時間軸は本編後
骸side
その日は偶々朝早く起きてしまい、暇を持て余していた。
ふむ、他の者たちもまだ起きるには早すぎる…
僕は目が覚めていて、二度寝は無理だと思うと寝床から出て、少し散歩しようかと外へ出た。
いつもの制服姿ではなく、私服のまま歩いていて、帰り際にチョコを買おうとスーパーへ足を寄せた。
「骸君?」
背後からかけられた声に反応して振り向くと、買い物カゴを持ったエミーリオが目を丸くしていた。
「エミーリオ、何故あなたがここに」
「今日の買い出しだよ、これからずっと店開けるからこの時間帯ぐらいしか来れないんだ」
「なるほど」
「そういえばこれからチョコレート類の新作スイーツ作るんだけどうち来るかい?」
「クフフ、いいですよ」
「よしならもう少し待っててくれ、今買い終わるから」
そういってエミーリオはレジへ向かい、僕は店の入り口で彼を待っていた。
エミーリオが買い物を終え、店から出てくるのに合わせ僕も彼の隣まで近寄り彼の店までの帰路を歩く。
「そういえば何でこんな時間に歩いてたんだ?」
「いつもより早く起きてしまいまして、少し散歩してたんですよ」
「健康的じゃねぇか」
何気ない会話を続け、彼の店に入ると彼は直ぐに厨房へと入っていく。
少し厨房が気になり、中を覗くとエミーリオが僕に気付く。
「気になるのか?」
「ええ、少しは」
「なら一緒に作ってみるか?大体1時間くらいで出来上がるけど」
「…偶には僕も料理してみましょうか」
ただの気まぐれで厨房に完全に入った僕に、エミーリオは満足げにエプロンを渡してくる。
それを着用し、まな板の前に佇む。
「この前チョコレートがとっても美味しかった店見つけてな、そこと取引始めたんだよ」
「へぇ…」
「んじゃ骸君、君はこの板チョコを刻んでくれ」
「分かりました」
「つまみ食いすんなよー」
「しませんよ」
僕はチョコを刻み続けていると、隣でエミーリオが生クリームを温め始める。
「あ、骸君それもう大丈夫」
「はい」
「それとこのホワイトチョコも刻んでくれ」
次にホワイトチョコを渡され今度はそれを刻み始める。
包丁を長く持つのは初めてで少し苦戦するが、段々とコツを掴んでいくと慣れてきて刻むスピードを上げる。
さきほどの刻んだミルクチョコを温めた生クリームに入れかき混ぜ始めるエミーリオを横目で見ては、自分の作業に戻る。
「おお、骸君早いね…料理のセンスあるんじゃない?」
「お世辞はいいですよ、次は何をやれば?」
「本当なんだけどなー…えっと次はそこの冷蔵庫に入ってる生クリームをそこの鍋使って沸騰直前まで温めてくれ」
「クフフ、貴方だけですよ、僕をここまでこき使えるのは」
「共同作業なだけだろー」
生クリームとチョコを混ぜ合わせた後に、卵を入れる。
それも混ぜ終えると昨夜作り終えていたタルト生地に流し始める。
「よし、ミルクチョコの方はこれでおっけーっと…骸君そっちも大丈夫?」
「ええ、出来ましたよ」
「おっけー」
エミーリオがオーブンを操作し、170度で20分焼き始めた。
「あとは20分待って、粗熱を取って、冷蔵庫で冷やして…うん大体一時間くらいで出来上がるな」
そういって冷蔵庫からジュースを持ってきては、カウンターの方で開けてグラスに注ぎこむ。
「20分は暇だし、時間潰そうぜ」
「クフフ、いいですよ」
「これはパイナップルのサワードリンク」
「何故僕の頭を見ながら言うんです?殺しますよ」
本当に、あなたじゃなければ直ぐにでも槍を出して殺しているところだ。
渡されたそれを口に含めば、パイナップルの甘い香りと炭酸の気泡がが口に広がる。
不覚にも美味しいと、思ってしまうのだ。
「どう?最近は」
「どうもこうも、変わったことなどありません」
