ヴィヴィオはそれでもお兄さんが好き   作:ペンキ屋

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ども〜

ご無沙汰しております!


ではではよろしくお願いします。


第17話【認識の先に】

なのはと青年の意地の張り合いがアリスの暴走によって幕を閉じた日の夜。丁度夕食の時間に青年は目を覚ました。

 

ぼーっとする意識の中、何が起きたかを冷静に考え、アリスの仕業と思い出す青年。そして彼はゆっくり上半身を起こすと軽く自分の義足を叩く。ただその表情は怒りではなく、出来の悪い妹でも見るかのような穏やかなものであった。

 

「最初は気に入らなかったが……ここまでくると逆に親近感が湧いてくるな。普通のデバイスと相手をしているよりなんかにぎやかで悪くない」

「お兄さ〜あ!? 良かった起きたんだ。もうご飯だから行こ? 身体はなんとも……ないよね? 」

 

「ああ。わざわざサンキューなヴィヴィオ」

 

「なんの! お兄さんの為なら例え火の中水の中ジャブの中〜お安いご用ですぜぇ〜」

 

「どんなテンションだよそれ……」

 

 

1人物思いにふけっている青年を夕食に呼びに来たヴィヴィオが連れ出しみんなのいる場所へと手を引っ張る。子供ながらの無邪気さからか、青年と手を繋いでいることすらこの時はあまり気にしていなかった。その好意を向けられている青年以外は……

 

 

(うっ……ってアホか俺は!? 初等部の女の子に手を引かれて何を顔を熱くしてるんだ!? 相手は……子)

「えへへ〜お兄さんの手大きいね」

 

「@¥&/:?!!? 」

 

ヴィヴィオと2人で歩くほんの僅かな時間。青年は不覚にも心を乱されていた。スバルに告げた覚悟と想いがそうさせるのか、青年は初等科の子供に対してドキドキさせられている。

これは彼が一歩を踏み出しているとも言えるし、ある意味下がっているとも言えた。

 

今日まで彼女の好意を青年は真っ向から直視したことはない。子供の振りまく無邪気な物だと流していただけに、再度見直すとヴィヴィオが可愛くて仕方がなかった。

 

(このまま俺は護っていけるのだろうか。ヴィヴィオを……それに……)

 

手を引かれながら、青年はミッドチルダの何処かにいるであろうフーの事を思い返した。話を聞いてくれるならば迷う事なく青年はそうするだろう。しかし相手は言葉の通じない相手。彼女の望みが殺し合いであるが故の避けられない道。だから青年は覚悟していた。例え自分が力を取り戻し、妹を超えることが可能であっても、血を流す事は避ける事は出来ない。

 

そして何より、今一度実の妹をその手にかけるという行為……その宿命が青年を苦しめる。

 

【んふふ。ヴィヴィオちゃんは本当に良い子ね〜私妬いちゃうわ〜】

 

「っ!? 」

「おっとと!? へ? ……お、お兄さん? 」

 

青年は聞き覚えのある頭を響くような声に後ろを振り向いた。青年が突然止まったことでその手を引いているヴィヴィオも逆に引っ張られる形で止まらざるおえない。だが青年の見ている方を見てもヴィヴィオには青年の姿しか見えておらず、何故青年が止まったのか理解できないでいた。

 

でも……青年の目は違った。

 

彼には見えている。緑色の長い髪をした白いワンピースの少女の姿が。

 

「お前……」

 

【もうっ、そんな怖い顔しないでよ。調子が良かったからでてきただけでしょ? それともお邪魔だった? ふふ】

「そんな事はどうでもいい!! あれはなんだ!? どうしてフーは生きている!? あいつは俺が殺したんだぞ!!!

