吹雪の深海棲艦攻撃実験より2週間、すべての施設が完成した吾妻島にて完成式典が行われる…… こともなく財団にとっては通常通り秘密裏に物資の搬入が行われている。しかし、施設は完成したものの、人員がいないのでは話にならない。少しずつだが、研究員なども鎮守府に集まりつつあった。
特殊サイト-81 鎮守府司令部庁舎 執務室
広瀬は慣れないサイト管理者用の服を着て様々な書類の確認をしていた。あくまで彼は中間管理職なので最終的な判断は財団上層部がして彼はその命令に従うだけだが、今現在は日々運び込まれる物資の確認をする業務に追われている。
「こんなことがこれから続くのか…… はいどうぞ、空いてますよ」
ドアがノックされ、広瀬は入室許可を出す。
入ってきたのは自分と同じ20代くらいの白衣を着た男性だった。
「本日付けで特殊サイト-81██ 鎮守府に配属となりました三浦です。このサイトではSCP-████の研究チームのリーダーとして活動することとなっています」
「あー…… サイト-81██の管理者の広瀬だ。よろしく。それで、何か用事でも?」
「いえ、ただの顔見せです。あとは今後のすり合わせでもしておこうと思いまして」
「なるほど、分かりました。今後はですね―――」
「―――分かりました。ではそのように。そういえば、SCP-████-B-1 吹雪にはどこまで話しましたか?」
「財団とオブジェクトについて基本的なことと、クリアランスについて。それと第二次世界大戦の推移と結果、戦後についても説明しました。私は歴史はほとんど分からないんですけどね」
広瀬はやれやれと両手を上げる。実際、今まで知っていたことといえば、日本・ドイツ・イタリアの枢軸国が、アメリカ・イギリス・ソ連・フランス・中国の連合国と戦って負けたことくらいだった。
「分かりました。説明した後、様子はどうでしたか?」
「現実を受け入れられない部分もあるといった感じでしたね。船としての彼女は戦争中期に沈んでいるらしいですから」
「なるほど。しかしあなたも大変ですね。成り行きでエージェントからサイト管理者になってしまって」
「おかげさまで毎日大変ですよ。サイト管理者になるため多少は免除されましたが試験も受けましたし、先ほども話しましたがSCP-████の特性上、第二次世界大戦やそれ以前の情勢なども知る必要があるので勉強しています。何よりレベル4、最重要機密の情報が入ってくるようになって知らなきゃよかったと思うような話が盛りだくさんです」
「財団に入った以上それはある意味当然でしょうに」
「まあそうなんですけどね。あなたもその若さで研究チームのリーダーを任されているのは大変では?」
「いろいろあったんですよ。詳しくは言えませんけどね」
「……分かりました。私も財団職員です。深くは聞きません。 これから建造の実験をしますが、用意は大丈夫ですか?」
「ええ、もちろん。しっかりと記録させてもらいます」
「あと、無理に丁寧に話さなくていいですよ。僕も自然体のほうが話しやすい」
「ではお言葉に甘えて。改めてよろしく、広瀬"提督"」
「どうもその呼ばれ方は恥ずかしいんだよなぁ。こちらこそよろしく、三浦博士」
艦娘の建造施設が拡充された工廠では、吹雪が提督となった広瀬と三浦博士、その他研究員達に建造について説明を始めた。
吹雪「……では、建造について説明させてもらいます。私も詳しくは知らないのですが、私達が使っている資材の燃料、弾薬、鋼材、ボーキサイトをあの機械の横の区画に置くと建造を開始します。その後は妖精さんがやってくれるのでどうやって建造しているのかは分かりません。まずここまでよろしいですか?」
広瀬「ふむ…… 投入する資材の量と建造にかかる時間はどれくらいなんだ?」
吹雪「えっと…… あ、ありがとうございます」
突如現れた妖精さんが吹雪に本を渡した。無論、広瀬以外にそれが分かった者はいない。ただ、急にしゃがんで手を伸ばしたように見えただけである。
三浦博士「どうしたんだ?」
広瀬「SCP-████-CがSCP-████-B-1に本を手渡しました。SCP-████-Cはともかく本も見えませんか?」
