沢田綱吉side
エミーリオさんの記憶を見て、俺は何も言えなかった。
村人たちにされた仕打ち、友人の裏切り…そして彼自身の宿命を知って、言葉が出なかった。
俺がエミーリオさんに出来ることは何もないと直感で理解してしまった。
「えっと……俺気にしてねーよ……?ほら…やっぱ……俺、人間じゃねーし」
彼にこんなことを言わせたくて、俺は過去の記憶を見たわけじゃないんだ。
そう言いたくても言葉が喉につっかえて何も言えなかった。
「そ…れと……トゥリニセッテはやっぱり俺が持ってた方がいいと思うんだ」
「ほら、それ作ったのって俺だし、俺一人で多分維持出来るわけだし……」
一人で全てを背負うと、孤独のまま生き続けると言っているようにしか聞こえなくて、俺はすかさずその提案に口を挟もうとしたが、その前にバミューダがエミーリオさんを殴っていた。
「馬鹿者!そんなことさせるものか!お前ひとりに全てを任せるものかっ」
バミューダの声は悲痛にまみれていた。
流石の俺もエミーリオさんの意見には怒っていた。
俺たちを頼ってほしい。
逃げないでほしい。
そんな思いばかりが頭を過るだけで、口に出ない自分にも腹が立った。
「エミーリオさん…トゥリニセッテを…俺達に任せてはくれませんか?」
「…………君たちのその意見に反対するつもりはないよ…ただ、少し…そう思っただけなんだ…」
歯切れの悪いエミーリオさんの言葉に少しだけ安堵すれば、エミーリオさんはチェッカーフェイスの方へ視線を向け声を掛けた。
「大丈夫か…?辛そうだけど」
「ふん、よく言えたものだな……この場の人間を殺してもこの怒りは収まらないだろうことくらいお前が一番知っているだろう、エミーリオ」
チェッカーフェイスの不穏な発言にその場の人たちに緊張が走る。
「俺は気にしてない…」
「お前のそういうところが嫌いなんだ」
「…シェリック」
「……」
その言葉にチェッカーフェイスはエミーリオさんを睨み、黙ったまま片手で顔を覆う。
きっとチェッカーフェイスも取り繕うだけで精いっぱいなんだ。
俺だって家族が酷い目にあったら、多分手を出したやつを許さないだろうから。
それを必死に抑えてるんだ。
「やはり人間との共存なんて到底ありえない話だったんだ…」
絞り切った声には怒りと悲しみが滲み出ていた。
俺は何も言えず視線を下に向けていると、ふとユニが気になってそっちに意識を逸らした。
ユニは他の人たちに今見た記憶を共有しているようで、目を瞑って集中していた。
エミーリオさんもそれを知ると、困ったような顔をしていた。
皆への共有が終ったのか、獄寺君や骸、雲雀さんに山本が顔を歪ませていた。
ふとバミューダがエミーリオさんの腕から離れるとエミーリオさんに向かって言い放った。
「エミーリオ、お前は一旦帰った方がいい」
「え、あ…分かった」
エミーリオさんは歯切れの悪そうに、その場から去って行くとリボーンが口を開いた。
「バミューダ…お前どうするつもりだ」
「どうする?愚問だね…親友を今更恨むことなんて出来るわけないだろう」
「それが…俺達の呪いの元凶であってもか」
「当たり前だ…まぁエミーリオはどうか分からないがな」
バミューダの言葉に疑問が過る。
獄寺君が口を開く。
「どういう意味だバミューダ…」
「エミーリオが人間を心底嫌っているかもしれないってことだよ…トゥリニセッテを人間に明け渡したと同時に姿を消すことだってありえるだろう」
「えっ!?じゃあ何で今エミーリオさん一人にしちゃったんだよ!」
「おいツナ、バミューダの判断は正しいぞ」
「はぁ⁉リボーンまで!」
「エミーリオの奴…僅かだが、震えてやがった」
「え…」
「過去を思い出して、途端に人間が怖くなったんだろうな…今は一人にして考える時間を与えた方がいいだろ」
「そんな……」
エミーリオさんが震えてたなんて、気が付かなかった。
