フランside
「エミーリオー遊びに来ましたー」
「ああ、フラン、久しぶり」
「久しぶりですー」
僕はエミーリオの店に訪れていた。
頻繁とまではいかないけれど、時間があればよく来るようにはしていた。
「聞いてくださいよーこの前堕王子がー」
「またベル君と何かあったのか」
苦笑いしながらも、カウンターに座る僕の頭を撫でる。
エミーリオの前では被り物を取っている僕に、この前師匠が驚いてましたねー、とどこか他のことを考えながらあの堕王子の愚痴をたらたらと吐き出していた。
「ほんっと後輩イビリが凄いんですよーあの堕王子」
「あはは、またお前ベル君煽ってないだろうな?」
「煽ってませんよー全くこれっぽちも」
あれくらい煽るレベルでもないし、あれで怒る先輩もまだまだ子供ですね。
エミーリオに出されたジュースを一杯飲み干すと、再び別のジュースを注がれた。
「何ですかーコレ」
「それはパイナップルサワー、結構人気でね」
「うげー、師匠の炭酸付けですー」
「骸君にそれ聞かれたら怒られるよフラン…」
「エミーリオも師匠の頭ナッポーだと思いますかー?」
エミーリオは一瞬手を止め、顎に添えると考え出した。
「誰にも言わないって約束出来る?」
「約束しますー」
「実はさ、骸君のこと二代目ナッポーって心の中で名付けてるんだ」
「エミーリオもそういうこと思うんですねー……二代目?」
「初代はD・スペードだな」
そう言ってへらっと笑うエミーリオに、珍しいと思った。
基本的にエミーリオは本人が嫌がることをしないし、思わない。
師匠が自分の頭の形をパイナップルと言われるのを嫌ってることだってエミーリオは知ってるのに、内心ではそう呼んでることが意外だった。
「でも皆内心じゃ師匠のことナッポーだと思ってますよ絶対に」
「そうかぁ?」
エミーリオはくすくすと笑ってカウンター越しに僕の向かい側に腰掛ける。
「エミーリオ」
「んー?」
「昔のことを覚えてますか?」
「昔…?お前と会った時のことか?」
「そうですー、ミーとエミーリオが会ったあの川でのことです」
「暇そうに川に足を出し入れして遊んでたお前に俺が幻術教えたんだっけ、あとリンゴの被り物あげた」
「そうなんですよー、なのに堕王子がカエルじゃないと落ち着かないって言いだしやがって、またカエル被されてるんですよー」
「蛙嫌いなの?」
「嫌いじゃないですけどリンゴの方が好きですー」
「そういうもんか…」
「エミーリオ、昔みたいに幻術見せて下さいよー」
「ええ?お前の方が上手いだろ」
「エミーリオのが見たいんです」
エミーリオは顎に手を添え、何やら考え込むと両手の手のひらを上へと向けた。
すると、手の平から霧の炎がぶわりと大量に流れだしてミーは少しビックリしました。
霧の炎が店内を包み込むと、景色が変わる。
そこは水の中だった。
上を見れば魚が泳いでていて、下を見るとそこには廃れた建物がズラリと並んでいた。
ビルもあれば住宅もある、全てが錆びれ所々に魚が潜んでいたり気泡が出ている。
「う…わぁ…」
無意識に零れたミーの声にエミーリオが微笑む。
「水没都市…」
「そうそう、ソレ」
「何でコレなんです?」
「んー………夢で見たからかな…」
「夢?」
「うん、最近バミューダが寝ろ寝ろうるさくてさ、仕方なく眠ってんだがよくこういった夢を見るんだ」
「何度も?」
「ああ、いつも海面から覗いては泳いでここまで潜ったりして時間潰してる」
「…?夢でしょ、現実の時間の感覚とかあるんですか?」
「んー自覚夢じゃないかな多分」
「エミーリオは色々おかしいですね」
「何年も生きてりゃおかしくなるだろ」
ミーはエミーリオから視線を外し、水没都市を覗く。
夢……本当に夢なんですか…?
