苦手な方はUターン、スキップ推奨
「エミーリオ、久しぶりに私と手合わせしませんか?」
とある晴れた日に、彼の店に訪れ私はそう言った。
「手合わせ?また何で急に…」
「どれ程私が強くなったか見て欲しいのです」
「………いいぜ」
…強くなったんだなと、褒められたかったのだ。
エミーリオを独占したいという欲望と、見せびらかしたいという欲求があり、私は葛藤する。
その末、元アルコバレーノの皆にコッソリ手合わせのことを教えたのだ。
皆は興味深そうにしていて、必ず見に行くと言っていた。
私はエミーリオとの手合わせに浮かれ上がり今かと待ちわびていた。
エミーリオの店の定休日である木曜日に、私はエミーリオと共にいつも一緒に修行していた場所へと赴いた。
まだアルコバレーノの呪いを解いて年月が経っていない小さな身体では手合わせすら出来ないと思い、事前にヴェルデに頼んでいた一時的に大人の姿に戻す薬を飲む。
代理戦争以来の自身の元の身体にかかる重力を懐かしみながら、岩山の天辺にある開けた場所へと辿り着いた。
「うわぁ…懐かしい」
「ですね、私もここへ来るのは3年振りです」
エミーリオは至って普通で、いつもと違うといえば動きやすい服を着ているというところだろうか。
彼が中国に滞在している時によく着ていたチャイナ服だ。
彼の久しい姿に懐かしさを覚える。
「んで、手合わせったってルールとかどうすんだ?」
「そうですね…私としては別に何でもありで大丈夫ですよ」
「いや金的は無しにしようぜ」
「フフ、そんなことをお互いするとは思いませんが、いいでしょう…ではルールはそれだけでいいですね?」
「おう」
「では」
岩陰に数名の気配を感じることからリボーンやコロネロは既に来ているのだろう。
私は久しく動かす元の身体に僅かばかりの興奮と、師との手合わせに心が躍る思いだった。
静寂がその場を支配する。
そして私は拍動を静め、あらんばかりの力で地を蹴った。
手始めにエミーリオの胴体を突こうと拳を作り、中段からの突きを放った。
それをひらりと余裕そうに躱すエミーリオに、私は口角を上げ、回し蹴りで彼の頭を狙う。
「!」
だがそれもエミーリオが私の足首を掴んだことで不発に終わり、彼はそのまま遠心力を利用して私を放り投げる。
空中で体勢を立て直し、岩の上に足から着く。
視線をあげれば先ほど視界のうちにいたハズのエミーリオはおらず、私は上方から来る気配にすぐさま傍の岩へと飛び移る。
僅差で先ほど私のいた岩が粉々に砕け散るのが視界の端で捉えた。
足場を確保してから、エミーリオへと視線を固定する。
「腕は衰えていないようですね、エミーリオ」
「俺に衰えなんてあるわけねーだろ、おら来い」
「ではお言葉に甘えてっ!」
私は自分の足元にある岩を蹴り、エミーリオへと急接近した。
右足を大きく下げ、蹴りの構えを取った時だった。
『風は最初に右足を出す癖あるよなぁ…』
いきなり脳裏に蘇る彼の言葉に、下げた右足をそのまま軸にして左足で回し蹴りをする。
予想と違った動きにエミーリオは目を丸くするも、両腕で脇腹を守る。
衝撃を全て殺すことの出来なかったエミーリオが僅かに地面から離れるのを、私は見逃さなかった。
爆龍炎舞‼
手の内から舞い上がる炎が龍のように形取りエミーリオへと襲い掛かる。
一瞬にして辺り一面に暴風が荒れ狂う。
少し離れた場所に移り、気配を探っていると全く別の方向から殺気を感じて私は回し蹴りのまま後ろへと振り向く。
嵐の炎を纏った足が衝撃を受けるも、私はそのまま蹴り抜き、目の前に現れた人物に目を細める。
「おや、何故あなたがここにいるんですか?ザンザス」
「何やら楽しいことしてんじゃねぇか、混ぜろや」
ふむ、大方マーモンあたりが零してしまったのだろうか…
だが私はエミーリオとの一対一を望んでいるので、彼にはお引き取り願いたい。
言葉を探していると、別の方向からも気配が来て、私はそこへ警戒し出す。
すると鎖がこちらへ放たれ、私は隣の岩へと飛び移る。
「ねぇ、僕代理戦争の戦い消化不良なんだ、付き合ってよね」
