは?」
「あぁ、この学園に存在するISの訓練機、その一つが起動できなくなってしまった。」
「え?壊れたってことですか?」
「わからん、検査したところ目立った異常は見当たらない、しかし、学園の生徒が起動しようとしてもできないんだ。」
「それが俺と何の関係が??」
「その機体こそ、お前が最初に起動したISだ。」
そこで貞夫は思い出す。
最初にこの世界に来た時、死の危険を感じたので、ISを魔力で自身と同調させ、無理矢理起動した時のことを。
貞夫は、魔力を使ったのがばれたのかと、少し不安になったが、冷静に言葉を返す。
「原因はわかったんですか?」
「いや、さっき言った通り異常はなかった。」
「とりあえず、俺がもう一度起動できるか、試してみたらいいんですか?」
「話が早いな、そうだ……そして、お前が起動できた場合、あの訓練機をお前の専用機としてもいい。」
「それはまた、うれしい話……だけど、本音はどういった感じで?」
「全く、食えない男だ……訓練機の名前はラファール・リヴァイヴ、デュノア社というフランスのIS企業で作られた第2世代のISだ。」
千冬は、バツの悪そうな顔をして言葉を続ける。
「最初は不具合かと思ってな、デュノア社に連絡を取り、掻い摘んで経緯を説明したところ、その男性が起動できた場合、その訓練機をその男性の専用機にしてくれと強く懇願されてな。」
「とう言うことは、デュノア社には俺の存在が?」
「その点に関しては弁明の余地もない、匿うと言っておきながら、すまなかった。」
そう言って、千冬が頭を下げる。
その態度に驚いたのか、貞夫が千冬をフォローする。
「いや……今回は仕方のないことだってわかってます。とりあえずバイトがあるので、明日の放課後ならバイトもないですから、その時になら大丈夫ですか?」
「あぁ、それは構わない……それで頼む。」
その後、貞夫はバイトに急ぐ、今日は千穂がシフトに入っていないので一人で向かう。
駅から出て、マグロナルドに向かう途中、貞夫は道行く女性に、何やら聞いて回っている赤い髪の女の子を見つける。
「あの、IS学園に行きたいんですけど、どうやっていけばよろしいですか??」
殆どの女性は、知らないなどと彼女を軽くあしらう。
貞夫は不憫に思ったのか、その女の子に声をかける。
「IS学園なら、その駅からモノレール駅まで行けばいいよ。駅員に聞けば早いと思う。」
「え?男?あ、ありがとうございます!」
そう言って、その女の子は走って駅へ向かっていった。
「あの子、IS学園に何のようなんだ……?」
そう呟いたが、気を取り直し、貞夫はバイトへ向かった。
その日、時給UPを言い渡された貞夫は、鼻歌を歌いながら学園に戻った。
翌日、朝からテンションの高い貞夫に、千穂が話しかけてくる。
「どうしたんですか真奥さん?すごく機嫌が良いみたいですけど?」
「ふふふ、ちーちゃんよくぞ聞いてくれました!何と不肖この真奥貞夫、マグロナルドでの時給がUPいたしました!」
余りのテンションに若干戸惑う千穂。
「で、いくら上がったんですか?」
「10円!」
「……へぇー、凄いですね~」
千穂の反応に、更に鼻高々になる貞夫。
しかし、その後冷静な一夏に、10円?しょぼいな……と言われ、一気にテンションが下降したのは言うまでもない。
そして、放課後になり、千冬と共に第3アリーナに向かった。
「これが、件のISだ。」
「あの時と変わってないな。」
「あぁ、あれから起動できる者がいなかったのでな、とりあえず起動させてみてくれ。」
「触ればいいの?」
「そうだな、触れたらどう使うのか教えてくれる。その通りにやれば大丈夫だ。」
その言葉を聞き、貞夫はISに触れる。
貞夫が触れた場所から、少量の魔力を流すと、IS側から情報が提供される。
その情報を理解し終わった貞夫は、おもむろにISに乗り、体を預ける。
その瞬間、ISが貞夫を包み込むように展開する。
「やはり、そのISはお前しか主人と認めていないようだな。少しの間待っていろ、ISがお前の体に合わせて情報を最適化してくれる。」
その言葉の通りに、ラファール・リヴァイヴが様々な情報を、貞夫の眼前に浮かび上がらせる。
そして、数秒もしないうちに、フィッティングが完了した。
「よし、起動はOKだ。次は動作確認を頼む。」
「わかった。」
そう言って貞夫は歩を進める。
自分の体の様に動くISに驚きつつも、歩くから走る、果てはホバリングまでの流れを1回で行なってしまった。
「な、予備知識はあるかもしれんが、いきなりISに乗ってそれができるとは……見上げた奴だ。」
「いや、こいつが優秀だからだと思うぞ。」
「では、次は飛んでみせろ。」
その言葉に、貞夫は昔、エンテイスラで飛翔していた感覚を思い出す。
次の瞬間、ISが急上昇を始め、地上から7メートル辺りで止まる。
「飛行も順調、もう降りてきても大丈夫だぞ。」
貞夫は、昔を思い出していた。
自身が魔王だったあの頃、空を高速で飛び回り、自身の恐ろしい魔力で勇者と戦っていたあの頃を。
貞夫は衝動を抑えきれずに、急降下し始める。
地上からあまり距離が離れていない空中からの急降下に、千冬が驚く。
しかし千冬が最も驚いたのは、急降下からの急制動をまたも1回でやってのけてしまった貞夫本人にである。
だが、命令とは違う行動を取った貞夫に、千冬は注意する。
「バカモノ!誰が急降下しろと言った?普通に降りてくればいいんだ!」
地上に降り、ISを解除した貞夫がしょんぼりする。
待機状態になったラファール・リヴァイヴが、貞夫の左手小指に指輪となって光る。
バツが悪いのか、千冬が言葉を続ける。
「まぁいい、起動試験はこれにて終了だ。その機体はお前のものとなった。好きに使え、ただ……規則があるからそれには従うようにな?」
そう言って分厚い教則本を渡してくる千冬に、貞夫は了解しました!と敬礼する。
こうして、真奥貞夫の専用機、ラファール・リヴァイヴが手に入ったのであった。