いじめられていた……?
疑問は頭の中を駆け巡っていた。と言うよりかは、すぐに反応できなかった。
莉音が結さんに?昔って?どんな?先ほど、会った結さんからはそんな感じも伺えなかったが、もし仮にいじめが本当なら、いじめてる方は気づかないというし、仮に悪意のあるいじめだとするなら、あんな振る舞いはできないんじゃないか?とも思える。
莉音葉、未だに俺の服の裾を掴んだまま、ガクガク震えている。
「莉音?大丈夫?」
「…ん、大丈夫だよ…」
大丈夫じゃないの位、今聞いた声とまだ震えてる体を見れば分かるか。
「莉音、怖いと思うけど、一緒に付いてきてくれるか?羽織さんに事情を話して、話を聞こうと思う、俺は利音が嘘をついてるなんて絶対思ってないけど、結さんにもそんな気がしなかったから、ついてくる…?」
少し、沈黙の後。
「いや…。達哉、お願い聞いてきて」
「分かった」
俺は、いつもより優しい声で莉音に返答した、無理に付いてきてもらうのは流石に酷だし、それに莉音にそんな思いはしてほしくなかった。ここから家は差ほど遠くない、電車一本で帰れる距離だ。
ただ、一人で帰らせるのも不安要素だ。
「莉音、一人で帰れるか?」
「うん、帰れるよ…」
「何か、あったらすぐ電話するんだからな?」
「うん、すぐ達也に電話する」
◇
最寄の駅まで送り、ホームまで送り出す、流石に近いと言えど心配の方が勝ってしまった。
「大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ!」
先ほどとは、打って変わって顔には笑顔を取り戻していた。
取りあえずは、多少は落ち着いたようだ。良かったと胸を撫で下ろす。
「じゃあ、ばいばいのキスしよ?」
「は??」
何を言い出すかと思えば、元気になった途端これだ。
「ここ、家じゃないし、別れと言っても今日には帰るぞ」
「いーやーだー!!」
こう言い出した、言っても聞かない。
仕方ない、ん、仕方ないって何だ、よく見るけど公共の場だぞ。
周りに、それなりに人いるぞ?
「えい」
「!?」
そんなの、お構いなしに、足りない身長を補うかのように背伸びをし、唇に唇を重ねる、周りからの視線は案外気にならないもので、その場に熱中してしまった。
アニメとかなら、このシーンで電車とかいいタイミングで来るんだろうけど、そんなことは無かった。
「いきなり!!な!」
「いいーじゃーん!減るもんじゃなしー!」
ま、まーいいか…?良くはない…。良いのか、もう分からん、これも経験か。俺も、別に悪い気はしないしな。
「じゃ、俺は羽織さん家戻るからな」
「うん!!分かったよ!」
少し、歩き出し莉音のほうを向くと。
「大丈夫だよ」
と言わんばかりの表情で、こちらを見ている。
俺もそれに、片手を上げ応答する。
◇
莉音と別れ、羽織さん宅の玄関の前で立ちすくんでいた。
なぜ?すぐ入らないって?そりゃ、玄関の前と言えど、イチャイチャしている、声がここまで聞こえてきているから、入るに入りづらいってわけだ。俺達もいつも…こんなんではないよな?
タイミング間違えたかなと思いつつも、インターフォンに指を伸ばす。
「あの…すみませーん」
申し訳程度の、謝罪とインターフォンの音が鳴り響く。
鳴った後は、すぐさま先ほどのやり取りは嘘のかのように消え、玄関のドアが開く。
「はい?あっ、達也君?」
「あ、すみません突然、ちょっとお聞きしたいことがあって」
「聞きたいこと?」
それから、俺は先ほど利音に聞いたことを羽織さんに話した。
羽織さんは、すぐに、結さんに詳しいことを聞きに行ってくれた。
「その、話は多分、間違ってると思うよ」
結さんが口を開く。
流石に無いとは思っていたが、”いじめていた”と言う言葉が出なくて良かった。
「いえ、こちらこそ疑ったりしてすみません」
「いい、よ、大丈夫」
ただ、それだけじゃ引き下がれるわけが無い、何かしらの原因が無ければ、勘違いだって起こさないのだから。
「結さんは莉音と面識はあったんですか?」
「うん…あるよ」
ま、なければ莉音からそんな話は出てこないだろうし、あんな表情はできないだろう。
「中学が一緒なんだ、高校からは別々になっちゃたけどね。私と利音それにもう一人、いたんだけどね」
頭の耳をシュンとさせながら、話を始めようとする。
「少しだけ、昔の話をしようか」