Emilio   作:つな*

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エミーリオは思われる。

原初の種に。

大空の虹に。



Emilioへの至情

チェッカーフェイスside

 

 

 

『今思えば私たちは名前がない』

 

『エ、ミー、リオ………俺はエミーリオだ』

 

『俺は…共にこの星を守りたい…美しいこの星を守ろう…』

 

冴え渡る青空のもと、彼は凛とした表情でそう語った。

私はその声を、瞳を、笑みを…一度たりとも忘れたことなどなかった。

 

 

ふと意識が戻る。

そこは寝起きしている部屋だった。

ああ、少し眠っていたようだ。

にしてもまた、懐かしい夢を見た。

なんだって一族を捨て人間に(うつつ)を抜かしたあいつの夢など…

(おもむろ)に手で垂れる前髪を後ろへと撫で上げる。

さぁ、今日もこの星を見守らねば。

 

たまたま住処の一つである日本で活動していた頃だった。

最近近所の者達から耳にする店に興味を持ち、気まぐれにそちらへ訪れただけだった。

扉を開くと、カランコロンという音と共に奥から人が出てくる。

 

「いらっしゃい、一名様ですか?」

 

一瞬、思考が止まった。

何故、の二文字が頭の中を回る。

 

「あのー…?」

「っ、一人です」

 

いち早く我に返り、返事をして席に案内してもらった。

目の前の店の者を穴が開くほど眺めるが、どこをどうとってもエミーリオにしか見えなかった。

声も瞳も容姿も、何からなにまでもがエミーリオであり、私は困惑した。

 

「君…名前はなんて言うんです?」

「俺はエミーリオ…まぁこの店の店長やってますよ」

「………そうですか」

 

ここまでくると確信せざるを得なかった。

だが何故、こんなところで、こんなことを…一族の使命はどうしたというのだ。

やはり一族を捨て人間の真似事などをしていたというのか。

変装時ということもあって彼は私に対して何の反応もなかった。

一度、彼に声を掛けて目を覗いてみたが、そこに既知への感情はない。

その日は何もせずに帰り、今度本当の姿で彼の店に現れた。

一度、あいつとは話さねばならん。

そう決意し、最悪喧嘩別れをすることも覚悟していた。

だが予想は裏切られ、エミーリオは私に関して何の反応も見せなかった。

目を覗いても、そこにあるのは赤の他人への反応ばかり。

正直言って相当ショックだった。

こいつは人間に(うつつ)を抜かすばかりでは飽き足らず、一族の顔すらも忘れるような男であっただろうか?

それからだった、私がエミーリオの店に足を運び始め出したのは。

何度も彼の身辺、経歴を調べ上げたがどこにも痕跡はなく、彼自身から聞き出したものも市役所のデータベースには記録されてはいなかった。

何故だ、その気になれば直ぐに他人の記憶の改ざんをして住民票などを作ればいいのに、と疑問を抱いた。

今までの経歴をさりげなく聞いたところ、子供のころの記憶がないと言っていた。

最初は嘘だと分かって一蹴していた情報だったが、まさか本当に記憶が欠損しているのだろうか?

何度か際どい単語を会話中に並べても無反応であり、嘘すらついていなかった。

ああ、こいつは記憶を失くしているのだと確証を得たのは、私がひどく酔い、彼に本音をぶつけた時だった。

何かを考えていたわけもなく、ただアルコールを過剰摂取した脳が理性を奪われ、今まで沸々と余り続けた鬱憤を吐き出していた。

 

「何故……お前は一族を離れて人間の元にいってしまったんだっ」

「皆死んでしまった………みんな…死んでしまったぞ」

「人間に現を抜かしたせいで!我が一族は滅亡の一途を辿ったんだ!」

「ふざけるな………使命などと、あんな呪いを私たちに縛り付けて自分だけ行方を暗まして……」

 

エミーリオがいなくなってから今まで保たれていた一族の雰囲気が一変した。

皆が皆の主張を頑なに曲げず、まるで空中分解しているような感覚だった。

ヒトを受け入れろだの、滅ぼせだの、隠れて生きるなど、各々が自分の考える方向へと進み、遂には道を違えた。

私はただ不甲斐なく、遣る瀬無かった。

 

「お前の……せいでっ……」

 

違うだろう、私はそんなことが言いたいんじゃないんだ。

行方を暗ましたお前をどれだけ探したと思ってるんだ。

セピアから自発的に行方を暗ましたと聞いても、それを信じずただ探し続けていた。

でも、見つからなかった。

どれほど絶望したと、苛立ったと、怒り、悲しんだと思っているんだ。

なのに数百年ぶりに会えば私の顔も声も存在すらもサッパリと忘れているなんて。

どうしてっ……

 

「どうして…」

「悲しいことでもあったのか?んなの忘れるに限るよ、ささ飲んで飲んで」

 

悲しい…そうだ、私は悲しいのだ。

エミーリオに忘れられた事実がひどく、虚しく、悲しいのだ。

私の名前を呼んでくれるあの声はもうないのか?