三浦博士「ああ、資材と違って見えないということはかなり特殊なものだな。 内容は?」
パラパラと本を捲ってあらかた内容を把握した吹雪は話し出す。
吹雪「はい 艦娘の建造について書かれていて、簡単に説明すると、まず建造に必要な最低限の量は重油を除き各30kgで、重油は200Lドラム缶で30本必要です。上限値はそれぞれ999kgと200Lドラム缶999本です。建造の際はこれらの量を調整することである程度艦種をコントロールすることができ、投入する資材を多くするほど戦艦や空母などの大型艦が出やすくなる……と書いてあります」
広瀬「……ある程度ということはそれぞれ最大値を投入しても駆逐艦のSCP-████-Bが出現することもあるということだな?」
吹雪「どうやらそうみたいです。で、この本にはその配分も書いてありますね」
広瀬「一度その本を見せてくれないか?」
吹雪「分かりました。 ……もしかしたら読めないかもしれません」
そう言って吹雪は広瀬に本を手渡そうとしたが、広瀬はその本を掴むことが出来なかった。手がすり抜けてしまう。それならと吹雪に本のページがこちら側に見えるように開いてもらったが、広瀬には白紙にしか見えなかった。
三浦博士「薄々そんな予感はしていたんだがな…… 仕方ない、その本はSCP-████-B-1、君が持っていてくれ。それで、建造にかかる時間はどれくらいなんだ? 実際の艦艇と同じくらいだったらしゃれにならないぞ」
吹雪「えっと…… 一番短い駆逐艦で18分、一番長い正規空母で6時間ですね」
広瀬・三浦博士・その他研究員「………………は?」
あまりの短さに財団組は揃って変な声をあげてしまった。そして次第に喜びと期待の表情に変わってくる。その光景を見て慌てて吹雪はもう一度本を確認した。
吹雪「はっはい! ちゃんとそう書いてあります!」
広瀬「とてつもなく短いな…… これなら直ぐに数を揃えられるぞ!」
そんな様子を吹雪はどことなく嬉しそうに見ていたが、その次のページを見て非常に申し訳なさそうな声で発言する。
吹雪「あっ…… あのー…… 一度に建造できるのは一隻までで、一度建造したら丸3日間は建造できないようです……」
広瀬他「…………………………」
さっきとは正反対の顔である。期待を裏切られたのだから当然なのだが。
その中でも比較的冷静だった三浦博士が口を開いた。
三浦博士「……その理由は?」
吹雪「えっと、建造するたびに特殊な機材を修理する必要があってその修理に3日かかるから。だそうです」
三浦博士「なら建造装置を増やすことは出来ないのか?」
吹雪「その修理に多くの妖精さんを必要とするので平行して運用するのは無理とのことです。」
広瀬「そうか…… とりあえず、一度建造してみようと思う。三浦博士もそれでいいな?」
三浦博士「構わない。どうやら構造的に機械の内部を観測することは出来ないようなので、周りに機材を設置してからにしてくれ」
広瀬「了解した」
10分後、準備が完了したので実験を開始することになった。
実験記録████-C-β-001
日付20██/██/██
対象:SCP-████-C-β(SCP-████-B-1の言う建造ドック)
実施方法:SCP-████-B-1 吹雪の説明通りSCP-████-C-βの横の区画に燃料、弾薬、鋼材、ボーキサイトの資材を設置し、経過を観測する。尚、今回の実験では資材をそれぞれの最低値の燃料200Lドラム缶30本、その他各30kgだけ投入するものとする。
結果:資材を設置したことを確認したSCP-████-B-1がSCP-████-Cに建造の指示を出したところ、およそ0.1秒で設置された資材が消滅した。同時にSCP-████-C-βに設置されていた液晶モニターと思われる部品が点灯、[00:22:00]と表示されカウントダウンを開始した。また、実験開始時に30体前後のSCP-████-CがSCP-████-C-βの中に入っていったことが広瀬によって確認されている。
以下、映像記録を参照
吹雪「22分ですか…… 駆逐艦の白露型か朝潮型、または伊号潜水艦のどちらかですね」