「えー、凪ちゃんと何もないの?」
「何故そこでクロームが出てくるのです、あの子とはそういう関係ではありません」
「え、マジ?」
どうやらこの阿呆は僕とクロームが恋仲であると勘違いしていたようだ。
クロームは僕の半身であり、それ以上でもそれ以下でもない。
「そっかぁ、そういうんじゃなかったのかぁ…」
「フン、D・スペードとエレナを僕たちにでも重ねていましたか?」
そう口にした瞬間に、僕は我に返り激しく後悔した。
エミーリオは僕の言葉に一瞬遠い目をすると、苦笑していた。
ごめんな、と言われているようで気持ち悪くなった。
故人を思い返すくらいなら、いっそ幻術で記憶を消してしまおうかと…本気で考えてしまう。
僕を…僕を見てください、エミーリオ
「骸君は骸君だろ…あいつとは違うよ」
「大丈夫、見間違いなんかしないよ」
そう笑って僕の頭を乱暴に撫でまわした。
さきほどまで巣くっていた黒い感情が吹き飛んでいった。
「子ども扱いしないで下さい」
「つってもお前まだ子供じゃん」
「うるさいですよ」
頭に置かれている手をどけようかとも思ったが、もう少しだけこのままでもいいかと思い、目を閉じた。
ピーピーピー
ウトウトとしていると、オーブンの機械音でハッと瞼を開ける。
「あ、出来上がったみたいだ…んじゃ取り出し作業するか」
「え、ええ…」
エミーリオはそのまま厨房に入り、僕は少しの間カウンター席に呆然と座っていた。
そして直ぐに自分の身に起こったことを理解すると、顔全体に血が巡る。
僕が他人のすぐ隣で本当に眠りそうだったなんてっ!
自身の醜態に顔を覆う。
いくら気を許していた相手であろうと、無防備な姿を晒してしまったという事実に羞恥する。
「おーい、骸君?やらないのー?」
「…っ、今行きます」
ああ、エミーリオの隣は調子が狂う。
「あれ?何で顔赤いの?風邪?」
「何でもありませんっ」
「つかこれ見ろよ、すげー綺麗に出来上がってる」
「…」
「半分は持って帰りなよ」
「そう、します…」
帰ったらクローム達にも分けてあげましょうか…
僕は冷蔵庫を開けて、涼しい風を顔に浴びせた。
スクアーロside
「スクアーロ隊長!ボスがまたっ」
「う"ぉぉおおおい!またかあ"ぁぁあああ!」
俺の一日は、隊士達からの悲鳴で始まる。
毎朝数名の隊士がザンザスの執務室から吹き飛ばされ重傷を負っている現実に俺は頭が痛くなっていく。
ズカズカと大股でヴァリアー本部を歩き、ザンザスのいる執務室の扉を力任せに開ける。
「う"ぉぉぉおいい!このクソボス!何回隊士たちをぶっ飛ばせば気が済むんだああああ!」
「るっせぇ!カス鮫‼」
執務室に入った瞬間に酒瓶が脳天にぶち当たるが、そんなもの日常茶飯事だとそのまま酒まみれのままザンザスに近寄る。
「毎日毎日、何が不満ってんだぁ!」
「……ぃ」
「あ"?」
「飯がまじぃんだよ‼」
そういうなり俺の顔面にザンザスの憤怒の炎が直撃し、俺の意識はここで途切れた。
再び意識を取り戻したのはすぐで、頭を掻きながら起き上がる。
既に誰かに運ばれたのか幹部の集まる会議室に放置されていた。
「あ"ーちくしょう…いてぇ」
「アハハ、ほんと毎朝よくやるねー」
「スクちゃんったら毎回貴方運ぶの誰だと思ってんのよ」
ルッスーリアとベルが俺が起きたのに気づくと声を掛けてきた。
「あんのクソボスめ…飯が不味いからってこれ以上被害出せるかってんだ!」
俺は力一杯壁を殴りつける。
「エミーリオにご飯を作ってもらったらどうだい」
その提案は当時、神の存在を信じない俺にさえ神託にすら聞こえた。
当の発言をしたマーモンは後日、幹部全員から胴上げされることを予想だにしていなかった。
とまぁそういうわけで、俺は今日本の並盛に訪れていた。