お前が私につけてくれた…本当の…名前を………

 

どんどんアルコールが思考力を奪って行き、意識が朧げになった頃うっすらとボヤけた視界の中で、エミーリオが口元に笑みを浮かべているのがチラリと見えた。

それはまるで、あの時、使命を…一族の使命を掲げた時のソレのように。

 

 

お前にとって私達一族はただの重荷だったのか?エミーリオ…

 

 

その夜の会話はほとんどを忘れていて、断片的にしか思い出せないソレは彼が私のことを覚えていないと分かるには十分すぎるものだった。

 

数年という年月、私にとっては短すぎるその時の流れの中、私は出来るだけエミーリオの店に顔を出すようになっていた。

いつか、私のことを思い出してはくれるんじゃないだろうか、と淡い期待だけを持っていつも彼の店の扉を開いていた。

未来でエミーリオが白蘭達との決戦に巻き込まれトゥリニセッテの共鳴の影響を受けて意識を飛ばしていた時も、もしかしたら記憶が戻ったかもしれないと思い眺めていた。

だが彼は欠片も思い出すことはなく、アルコバレーノの世代交代の時期がやってきた。

今回も、次期アルコバレーノ候補を見つけて、アルコバレーノという責務を押し付け、私の役目は終わりだ。

そう思い、アルコバレーノの一行を夢の中へと呼び出して声を掛けたのだ。

そして呪いの解呪を仄めかし、代理戦争を始めた。

暫くはエミーリオの前に現れまいと思い、私は独自の空間に尾道と共に代理戦争を観戦していた。

初日、エミーリオがまたも巻き込まれ負傷した時は肝が冷える思いをした。

私達一族は不老であっても不死ではないのだ。

傷を負えば、人間よりも回復速度は早くとも時間は必要であるし、心臓や脳を潰されれば即死ではないものの、数分で死に絶える。

だがエミーリオは違った。

彼の腹部を貫通していた傷跡がおよそ1時間もしない内に完治していた。

そこで私はエミーリオの異常性に気付いた。

傷を負った場所からすぐさま空間転移で死細胞のみを排除し、生細胞を他人から補完していた。

それも自己防衛機能のような働きをしているから無意識に完治、復元している。

一族の中で唯一特殊な力が無いと思われていたエミーリオの最大の特徴的能力はその身体能力の自己防衛力だったのだと分かった。

予想外の事実を知る最中、代理戦争は続いていき、二日目の夜になった頃それは起きた。

バミューダ・フォン・ヴェッケンシュタインがスカルチームを奇襲し、代理戦争の参加権を奪取した。

尾道は焦っていたが、私からしては何ら問題はなく、そのまま続行という形を取った。

三日目の戦闘が終わり、各チームがウォッチを外しながら監視外での行動をし始めた。

バミューダの良からぬ影響に嘆息したが、どのみち四日目で全てが終わると思い、手出しはしなかった。

四日目の午後3時、決着になるであろう戦闘が始まり、私の予想外の事態となった。

エミーリオが戦闘に仲介し、バミューダが自身のアルコバレーノウォッチを破壊した。

あの二人が懇意であることは意外であったし、何よりもエミーリオの涙に目を見開いた。

どこまでも、人間の様になっているあいつに僅かな苛立ちを感じたまま私は彼らの前に姿を現した。

 

「彼を責めてはいかんよ、尾道は本当に何も知らぬのだ」

 

私の声にその場に居る者達が一斉に反応し、警戒を表した。

特にアルコバレーノからの殺気は尋常ではなかったが、私にとっては苦でもなんでもなかった。

 

「この顔に見覚えがあるだろう?」

 

そう言って私は仮面を剥がす。

すると私の仮面の下の偽りの顔にも目を見開き同様する周りを眺めていた。

 

「川平君じゃん……」

 

唯一エミーリオだけは、動揺ではなく純粋な疑問であったが。

周りの殺気が膨れ上がったのを見て、仕方なく抑制しようと炎圧を上げて辺りに放つ。

 

「ぐあっ、炎なのか!?」

「ああ、ざっと君の炎の数十倍…私にとっては呼吸をする程度だよ」

 