 

「お、お兄さん急にどうしたの!? そこ……誰もいないよ? も、もしまだ具合が悪いなら……え…………(お兄さんの右目……金色……き、気の……せい? でもお兄さんの病気はもう治ってる……筈……だよ? )」

 

ヴィヴィオは突然大声を出し始めた青年に驚きその顔を下から覗き込んだ。すると青年の右目は金色に輝き、ヴィヴィオはそれを見て固まり、困惑した。彼女にとって青年の目の色は一種のトラウマだった。彼がみんなの前から消えようとしたキッカケにしてヴィヴィオが忌み嫌う最も憎むべき存在。イービル因子。

青年やなのは達からはもう完全に治ったと聞かされていたヴィヴィオは今見ている青年の状態が信じられない。いや、もはや考えたくもない事だった。夢なら覚めてくれと心の中で必死に叫び、ヴィヴィオは震え始めた手で青年の手を再度必死に握る。これ以上ないくらい力を入れ、青年がどこへも行かないように、繋ぎ止めるように彼の手を握った。でも不思議とヴィヴィオはその手に力を感じない。心のどこかで青年がいなくなるという恐怖を増大させてしまっている為、その恐怖に支配されたヴィヴィオの身体が言う事をきいてくれないのだ。

 

「はぁ……はぁ……はぁはぁっ……ぃ……ゃ……やぁ………」

 

いつの間にか呼吸を忘れ、その目からは熱い雫が滴り始める。自分でも全く制御できないヴィヴィオの闇。青年を失うというこれ以上ないくらいの恐怖だ。

 

「ぃっ……ちゃ……やぁ……ゃ……」

 

 

【知ってどうするの? そんな物は今後の戦いの邪……あら? んふふ。そろそろ消えるわ? 苦しそうよ? そ・の・子】

 

「何……っ!? ヴィ、ヴィヴィオ!? おい、どうした!? 」

【しっかり気にかけてあげないと。可愛い可愛い女の子なんだから】

 

「ちっ! 貴様!? 」

 

【あら? 私の所為みたいに睨まないでよ。私何にもしてないし。それじゃ〜ね? あ! これだけは言っといてあげるわ? 今の彼女はもう失敗作じゃない。私と……貴方と同等の存在。新しく生まれた同胞といってもいい。だから……はやく『認め』なさい? じゃないと……んふふ。んふふふふ。あふははは〜! み〜んな! 死んじゃうわよ? 】

「認める? 一体何をだ!? ……消え……クソっ!! 」

 

青年がヴィヴィオから少女へ視線を戻すとそこにはもう彼女はいなかった。そして、だいぶ落ち着いたヴィヴィオを左手で抱えるとそのままみんなのいる大広間へと向かった青年だったのだが、そこでまたもやあらぬ疑いをかけられる。

これはもう伝統芸ともいっていいのだろうが、青年が大広間に入るなり、その腰にはレイジングハートが突きつけられた。少しため息をつき、青年はそれを突きつけている人間をジト目で見つめる。

 

「言いたくないが? まさか勘違いしてないか? 」

 

「勘違い? ふふ、うふふ! 何をかな? 私はただ、人の娘をたぶらかしてその毒牙にかけた不届き者のロリコン野郎を殺そうとしてるだけだよ? 」

 

「やっぱり勘違いしてるじゃねーか。俺はただ、ヴィヴィオが具合悪くなったから抱えて連れてきただけで、他意は別に……な? ヴィ……」

「はぁ、はぁ……おにいしゃん!? ひょんな〜えへへ〜これ以上激しいころなんれ〜ウヘヘ〜」

 

「…………」

「い、いや!? 待てなのは! なんでかわかんねーけどこいつ今頭トリップしてるだけだから!? マジで何もしてない!? 本当に! ガチで! 」

 

「はぁ……もういい。はやく夕飯食べよ? みんな待ってたんだから」

 

「……あ、ああ。悪いな待たせて」

 

この時、なのはは驚くほどあっさり突きつけたレイジングハートを下ろした。そして、むくれながら席まで戻る。青年は軽く砲撃を覚悟していただけに少し唖然としていたが、みんなが待っていたと言われるとすぐに席につく。こうして全員で食事が始まった。

 

ただ青年はこの夕食で嫌でも実感する。自分が求めていた物が力であるのならば、それは確実に人をやめなければならない事だという事を。何故なら、青年の力が覚醒し始めた事で、青年すら忘れていたある変化が自身の身体に起きていた。

 

「お兄さん飲み物持ってきたよ? 飲むでしょ? 」

 

「ああ、ありがとうヴィヴィオ。頂くよ」

 

そもそも何故、4年前に絶対の硬度を誇っていた筈の青年が左足を失ってしまったのか。本来であればその身体には傷一つつかない筈であった。無敵にして最強。一時期はバケモノとまで言われた青年。しかし青年の宿しているイービルΩと呼ばれる個体は決して全知全能ではなかったのだ。

 