しかもベルとマーモンも連れてだ。
何故かあいつらは自分からついていくと言い出して、ヴァリアーの個人用ジェット機に乗り込んできた。
そして現在、エミーリオの奴の店の前にいるわけだが。
マーモンが先ほどから髪の毛を弄っているが、外見を気遣うほどこいつとあいつは初々しい関係だっただろうか。
あとベル、お前さっきから何ソワソワしてんだ…
一体こいつらとエミーリオの間に何があったんだと思いながらも、店の扉を開く。
「いらっしゃい」
「う"ぉぉおおい!エミーリオぉぉお!久しぶりだなぁぁああああ!」
「あれ、スクアーロじゃん…それにベルにマーモン」
「やぁエミーリオ」
「おっひさー」
店を見渡すと、客も疎らでこれなら直ぐにいなくなると考え、エミーリオから隠れた位置で扉に下げられているオープンの看板をひっくり返してクローズにする。
全ての客が帰り、俺達だけになったところで本題を挙げる。
「う"ぉ"ぉおい、おめぇヴァリアーに再就職しやがれぇ!」
「え、ヤダ」
「「え」」
「あ"あ"!?」
即答するこいつに皆一様に反応した。
「いや俺個人経営が一番性に合ってるし」
「シシ、スクアーロ振られてやんのー」
「るせぇぞ!ベル!」
何とかしてこいつをヴァリアーに、いや、ザンザスの専属シェフに再就職させねーと。
金で釣られるような奴でもねーし…やっぱりイタリアに無理にでも連れていくしか…
「エミーリオ…僕鼻炎がまた酷くなってて…君の料理が必要なんだ…」
マーモンがこれでもかというほど、泣きそうな勢いで懇願し出す。
それに続いてベルまでもがエミーリオに手を合わせてお願いし出す。
「エミーリオの飯が美味すぎてさ!他の奴の作った料理じゃ物足りねーの…ダメ?」
「ええー……でもなぁ」
エミーリオは暫く考え込み、ハッとしたように何かに閃いたような顔をした。
「デリバリーすればいいんじゃね?」
「「「え?」」」
「ほら、俺ワープ使えるし…食事頃にそっちに飯持ってけばいいんだろ?」
「「「あ」」」
「ちゃんと人件費上乗せするからな」
まさに妙案だった。
かくして、エミーリオの店の裏オプションにデリバリーが誕生した。
「ザンザス、お前野菜もちゃんと食えよ」
「てめぇ…何でいやがんだ」
「スクアーロがお前の好き嫌いに疲労困憊なんだよ、もっと部下を労れアホ」
日本にいるはずのエミーリオがいきなりボスの執務室に料理片手に入ってきて、料理を机の上に置いてはボス説教を始めた。
当のザンザスは急に現れたエミーリオに驚いている様子だった。
スクアーロはその様子を扉越しで覗いていた。
「あのなぁ、スクアーロから聞いたんだが手間暇かけて作ってるんだから料理を捨てるような行為はあんまり良くねーぞ」
「けっ、くだらねぇ」
「あーもう、親父と仲違いしたか分かんねーけど、性格捻くれまくりやがって…」
「カっ消す」
「銃を仕舞え、この馬鹿もん」
エミーリオの拳が凄まじい速さでザンザスの頭目掛けて放たれ、まともに食らったザンザスは痛みのあまりに悶絶している。
それを見ていたスクアーロの横でベルが冷や汗を垂らしていた。
「うわあ…ボスのこと殴れるエミーリオって最強じゃん…」
「だから言っただろぉ"、あいつは唯一ボスを叱れる奴だってなぁ"」
「しかもボスの地雷踏み抜いた上であれでしょ?やべぇ」
「ボスの機嫌が手が付けられなくなるほど悪くなったら、取りあえずエミーリオに丸投げしとけぇ、直ぐに収まる」
「シシ、まるでお目付け役じゃん」
「もはやあいつが父親でも違和感ねーぞぉ"」
不満たらたらな顔のままエミーリオと口喧嘩をしている様子を見て俺は目を細めた。
あのザンザスが、まるで親父に叱られているような息子にしか見えねぇ。