「一体どこから嗅ぎつけてきたのか……雲雀恭弥…」
この面子では絶対に退いてはくれないだろう、ならばすぐにでも倒してエミーリオとの手合わせを仕切り直すべきか。
そんなことを考えていると爆龍炎舞の衝撃で立った砂埃が晴れて、エミーリオが土塗れになった服を叩いていた。
そして何故か増えている人数に目を丸くして首を傾げた。
「あれ?恭弥にザンザス…お前ら何でこんなとこいんだ?」
「別にそんなことどうだっていいよ、僕は君を咬み殺したくて仕方がないんだ」
「ふざけんな、そいつをカッ消すのは俺だ!」
「え?」
「エミーリオ!危ない!」
雲雀恭弥とザンザスの攻撃がエミーリオに向かって放たれる。
私が手を伸ばす前にエミーリオは身を屈めて攻撃をやり過ごした後、足元に転がっていた石を二人に向かって投げ付ける。
二人とも石を容易く砕き、エミーリオは辺りを見渡して口を開いた。
「なんだか知らねーけど乱戦ってことか?」
「別に、僕はそれでもいいよ」
「ふん」
「エ、エミーリオ、私はその…正々堂々と」
戦いたい、と私が言い切る前にザンザスと雲雀恭弥が攻撃を仕掛けてきた。
私は溜め息を吐き、また後日に先送りだと悟りながら彼らの攻撃を躱していく。
戦意も萎えて、元アルコバレーノ達の元に向かう。
「何だ、おめーはもうおしまいか?」
「私は正々堂々と一対一で戦いたいのです、乱闘ではありません」
「カッコよかったですよ風」
「ありがとうございます、ユニ」
「まぁ私はただエミーリオの戦闘データが作れる為に来たからどっちでもいいがな」
「変わりませんね、ですが薬は助かりました…また今度も頼んでよろしいですか?」
「構わん、奴のデータは多いに越したことはない」
「そうですか、コロネロ、エミーリオはあなたの目から見てどうですか?」
「強いぞコラ!代理戦争の時は強そうに見えなかったからな、本当の実力が見れてよかったぜコラ」
「エミーリオは本気ではありませんよ」
「何?」
「あくまで我々が死なないギリギリを理解して力を抑制しています、本気を出せばここ一体は更地になっていますよ」
「確かにな」
私の言葉にリボーンが頷き、再び皆で戦いの行方を見ていた。
激しい戦いの中エミーリオは汗一つかかず、二人を相手取っている。
対する二人は三つ巴すらも忘れてエミーリオにのみ焦点を絞り攻撃をしているが、全く攻撃が入らないことに苛立っている様子だった。
「エミーリオが仕掛けにいった!」
マーモンの声と同時にエミーリオがザンザスへと接近し出す。
ザンザスがエミーリオの顔面目掛けて銃を撃つと共にエミーリオがザンザスの腕を回し蹴りの要領で蹴り上げ、銃弾は上空へと発砲された。
そのまま上に向いた足を蹴り上げた腕に絡め、そこを軸にもう片方の足でザンザスの顔面へと蹴りを入れた。
ザンザスは体勢を崩すも、その場に踏みとどまりエミーリオに向かって発砲する。
それに対してエミーリオは体勢を屈めようとしたが直ぐ横から雲雀恭弥の攻撃が迫るのに気付き、後方へと背中から一回転して回避する。
ザンザスの放った弾丸に付与している憤怒の炎で背中の布が若干焦げていたが、本人は怪我を負った様子はない。
口の中を切ったザンザスが地面に血を吐き捨て、銃を構え直す。
そんな中雲雀恭弥が炎を纏ったトンファーをエミーリオに振りかぶるも、体をズラしたエミーリオがトンファーの軌道を逸らし、そのまま勢いを利用して雲雀恭弥の背後を取り、背を利用して体当たりの要領で雲雀恭弥を叩きつけて吹き飛ばした。
「すごい…」
「あれは鉄山靠ですね」
「てつざんこう?」
「ええ、中国拳法の代表的な八極拳の中でも特に有名な技です。背中からの体当たりのようなものですが、見た目よりも遥かにダメージを喰らいます」
隣で目を見開いていたユニに私が彼のやった技を解説した。
修行時代、私が何度もやられた技であり、エミーリオの威力がどれほどなのかも知っている。
だからこそ、飛ばされた雲雀恭弥が平然とまではいかずとも起き上がったことには目を見開いた。
息の荒い二人はその後もエミーリオに対して攻撃を繰り出していくが、エミーリオに攻撃が入らない。
