私たちは周りと違って少し常識とは違った形をしている。
私で言ううならば、犬の形をした耳に尻尾、感性も少し犬に似ているらしく、鼻も多少聞くらしいが、ネットで見た感情が豊かとは離れている気がする。
私の隣に座る、彼女からは、直接は聞いたことは無いが多分『猫』の遺伝子が組み込まれているのだと思う。耳も尻尾も猫のソレだ。ただ、猫っぽいかと言われたそうでもない、誰にでも平等に接するし、ツンツンはしていない、まぁ、でもそういった猫もいるのかなー?
んで、その隣に座るのが、無口…と思ったらいきなり、話し出す不思議な子。何を考えてるのかもまったく分からないし、話にも入ってくるなんてことも無い。見た目からして、何かの『鳥』なんだろうけで何かは分からない、私の耳よりかは小さく、尻尾?尾?もあるようには見えない、もしかしたらあるのかもしれないけど、服越しでは分からない、青い瞳に、悔しいけど長くて綺麗な白い髪の毛は腰辺りまで伸びている。
なんて、こともあってこの中学校では私を含め三人は特別教室で授業を受けさせてもらっている。こういった社会ではあるので、やはり、問題が生じると感じたのだろう。どこの学校でも今ではこういった制度を取り入れている。私からしても、助かってはいる。ただ、やはり登校する時間、下校する時間は他の生徒と一緒なので、嫌な視線は感じる。そういったことにも、学校側には配慮してほしい、ってかしろ。
なんて、憂鬱な考えをしていると例の子が話を始める。
「ねぇ、二人は『テセウスの船』を知ってる?」
「なにそれー!船?…知ってる?結ちゃん?」
「知らないよ、また。何かの…何とか実験でしょ?」
「そう、『思考実験』ね」
そう、この子はこういった類の話が好きだ。
どうやら、お兄さんの趣味がそういったものでこの子もそれに興じてるらしい。
お昼休み、特に何もする事は無いので、たまに話す話しに付き合ってる。
「で?そのなんとかの船って何?」
机に頬をつけながら、だるそうに聞く。
そんな態度にも関係なく話す彼女。
「テセウスの船ね、パラドックスの一つよ。簡易的に説明するのであれば、船の一部が退化に退化を重ね、部品を各々交換していく、そうしてる間に船の原型は変わっていき、さて、元の船と今ある船、果たして同じ物と言えるのかと言うものね」
「んー?どういうこと?」
莉音ちゃんは、頭に?マークでも浮かんでいるかのような顔をしている。
要は、同じかどうかって事でしょ?
「それなら、一緒なんじゃない?形は変わったとしても元はその船だったわけだし私は、それでいうなら一緒だとおもうけどね」
白い髪の毛を、窓から入ってくる風に揺られながら彼女は。
「別に。答えなんてないのよ、二人がどういう答えを聞かせてくれるか気になっただけ。ありがとね」
…なんだそれ、結構真剣に考えたつもりではあるのだけれど考えた結果がこういった答えしか出なかったのだけれども、それも相まってか、ちょっとイラッとする。
「あっそ」
誰がどう聞いても不機嫌そうな声でそう答える。
「んーどういう事?」
◇
放課後になると、私たちを含めた全校生徒が下校し始める。
もちろん、帰る方向が一緒というのもあり、帰りは莉音ちゃんと帰る。
「ねぇー今日、あそこのクレープ屋さん行かない?」
「え?クレープ屋?」
「そうそう、最近できたでしょー?帰り道にあるでしょ?ね?いいよねー?」
正直言うと、一緒に行きたい気持ちはある。放課後に友達と二人で寄り道、そんなのも青春なのかなーと、憧れとかもある、正直、凄く行きたい…。
ただ、私達はこういった見た目でもあるので、周りの目を集めやすいし、私はその視線だけでも怖い。莉音ちゃんから誘われる事はいつもあったけど、一回たりとも、一緒に行ったことなどない。
「大丈夫だよ、結ちゃんが思ってる程、皆、悪い人たちじゃないよ!」
私の顔をみて察したのか莉音ちゃんは私にそう言ってくれる。
私って顔に出やすいのかな…?まぁ、でも、やっぱり行ってみたい…。
「…うん、行こ…」
「え!!?本当!嬉しい!!行こう行こう!」
この子も多分凄く顔に出やすい性格なんだろう、先ほどの顔とは打って変わって、いや、今までに見たことのないくらい明るい表情。
「ありがと…ね」
「ん…?」
「なんでもないよ、じゃ、行こう」
「こちらこそ。ありがとう」
◆
学校からどれくらい歩いただろうか。いつも歩いて帰る道だというのにも関わらず、いつもより歩いている気がすのはやはり気のせいなのだろうか。
「あー!!あそこあそこ!!」
先頭を歩いた私を追い越し、無邪気に走り出す。
私も、いつもと違った感覚に少し胸躍っている、恐怖が無くなったと言えば、嘘になるが、今は然程、怖いと言う感情は薄れつつあった。
莉音ちゃんと一緒に居るからだろうか…?