ザンザスの時間は16の時から8年間止まり、最近になって漸く動き出した。
だから俺達よりもまだ大人になり切れていない部分がある。
ある意味、時間の流れがないエミーリオの側はあいつにとって一種の逃げ場でもあるのかもしれねぇ。
8年は、少し…長すぎたからなぁ"
俺たちにとってエミーリオは何だかんだあっては最後に逃げ込む場所だった。
だがエミーリオがヴァリアーから去り、奴に会わないうちに色々起こり、自力で生きて、自立して今がある。
だがザンザスがどうだ、あいつは8年という年月ずっと眠り続けていた。
あいつにとってエミーリオが去ってからたったの半年ほどしか経ってない感覚だ。
だからまだ、エミーリオを逃げ場として認識してる。
それが悪いことだとは思ってねぇ…
あの性格が捻くれまくってるザンザスに、エミーリオはまさに特効薬みたいなもんだしなぁ"。
ザンザスは気付いてるか知らねーけどな。
「野菜食えっていってんだろ!ガキかお前は!」
「るっせぇ!俺に命令すんじゃねぇ!カス!」
「口悪いんだよ‼」
ゴッ、と再び鈍い音が聞こえ俺は声を忍ばせて笑った。
バミューダside
「今日も、維持装置は作動しているな」
その言葉から僕の一日は始まる。
まず起きると、維持装置を確かめる。
その後に身支度をして、牢獄の様子を確かめる。
代理戦争時にたくさんの復讐者が減り、今や両手で数えられるほどしかいなくなってしまい、少人数で掟を犯したマフィア達を閉じ込めている牢獄を監視している。
本当は牢獄の監視はやめてもよかったが、やはり何らかの抑止力がなければという話になり、復讐者のいなくなった今でも牢獄はあり続けている。
復讐の為だけに生きていたのにいきなり生きる目的を失った復讐者たちは狼狽えていた。
死に体で生き永らえながら牢獄を監視するなどただの慈善活動となんら変わりないじゃないかと匙を投げだす者もいないわけではなかった。
潔く炎の供給を止めて、楽になりたいと告げた者もいた。
だがイェーガー君は今後どのようにしたいかと僕に問うてきたことがあり、僕はただ友人の側でトゥリニテッセを守り続けると告げた。
暫く考え込み、何を思ったのかそのまま僕についていくと言い出したイェーガー君に当初は困惑したが、今となっては貴重な働き手である。
ただ彼も最近になって、エミーリオの偏見のない目を気に入ったのか彼の店に訪れるようになっていた。
イェーガー君を見ては目を丸くしたエミーリオは、そっと新しい包帯を彼に渡し、イェーガーはいたく感動していたのは最近の話である。
今日も僕は彼の店に挨拶をと顔を出す。
「エミーリオ」
「あ、バミューダおはようさん」
「ああ、おはよう…もう仕込みは終わったのか?」
「今終わったところだ」
たまに彼の手伝いとして、皿洗いや皿を並べたりする。
エミーリオはいつも一人でこれをしているのかと思うと気が遠くなりそうだ。
「エミーリオ」
「ん?」
「何故バイトなどを雇わないんだ?一人ではきつくないか?」
「いや別に…俺料理してて疲労感なんて感じたことないから」
「そうか、でも辛くなったら言ってくれ…いつでも手伝おう」
「そりゃ頼もしい、でも今は本当に大丈夫だ」
エミーリオは笑ってそう言い、僕もエミーリオが大丈夫ならとあまり気にしなかった。
手伝いを終えると、また牢獄の監視に戻ろうと思い店を離れる。
トゥリニテッセの維持装置は最も監視の厳しい場所で保管している。
今日も数名が牢獄に入れられ、悲鳴やうめき声があちらこちらから聞こえてくる。
「バミューダ」
「どうしたんだいイェーガー」
「エミーリオはどうしていた…?」
「いつも通りさ、今度夜にでも彼の店に行こうか?」
「そうだな…ほかの者も連れて行ってはどうだ…」