そんな中、ザンザスの攻撃が私達の近くまで被弾して、砕けた岩の破片が私達へ降って来た。
まだ大人の姿である私がすぐさま立ち上がり、その岩の欠片を砕こうとした時だった。
ポン!という軽い音と共に私の体がいきなり軽くなる。
「薬の効能が切れた!」
「こんな時にっ」
岩の欠片は私達の体の倍以上あり、背後は崖だ。
私は空中で体勢を立て直せずに岩の欠片を目の前にして腕で顔を覆い目を瞑った。
だが予想した衝撃も痛みも来なくて、目を薄く開けると目の前にはエミーリオが立っていた。
直ぐに私達を庇ったことを悟り私は申し訳なく思い口を開こうとした直後、エミーリオの額から血がたらりと垂れ始めた。
ふらりと傾いたエミーリオに私は目を見開き、彼の身体を支えようとしたが、その努力も虚しくエミーリオはそのまま体勢を崩して崖から落ちてしまった。
「エミーリオ兄さん!」
「きっと岩の欠片が頭部に直撃して意識が飛んだんだ!」
「くそっ、下はどうなってるんだコラ!」
「下は…泉…です」
「ならまだ軽症の可能性が高い、直ぐに引き摺り上げんぞ」
「え、ええ!」
流石にこの状況でザンザスも雲雀恭弥も黙り込み、崖の下を眺める。
マーモンがその場の者を全員浮遊させ、崖を降りていく。
「無事だといいんですけど」
ユニが心配そうに泉の方へと視線を送る。
全員が下に降り切って、いくつかある泉を探し回ろうとした瞬間。
「ぶはぁ!」
水飛沫と共に近くの泉からエミーリオらしき声が聞こえ、私は安堵の息を溢し振り返って固まった。
「げっほ、げほ、くっそ、びっしょびしょじゃねぇか!」
水浸しのチャイナ服を纏ったその人物は、エミー……リ、オ……なのか?
いや彼の特徴と一致する点がある前にこの泉に落ちたのは彼だけだ、ならば今目の前にいる人はエミーリオになる。
なる……が、見逃せない点が一つだけ、決定的にあったのだ。
「エ、エミーリオ…?」
「あ?何だ風、つーかちょっと待て、あいつら一発ぶん殴ってから……何だよ、お前らまで来てたのかよ…つーか何で皆して驚いてるんだ?」
「エミーリオ…その……それは何ですか…」
「それ?」
私は目を疑った。
目の前にいる人物はエミーリオだ。
エミーリオなんだが、いつもよりも高い声、水浸しという理由で片付けられないほどの服の引き摺りよう、普段よりも伸びた髪の毛、そして……そして…
「その胸は……何ですか…」
「は?胸?なにそ…はぁぁああああ!?なにこれ!?」
誰もが絶句し、誰もが固まった。
あのザンザスと雲雀恭弥でさえ、だ。
どれほど驚愕すべき光景だったのかが分かる。
目の前の水浸しで立っているエミーリオの胸部にはふっくらと浮き出た女性特有の胸があったのだ。
当の本人は目を見開いて、自身の胸を恐る恐る触っては、本物か確認していた。
そして思い出したかのように下半身に手を持って行き青ざめた。
その理由を男性陣は痛い程理解出来た、いやしてしまったのだ。
「ぇぇぇぇえええええ!?」
「エミーリオが女性…に」
「これはまた興味深い」
「面白いことになったじゃねーか」
「リボーン!面白がってる場合じゃねぇぞ!コラ!」
エミーリオは何度も自分の身体をあちこち見ては、頭を捻っていた。
「つか何で女?」
「……どうやらこの泉が原因のようですね…呪泉郷という名前でしたか…」
「仕方ない、私が調べてやろう」
「あー、頼むわ…」
ヴェルデの言葉にエミーリオが頭を掻きながら頷き、自らの身体を触っていた。
ああ、折角の手合わせが…
溜息を吐いた私を見てか、エミーリオが私を腕に抱えながら帰路に就いた。
いつもとは違う感触に戸惑うも、体温はいつも感じていたソレと同じで私は安堵した。
「そういえば風」
「はい、何でしょうか」
「さっきの技、とってもよかったぜ…すげー強くなったなぁ」
いつもより高い声だったけれど、確かに温かさがそこには籠っていた。
まるであなたの元で修行をしていたあの頃のように。
私の十数年は無駄ではなかったのだ。
「風が逞しい男になってて俺は嬉しいぜ」