バミューダは寂しそうにエミーリオさんの去って行った方向を眺めていた。
「トゥリニセッテはどうすんだ」
「……今からでもやろう」
チェッカーフェイスの言葉は少し予想外だった。
「今ここで君たちを殺しても、エミーリオが余計悲しむだけだ…さぁ早く儀式を終わらせよう」
タルボのおじいさんの持ってきた装置を真ん中に、皆が囲むように円を作る。
そして炎を灯しだす。
「これがうまくいったら俺たちの呪いは解けるんだろうな!?」
「約束しよう」
スカルの言葉にバミューダは頷き、俺たちはその言葉を信じて炎を注いでいった。
装置が完成した頃には既に夕日は暮れていて、皆その場で脱力する。
「まだその装置が完全という確証がないので、私は暫く川平不動産の方に居座っている」
そういってチェッカーフェイスは皆の前から消えていった。
俺はあたりを見渡して、最後にリボーンを見た。
「被害がなかったわけじゃないけど、死人が出なくて良かった…」
「これでまだ生きられる…ありがとなツナ」
「ううん…でも、まだエミーリオさんのことが残ってる」
「ああ、あいつの問題が片付かなきゃ終わらねぇ」
「エミーリオさん…大丈夫かな」
「まぁ大丈夫ってことはねぇだろ、最悪俺たちの前から去ることも頭に入れておけ」
リボーンの言葉で俺は何とも言えない不安に襲われた。
折角アルコバレーノの呪いが解けたけど、まだエミーリオさんの問題が残っている。
どうにかしてエミーリオさんに信用してもらいたいし、ずっと並盛にいてほしい。
どうすればいいんだろう。
何の案も出ないまま夜になって、俺たちは一度各自家に帰って、翌朝また集まることになった。
今までのエミーリオさんを見ていたら、またいつもみたいに何食わぬ顔で笑って俺たちを受け入れてくれるんだろうって思うんだ。
だってエミーリオさんはいつだって、俺たちの助けになってくれる優しい人だから…
俺は不安を覆い隠して、目を閉じた。
朝になると、俺は待ち合わせ時間に待ち合わせ場所へと向かっていった。
場所は勿論エミーリオさんの店だ。
店の前には既に皆いて、俺が最後だった。
「ひ、雲雀さんも来てくれたんですか!」
「勘違いしないでくれる?僕はただ彼に言いたいことがあって来ただけだよ」
「は、はい…」
「10代目、全員揃いましたし開けましょう」
「うん、そうだね」
店をノックしたが、反応はなかった。
痺れを切らした雲雀さんが扉を蹴破って中へ入っていった。
「エ、エミーリオさーん………」
店の中には人の気配はなく、カウンターの方には財布と携帯が置かれていた。
店のどこを探しても誰もいなくて、偶々出かけているだけだと淡い期待を持ちながらエミーリオさんを待っていた。
雲雀さんはエミーリオさんがいないと分かると、その場から去って行ってく。
数分、数時間と待っていたけど、彼は帰ってこなかった。
既に昼過ぎになっていて、俺たちは誰もが口を開かなかった。
カランと扉の鳴る音で誰もがそちらを振り向いた。
「何故貴様らがいる…」
そこにいるのは怪訝な面持ちをしたバミューダだった。
バミューダは俺たちの顔を見て、何かを悟ったように自嘲気味に笑みを作り店をぐるりと見渡した。
「やはり、僕たちの前から消えたか…」
「やはりって…」
「エミーリオは一人を選んだ…彼にとって我々は不要なのだよ」
「不要って、お前はそれでいいのかよバミューダ!」
「それでいいだと?これ以上エミーリオを追い求めるなど、それこそ彼にとっては迷惑以外の何物にもならん」
俺は引き下がれなかった。
今ここでエミーリオさんを探さないと、二度と会えないような気がして。
そんなの嫌で、絶対に嫌で、エミーリオさんにはやっぱり皆と一緒に笑ってほしいんだ。
「お前それでもエミーリオさんの親友かよ!」
「何だと…っ」
「親友なら!追いかけて元気付けろよ!誰もお前を傷付けないんだって、安心させろよ!」
「先ほどから抜け抜けと…」