「それもそうだ、考えておこう」
イェ―ガー君は他の者たちの様子をよく見ている。
復讐の無くなった彼らが機械のように生き甲斐もなく過ごしているのが見るに堪えないようだ。
エミーリオとの出会いで彼らに活気づくのを期待するしかないのだろうか。
僕は思い溜息を吐きながら維持装置を眺めた。
夜になり、そろそろエミーリオの店が閉まる時間帯だと思い、もう一度彼の店に顔を出す。
そこでは既にラストオーダーが終ったのか、店仕舞いをしているエミーリオがいた。
「やぁエミーリオ」
「バミューダ?これから飲みに来たのか?」
「いや単に君の様子が気になって来てみただけだよ」
「そっか」
「もうすることは終わりか?」
「いや、これからまた明日の準備があるからな…別に急ぎではないぜ」
その時僕には疑問が浮かんだ。
「エミーリオ、君一体いつ寝てるのだ?」
一人だけで店を経営して、なおかつ朝からこんな夜中までしている。
仕込み時間も考えると、寝る時間の確保はどうしているのか疑問に思った。
「え?いや寝てないけど」
「は?」
「あ、いや、寝てるときは寝てんぞ……暇になれば…」
「エミーリオ、少し話そうか」
「え、ちょ…今から片付けが…」
「エミーリオ」
「アッハイ」
この馬鹿は、寝る時間すら削ってまで店を開いていただと?
いや、それに気付かなかった僕も僕だけど…
彼には睡眠を必要としないのは分かっているが、疲労しないわけではない。
睡眠とは体力回復もあるが、記憶の処理、思考能力の回復も含まれている。
こんな生活を続けていたらいつかはどこかで倒れてしまうと心配した。
それからエミーリオに睡眠がどれほど大事かを事細かく教え、営業時間を少し減らすことを約束させた。
そして眠るのを忘れてそのまま活動する姿がちらほらと見受けられ、ちゃんと眠っているのかを交代制で監視することにしたのは直ぐ先のことだった。
白蘭side
ピピピピピピ
目覚ましが鳴り、僕は瞼を開ける。
背伸びをしてベッドから起き上がり、顔を洗ったら部屋を出る。
「おはようございます白蘭様、朝食のご用意が出来ています」
「おはよう桔梗」
桔梗の言葉に頷いて、僕は朝食を食べだす。
すると桔梗の持っていた携帯が鳴り、少し僕から離れて電話を取る。
「――――ああ、分かった」
ピ、と通話を切った後に僕の方に戻ってきた。
「白蘭様、今しがた技術開発局の者たちから報告が」
「んー?」
「昨日打ち上げられた人工衛星が漸く安定し、搭載システムが全て使用出来るとのことです」
「やっとか、じゃあそれPCに繋げてくれる?」
「は、かしこまりました」
桔梗はPCを用意し、ディスプレイを僕の前に移動させた。
「例の件は?」
「既に完了しています」
「そう、ご苦労さん」
「いえ」
例の件とは、今僕が開いた画面に表示されている地図と赤い点のことだ。
「GPSはどれに付けたの?」
「彼の携帯、店の至る場所、また彼がよく着用している服装に防水性のものを縫い付けています」
「それじゃぁ心配ないかな」
「色で分けられており、携帯に付けているものが赤色となっています」
「監視カメラまでは流石にしないけど、これくらいならまぁ許容範囲だよね」
「ええ、そうですね」
恐らく監視カメラを設置すると、バミューダ辺りが気付いて壊しちゃうだろうからね。
桔梗の同意も聞けたことだし、僕は画面を確認する。
地図は並盛を映していて、赤い点は彼の店に留まっている。
「人工衛星の監視カメラの方も精度が上がり、人間も追跡できますが使用なされましょうか?」
「んー、じゃお願いしようかな、並盛外に出たら報告して」
「了解しました、エンターキーで位置情報は更新されます」
「分かったよ」
時間からして店が一番混んでる時間帯かな?