師からの言葉なのか
兄からの言葉なのか
分からなかったけれど
確かに 嬉しかったのです
ユニside
「エミーリオ、服を買いに行きましょう」
それは中国からエミーリオの店に帰り、水で軽くシャワーを浴びた後のエミーリオを見た時だった。
エミーリオの着る服がだぼだぼになっているのが気になった私はそう切り出した。
「服?別に今までのでもいいんじゃねえ?」
「ダメです!折角女の子になったんですから少しは楽しみたいです!」
「本音駄々洩れだな…俺変態じゃん」
「今の姿で女性の服を着れば誰も気付きませんよ、さぁ行きましょう」
「あーはいはい、わかったわかった」
私はエミーリオの手を引いて、直ぐ近くのデパートに向かい、服を吟味し出した。
γもついてくると言って来たけど今回はダメだとキッパリ断った。
エミーリオの服を下着もろもろセットで沢山買う予定だったからだ。
「はひ?ユニちゃん?」
「え?」
「あ」
エミーリオと一緒に女性向けのコーナーの前を歩いていると後ろから声を掛けられ振り向いたら、ハルさんと京子さんがいたのだ。
「ハルさん、京子さん、奇遇ですね」
「久しぶりだねユニちゃん!」
「久しぶりです!」
「そちらは…」
「あ、こっちはエミー………リア、エミーリアさんです!」
「エミーリオさんに似てるね、兄妹かな?」
「従妹です」
「そうなんですか!だからこんなに美人なんですね!納得です」
京子ちゃんの質問に咄嗟に嘘をついてしまった。
でも男の人が女になるなんて普通じゃ考えられないし、元が男だと抵抗感があるかもしれないと思って嘘をついたままにした。
エミーリオも私の意図を汲み取ってか、裏合わせしてくれた。
「初めまして」
「初めましてです、にしてもユニちゃんとエミーリアさんはお洋服見に来たんですか?」
「ええ、エミーリアさんに似合う服を沢山買おうと思って」
「じゃあ私達と一緒に回らない?」
「え」
「それいいです!こんなスタイルのいい美人さんなら何着ても似合うと思います!」
「え」
「それいいですね!」
一人だけ話について行っていないエミーリオだったが、流れに乗れば嫌とは言えないことを私は知ってるのでそのまま会話を進めて女性コーナーへと入った。
「まず下着からですね」
「え、下着も?」
「当たり前です、特にエミーリ…アの胸のサイズだとブラは必須です」
「あ、はい」
まいったなぁ、と小さく呟いたエミーリオに内心謝るが、一度はエミーリオとこんな買い物したかったので満足のいくままに行動しようと決心する。
下着売り場でエミーリオが目線のやり場に困っていたり、試着の際ブラの付け方が分からず苦戦したりと色々あったけれど、漸く黒のレース入りの下着に落ち着いた。
上と下は目につくものは全て試着させたりして、数着買ってその中のひとつに着替えてその後を過ごした。
京子さんとハルさんと別れた後カフェで一息つく頃にはエミーリオは虫の息で疲労困憊の様子だった。
「女性の買い物ってこんなに疲れるもんなの?やべぇ」
「フフ、でも今のあなたとっても綺麗ですよ」
「いや俺男だから綺麗とか嬉しくねーから」
困ったように笑いながらコーヒーを飲むエミーリオの姿はとっても様になっていて、どこからどうみても美人だった。
「にしても店の方は暫く閉めるか、これじゃ顔出せないし」
「そうですね、女性の間は私の買い物に付き合ってくれると嬉しいです」
「了解お姫様、そういえばユニの周りに女性ってほぼいないもんなぁ」
そうなのだ、毎度ながら下着売り場の外でγを待たせるのはいつまで経っても恥ずかしい。
二人で店を出て並盛を歩いていると再び後ろから声を掛けられる。
「エミーリ…オ?」
「え」
声を掛けられたと同時にエミーリオの肩をぐいっと後ろへと引っ張られ一回転させられる。
ビックリした私は後ろを振り向いて目を丸くした。
「チェッカーフェイス!」
「よ、シェ……川平?」
「エミーリオだな、何故そんな恰好…というか姿になっているんだ」
「あー、色々あってさぁ、お前よく俺って分かったなぁ」