「傷ついたエミーリオさんを放っておいて何が親友だよっ、それはただの逃げだ!」
「っ…」
「俺は探すからな…探し出して…エミーリオさんが笑って暮らせるような場所を守るんだ」
「まも…る……だと…」
「皆エミーリオさんから笑顔を貰ったんだ、今度は俺たちがエミーリオさんを笑顔にさせるんだ!」
俺はそう言い放ち、店を出た。
行く当てなんかなかったけれど、とにかく体を動かしていたかった。
我武者羅に意味のない行動を続けるしかなくて…獄寺君の声で足を止める。
「10代目!」
「……」
「10代目……一先ず入江と白蘭に会いに行きましょう」
「獄寺君…?」
「あいつらなら人工衛星の監視カメラへのハッキングとか出来るはずです…あとボンゴレ9代目にも協力してもらいましょう…」
「…うん、うん!そうだよ、そんくらいしなきゃエミーリオさんは見つからないよ」
獄寺君の言葉に漸く突破口が開けたかのように思えて、段々と沈んでいた気持ちが落ち着いていった。
山本も京子ちゃんのお兄さんも、クロームも骸も…リボーンやほかの人たちも全員が手伝うと言ってくれた。
それから俺は白蘭がいる病室へ行って、白蘭のもつコネを使ってどうにか探せないか聞いてみようとした。
白蘭にはユニが記憶を共有させたみたいでエミーリオさんの過去のことは既に知っているらしい。
「僕はね綱吉君…エミーリオに大きな、大きな恩があるんだ…だから今は君に協力してエミーリオを探すけど、最終的にはエミーリオの希望を優先するつもりだよ」
「まぁ何も言わずに僕たちの前から消えちゃったのは…悲しいね…」
「うん、すごく…辛いや……」
泣きそうな顔で困ったように笑った白蘭に、俺は無性に悲しくなった。
「エミーリオさんはきっと迷ってるだけなんだよ…俺達が手を引いてあげなきゃ」
「……そう、だね………正ちゃんには僕から話しておくよ」
そういって白蘭は未だ治っていない体でベッドから起き上がりだした。
俺は引き留めたけれど、云うこと聞かずに真・6弔花を連れて出て行った。
病室を出て、エレベーターに乗ろうとすると、いきなり横に何かが音速で過ぎていく。
よく見ると壁に穴が開いていた。
俺は目を見開いて、振り返るとザンザスが銃をこちらに向けて佇んでいた。
「ザ、ザンザス!?」
「おい、ドカス」
「な、なな何だよ…」
「てめぇらエミーリオを探してんだろ」
「え、あ、ああ」
「早くあのカスを探し出せ、ぶっ殺してやる」
「え⁉」
ザンザスはそれだけ言うと病室に戻っていく。
俺がザンザスの言葉を理解出来ずに固まっていると後ろから声がした。
「ありゃ、相当怒ってやがるぜぇ」
「ス、スクアーロ!」
「よぉ"、沢田綱吉」
「お、怒ってるってどういうことだよっ」
「見てのとおりだろぉ"、ボスさんはエミーリオの飯気に入ってるから、食べれなくなって相当怒ってんぞ」
「は?」
「ああ見えてボスはエミーリオのことえらい気に入ってやがるからなぁ"、何も言わずに消えていったのが気に食わねぇんだろ」
「ザンザスって胃袋捕まれてんの!?」
「それもあるが、エミーリオはボスの世話係みたいな奴だったからなぁ…単に寂しいだけじゃねぇのかぁ"?」
「ええええ…」
「あーあー…またあのクソボスの機嫌が悪くなるぜぇ"…おい沢田ぁ!早くエミーリオ探し出せぇ!」
「わ、分かってるよ!」
俺はスクアーロに言われるがまま病院を出ていく。
途中でシモンファミリーの皆に会い、彼らもエミーリオさんを探すのを手伝ってくれると言ってくれた。
九代目に事の経緯を話して、ボンゴレの総力を挙げてエミーリオさんを探すことになった。
エミーリオさんがどこに行くか少しでも手がかりになるものはないのかなと思い、もう一度エミーリオさんの店に行く。
そこにはバミューダがまだいて、俺は少し戸惑う。
エミーリオさんは過去の記憶通りなら黒い炎、ワープも使えるはずだ。
それだと今どこにいるかなんて検討つけられない。