「エミーリオ、もっと下の方が見たいです」
「ん?分かった」
幻術とは分かっているけれど水の中はどうも息が苦しくなりそうです。
水深がどんどんと深くなるにつれ周りが暗くなる。
偶にホタルみたいに光る小さな何かがうようよしてますけど、顔に当たったりしてうっとおしいです。
「すぐそこに地下への階段みたいなのがあってそこをもっと下に潜るともう辺り真っ暗だぜ」
「光はないんですか?」
「さぁ…俺はこっから先は暗くて何も分かんねーから見せられねーぞ」
「そうですか…そろそろ幻術解いて下さい、幻術とはいえ水の中は息が詰まりそうですー」
「はいはい」
エミーリオがそう言った瞬間、世界が戻った。
重力が身体に掛かるのに懐かしさを覚えるも、ミーは目の前のエミーリオを見る。
「エミーリオも上手くなりましたねー」
「いつになく上から目線だな、お前は」
「いつも相手を見下してばっかの職場で働いてるので、毒されちゃいました」
「あいつらは…全く……」
ミーは、職場の愚痴をこれでもかというほどエミーリオに愚痴った。
後でボス以外の全員が叱られれば儲けものです。
「そろそろ帰らないとロン毛隊長がうるさそうでーす」
「ありゃ、何か仕事でもあるの?」
「多分時差考えてもあと一時間後ですね」
「はぁ!?お前何でそれでそんな余裕面してんだよ」
「エミーリオがいればひとっ飛びじゃないですかー」
「こいつめ……」
エミーリオは呆れて僕の頬を両手で挟むと、力を入れてくる。
「エミーリオー顔がむにむにになっちゃいます、こねないでくださーい」
「おら、行くぞ」
一瞬の浮遊感の後、ヴァリアー本部の目の前にいた。
「おおお、やっぱりエミーリオのワープは便利ですねー」
「俺は運び屋じゃねーよ」
「でもエミーリオは今度もやってくれそうですけどね」
「お前なぁ……俺はもう行くからな」
「はーい、また会いましょー」
エミーリオと別れる時、ミーはあの水の中を思い出して飛びそうだったエミーリオに声を掛けた。
「エミーリオ」
「ん?」
「ま」
「ま?」
「また……遊びに行きますね」
「おう、待ってるぜ」
そう言ってエミーリオは黒い炎に包まれながら消えていった。
足元を見ながら土を靴先で弄る。
「まるで…人が滅んだ後の未来ですね…」
ミーは零れそうで飲み込んだ言葉を吐き出した。
恐らくあれはエミーリオの未来視した光景だ…
本人も無自覚に視てる
「エミーリオもおじいちゃんですねー…」
何十、何百、何千、何万年先かは分からないけれど
いつかの果てに
きっと あの場で 滅んだ人類の残した残骸を
ずっと……ずっと……眺めてるんでしょうね…
「あ」
「ん?」
「エミ-リオだ」
「は?」
イタリアの、何もない路地で目の前を通り過ぎた男を見てふと思い出した。
そしてミーは小さな指を目の前の人物に向けて指差す。
「フラン……?」
「そーですよー、フランですー」
「あれ?お前確か200年くらい前に死んだ気が…?あれ?」
「転生しちゃった感じですねー、ミーも驚いてます」
「マジか、転生とか本当にあったのか…何で前世覚えてるんだ?」
「さぁ、ミーに聞かれても…思い出したの今ですー」
「ええー……お前今世もフランス出身なのか?」
「いいえ、ミーはアメリカ生まれですー」
「そっか…名前はそのまま?」
「いえー、全然別ですねー」
「不思議なこともあるもんだなー、何歳?何でイタリアに?」
「6歳ですー、今絶賛家出中です」
「はぁ!?ここイタリアだぞ!?」
「さぁ、てきとーに飛行機に乗ったらここに着きました」
「うわぁ…子供なんだから危ないことするなよ」
「エミーリオはイタリアでまた店でも開いてんですかー?」
「いや、偶々イタリアで買い物があっただけだ、ほらお家まで送ってやるよ」
「いやですーミーの家凄くバイオレンスなのでー」
エミーリオとの再会で忘れそうだったけど、今のミーは虐待のヤバイ親から必死で逃げていた状況でしたー。
でも前の記憶思い出しちゃったし幻術使えば逃げ切れるなーと思ったりしてます。
最後に覚えてる目線の高さよりもずっと高いエミーリオを眺めていると、エミーリオは暫く考え込んだ。
