ヴィヴィオはそれでもお兄さんが好き   作:ペンキ屋

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ども〜!


まぁ〜まずは最初に……



大変遅れました申し訳ありません!!

忙しいのもそうでしたが、過去編が長過ぎてなかなか仕上がらず、諦めてこっちを先に投稿した次第です。


そんなわけで、よろしくお願いします!←何がだ!?





第15話【すれ違う想い】

「おい……なんのつもりだアインハルト…………」

 

アインハルトと青年の一波乱が解決した後、彼女は全員で行う模擬戦の前、青年の左腕掴んで離さず、模擬戦始めようという全員の前に彼を引っ張り出した。

青年自身今の彼女の行動は理解できず、みんなも首をかしげている。しかし彼女は真剣な顔その物で、何かを言い出すのは明らかだった。

 

「あ、あの!? せ、先生も加えて頂くわけにはいかないのでしょうか! 私は……あの『最後の拳』と謳われた先せっ「ちょーっとアインハルトさんそれ以上はダメですよ〜? 」あっ、な、何をするのですか2人とも!? は、離してください!? 」

 

 

「……最後の拳? それってなんの事だ? 」

「ああ〜お、お兄さんには関係ない事ですよ〜! えへ、へへへー」

 

少し興奮気味になり始めた瞬間ヴィヴィオとコロナが慌ててアインハルトを青年から引き離しみんなのいる場所から少し離れてアインハルトと話を始める。実は青年にとってアインハルトが言っている言葉はNGワードであった。

 

 

「何をするんですかヴィヴィオさん!? 私はあの最後の拳と言われた先生の戦いが」

「だからダメですってお兄さんの前でそれを言ったら!? 」

 

「それ? 一体何故ですか? 」

 

「いいですかアインハルトさん? お兄さんは自分がストライクアーツの世界で銅像になるくらいすごい英雄になってる事を知らないんです! もしお兄さんがその事を知ったら……」

 

「知ったら? 」

 

「多分……また……また」

 

ヴィヴィオがその瞬間した眼は、何かに怯えるようなものであった。アインハルトやコロナもその事をすぐに察した。アインハルトに関しては理由まではわからない為怯えてる以外は分からなかったが、絶対に言ってはいけない言葉なのは理解したようで、それ以上は言わないとヴィヴィオとコロナに約束をし、青年達のいる場所へと戻る。

 

だが、アインハルト達が話をしている間に別の問題が起きていた。

 

 

「え……何? なのはママとお兄さん……どうしたの? 」

 

彼女達が少し目を離したすきにその場の雰囲気が気まずいを通り越して一触即発の緊迫した空気になっていたのだ。

理由は言わずともわかる事だが、なのはと青年である。

 

 

「模擬戦に入れて欲しいなら自分で言えばいんじゃないかな? 別にそんな事拒んだりしないんだし」

 

「いや、俺は別に……アインハルトが理由も言わずに引っ張って来るから」

「また勝手にって言うつもりなの? 大体、君がそんな適当であの子の師匠なんて務まるわけないよ。そんなの彼女の為にならないし、自分でもわかってるんでしょ? 君には戦う力なんてもうない。君はただの……一般人なんだよ? 」

 

 

「………」

 

「言い返さないの? どうして? 私に言いたい事言わせてそれでいいの? 君は本当にどこまで……『弱っていく』つもりなの? 」

 

誰もが、2人の会話を一言も邪魔しないで聞いていた。いや、邪魔する事が出来なかった。フェイトにしても、スバル達にしても、ヴィヴィオ達にしても。

 

なのはは本気でイラついていた。自分の言葉がどんなに刺々しく、青年を貶めるものだったとしても、自分に対して何一つ言い返さない青年に。だがそれはなのはからしてみれば当然だった。彼女は青年が戦うことを絶対によしとしない。

彼女の中ではそれはどんな事があって阻止しなければならない事であった。自分の誓った信念の為、自分が諦めた青年への想いの為、なのはは今、青年を本気で潰そうとする。

 

彼女が誰よりも優しい人間であるが故に。

 

 

「わかった。もういい。君は何もいう必要はないよ。模擬戦も入ればいい。誰とでも戦えばいい。

だけどその前に……」

 

 

「あ? ……っ!? 」

《セットアップ》

 

なのはは俯くと彼女の相棒、レイジングハートの言葉と共にバリアジャケットを羽織ると杖を青年の顔の前に突きつけ、彼女を知る人間が、誰も見た事ない程醜悪で鋭いな眼差しをしながら青年を睨みつける。

 

「な、なのは? どうしちゃった……の」

「………」

 

「な、なのは…………」

 