息苦しそうに爆風を凌ぐ者達の中で、エミーリオだけが何食わぬ顔で佇んでいた。

単なる気まぐれで私の正体を明かした。

 

「貴様は宇宙人だとでも言うのか?」

「むしろ生粋の地球人だよ。そして我が種族で現在生きているのは私を入れて三人だけだ…その中の一人はユニ、君だ」

 

それから昔のことを懐かしむ老いぼれになったかのように、数万年も昔の話を彼らに語った。

7³の役割も、私達一族のことも、話せる範囲を教える。

そして現アルコバレーノからおしゃぶりを返してもらおうと一歩足を進めると沢田綱吉がそれを阻む。

次期アルコバレーノとなる覚悟を見せると、老いぼれた老人が現れた。

そいつは人柱を不要としながら7³を維持するための装置を作り上げたとのたまった。

戯言とは思ったが、構造は理論上正しく、それにバミューダが賛同し自身が維持する役割をと名乗り出る。

私はふとそこで思い出した。

これで我が一族の使命を人間に引き渡し、7³は私の手から離れることが出来る。

ならば…すべての原点である彼が……エミーリオがケジメをつけねばいけないのではないか

 

「では、バミューダに任そうか……だがその前にしなければいけないことがあるのだ」

「「「!?」」」

「先ほど言ったように今現在で我が一族は既に三人しかいない…私もユニも賛成した。ならばあと一人…彼の同意が欲しい」

「もう一人の…地球人…?」

「ああ、彼だよ」

 

私は迷わず、バミューダを抱き上げている彼を指差す。

目を見開く彼を見据え、私はその名を呟いた。

 

「エミーリオ」

 

 

さぁ…終わりにしよう、我が一族の使命を

 

私たちは人間にこの意思の結晶を明け渡すときが来たのだ―――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

ユニside

 

 

「エミーリオ」

 

チェッカーフェイスの言葉にその場の者は全員目を見開いた。

かくいう私も驚愕し、エミーリオを凝視した。

 

「…俺?」

 

エミーリオは目を丸くし、素っ頓狂な声を出した。

そんなエミーリオの反応に周りが更に困惑する。

 

「おいてめぇ!嘘ついてんじゃねぇぞ!チェッカーフェイス!」

「待って、獄寺君!」

 

獄寺さんがチェッカーフェイスに食って掛かろうとするのを沢田さんが止める。

 

「エミーリオさん……あなた昔の記憶ありませんよね。何か心当たり無いですか?」

「なっ、君記憶がないのか!?」

「ちょ、バミューダ落ち着け…あーっとな…まぁ心当たりしかないっちゃないけど、いやまさか種族違うだなんて思わねーだろ…何かの呪いでこんな体質になっちゃったのかと思ってたし」

「体質?君の不老のことか?」

 

バミューダの言葉に私は驚愕した。

不老、だからエミーリオは私の小さい頃の記憶にあるあの姿と全く変わっていなかったのだと分かる。

そして、夢に出てきていたあの男性がエミーリオであることにも漸く納得出来た。

 

「あー、まぁ不老もそうだけど…俺不死身体質でもあんだよ…なんか傷が直ぐ塞がっちゃって。これも地球人ってやつの体質なのかなー」

「え」

「「「「「はぁ!?」」」」」

 

今度こそバミューダも驚きの声を上げる。

沢田さんやリボーンおじさまが何故か冷静にしているところを見て、もしかして彼らは知っていたのではないかと思った。

案の定、沢田さんは以前彼の体質のことを知ってしまったらしい。

皆の驚きが冷めぬうちにチェッカーフェイスが口を開いた。

 

「彼はどうやら記憶失っているようでね…いつの時代から覚えている?」

「え?あー…600年くらい前…かな?多分」

「一族の前から消えていった後ということか、道理で私のことも覚えてないわけだ」

「えっと、すまん…何か家族っぽいのに忘れてしまって」

「いやいい…どのみちこれから思い出させる」

「は?」

 

チェッカーフェイスの言葉にエミーリオを含めたその場の者達が目を見開く。

 

「私の術でエミーリオ、お前の精神だけを逆行させ、その記憶の時代へと時間を遡る…勿論私もお前が皆の前から消えた後のことは気になるので共に過去へ行くがな」

「あ、はい…待って記憶取り戻せんの?マジで?」

「取り戻したくないのならば強制はしない…お前の過去が幸せだったものとは限らないのでな」

「あーまぁそれはいいんだけど、うーん…今ここで?」

「7³の維持を人間に任せる今だからこそだ」

「ならお願いするよ…つか人類誕生より前って、記憶取り戻すの結構時間かからねぇ?」

「全てを一つずつ見るのではないし、時間間隔の調整はするから現実では30分ほどで済ませる」

「なるほど、じゃお願いします」

 

