ヴィヴィオはそれでもお兄さんが好き   作:ペンキ屋

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ども〜


ではよろしくお願いします。


第12話【ハゲと怠惰と失われた花園】

「はい、それじゃ〜ワン兄、左足出して? 」

 

「ああ。にしても悪いな。急で義足作って貰って。必要なら金は払うから言ってくれ」

 

「別にいいわよ。気にしないで。大体は趣味みたいなもんだし。それに……これは4年前の恩返しも入ってるから。……まぁ……少しAI組むの失敗したからって言うのが1番でかいんだけど」

 

「おい待て……最後さらっとおかしな事言わなかったか? 」

 

「え? さ、さぁ〜言ってないわよ? 」

 

青年は魔法で治療された後、ルーテシアに連れられて義足の調整をしていた。ただその義足がルーテシアの趣味が入っている所為なのか青年にはわからなかったが、ルーテシアが持ち出してきた義足は材質が鋼鉄。色は黒でスネの部分は赤くラインが入り、まるでロボットアニメに出てくる悪堕ちした主人公機か主人公のライバル機のようなフォルムの義足であった。

またこの時ルーテシアの様子は明らかにおかしかった。青年がルーテシアと話をする度にその目が泳ぎ始め、最終的には言えない何かがあると青年が完全に疑い始める結果にまで発展する。

 

「ルーテシア? 作って貰ってなんなんだが……何を隠してる? 」

 

「か、隠して……ない」

 

「もう一度……俺の目を見て言ってみろよ。はぁ……まぁ〜いいか。大方、作ってる最中に楽しすぎて余計な機能盛り込みすぎたんだろ? 」

 

「あはは……バレてますか」

 

「で? それの何が問題なんだ? 便利なら気にする必要もないだろうに」

 

「それはその…………」

 

ルーテシアは本題にふれようとすると途端に言葉を失いその先をどうしても教えてくれなかった。青年は終始気になっていたが、義足の調整が終わった時その問題点が明らかになる。

 

「これで終わりっと。どう? 痛かったりしない? 」

 

「ああ、問題ない。サンキューなルーテシア。凄く歩きやすいよ」

《マスター認証……確認。アリス、起動シークエンスにはいります》

 

「は? 」

 

「あ……起きちゃった…………」

 

義足から突如発せられる機械音声。青年は目を丸くして自分のつけている義足を見つめる。そう問題点とはルーテシアが作った義足が自立型デバイスであると言う事だ。自立……とつけるのには理由がある。ルーテシアが青年を気遣い身の回りサポートをさせられる物は作れないかと言う事で産まれたのがこのデバイス。正式固有名称を自立型義足デバイス『アリス』。

この自立型義足デバイスは青年が魔力を保有してない事を考慮して、自身が起動する魔力と機能し続ける為の魔力を散布され消えていく空気中……つまり外部から取り入れ、動力とする魔力集束システムをつんでいる。その為自立型などと名称をつけているのだが、本当の問題は義足がデバイスである事はない。仮に義足がデバイスである事問題であるのならばルーテシアも気にする事はなかった。むしろそれを目的として作っていた為、ルーテシアにとっては最高傑作と言わざるおえないだろう。

 

 

 

ただ一つ、デバイスの性格以外は…………

 

 

 

「ルーテシア……まさか義足型のデバイスとは恐れ入った」

 

「ごめんなさい……勝手に」

 

「別に謝る必要はないだろう? こいつがデバイスだからって俺が困るわけじゃないし。まぁ〜そんな事はどうでもいいとして、これからよろしくな! えっと……アリスって言ったか? 」

 

《……うっさい、バーカ! 消えろ 》

 

「……ははは。気のせいかな? 聞こえちゃいけない単語がゴロゴロと……きっと何かの聞き間違えで」

《うざっ。うるさいって言ってんじゃん》

 

 

「……ワ、ワン兄……ごめん。本当にごめんなさい。AIを組んでる途中で失敗して……バグって良からぬ性格になっちゃって……で、でも!? ここまで組んでしまった手前データを消去するのは可哀想で、私にはどうしてもできなくて……新しいの作ってる時間……なかったし……その…………」

 

 

固まり唖然としている青年に、ルーテシアは涙目になりながら必死に説明し、どうにか受け入れて貰えないかとアリスをかばう。製作者であるルーテシアはアリスに対して情がうつってしまったのだ。

もう完全に泣いていると言っても間違えじゃないルーテシアに青年は何も言えず、贅沢は言うまいと笑って受け入れた。だが、アリスが受け入れるかと言えば別問題だった。

 

 

「ありがとうワン兄! よったぁ〜。ね、アリス? 」

《別に、このハゲなんかどうでもいいし。もうほっといて。私は眠いの》

 

「アリス……も、もう少しオブラートに包めないのかぁ? 流石にイラっとしたぞ。と言うかデバイスが眠いとか本当にバグってんのか!? 」

 