「じゃあ俺ん家行くか」
「そうしまーす」
宿確保ーと思ってたらエミーリオに肩車されて、ミーの目線は一気に高くなる。
「にしてもお前見た目全く一緒だなー」
「自分でも驚いてますー、緑色なんてそうそういませんよ絶対」
ミーはエミーリオの頭に腕を回して楽な体制で固定する。
「他にも思い出した人とかいるんですかねー、コレ」
「さぁ…そういうのにはまだ会ったことねぇな」
エミーリオの周りの過激派ストーカーたちは執着心だけでエミーリオを転生後も追いかけて来そうですけどね、とは言えなかった。
今世でミーはとっても大往生出来ましたー。
「あ、エミーリオ」
「うわ、フランか」
「どーも久しぶりです」
「おう、300年ぶり……お前とは何度も会うな」
「ミーも驚きですねーあ、今回も安定の6歳です」
「またか、お前はいつになっても外見変わらねーな」
「何でですかねー」
「さぁな」
「あれ?フランじゃね?」
「え?………あ、エミーリオ」
「おう、200年ぶりだな」
「久しぶりですー今思い出しましたー」
「お前は本当に見つけやすいよな…こう、毎回同じ外見だし…」
「ほんと、何でですかねー?」
きっとあなたに見つけてもらう為なんです
チェッカーフェイスside
「人類が滅ぶのはこれで何度目だろうな…」
「さぁ、5度目くらいかね…また文明が発達するまで何年かかると思う?」
「前回とそう変わらんだろう」
「だよなぁ…ああ、また新しい言語覚えるのかー」
「お前も彼らと関わることに飽きないな…」
「まぁね、見てて楽しいし」
数年前、人類が滅んだ。
そして人間の手で害された環境は長い年月を経て回復していく。
とうの昔にバミューダも死に、今地球上でヒトの形をしているのは私とエミーリオのみであろう。
トゥリニテッセは全てエミーリオが持つこととなり、あいつの負担になってはいないかと隣で私が常に付き添っている。
地球の自転は昔よりも遅くなったことで一日の間隔が伸びて、地球にかかる遠心力が弱まり海の面積は南北半球に向けて広くなっていった。
一時期何かの研究で水陸両用の人間が誕生したが数百年で絶滅した。
人類が絶滅し、再び誕生するまでの間、数万年以上の年月を私はエミーリオと過ごしていた。
「そういえばこの前水没都市みっけた」
「また海の方へ行っていたのか」
「綺麗だったぞ……なんだろう、あれが滅びの美って奴か?」
「私には分からん感性だ」
「今度一緒に見に行こうぜ、地下鉄とか魚沢山いたんだ」
「ならば、明日にでも行けばいい」
エミーリオは時々一人でどこかにふらっと消えると、数時間後に帰ってくる。
今の地球がどうなっているのかが気になっているらしい。
エミーリオはこの星への興味というものが旺盛だ。
星は雄大で神々しく巨大だ。
それゆえあいつがその生に対し飽きることはない。
独りになろうともそれが変わることもないだろう。
一人で、大丈夫か
『それが当たり前なんだ』
「俺ちょっと昨日のとこ見てくる、直ぐ戻るから待っててくれ」
そう言ってエミーリオが何かを両手に持ちながら飛ぼうとしていた。
「エミーリオ」
私は思わず名前を呼んだ。
「ん?」
「一人で…大丈夫か…」
「おう!」
快活に笑って飛んでいったエミーリオを見送り、私は近くの木の下に座り込む。
少し、眠いな…
エミーリオのすぐは数時間だ、少し寝ておくか
木に凭れかかり、両手の指を交差させ腹の上に置き、私は瞼を閉じた。
木々から漏れる日差しが顔に差し込み、瞼を閉じているにも関わらず目の前はオレンジ色をしている。
一人で、大丈夫か
『大丈夫だ』
無理はしていないか
『ああ』
本当に?
『本当だ』
『だからもう…楽になれ、シェリック』
今まで側にいてくれて ありがとう
ふわりと、風と共に何かが私の頭を撫でたような気がした
エミーリオside
よぉ、俺はエミーリオ。
最後の喋れる話し相手がいなくなってしまった。
それもいきなり死んじゃうから最初はただのドッキリかと思った。
ビンタしても起きないから流石に気付いたけど。
埋葬でも良かったが折角だし火葬しておきました。
家族が腐るってなんか嫌じゃね?