三浦博士「更にその中から個別には分からないようだな。何か反応はあったか?」
研究員「いえ、何もありません」
三浦博士「そうか…… まあ何もないというのも立派な観測結果だ。実験終了まで観測を続けるように」
研究員「了解しました」
[建造終了まで動きがなかった為省略]
広瀬「もうそろそろ終わるぞ…… 3,2,1,ゼ、うおっ!」
[突如実験場が光に包まれ、SCP-████-C-β正面にSCP-████-B-2が艤装を装着した状態で出現する。光学観測機器には光または不明なノイズにより出現する前後の様子は正確に記録されていなかったが、SCP-████-B-1と同じ空間転移反応が検出された]
「僕は白露型駆逐艦、時雨。これからよろしくね」
広瀬「あ、ああよろしく。私がこのサイト-81██管理者、提督の広瀬だ」
時雨「……えっと、何かの実験でもしているのかな?」
広瀬「そのことについては後で話そう。とりあえずついて来てくれ」
<記録終了>
補遺:その後の実験やインタビューの結果、SCP-████-B-2はSCP-████-B-1と同等の能力や知識を有していることが確認されました。これによりSCP-████-C-βはSCP-████-Bを出現させる機械であると確証が得られました。以後の使用の際の記録は特異なものを除き、消費した資材の量と出現したSCP-████-Bの識別ナンバー、その個体名のみ記録してください。
補遺2:SCP-████-B-2の一人称は"僕"ですが、身体検査ではSCP-████-Bの異常性を除き、生物学的にヒトの女性であるとの結果が出ています。
その夜、吹雪は時雨の部屋を訪れていた。吹雪自身、新しい仲間と会話したいという思いもあったし、広瀬から艦娘同士でどのような会話をするのか記録してほしいと依頼されたからだ。
ブレスレット型の録音機を着け、後で会話の内容を提出するのが広瀬からの依頼だが、今後はこちらから依頼する時以外は録音機を着けず、規則の範囲内ならプライベートで交流してもよいとのことだったので戦闘や実験以外では隔離されるのではないかと不安に思っていたが、考え過ぎだったようだ。
そんなことを考えている内に時雨の部屋の前に着き、おもむろにノックをする。
「はい 開いてますよ」
「こんばんは、時雨ちゃん」
「ああ、吹雪か。こんばんは」
「様子はどう? 何か悪いところとかない?」
「大丈夫だよ。まだ少しこの身体には慣れないかな」
そう言って時雨は身体を動かした。まだ少し動きがぎこちないような気もする。
「ところで、少し聞きたいことがあるんだけど、ここは本当に鎮守府なのかい?やけに白衣を着た人を見かけるんだ。提督も軍服じゃないみたいだし、変な事も聞かれた。どちらかといえば研究所という方が説明がつくんだけど」
「それは…… そのうち説明があると思うけど、研究所という認識もあながち間違っていないと思うよ。ただ、かなり特殊な所だとは思っておいた方がいい、かな?」
吹雪の不思議な言い方に時雨は首を傾げた。
「? まあ、覚悟だけはしておくよ。ありがとう。あともうひとつ質問なんだけど、ここには艦娘は吹雪だけしかいないのかい?」
「うん 時雨ちゃんが初めてやった建造で来てくれたから、それまで一人だったんだ」
「それじゃあ吹雪はどうやってここに来たんだい?」
「それが私でも分からないんだぁ。気づいたら横須賀鎮守府にいたんだけど……」
二人して考えこむが、納得のいく答えは出ない。
「うーん 深く考えてもわかんないね」
「……とりあえず、僕達は今ここにいる。それだけで充分じゃないか。きっとそのうち分かるよ」
「そう、だね。うん その事に関しては司令官も協力してくれると思うし、今は私たちに出来ることをやろう!」
「うん 僕も頑張るよ」
「それで、結局吹雪は何をしに僕の部屋に来たんだい?」
「あっ…… 忘れちゃった。えへへ」
今回は建造についてでした。
最初の建造で時雨を出したのは特に深い意味はございません。 ちなみに筆者は鈴谷提督ですw
そろそろSCPを登場させないとタイトル詐欺になってしまう…… 次回には登場させたいですね ハイ