《はぁ……うるさいなぁ……ほっといてって言ってんじゃん! バーカバーカ! ハゲ! 》

「てんめぇ! 叩き壊してやんぞゴラぁぁああああ!!! 」

 

「あ……ちょ、ちょっと……2人とももう少し仲良く……ど、どうしよう…………」

 

デバイスとは本気で喧嘩しだすという前代未聞の出来事。古い歴史においてこんな事はまずないはずだ。

 

《お・や・す・み。このハゲ! ……sleep mode 》

 

「なっ!? AIのくせに本当に寝たのかお前!? 逃げんな!? ちゃんと俺との話終わってからにしろコラっ!! 」

 

これが……青年とアリスが出会った事が、マスターとデバイスというごく当たり前の関係、その概念を壊す初めての関係になるとはこの時は誰も知らない。知るはずもなかった。

AIでありながら極微量なバグが入り込んだ事で偶然生まれた存在。そんなアリスは他のデバイスとは比べ物にならないほど特別だった。ただそれを多く語るのはまだ早い。

 

 

 

 

一方、ヴィヴィオ達はアインハルト絡みのことで調べ物をし、その後なのは達が訓練をしている為、それをみんなで見にルーテシアが作った訓練場所へと訪れていた。その間に義足の受け渡しが終わったルーテシアも合流し、そこにいたアインハルト達はなのは達の訓練に魅せられていた。

 

「ルールー? お兄さんは? 」

 

「え? 義足渡したらここのどこかで試しに動かしてみるって言ってたわよ? あっちの隅でやってるんじゃない? 」

 

「そっか……じゃ〜後でのぞいてみよかな」

 

「皆さんすごいですね。あんな訓練まで……皆さんの訓練をもっと見ていたい気持ちはあるのですが……ヴィヴィオさん! 」

 

「へ? ……は、はい? なんでしょうか」

「私は先生が何をしているかが凄く気になるのですが、様子を見に行かれるなら是非ご一緒に! 」

 

なのは達の訓練に興奮し、青年が訓練まがいの事をしていると聞けば弟子志望の彼女が黙っているわけもなく、ヴィヴィオの両手を掴んで熱烈な行きたいアピールを始める。ヴィヴィオからしてみれば止める立場にないので断る理由もないが、アインハルトが青年を先生と呼んでいる事に知らない為驚く。当然他のみんなもそうだ。中でもノーヴェはポカンとし、理解が追いつかないでいた。

 

「アインハルトさんどうしてお兄さんを先生なんて? 」

 

「え? それはその……私が先生に惚れたからです! ……あ、あれ? どうかしましたか? ……みなさん…………」

 

アインハルトはこの時、一つの言葉を入れ忘れた事でこの場にとんでもない爆弾を投下した。そこにいた全員が顔を赤らめ、なんて大胆な事を言っているのかと完全に誤解した。

もしこの時、アインハルトがキチンと拳という言葉を惚れたの前につけていればいらぬ誤解もなかったかもしれない。しかしこの爆弾は青年にとって後々のとばっちりに他ならなかった。

 

「……アインハルトさんが……お兄さんを? ……負けません…………」

 

「ヴィヴィオさん? あのどうかし」

「アインハルトさん私は負けませんよ! アインハルトさんが相手でも関係ありません!! これだけは絶対、絶対に譲りませんから! お兄さんは私の物なんです!!! 」

 

「え……い、いえ私はただ」

 

 

 

 

身を乗り出し、ヴィヴィオはアインハルトに宣戦布告のような言葉を投げかけた。今にも噴火しそうな火山のようにヴィヴィオは顔を真っ赤にしてアインハルトをジッと見つめる。当然アインハルトはどうしてそこまで自分が噛み付かれたのか理解できてない為、反応に困っていた。

そんな時、なのは達の訓練がひと段落した時にその音は響き始める。今まで、なのは達の訓練によりかき消されていた音。それは止まる事なく絶えず響く何かを叩くような強打音。テンポが限りなく短く、物で叩いているにしては間隔が短いラッシュ音。

流石にあまりにも音が大きい為、なのは達はその方向へ目を向けた。勿論ヴィヴィオ達も。

 

するとそこに見えたのはシュミレーターのビルにむかって左拳を連打している青年であった。

 

 

「……フェイトちゃん? ……私疲れてるのかな? 」

 

「ううん。あれはワンだよ。なのは? 私ね、思うんだ。なのはもわかってると思う。どうして今日ワンがあんな目をしてたか。ワンがあんな目をする時って決まって」

「言わないで! 」

 

「なのは…………」

 

 

なのははフェイトの言葉をやめさせ、それでも真っ直ぐに青年をみた。信じたくない。認めたくない。4ぶりに見てしまった青年の強い瞳。それは青年が命をかけて闘う時の目。他の自分自身の何をかけてでも守りたいと願う時のなのはがよく知る大好きで大嫌いな目。だからこそ彼女は認めたくなかった。

 

何故なら彼女自身、諦めと覚悟を持って青年を嫌ったのだから。

 