二人だけで会話が進み、取り残されるというところでバミューダと私が割り込んでいった。

 

「待ってください!私も見ます!私も一族であるならば出生を明らかにしたいのです」

「僕もみるぞ、エミーリオ…異論は認めん」

「えー…まぁ別に減るもんじゃないけど」

「え、じゃあ俺も――――――」

 

沢田さんに続き、全員がエミーリオの記憶を共有したいと願い出た。

当のエミーリオは別段拒むわけでもなく、チェッカーフェイスはエミーリオの意見を尊重するということで、彼の記憶を共有することになったが、全員を連れていけるほどの炎は持ち合わせていないということで代表して4人が選ばれた。

沢田さん、バミューダ、私、リボーンおじ様

 

「言い忘れていた、エミーリオを除く私たちはそれを第三者の視点からしか見ることは出来ない」

「分かった」

「では行くぞ、エミーリオ……お前の、起源を…しかと思い出せ」

 

チェッカーフェイスの言葉と共に、炎が私達を包み込む。

瞬きをすると一気に目の前が暗くなり、少しすると明るくなった。

周りにエミーリオ以外がいて、目の前にはどこかの崖が見えた。

上空を何かが通り過ぎたと思い視線を上にあげて私は悲鳴を上げた。

何故ならそこには絶滅したハズの生物がいたのだ。

 

「きょ、恐竜!?」

「あれは…プテラノドン!?」

「なるほど、あいつはこの時代から生きていたのか」

「チェッカーフェイス…その言葉ではあなたがもっと後に生まれてきたかのように聞こえますが…」

「ああ、私は古第三記…白亜紀の後に生まれた、一族でも二番目の方だと記憶している」

「ならエミーリオは最古のヒト型生命体ってことか」

「そうなるだろうな、崖の方にある洞窟を見ろ…何かがいる」

 

チェッカーフェイスの言葉に全員がそちらを向くと、崖の途中にある洞窟に人型が横たわっていた。

 

「あれは………エミーリオ!」

「何でずっと動かねぇんだ」

「動くという概念がなかったのか、はたまた別の理由か…こればかりは私でも未知の領域だ」

 

時間が早送りされたように、時代と共に景色が移ろいゆくのを目に焼き付けた。

すると大きな爆音が響き渡り、辺り一面が炎の海となった。

焦って、近くにいた沢田さんにしがみ付く。

 

「これはっ……隕石」

 

恐竜は死に絶え、草木は枯れ、海は干上がり、大地はひび割れていく。

そんな中リボーンおじ様が声を出す。

 

「おい、エミーリオが動いたぞ」

「「「「!」」」」

 

そちらへ視線を移すと、エミーリオが涙を流しながら滅んでいく景色を眺めていた。

そして彼の体からゆらゆらと漏れ出したそれに皆が目を見開き驚愕した。

 

「死ぬ気の……炎……」

「それも凄まじい量だ」

 

炎はどんどん辺り一面を覆う。

それは神秘的で、まさしく神話の体現のようだった。

先ほどまで枯れていた草が、干上がっていた海が、ひび割れた地面が、嘘のように元通りになっていた。

そして炎は段々と凝縮し、7つの石としてエミーリオの手のひらに残る。

 

「7³の原点だ」

 

それからまたときは流れ、漸く一人の男性とエミーリオが出会い、種を集めていき、集団となっていった。

 

「あ!あの人ユニに似ている。多分あの人がセピラじゃないかな?」

「あれが……私の先祖…」

 

沢田さんの指さした方角に、私に似ている女性を見つけて私は懐かしさが込み上げる。

ああ、あれだ…夢の中で何度も出てきた女性は…あの人だ。

人類が誕生し、進化し、文明を築いている様子はまさに映画を見ているような感覚だった。

そんな時、エミーリオの一族の一人が亡くなった。

それから一人一人と、段々と数は少なくなっていき、10人になったところでエミーリオが人間たちと共存することを提案していた。

だが反対意見が多かったためそれは叶わず、そのまま時は流れる。

一族が7人に減ったところでエミーリオが人との共存に積極的であったセピラにだけ一族の元から離れることを伝えた。

 

 

「この星が滅ぶその瞬間(とき)に」

 

 

セピラのその言葉にその場の誰もが言葉を失くした。

エミーリオは死ぬことはない…と、彼女は見通してしまったのだ。

セピラが泣いていて、私も涙が溢れる。

隣にいたリボーンおじ様がハンカチを差し出してきたが、この涙が収まる様子はなかった。

置いて逝かれるだけの生に、一体どれほどの絶望が詰まっていただろうか。

エミーリオは泣いていたセピラを置いて、彼らの目の前から姿を消した。

 