「体内エネルギーを見ればすぐに分かる、それよりも何故そのような姿になっているんだ…」
事のいきさつをエミーリオが話していると、段々とチェッカーフェイスが顎に手を持って行って考える仕草をしていく。
「ってなわけだ、今ヴェルデが原因を探してるらしいけど…どうしたそんな真剣な顔して」
「…女体…ということは、子を身籠ることも出来るのかと考えていた」
「はい?」
「お前が子を身籠れば、再び我が一族が繁栄出来るんじゃないか、と思ってだな…」
「やだよ、俺男だし…つーかお前が女作って子供作ればいいじゃねぇか」
「人間相手に欲情などするか」
「枯れてんなぁ…」
「子を産んで一族を復興出来れば、これから先人類が滅んだ時もお前が一人にならずに済むかと思ったんだ」
「だから俺は全然気にしてないって…それに俺も今更だけど子供欲しいとか思わないし」
「何故だ」
「多分さぁ…一人でも大丈夫なの、俺だけだと思うし」
その言葉に私はエミーリオの顔が見れなかった。
「子供を見送るとか…それこそ辛そうだけどな」
「お前がそう言うのなら強いるつもりはない、要らぬ手間を掛けたな」
「いや、別にいいんだけど」
「私からすれば性別など取るに足らない些細なことだ、お前はお前だ」
「さいですか」
チェッカーフェイスが私達の横を過ぎ去り、私達は再び歩き出した。
私は先ほどの会話が頭から離れずエミーリオの手を握る。
「ユニ?」
「エミーリオ…は…辛くはないのですか?」
「?」
「最後に一人だけになることが辛くはないのですか?」
「ああ…そのことか………」
エミーリオは手を繋いでいない方の手で頭を掻きながら、少し言葉を選んでいる様子だった。
「そこんとこは正直どうでもいい……多分これは感性の違いとか種族の違いなんじゃねーかなぁ」
「種族の?」
「ほら、ユニは人間の血も流れてるわけじゃん?それに人間と同じように暮らしてきた」
「…はい」
「でも川平君や俺はもう何千年、何万年も生きてるわけだし、今更一人がどうこう言うほどのものでもないと思うんだよ」
「でも、私はあなたを一人にすることが悲しくて、辛くて……苦しいです」
目の前が涙でボヤける中、エミーリオが私を抱き上げて抱っこする。
「それシェリックにも言われたよ」
「シェリックもユニもセピラも俺を心配してくれてさ…」
「きっと俺達は愛情深い一族だったんだろうなって思うよ」
「ありがとうユニ、俺は大丈夫だよ」
涙を堪え切れなくて、私はエミーリオの首に腕を回して泣いたけれど、エミーリオは何も言わず背中をリズムよく軽く叩くだけだった。
愛しい愛しい私の家族よ
あなたを置いて逝ってしまう私を許してください
どうか、あなたは悲しい宿命にも負けずに幸せになって…
愛しています、エミーリオ
何故か心の奥から溢れた出した思いと共にその言葉が脳裏を過ぎった。
これ……セピラさんの……
考える前に私は段々と眠くなって、目を閉じた。
獄寺隼人side
一人で何もすることがなく暇だった俺は、たまたまエミーリオの店にいた。
だが玄関先で何やら人影があり、空席待ちかよと思って足をUターンさせようとした時だった。
「あれ?ボンゴレの…獄寺君じゃないか」
「あ?」
聞き覚えのある嫌な声に振り返って、人影を見つめると、俺はそいつが誰なのか分かってしまった。
「てめぇかよクソ」
「人の顔を見るなり酷いなぁ」
「つかてめぇ何でここにいんだよ白蘭」
「エミーリオの顔を見ようとしたんだけど、店が閉まってるんだよ」
「はぁ?今日は木曜じゃねぇぞ」
「そうなんだよね、GPSではずっと店にいたんだけど、いつもと違う服でも着てるのかなぁ」
「はあ!?GPS!?」
「何でエミーリオがいないのが盗聴器の点検で回収してる時だったんだろう…」
「盗聴器!?おい白蘭てめぇエミーリオのストーカーかよ!」
「ストーカー?違うよ、エミーリオは目を離すと直ぐに厄介事に巻き込まれるから守ってあげてるんだよ」
「監視じゃねぇか!」
俺は久しく感じなかった恐怖を目の前の白蘭から感じた。
本気でこいつのエミーリオに対する執着心がやべぇ…今度十代目に相談しねぇと!