ああ、イタリアと日本は遠いなぁ…
「ねぇ桔梗」
「は、どうされましたか」
「今度、日本支部の改築作業あったよね」
「はい」
「んじゃ日本支部の中に、僕の部屋と、もう一つ大きな客室を追加しといてくれない?」
「了解しました、今手配します」
「よろしく」
桔梗は僕の部屋を出ていき、それを見送った僕は再び画面を見てエンターキーを押した。
朝の内は、資金の流れを確認して、部下の動きを確認するだけで終わる。
うん、明日数名をボンゴレに派遣して…
資料を見ながら頭の中で思考を巡らせていると、携帯の方に通知が来る。
直ぐに位置を確認すれば、彼がイタリアのヴァリアー本部にいた。
ワープで移動したのか…にしても何でヴァリアーに…ザンザス君か。
これなら時間がかかってもいいから盗聴機能も付けておくべきだったかな。
赤い点は数分で日本に戻り、また店の位置で点滅していた。
夜になり、お風呂に入った後髪の毛を乾かしていると携帯の方に通知が来る。
どうやら彼が並盛の外へ行ったようだ。
赤い点は隣町のスーパーに向かって進んでいた。
ああ、そうかもう彼の店は閉店の時間だ、多分買い出しに行ったんだろうね。
携帯の方をよく見ると、通知が夕方にもあり、場所はイタリアのヴァリアー本部になっていた。
昼と夕方にも彼らのところへ顔を出してるなんて…
「ふーん?」
僕は携帯で登録先を表示し、彼に電話を掛ける。
コールが数回鳴った後に、通話が繋がる。
『もしもし』
「あ、エミーリオ」
『白蘭か、どうかしたか?』
「通話相手の表示はちゃんと確認しなよ」
『バミューダにも同じこと言われたわ、んで何かあったかー?』
「今度日本に行く予定あるんだけど、その日にエミーリオの店予約したいんだ」
『おっけー、いつだ』
「今度の――――…」
会話は進み、数分ほどした辺りでエミーリオが店に着いたから切ると言い出す。
「うん、じゃあまたね…日本に行ったときに色々話そう」
『そうだな、またなー』
「うん、またね」
そう言って通話を切り、僕は欠伸をした。
そろそろ寝ようかなぁ…
そして僕は開いたPCのエンターキーを押す。
そのあとにPCの電源を切り寝室へと向かった。
・エミーリオは骸とDの違いが若干ついてない。どっちもナッポーで覚えてた。
あ、あっぶねー…これから間違いないようにしておこう、オッドアイが二代目ナッポーだなーと見分けを付け始める。
「大丈夫、(これからは)見間違いなんかしないよ」
・エミーリオの店の裏オプション:デリバリー
→後にバミューダにバレて、(元)復讐者がデリバリーを手伝いだす。
・エミーリオがイェーガーに包帯を渡した。
→イェーガーの顔がくっそ怖くて、これで隠していてくださいお願いしますの意味で渡した。
・エミーリオの睡眠時間
→必要ではない、ただ精神的疲労を取り除くのに最も効率が良いだけである。眠気はないが寝ようと思えば寝られる。これからも睡眠を忘れてバミューダの胃を攻めていく。
・人工衛星
→ミルフィオーレの最先端技術で作り出された人工衛星、特定の人物の位置情報がリアルタイムで見れる。
エミーリオは逃げられない。
【挿絵表示】
西藤 奨悟様、はっぴーさん様のリクエストです。
リクエストありがとうございます♪