目の前の景色は変わり、とある一つの村に移る。

どうやらエミーリオはここで人間と共存していたようだ。

だけど、エミーリオの不老性が徐々に噂になっていって、村の子供を晴の活性の炎で治療したことで村人たちが神聖視し出してエミーリオを祭壇に閉じ込めてしまった。

私はただ口元を覆いながら涙を堪える。

数十年も祭壇で暮らすエミーリオはずっと人々に神ではないと訴えていたが、村人は聞き入れてはくれない。

 

「どこにでもありそうな昔話だな……」

「そんなっ、エミーリオさんはずっとここに閉じ込められてたの?」

「扱いが悪くないどころか逆に崇められてたからエミーリオの抵抗心を抑制してんだ…悪けりゃ村人全員殺しておしまいだしな」

「だからエミーリオさん…無理に逃げられないんだ」

 

リボーンおじ様の言葉に沢田さんが沈痛な面持ちで返事する。

エミーリオの元に少女が現れ、二人は段々と距離を詰めて仲の良い友人という関係にまでなっていた。

だがある日、少女の言葉の後押しもありエミーリオは村を襲う自然災害に手を付けることは無くなった。

それから村は大きな災害に襲われた。

村人の願いの声をエミーリオは耳を塞いで助けることはなかった。

それから数年ほどで、村は見るも無残な荒れた土地と成り果てた。

父親を失った女性はエミーリオの元に顔を出し、その翌年に母を亡くした。

それがエミーリオに大きく響いたのか、共に村を出ると決意して二人は村のすぐそばの森へと入っていった。

 

「嫌な………予感がする」

 

沢田さんの言葉にその場の誰もが眉を顰める。

沢田さんのその言葉は裏切られることはなかった。

 

「そんなっ」

「エミーリオさん!」

 

女性がエミーリオを、毒を塗ったナイフで刺して崖から落としてしまった。

これにはチェッカーフェイスも動揺を露わにしていたが、私はそんなことを気にする余裕はなく、ただ沢田さんにしがみ付いていた。

エミーリオは海の中に落ち、波に飲まれていった。

私は我慢できず泣き出し、バミューダと沢田さんは呆然とし、リボーンおじ様は帽子を深く被っていた。

 

「だから…ヒトとの共存など危険だと……言ったではないか…エミーリオ…」

 

チェッカーフェイスの声は悲痛にまみれていた。

エミーリオは海岸に打ち上げられ、数日後に目を覚ました。

 

『……そうだ…何か、を…守ってたんだ…………何だったか…』

 

目が覚めたエミーリオは海に下半身が浸かっていることに驚きながらも、立ち上がり周りを見渡しそう呟いた。

 

「ここだ…エミーリオが記憶を失くしてしまったのは…ここなのだ」

 

バミューダがそう呟く。

エミーリオは彼を漂流者だと思った近くに住んでいた住人に保護された。

エミーリオが人と触れ合った時に見せた涙は見るに堪えなかった。

見覚えのない恐怖、悲しみ、苦しみ。痛みをエミーリオはずっと感じていたのだろうか…?

 

「俺の名前…何だっけ…」

 

エミーリオが考え込み、数秒の沈黙後思い出したかのように口を開いた。

 

 

「俺はエミーリオだ」

 

 

 

全ては自分を守るためだったんだと

 

とてもか細い悲鳴が聞こえた気がした。

 

 

 




うわー、シリアス2連続って辛い(笑)

チェッカーフェイス:SAN値が…
ユニ:SAN値が結構削られた、幼女が見ていいものではないね
ツナ:SAN値が結構削られた
リボーン:内心を取り繕う余裕は若干ある
バミューダ:SAN値直葬。親友が本当は人間大嫌いかもしれないという事実に打ちのめされている。というか記憶戻った時点で大嫌いになりそうだと内心白目向いている。

多分今回の勘違い要素は普通に、ラストだけですね。
第三者視点だから、エミーリオの体で何が起こったのか分からない。
だからエミーリオの内面が変質しているのは記憶喪失だからだと思い込んでしまう。
だが残念、ぽっとでの人格が6割がた、元々のエミーリオの人格が4割がたで混ざっただけである。これが後の自動SAN値直葬機に変貌するんですから、人間(?)何が起こるか分かりませんね。
要はあれですよ、混ぜるな危険(笑)


と、まぁここまでドシリアスでした。


 _人人人人人人人人人人人人人人人人人人_
<※安心して下さい、次回からドシリアルです>
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