また自分を止めようとしたフェイトにさえ、無言の威圧感で言葉を止め邪魔をするなと訴える。

 

「お、おい……」

 

「……私が君を再起不能してあげる。あれだけ死にたがってたんだから別に構わないでしょ? まぁだけど安心していいよ。私だって管理局員である以上殺しなんてしない。その代わり……その左手、『二度と握れなくしてあげるの』」

 

「お前……本気か? 」

 

「私がこんな冗談……言うと思う? 」

 

「……ハハ……いいぜ? 上等だ! 」

 

「ちょっ、ちょっとやめてよ2人とも!? なのはママもこんな事したって!? お、お兄さんもこんな馬鹿みたいな事にのらない……で……ふ、2人とも……本気で…………」

 

 

もうヴィヴィオの言葉は2人の耳には入っていない。互いが互いをじっと見つめ、そのまま黙って訓練場へと入って行く。だが、もう止めるのは無理だと判断したフェイト達はすぐ動ける状態になりながらも2人の戦いを見守る事とした。

けどそんな中、青ざめている人間が1人。そう、この中で現状最も冷や汗をかいているのはアインハルトである。

 

自分の行いがまさかこんな事態に発展するなど思ってもおらず、このまま取り返しのつかない事になってしまうんじゃないかと内心どぎまぎしていた。

 

「大丈夫ですよアインハルトさん。そんなに落ち込まなくても」

 

「ですがヴィヴィオさん私の所為で」

 

「別にアインハルトさんがお兄さんを引っ張ってこなくても、いずれこうなってた筈です。だから気にしないでください」

 

「ヴィヴィオさん……」

 

ヴィヴィオのやるせない心情は、旗から見ていても丸分かりだった。アインハルトに気にする必要はないと言ってはいるものの、この状況自体、彼女は悲しみに暮れるほかない。

彼女にとって、大好きな人間2人が、本気で喧嘩をしているのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「準備はいいのかな? 」

 

「ああ、いつでも」

「そう。それじゃ……」

 

「なぁ〜なのは? らしくねーぞ? 不意打ちなんて、よラァ!! 」

 

なのはと青年の模擬戦の開始直後、青年は突然回転するように左手拳を振り回すと、いつも間にか真後ろに待機してあった魔力スフィアを粉々に砕く。勿論それはなのはが用意した物であったが、青年がそれを砕く事に何の疑問もない様子でじっとなのは青年を見つめる。

そして最初のやりとりがまるでゴングだったかのように、なのははスフィアのみを大量に作り出すとそれを途切れる事なく青年へと撃ち込み始めた。

 

 

「レイジングハートこのまま休まず行くよ! 疲れ切った所で動きを止めて左手を潰す」

 

《オーライ、マイマスター》

 

「くっ!? やっぱり、やり合いたくない相手だよお前は」

 

(お願い……倒れて? これであっけなく倒れてよ。私はただ……ただ)

 

 

かわし、拳でスフィアを砕き、青年はなのはの攻撃を凌いで行く。いくら力を失っているとしてもこの程度はなのはも想定どうりであった、しかし今の彼女は表に出している感情と内に秘めた感情は全く逆であった。

 

 

(ただ君の事を守りたいだけなの! 君の笑顔を取り戻してあげたいだけなの! これ以上、君の苦しむ姿をもう見たくないだけなの!!! だから、だから……っ!? )

 

「うっ、ラァ!!! 」

 

《マスターこれ以上続けても意味はないと思われます。さっきから彼はあの場所から一歩も動いてません。ですので別の手段を実行するのが得策かと》

 

「は……ハハ……弱っていってる? 何言ってたんだろ私。彼の強さなんて……能力云々じゃないってわかってる筈なのに……」

 

 

通常、まともな近接ファイターが相手ならば、なのはの攻撃を左の拳だけで受けきるのは無理があった。手数の差と、何よりその拳のラッシュを維持させるだけの体力が続かない為である。だがこと青年に限ってはこれには当てはまらない。

何故なら青年の戦闘スタイルを支えているのは今も昔もデタラメな諦めの悪さ。かつて不屈のエースオブエースに憧れた彼は、彼女に引けを取らない程諦めが悪い。それにひきかえ、異常とも言える無尽蔵な体力量。彼はもはや左手だけとはいえ、並の格闘家を優に超える強さを有していた。

拳と拳で語るに必要なのは意地と意地のぶつかり合い。つまり青年は生半可な事では決して倒れる事はないのだ。

 

 

「オラァ! はァ! ……はぁはぁ……うっ……バインド!? 」

 

「昔なら……これでも君は倒れなかったと思うけど。今は……ディバイィィィンーー」

 

 