たった一つ、イービルΩには弱点と呼ばれるものがあった。

 

「それワン兄が好きかと思って用意してたのよ? ほら、パッケージにフィストって書いてあるでしょ? 拳って」

 

「なんだそりゃ……ま、俺の為と言うならなんでも悪い気はしないさ。どれ……ぐびっ……ごくっ……うっ、ブハッ!? 」

「キャぁぁ!? ちょ、ちょっとあんた汚いじゃないのよ!? あぁ……私の肉が……なにしてくれてんの!? はぁ……たくっ! 代わりにあんたのに……く……っ!? 」

 

「ごほっ!? ごほっ、ごほっ!? わ、悪い……肉ならやるよ。悪かったな。うぷっ!? お、俺ちょっとトイレ」

 

ただルーテシアが青年が好きそうなタイトルを選んで用意してただけのお酒。勿論毒など入っているわけはない。だが、青年はそのお酒を一口飲んだ瞬間、顔色を変え向かい合っていたティアナの食事へとそのお酒を吹き出した。当たり前だが、自分のメインを台無しにされティアナが怒らないわけはなかったが、丁度青年が席を立つ瞬間目の前にいた彼女だからこそ気づいた。

 

青年の右目がぼんやりと金色に変色してきている事を。

 

 

「ヴィヴィオ? ワン兄お酒ダメだったっけ? 」

 

「ううん。私がお兄さんの家に遊びに行く時はたまに空き缶が置いてあるから普通に飲めるはずだけど……まだ具合悪いのかな? 」

 

「はぁ〜私もちょっとトイレ。まったく、最悪よ! 」

「あはは……ティア災難だったね」

 

〔ティアナ、ワンの事お願い〕

 

〔分かってます。フェイトさん〕

 

青年がトイレに移動した後、そのあとをティアナが追いかけるようにトイレへと向かった。なのはやヴィヴィオ達に気を使いながら他の人間には怪しまれないよう、自然な形でトイレへと向かう。ただこの時フェイトだけはティアナと同じく青年の状態を理解している為、念話とアイコンタクトでティアナに青年を任せた。

 

そして青年が入った男子用のトイレの前で、ティアナは足を止める。青年にバレないようにとまったのではない。驚いて彼女は足を止めた。それは青年が入ったトイレの横の壁が抉られるように砕けていたからである。それも殴ったというよりは何かで押し砕いたような跡で、ティアナは恐る恐るそのトイレの中へ入るとそこには更に目を疑う事があった。

 

青年がまるで誰かと会話をするように1人で喋っていたからである。

 

【ふふ、大丈夫? 】

 

「て、てめぇ……一体どういう」

 

【あれ? もしかして忘れてるの? 愚かねぇ? 自分がどうしてあの子に。ヴィヴィオちゃんに左足をもっていかれたか、本当に忘れてるの? 何故その足を引き千切られたか? あふふふ! 覚えてないと言うの? 】

 

(誰と話してるのよ……ここにはあいつ1人しか……っ!? な、なな何……何なのよあれ!? )

 

ティアナはそっと青年の様子をうかがっていた。しかし不意に青年の横に目をやるとそこには信じられない光景があった。青年の視線の先。そこには確かに誰もいない筈なのに、ティアナの目には映っていない筈なのに。その鏡の中には青年の他にもう1人いた。

 

緑髪の恐ろしく長いストレートの髪型をした宙に浮くワンピースの少女。目は青く澄みきって見えるのに口元は狂気に歪んでいる。ティアナにはその少女がバケモノ以外の何物にも見えなかった。ただ普通に会話をしているように見えても彼女にはそれが正気の沙汰とは思えない。青年が普通にしている事が常軌を逸しているのだ。彼女からすれば鏡の中でのみ見える少女が放つ人間とは異質の気配と魔力は恐怖の対象でしかない。

 

睨まれただけで自分が死ぬ未来……走馬灯が見えるかのような邪悪で鋭く突き刺さる殺気。ティアナは少女の姿を見ただけで両足をガクガクと震わせ自分が経験したことのないような恐怖を体感していた。

自分の本能がその存在を否定し、あれは敵だと訴える。故にティアナはこの時初めて理解した。スカリエッティが言っていた人類の敵。例外などないその存在。青年に取り付いている物は正真正銘の怪物である事を。

 