やっぱり、バミューダの協力は必要なんだと思い直し、もう一度会えないか考えていた時だったんだ。
だからバミューダに協力してもらえないかお願いしようと口を開く前にそれをバミューダが遮った。
「エミーリオは孤独だ…」
「お前も、僕も…誰もが最後にはあいつを置いて逝くのだ」
「今ここであいつを引き留めてまた仲良しごっこを続けるのは、あいつにとってこの上ない残酷な仕打ちだとは思わないか?沢田綱吉…」
俺はその時初めて自分のしてることが正しいのか迷った。
俺たちは短い人生をただ一生懸命に生きているからこそ、今のこの一瞬の大切さを知っている。
だから後悔のないように今も精いっぱい生きている。
でもエミーリオさんにとって俺たちの人生は、ただの100年もしない短い時間の中のほんの少しの茶番なんだ。
だから、今ここで必要以上にエミーリオさんの内側に入っていくのは、ただ無意味にエミーリオさんを傷付けるだけなんじゃないかって思った。
ボンゴレ一世も…D・スペードもエミーリオさんを置いて逝ったように、俺達もいつかはエミーリオさんを置いて先に死んでいくんだ。
なら、今のうちに…傷つかないうちに離れた方がエミーリオさんにとっては良かったんじゃないか。
でもそんなのただ悲しいだけじゃないか。
辛いことから目を逸らすのと変わらないじゃないか。
「確かにお前の言うことも一理ある…けど、そんなの嫌だ…」
「こんな、皆が悲しむだけの結末なんて認めない…俺が認めないっ」
「置いて逝かれるのが悲しいなら、それ以上に楽しい時間を作ればいいじゃないか!」
「お前たちと一緒にいて楽しかったって笑って別れることが出来るくらい思いっきり生きればいいじゃないか!」
俺は震える拳にさらに力を入れて握りしめ、バミューダを見据えた。
「逃げるなよバミューダ……エミーリオさんから、逃げるなよ…」
「……」
バミューダは俺の方に視線を移すことなく、その両手に黒い炎を灯してワープゲートを作る。
「エミーリオの位置は僕ですら掴めないから手探りでしか探す方法はない」
「………イタリアの首都、ローマに繋いでおく」
それだけ言うとバミューダはそのゲートを潜って姿を消した。
俺はバミューダが消えた数秒後にその言葉を理解し、直ぐに携帯で皆を呼び出した。
そしてエミーリオさんを探すために、並盛組とイタリア組に分けて探し出すことにした。
他の国は各地にあるボンゴレ支部の人たちにお願いしている。
「皆、エミーリオさんを見つけたら声を掛けずにまず俺たちに連絡すること……じゃあ行こう!」
俺はワープゲートを潜った。
こうしてエミーリオさんの大捜索は始まった。
大捜索が始まって既に8時間以上経ち、日本では既に夜になっていた。
日が落ちて今日はもう断念しようという意見が出始めた頃、イタリアを探していた俺に着信が入る。
「はい」
『沢田さん!』
「ユニ?」
『はい、あの…エミーリオの未来の居場所が分かりました』
「!…どこなの!?」
『並盛の…エミーリオの店の直ぐ近くです…彼はそこに深夜、現れます』
「分かった!」
それから全員にその情報を回し、夜の11時頃からエミーリオさんの店の近くに数人待機させる案となった。
ユニにお礼を言いたくて、一度ユニに会いに行こうと別荘に向かうと、ユニの隣には川平のおじさんの姿をしたチェッカーフェイスがいた。
「チェッカーフェイス!?何でここに!」
「また会ったようだ」
「落ち着いて下さい沢田さん、私が呼んだのです」
「ユニが?」
「はい…エミーリオが今苦しみ迷っているならば、それを心配しない家族はいないでしょう」
「…」
「エミーリオに、私たちは今までもこれからも、ずっと味方であることを家族として、一緒に伝えたかったのです」
「そっか…うん、その方がいいよ」
俺はユニの笑みに安心して、笑い返す。
「エミーリオが現れるまで、私は彼と共に待っています」
「分かった」