「結ちゃーん、早く!早く!」
「はいはい」
お店、というよりかは屋台に近かった。
オープンカーというやつだろう。カウンターと思わしき横にはメニュー表。
カウンターにはとても可愛らしい花が色とりどり飾られている。その奥には、お店の人思わしき…思わしき…。
「お姉ちゃん!?」
意図せず声が出る、その声に周囲の視線を集める、「あっ…」と声と一緒に俯く。
すると、カウンター奥から声を掛けられる。
「あれ?結ちゃん?」
「…うん…冬お姉ちゃん、ここでお仕事してたんだ」
「そうだよ、結ちゃんこそ、どうしたの?」
と問いかけてくる冬お姉ちゃん。
視線を逸らし、莉音ちゃんの方に視線を向ける。
それと同時に冬お姉ちゃんも視線をそちらに向ける。
「あ、莉音ちゃん、もしかして、結ちゃんと一緒に買いに来てくれたの?」
「うん!」
冬お姉ちゃんが、隙間時間で短時間仕事をしていたのは知っていたが、まさかここだったなんて、偶然。
「じゃあ、二人ともどうする?」
メニュー表を指差し、冬お姉ちゃんは私達に問いかける。
んー、どうしようか、ストロベリー…いやブルーベリー…、どうも私は優柔不断らしいこういう所でもすぐさま判断できない、だって、どちらも捨てがたいのだから、こういうのすっとなんて決められるわけが無い。
私が悩んでるのを莉音ちゃんがみて耐えかねたのか。
「結ちゃん、私こっちにするから、半分、半分で食べよっ!」
「え?いいの?」
「私も、そっち食べたーいし、ね?」
「じゃあ、ありがとう、そうしよ」
いよいよ、決め終わり、冬お姉ちゃんが準備を始めながら
「じゃあ、すぐ作るね、あそこにベンチあるから、待っててー」
「「うん(!)」」
オープンカーの横には、丁度、私達二人ぐらいが座れるスペースの木型のベンチが置いたあった。なんだかんだ言っても来てみてよかった。
冬お姉ちゃんの仕事してる所も見れたしね。これも、莉音ちゃんが誘ってくれたおかげか。お礼言はないとね。
「莉音ちゃん、ありが…」
ふと、地面を見ていた顔をあげ、莉音ちゃんにお礼を言おうとするが莉音ちゃんの顔はいつもの明るい顔とは違い、私の見間違い出なければ、曇っているようにも見えた、
「莉音ちゃん…?」
「あ、ん?どうしたの?…結ちゃん?」
先程の表情が嘘かの様に、いつもの明るい表情に戻っていた。
気のせいだったのだろうか、それならばいいのだけれど。
「い、いや、なんでもないよ」
やり取りをしているうちに、冬お姉ちゃんが二人分のクレープを持ってきてくれた、なんかでかい!?イメージ画像って大体それ以下ぐらいの物が出てくるイメージだけど、好意で大きくしてくれたのかな?
「はーい、どうぞ」
「わーい!ありがとー」
「ありがとう」
これなら、半分にしたときでも凄く満足感を得られそうな気がする。
嬉しいけど、食べきれるかな、なんて心配とともにまずは、一口自分のクレープに「いただきます」と共に口いっぱいに頬張る。
「んっー!美味しい!!」
さっき、作ったからなのか、生地がもっちり温かく、中のクリームとストロベリージャムが絡み合い絶妙な美味しさを引き立てていた、その後に入っている、3/1位のバナナも凄く美味しい。
莉音ちゃんも満足気味に口いっぱいに頬張ってクレープを食べ進める。
「あ、ほら~、二人とも、口にクリームが凄いついてるよ」
そういって、冬お姉ちゃんは、持っていたハンカチで私達の口元を拭いてくれる。
「じゃあ、お姉ちゃんはお仕事戻るから、食べ終わった気をつけて帰ってね」
「うん」
「はーい、ありがとうー」
手を軽く振って、オープンカーのほうに戻っていく。
すると、莉音ちゃんが残ったクレープをこちらに渡してくる。
「はい!結ちゃん、半分こしよ!」
「うん、ありがとう」
莉音ちゃんから貰った、ブルーベリー味のクレープにも、手をつける。
こちらも、想像通りの美味しいさ。甘くて、少し酸っぱい。食べている時は夢中で気づかなかったど、今凄く楽しい。普通の子達はいつもこんな事してるのかな…そう考えると、羨ましいな。
「美味しかったね、結ちゃん!」
「そうだね」
「…また…来よう…ね?」
か細いような声で問いかける、そんなの。
「あたりまえだよ」
◆◇
クレープも食べ終わり、帰路につく。
気がつけば、辺りは日が段々と落ち少しづつ、夜への片鱗を映し出していた。
それと、同時にさっきまで晴れていたのが嘘かのように、怪しげな雲が空を覆いつくす。
「明日は雨降りそうだね」
「やだねー、雨、私、雨嫌いなんだ、とても憂鬱な気分になる」
珍しい、いや、知らないだけで、莉音ちゃんにも苦手なもの、得意じゃないことが当然の如くあるか。
「降らないといいけどね…」
「そうだね、あっ、じゃ結ちゃん、私こっちだから、また明日ね、今日は本当にありがとう!凄く楽しかったよ」
横断歩道を渡るとすぐに私の家が見えてくる。
その手前直進すると、莉音ちゃんの家がある。案外、家が近いと言うのがあって、朝や帰りはここで待ち合わせ等をしている。
「こちらこそ、ありがと、また行こうね」
「うん、…また…」
莉音ちゃんの声がまた元気の無いような声に聞こえたが、横断歩道が青から点滅になるのを見て、急いで横断歩道を渡る。渡った辺りから、やはりといった感じか、雨がポツポツと降り始めた。
降ってきちゃったかとかも考えつつ、莉音ちゃんの様子も気になったので手を振るがてら、横断歩道先の彼女の方を向こうとする。
だが、莉音ちゃんは、雨が降ってるにも関わらず自宅とは真逆の方向へと歩き出していた。疑問に思った、私は声を掛けようとするが、道路を走る車に声をかき消される。
「莉音ちゃん…?」