遺骨を海に撒いてその後も地球を転々と回ってた。
段々と寒くなっていってる気がするなぁ…
若干動物がいるので、この前狼みたいなやつの背中に乗って遊んだ。
正直楽しかった。
現在、一人で砂漠のど真ん中歩いてる。
ちょっと前までは氷河期だったのに、いきなり暑くなった。
少しづつ景色が砂漠ばかりになりつつあるこの頃。
やっぱ喋らないと言語をホイホイ忘れていくね。
つーか時間の感覚が全く分からない、太陽が一か月近く出たり夜が一か月以上続いてるんだもん。
後はー……昔よりも海が減っていってる。
これじゃもう人類は誕生出来ないな…だって生きられないでしょコレ。
しかも猿とか哺乳類も見かけなくなっちゃったし、今じゃ魚と昆虫と植物だけだな!
この前でっかい蜘蛛見つけて、めちゃくちゃ逃げた。
俺よりでかかったんだけど、絶対に食われるわ。
…あれから時間が経ったんだけど、太陽が前よりもでかくなった気がする。
海が全部干上がっちゃったよ、どうすんだ。
俺もここまでかなぁ。
しぶとく生きてたよオイ。
いやもう何もない場所を永遠と歩き続けるのだりーんだけど!
つーかもう朝夜なくなちゃってるし…
太陽側はずっと朝で、裏側はずっと夜だ……多分自転が止まっちゃったんだろうな。
太陽が眩しいので裏側でしか生活してないけど、めっちゃ暗い。
あ、トゥリニテッセ壊れたし。
何か罅入ってるなーって触ったら壊れたし。
もう守らなくていいってか。
延命治療はもういいので安楽死させて下さいってか。
インフォームドコンセントがん無視かよ。
どうせもうこのままいっても地球が太陽に衝突するの目に見えてるしなぁ…
なんかやっと終わりが見えたな。
長かったー…
漸く終わるのか。
たっくよ、一人が寂しいからって俺まで巻き込みやがって。
満足したか、コノヤロー。
………。
「……………おやすみ……」
もう二度とお前のお守なんてごめんだからな。
ねぇ今どんな気持ち?(( 'ω' 三 'ω' ))
エミーリオ死んじゃったけど今どんな気持ち?(( 'ω' 三 'ω' ))
フラン:エミーリオ大好きメンバーの中でまさかの一人勝ち、転生後にエミーリオを見ると記憶を思い出す、本人も何でか分かっていない、転生する度毎度エミーリオと鉢合わしている、バミューダが死んだ後もコイツだけは何度かエミーリオと会っては80年くらいでポックリ逝ってる。
バミューダ:人類が一度目の絶滅を迎えた時に一緒に死んだ、不老メンバーの中で生命力が一番低かった為環境の変化に耐えられなかったのかもしれない、復讐者も大体その頃に死んだ。享年1万歳くらい。
チェッカーフェイス:人類が5度目の絶滅を迎えた頃に死亡、ppk(ピンピンコロリ)、享年約4億歳。(原作終了後から2.5億年後)
エミーリオ:チェッカーフェイスが死んだ後も悠々と星を眺め回っていた、水没都市がお気に入りの観光スポット、もう(星の)子守はうんざりです、享年約30億歳。
➀
【挿絵表示】
シリアス
➁
【挿絵表示】
シリアル
原作時間軸から2億年(チェッカーフェイス死時)経つと人が住めない環境になって一旦氷河期が数億年ほど訪れる。
大体5億年後には太陽が爆発出来る水素が無くなって膨張し出す。
15億年後には海が全て干上がって地球の表面温度は140度前後になる。
その為地上の生物は死んで、地下深くで僅かに微生物らへんが生き残った。
またそれから微生物も生き残れなくなって地球全体が極限サウナ状態になったところで漸く星が死ぬ。
多分そのあと30億年後くらいで、死んだ星は膨張していく太陽に飲まれて原子に戻ります。
あくまで設定ですけどね(笑)
※ここから呼んで欲しい内容↓↓
前話でも申し上げた通り、個人的事情で一旦番外編の執筆は休止します。
詳細は活動報告であげてるので、詳しく知りたい方はそちらを読んで下さい。
なんだか今話が番外編最終話みたいになってしまったけれどあくまで休止です(笑)
ふとネタが閃けば番外編書きますね。