俺はそれを聞くと、二人に頭を下げて別荘を出て皆と落ち合った。
それからまた数時間後、既に辺りの住宅は暗く、月の光だけがある頃だった。
俺は獄寺君と山本、京子ちゃんのお兄さん、リボーンと共にエミーリオさんが現れるのを待っていると、日を跨いで少しすると急に背中にゾクリと何かが駆け抜けた。
「この感覚っ!」
「バミューダの使っていた第八属性の炎と似ている!」
「ああ、多分直ぐ近くでエミーリオさんが現れたんだ!」
辺りを見渡していると、急に泣き声が聞こえた。
俺は嫌な予感がし、その泣き声のもとへ走っていく。
目の前の角を曲がるとそこには、ユニに抱きしめられて呆然としているびしょ濡れのエミーリオさんの姿があった。
びしょ濡れのそれを見て俺は直感したんだ。
海に…落ちたんだ……自分から
今度こそ死ねると、そう期待して
でも死ねずに無意識にこの場所に戻ってきた
きっと……絶望したまま
「ユニ……?どうして、泣いてるんだ……」
「エミーっ…リオ……」
ユニはエミーリオさんの名前を絞り出すと、さらに抱き締めていた腕に力を込める。
焦点の合わないエミーリオさんのその瞳が、どれだけ彼の精神が追い詰められていたのかを物語っていた。
「エミーリオ…」
ユニの隣にいたチェッカーフェイスがエミーリオさんに近づき、ゆっくりと顔を覆っていた仮面を剥がしていった。
その顔は過去の記憶で見た中にもいて、それがチェッカーフェイスの本当の姿なのだと確信した。
そしてチェッカーフェイスはユニごとエミーリオさんを抱き締めた。
「あれから考えていた……そして私たち一族を誰よりも想っていてくれたのはお前なのだと…気付いた…」
「でももういい……少し休め」
「人間から距離を取って心を休めるのも必要だ」
「今までありがとう、エミーリオ」
チェッカーフェイスの言葉にエミーリオさんは目を細める。
俺は慌てて声を出した。
「ま、待って下さい!」
「綱吉君…」
エミーリオさんは目を見開く。
ユニとチェッカーフェイスがエミーリオさんから少しだけ離れ、エミーリオさんと俺の前にはただ少しの距離だけが残る。
エミーリオさんの方が小さく震えているのを見ると、胸が締め付けられるほど苦しかった。
「あ、あのいきなりこんなこと言われても説得力ないし、エミーリオさんを困らせるだけかもしれない…けど、もう一度人間を信じて欲しいんです…」
「俺たちは…今までの人たちとは違う……エミーリオさんを悲しませたりしません!俺たちは笑ってるエミーリオさんが好きなんです」
「もう一度…信じてはくれませんか…」
エミーリオさんからの返答はない。
数秒の沈黙の後、エミーリオさんが口を開こうとすると、後ろから凛とした声が響く。
「ねぇ、邪魔なんだけど」
振り返るとそこには苛立ったようにこちらへ足を進める雲雀さんがいた。
雲雀さんは、いきなりの登場に固まっていた俺を押し退けると、エミーリオさんの目の前で止まった。
「君がいないとつまんないよ、エミーリオ……僕はまだ君を咬み殺せていないんだから、いなくならないでくれる?」
エミーリオさんは目を大きく見開き、口を開け何かを言おうとする前に、雲雀さんは直ぐに立ち去って行った。
「クフフ、素直になれない男はただ見苦しいだけだというのに」
その言葉に今度は別の方向を振り返ると、骸とクロームがいた。
いつの間に、と思う反面結構切羽詰まってたから気配に気づかなかっただけかって思い直した。
「エミーリオ…あなたには少なからず恩義を感じていますので、あなたの前に立ちはばかる外敵くらいは駆除して差し上げますよ…勿論血祭りにして、ね」
「私も…あなたに救われた…だから、今度は私が守る」
「凪ちゃん……骸、君…」
「おい、ドカス…やっと捕まったか」
「ちょっとザンザス君?エミーリオにそんな乱暴な言葉使わないでくれるかい?」
クロームが言い終わると同時に、ザンザスと白蘭が割り込んできた。