そんな時白蘭が店から俺の方に視線を移して、俺は一瞬後ずさる。
よく見ると白蘭の視線は俺の後ろだと気付き、俺は振り返る。
振り返ったそこには髪の長い女がユニを抱っこしてこちらに歩いてきていた。
女は俺達を目にすると少し目を開き、考えるような仕草をして直ぐそこの角を曲がろうとした。
俺はただ不良を見て回り道したのか、と思ったがユニもいたし俺達の存在を知らないのはおかしいと思い、直ぐに女の曲がった角に駆け出す。
何故か後ろから白蘭もついてくるが、俺は無視して角を曲がった道を歩く女に声を掛けた。
「おい!」
「…はい?」
「おめー怪しいな、ユニのファミリーの奴か?」
「………」
「答えやがれ!返答次第じゃあ」
俺がボムを右手に出そうとすると、横を白蘭が通り過ぎ、女の方に近寄っていく。
邪魔だと言おうとしたが、白蘭の次の行動に俺は言葉を失った。
「は?」
女の素っ頓狂な声と共に、俺の目の前で白蘭が女の髪を軽く持ちあげて自身の口の近くまで持って行ったのだ。
あいつ頭おかしいんじゃねぇのかと思ってた時だった。
「やっぱりエミーリオだ、何で女の子になっちゃってるの?ビックリしたじゃないか」
「うぇ?」
「は?」
エミーリオは男だ、それは変わらぬ事実で、俺は目の前の白蘭の頭を疑った。
「おい白蘭!お前なに頭おかしいこと言ってんだよ!どう見ても女だろコイツ」
「うーん、でもエミーリオの面影あるし、髪質もシャンプーの香も一緒だよ?それにユニちゃんが安心して寝てるし」
「えーと……」
俺と女が困惑している最中、白蘭が女の顔に自分の顔を近づけていく。
女も目を見開くが引いてる様子はない。
「あと瞳の色彩がエミーリオと一緒だから、絶対エミーリオだよ」
「お、っまえ何で分かんの?」
「ほらやっぱり」
女が観念したかのように溜息を吐けば、白蘭は満足そうにして一歩下がる。
俺はエミーリオが女になっているという事実よりも白蘭がエミーリオの瞳の色彩すら覚えているという事実に恐怖を隠せなかった。
いやそれを何でもないかのように流すエミーリオにも驚いたが、こいつの危機管理能力が右に出る者はいない程緩いのを思い出して頭痛を覚えた。
「ちょっと中国で事故って女の身体になっちまったんだよ」
「後で詳しく聞かせてよ、それより今から店戻るつもりだったの?」
「いやユニの泊まってるホテルに行こうとしててな」
「なら僕も行くよ、同じホテルに泊まってるし」
俺を置いて会話を進めるが、エミーリオが俺の存在に気付き声を掛けてくる。
「隼人、お前店に用でもあったのか?」
「え、あ…いや…まぁ」
「ユニ置いたらすぐに店に帰ってくるけど、待てるなら先に店の中で待っててもいいぞ」
「あ、ああ……」
頷くしかなかった俺にエミーリオが店の鍵を渡してきて、白蘭と一緒に宿泊先のホテルへと歩いていった。
俺は何も言えずその後ろ姿を眺めていた。
胸……でかかったな……
我に返って自分の思考を振り払い、店の方に戻り鍵を開ける。
カランコロンと扉についている飾りが音を鳴らすのを聞きながら、店の中に入ると目を見開いた。
「あ」
「なっ…」
黒い物体がカウンターの中でもぞもぞと動いていると思っていたら、それはバミューダだった。
「お前何でここにいやがんだ!バミューダ!」
「ふん、君には関係ないだろう!?」
「不法侵入じゃねぇか!」
「違う!エミーリオを取り巻く害虫の駆除だ!」
そういうバミューダの手には壊れた機器が乗せられていた。
「そ、それ…」
「大方白蘭とチェッカーフェイスの盗聴器と監視カメラだろう、全く油断も隙もありゃしない」
「嘘…だろ…チェッカーフェイスまで……」
俺は今更になって、漸くエミーリオを取り巻く周りが危ないこと理解した。
固まる俺の横でバミューダが店の天井角にいそいそと何かを取り付けていて、俺は我に返って問いただした。
「お、おい!お前何してんだよ!」