相手の動きを封じ、そこへ砲撃を放つ。なのはの王道とも言える基本的な戦い方だが、なのはは忘れていた。青年の性質……何故青年が今まで戦い抜いてこれたのか、その根本は常識を超えた腕力でも、魔法による特別なものでもない。

 

なのははその事を忘れていた。

 

「バスタぁぁあああああ!!! 」

 

「ふぅー……ふぬっ!? 」

 

 

砲撃が迫る中、青年は固定された自分の手や足を脱力させ、瞬間一気に力を入れた。

するとバインドは青年の力に負け砕け散り、なのはの砲撃を紙一重の所でかわす。

 

そして、砲撃を撃ち終え、ほんの一瞬スキができたなのはの目の前まで一瞬で移動し飛び上がると、力を込めた左拳をなのはに向けて放つ。当然、その間青年の十八番である絶対領域が発動し、なのはは体感で世界が凍りついたのを感じた。

しかしなのはやフェイト、腕の立つ魔導師にとって、絶対領域とは必ずしも絶対的な物ではない。

 

「ウラァ! ……っ!? ちっ、やっぱりか」

 

放った拳はさっきまでなかった筈のなのはのシールドに阻まれ、そのまま左拳を拘束される。今の場所が空中であるが故、飛ぶことができない青年はそのシールドに捕らえられた形でぶらぶらと空中で無防備となった。

 

 

「絶対領域……確かにそれはかわすことができない、ある意味最強の格闘スキルなのかもしれない。でも……空間認識に長けた遠距離魔導師には通用しない。私が昔君の足元にも及ばなかったのは君の拳が『絶対領域を超える事ができた』から。けど今の君はそこまで。その程度……絶対領域の域を超えない。だから……君は私には勝てない! ……レイジングハート、ハイペリオン・スマッシャー!! 」

 

「……たくっ……情けね。惨めになったもんだな本当」

 

 

なのはは今この瞬間に限っては無情だった。青年から少し距離を取り、青年が次の手を打たないうちにさらなる砲撃を放つ。これを見ていた全ての人間はこれで終わりだと思った。青年自身でさえも。

 

 

「でもだからって……」

 

 

だがなのはは忘れていた。

 

 

「負け……られるわけないだろうが! 」

 

「っ!? まだ目に光が……な、何を!? 」

「うぐっ、あああっ! あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ、ウラァあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! 」

 

 

敗北。挫折。悲しみ。痛み。

 

 

追い込まれた時こそ青年は強くなる。そこにあったそびえ立つ巨大な壁を飛び越えるのではなく叩き壊す。破れない壁など青年にはないかのように。

 

今まで彼は超えてきた。

 

誰もが超えられなかった前人未到の領域を。

 

 

ただ戦いに負ける事などさした問題ではない。青年にとって最も我慢できない事は守れない事。

 

 

約束、信念。

 

大切な人間の笑顔。

 

今、青年はたった1人の少女の為に答えを出した。今まで支えてくれたその子の為に負けられない。その子が見ている前では二度と倒れられない。

 

 

「俺は二度と、あいつの見てる前で無様な姿は晒す訳にはねぇんだぁぁああああああああ!! 」

 

「なっ!? 左手の力だけでシールドを砕いた!? で、でももう君にはその砲撃はかわせな……え……」

 

 

何度も何度も何度も……今まで幾千と砕いてきた砲撃。その感覚、感触、タイミング。

すでに遺伝子レベルというまでに刻まれたそれは……力のない青年をここに来て進化させた。

 

「ラァ!!! 」

 

強烈な衝突音と衝撃波。なのはは目を大きく見開く。いや、なのはだけではない。見ている人間全てが色んな想いと理由で言葉を失った。

 

「そんな……まさか……ありえない。力じゃなく……技で砕いたって言う? 馬鹿げてる。人ができる領域を超えて……あ……くっ、認めない。絶対認めない!? 君は化け物なんかじゃない。人……人間なんだから!! 」

 

なのはは目の前の現実を受け入れられなかった。力を失い、自分の砲撃を砕く拳を青年は持ち合わせていないと。勿論それは間違ってはいない。しかしそれを青年は一つの壁として壊し、また一段階進化した。ただそれだけの事だった。

 

 

そう、青年は拳でなのはの砲撃を一撃のもとに砕いてみせた。

 

 

そして……その戦いを見ていた、彼女もまた改めて確信と共に青年について行く。どこまでも迷わずについて行くと今この時決心したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「凄い……やはり、やはりそうなんですね。先生……やはり貴方が、私の憧れたあの日のヒーロー。最後の拳……私の憧れです」

 

 




次回もよろしくお願いします。

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