 

「君は……もう戦ったら……ダメ……だよ。今そんな事したら……今度こそ本当に…………や、やめさせなきゃ…………」

 

「なのは? ちょっなのは!? 」

 

動き出した不安は止まらず彼女を動かした。ヴィヴィオ達が見ている前にも関わらず、彼女は止まらない。親友、教え子。そんな人間がいても今の彼女には関係がなかった。自分の中の覚悟を壊さないために、彼女は……なのははそうする。残酷で優しい事をする。それが例え、正しくても間違っていても。

だがそのままなのはを行かせるフェイトではなかった。

 

「っ!? 」

「落ち着いてなのは!? ダメだよ、今多分ワンは」

 

「ぐっ、離してフェイトちゃん!? 今止めないときっと彼はまた無茶するの! そんな事フェイトちゃんだってわかるでしょ!? 」

「それでも、今の私達にワンを止める資格なんてない!! 」

 

後ろから羽交い締めするようにフェイトはなのはを止めた。でもそれでなのはが止まれば苦労はない。彼女には彼女なりの意地がある。何を言われてもその意地は決して折れない。

 

「どうしてそんな事……言うの? 全部悪いのは……彼だよ……これじゃ……何の為に私が…………」

 

「うん……そうかもしれない。でもねなのは? 私達が知ってることだけが全てじゃない。私は最近気づいたんだ。私達はもう一回考えなきゃいけないって。ワンの事も、あのイービル因子事も」

 

「フェイトちゃん……なんでよ……か……ない…………わかんない! 私にはフェイトちゃんの言ってる事わかんないよ!!! 」

「あっ、なのは!? 」

 

 

青年の身体にまだイービル因子がある事、さらにはそれがそのオリジナルの個体であると言う事をなのはは知らない。知っているのは執務官であるフェイトとティアナだけ。

 

故にすれ違いと言うものは常に起きてくる。

 

なのはは少し暴れ、フェイトの高速から抜け出すとこれ以上青年を見ていたくないのか彼女はその場から走り出す。ただそれは仕方のない事で、今の青年の行動はなのはを動揺させるに十分な行動であった。誰かを守り、戦う為の力を失った青年が再び何かと戦おうとしている。その理由はそこにいる誰もがわからなかったが、青年をよく知るなのはにはそれだけはわかった。嫌っても変わらないものは変わらない。どんなに年月が経とうと人はそう簡単には変わらない事をなのははよく知っていた。

 

「フェイトさん!? 」

 

「え……」

 

「見て……ください…………」

 

フェイトがなのはに気をとられ、青年から目を離した瞬間、ティアナがフェイトを呼び、青年の方を見るように言い出した。フェイトは当然すぐに視線を戻すが、そこに広がっていた光景を見て思わず口を少し開けた。

 

 

「うっらぁ!!! ……もっと速く! もっどだぁぁああああああああ!!! 」

 

「な、何……あれ……空間が……歪んでる? 違う……そうじゃない。空気がワンの拳に巻き込まれてるんだ」

 

 

青年の左拳はビルを殴る。止まらず、例えその拳から血が出始めていても青年はやめなかった。何故なら青年には止まっている時間がない。一刻も早く力を戻さなければと少し焦りを覚え、青年は自分が傷つこうと止める気配がない。

その頃ヴィヴィオ達は遠くから青年の様子を見ていたが、場所が遠い為青年の鮮明な様子が見えていなかった。

しかし左拳ラッシュが速くなるにつれて音が大きくなり、叩いているビルが揺れ始めた事で青年がどんなに馬鹿げた事をしているのか理解した。

 

「……先生……それは……いくらなんでも非常識すぎます…………」

 

「ま、まぁ……お兄さんなら……当然ですよ……あはは」

「って!? そうじゃないでしょヴィヴィオ!? ワン兄何してるのあれ!? 生身の拳でビル壊そうとしてるようにしか見えないんだけど!? 」

 

驚きヴィヴィオを揺らすルーテシア。そうされているヴィヴィオは遠い目をしている。アインハルトは少し興奮気味で青年から視線を外さず、リオは目を丸くして動かない。

 

しかしそんな中、1人だけ……青年には目も向けず、1人自分の世界から抜け出せない人間が1人。

 

 

「ヴィヴィ×アイ……私のヴィヴィ×アイ……花園……が…………」

 

コロナだ。

 

 

彼女はまるでこの世の終わりみたいな顔をし、1人うつむきながらぶつぶつ何かをつぶやいていた。

 

「アインハルトさんが……お兄さんの事を? はは……冗談冗談……だってそんな事になったらヴィヴィ×アイが……私の花園が………オアシスが……はは、あははは…………。お兄さん……なんて事……してくれたんですか……私の花園……どうすれば………へへ、あはは」

 

放心状態で真っ白になっているコロナは、青年がその後ビルを倒壊させた時も全くブレずにぶつぶつと落ち込み続けていたのだった。

 

 




次回もよろしくお願いします。

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