ふと気づけば、周りには元アルコバレーノも皆揃っていて、バミューダもいた。
「次勝手に消えてみろ、カッ消してやる」
「そんなこと僕がさせないけどね」
「フン」
「エミーリオ、ちょっとお願いがあるんだけど」
「お願い…?」
「僕はエミーリオの意見を優先させるよ、どんなことがあってもそれは変わんないよ」
「だからさ…何も言わずにいなくなるのはやめてよ……探せなくなるじゃんか」
白蘭は涙ぐみながらそう告げる。
すると元アルコバレーノの風がエミーリオの足元に近寄っていく。
「エミーリオ…あなたは私にとって兄であり、師であり、目指すべき者です」
「風…」
「私はあなたの背中を見て育ち、あなたのような優しい強き者になりたいと思い、あなたを目指してきました」
そういえばエミーリオさんは風さんの名付け親だったんだ。
「だけど今は違います…私はあなたの心の支えとして強くありたい…そう思っています」
風さんは満足げな笑みを浮かべると、リボーンの近くへ戻っていく。
「エミーリオ」
小さな声だった。
エミーリオさんの元に歩み寄るその小さな黒い影は、この間まで俺たちに立ちはだかる強敵だったとは思えないほど小さな背中だった。
「僕は君を親友だと思っている」
「どんなことがあってもお前を裏切らないと誓える…」
「だ、から……もう一人で悩まず僕にも相談してくれないだろうか……」
するとエミーリオさんが歩き出した。
バミューダや俺、皆の間をかき分けて歩いていく。
「エミーリオさん!お願いしますっ、もう一度―――――――」
「店」
「…え?」
「俺、店やめるつもりねーから……定休日の木曜日以外ならいつでも来いよ」
その言葉を理解するのに時間はかからなかった。
嬉しさのあまり言葉が出ないってこういうことなんだって思った。
ユニがエミーリオさんに抱き着いて一緒に歩いていて、俺達もそれについていく。
「よかったな、ツナ」
「リボーン…」
「これで、一件落着だぞ」
「ああ……皆が笑える最後で本当に良かったよ」
夜風に当てられながら、俺たちは皆エミーリオさんの店へと足を運んだ。
「ふわぁぁぁ~…」
知らないうちに寝てたみたいで、起きると既に朝だった。
店のあちらこちらには酒瓶が転がっていて、数名が机に突っ伏しながら爆睡していた。
俺たちが寝た後に飲み始めたのかな…
酒臭さの中、空腹を刺激する良い匂いがして、匂いを辿るとエミーリオさんが料理を作っていた。
「あ、綱吉君おはよう」
「おはようございます…何作ってるんですか?」
「君たちの朝食だよ、あ、そこの皿並べてくれないか?」
「え!?朝食までありがとうございます!今並べます!」
「急いで割らないでね」
「はい!」
他の人たちも起き出して一緒に朝食を食べた。
久々にゆっくり食べる朝ごはんは美味しくて、自然と笑みが零れた。
「おいしいです」
「ありがとう」
エミーリオさんは微笑みながらカウンターの方から顔を出す。
それを見てどこからともなく安心感が襲う。
ああ、やっぱり
「エミーリオさんは笑顔が一番です」
エミーリオさんの周りは皆が笑える最高の場所だ。
「そういえば日本での店畳んで、ニュージーランドに移そうかと思うんだけど」
前言撤回、何だか大波乱の予感がする。
でもまぁ俺たちは騒がしいくらいが一番いいのかもしれない。
次回エピローグ
エミーリオ:酒飲んで帰ってきたら何故か総出で迎えられた孤独()な男。
超直感:エミーリオに関してこの上なくポンコツと化す。
エミーリオの酒場:聖域。ここから争いは始まり、ここで終結する。
バミューダ:やったね、親友関係が公認になった。
ニュージーランド:逃げて、超逃げて。
リクエスト募集を活動報告でしています。
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※感想欄にリクは書かないで下さい。受け付けません。