「またあの害虫達が何かしないようにこれで見張ってるんだよ、あとエミーリオの守備も兼ねてだな」
「お前もかよ!」
「失礼な!害虫どもと一緒にするな!僕はエミーリオのプライバシーはちゃんと考慮している!」
「いや監視カメラある時点でプライバシーもくそもねぇからな!?直ぐに外せ!」
「ふん、ならば力づくでそうしたらいいではないか!僕を倒せるのだったらの話だがな!」
「お前それストーカーだからな!?犯罪だぞ!」
「マフィアの君が言えたことじゃないね!」
「ぐっ」
悔しいが俺の実力じゃバミューダは倒せない…何かあいつの気を引くものは………ものは……
「おいバミューダ…」
「何だ」
「さっきエミーリオが白蘭と一緒にホテルに向かって行ったぞ、止めなくていいのか」
「ホテル!?だがエミーリオも白蘭も異性愛者だぞ!?」
「ふ、甘いな…今のエミーリオは女の体になってんだよ!中国で事故ってな!」
「んなっ!?確かに中国に行っていたのはGPSで確認していたが…」
「お前までGPS付けてんのかよ!」
「エミーリオ!今助けるぞ!」
俺の言葉にバミューダがその場でワープを使い消えてしまった。
誰もいなくなった空間で俺は手で頭を押さえ溜息を吐く。
「だ、代理戦争よりやばいんじゃねぇのか?コレ…」
俺は現状を把握する前に、取り合えず目に入った、無断で仕掛けられた機器であろうものを全て撤去する作業に取り掛かった。
そして獄寺の監視カメラ・盗聴器・GPSをエミーリオに気付かれずに撤去するという日々が始まったのである。
後に彼が潜入の達人になったのは言うまでもない。
お風呂に入って男に戻ったエミーリオが喜んだ直ぐに、雨で女になりショックのあまり五体投地したりと大混乱があったものの、ヴェルデが原因を追究して開発した薬でちゃんとエミーリオは元の体質に戻った。
獄寺:胃潰瘍予備軍、頑張って、セコム達からエミーリオのプライバシーを絶対守るマン、後で山本も巻き込まれる。
エミーリオ:女になっちゃった、胸が重い、女装してる感覚だった為変態のレッテルを張られるのを恐れて白蘭達にバレないよう迂回したが即バレした。
白蘭:セコムという名の無自覚ストーカー1、エミーリオの瞳の色彩すら覚えてる、現在エミーリオの指紋を覚えようと奮闘中。
バミューダ:セコムという名の無自覚ストーカー2、獄寺の勘違いするであろう言い回しで見事追っ払われた、エミーリオの処女は僕が守るんだ!エミーリオの瞳の色彩は覚えてる。
チェッカーフェイス:セコムという名の無自覚ストーカー3、女体のエミーリオ見てワンチャン狙ってたが、今後のエミーリオの信頼と天秤にかけて、信頼を取った。エミーリオを体内エネルギーで判別している為間違わない。
ユニ:エミーリオを着せ替えしてて一番輝いていた。
風:エミーリオの胸に包まれたラッキースケベ、エミーリオ兄さ……姉さん。
雲雀・ザンザス:THE☆戦闘狂
雲雀とエミーリオの戦闘描写での鉄山靠に関してちょっと戦闘描写下手くそすぎたかなぁと思いはすれど、分かりやすく書き直せるかといわれればNOで、仕方なく図面解説を貼っておきます。
→
【挿絵表示】
らんまパロだけど、ぶっちゃけ呪泉郷を取り入れただけ。
重要な内容を最後の一文で終わらせるという暴挙を、果たして許容できるのだろうか、いや出来ない(反語)
仕方ない、番外編だもんね。
多分この後沢田綱吉とかにもバレるとは思うけど気力がなかったのでここでおしまい。
女体化は元々直ぐに書く予定だったけど、中々ネタが思い浮かばなくてずっと500文字くらいで放置してて、風との戦闘編書いてたららんま思い出して、これだと思って書いた。
文字数多すぎてやべぇそろそろ切らないとと思いながらも1万超えてしまった、スミマセン。
シオリ ( ̄ー ̄)、理夜 、 天乃カエル Jason ゆるAO様のリクエストです。