(はぁ、はぁ……ひっ!? こ、怖い……何よ。何なのよあれ!? やだ……怖い……震えがと、止まらない。あ、あんなの……人の中に入っていていいものじゃない)

 

「ふざけんな!? 俺はそんな事なんか」

【そんな事? これから自分の弱点になる事をそんな事? 】

 

「何!? 」

 

【ハッキリ言ってあげる。私達の種族はアルコールに極端に弱い。直接体内に摂取しなくても触れただけで力が落ちる程にね? ま、もう少しでそんな事もなくなるわけだけど? ふふ。でも本当に貴方って素敵。どこまで私を喜ばせてくれるの? 】

 

イービルΩの唯一無二の弱点。それはアルコールだ。青年は力を取り戻しつつあるが、それと同時にその弱点も有効になってきていた。4年前、青年はその弱点を突かれ、左足を失い、もう少しで死ぬ所まで追い詰められた。だからこそこの話を青年は無視できないでいた。青年の中で覚悟が変わっているが故。

 

 

「お前……一体何が目的だ」

 

【目的? 何度も言わせないでよ。私は生きたいの! 生を感じたい。いつまでもいつまでも感じていたい。だからもっと感じさせて? 貴方の中は心地いい。感情が豊かで激しい……んふっんあっ!? たまらないのぉ〜! だからもっと……もっと……もっと感じさせてぇ〜っ!? 】

 

 

青年とイービルΩ、その2人の存在が真の意味で問題視されるのはそう遠くない未来になる。何故ならどんな理由にせよ、青年とイービルΩは互いにどこまでも相性がズバ抜けていたからだ。

 

種族の違う2人。一見相容れないようだがこの2人に限ってはそれにはあてはならない。表面上は否定していても心の底では青年自身理解していたからだ。自分が何を望み。過去に何を願ったのか。

 

 

「くっ……俺は……お前など……ハッ!? 誰だ!? 」

「っ!? う、動かないで!! ひぐっ、ぁぅ……ぅ……」

 

 

「ティアナ……お、お前一体何のつもりだ!? 仕返しにしたってそれはやり過ぎ」

「そんなんじゃない!? クロスミラージュ!! 」

《非殺傷設定解除》

 

 

興奮していた青年がやっとティアナに気づき、声を出した瞬間、ティアナは涙を浮かべながらクロスミラージュを構え青年の前に出た。しかも非殺傷設定を解除し、震える手を必死に維持しながら本気で青年を殺そうと狙いを定める。

 

「ぁ、あんたが悪い゛ん゛じゃない゛!? それは分かって゛る゛!? でも゛……でも゛ぉ……『まだ人間』の今な゛ら゛! 人として殺してあげられる゛い゛ま゛……なら゛、今しかな゛いの゛よ!? だから……だがら゛ぁぁ……ゆる……して……こんな事しか……してあげられない゛。無力な私を……許してぇ…………う゛っ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ!? 」

 

 

「よせティアナ!? 撃つな!? (ダメだ、間に合わない)」

 

【ふふ……なるほど〜鏡……か。私の事……認識しちゃった? 声は聞こえてないみたいだけど……なら、そうなるのも仕方ないかな〜。でもね? 今騒がれてまた愛しの宿ぬし様独りにされると困るんだよねぇ〜? い・ま・は、ね? だからさ〜? 『死になさい』? ティアナ・ランスター! 】

 

「っ!? 待て、お前何を!? 」

 

「え……」

 

 

イービルΩが怯えるティアナを嘲笑うかのようにニタリと笑みを浮かべ、横にいる青年には気づかれないように高速で魔力を自身へ収束させるとそれをドス黒い魔力光と見たこともない魔法陣と共に解き放つ。

 

当然遅れながらも青年はそれに気づいたが、その時にはすでに遅く、それはティアナと青年を包み込むと跡形もなく2人をトイレから消失させた。

 

 

【顕現結界……《死の海ー朧ー》…………】

 




再度どうも〜

いかがでしたでしょうか。今回は少しイービルΩの闇に触れて終わりですが、さぁ〜さぁ〜果たしてイービルΩの真の心の内はいかに!?

なんて……言って見たかっただけです、すいません。

そして次回はなんと!?

リオがっ、ごほっごほっ!?

いけないいけない……これは言ってはいけない事でした。

ではでは〜次回もよろしくお願いします。




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