Emilio   作:つな*

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エミーリオは出会う。


Emilioの逢着

よお、俺はエミーリオ。

そういえば最近並盛中学の生徒が襲われる事件が多発しているらしい。

皆下校時はまっすぐ帰るから中学生のお客がパッタリと来なくなった。

ぐぬぬ…はよ捕まれ

翌日トンファー君が来て、黒曜中の制服の写真を見せられてこれ着てる人見なかったかと聞かれた。

ん?これ二代目ナッポー君が着てたやつじゃね?

素直に首を縦に振ると、どんな奴と聞かれた。

うーん…とりあえずオッドアイのナッポーとだけ言っておいた。

伝わるといいんだが。

トンファー君はそれだけ聞くと出て行った。

おい注文してけよ

そういえば二代目ナッポー君来ないなぁ

まさかあの子が最近並盛中の生徒を襲ってる人だったりして…んなわけないか。

ちゃんと敬語使える良い子だったしな。

学校さぼってるけど。

最近物騒だし昼は閉めようかなぁ、ん?あ、いらっしゃーい

おや?何やら様子が…

入って来たのは気弱で大人しそうな女の子なんだが、なんだろう…こう……すごく、目が死んでます。

待て待て、子供がしていい目じゃない。

その子は店の中に入ったはいいけどお腹空いてるわけではなかったらしい。

でも見るからに何か思い詰めてますみたいな表情をしてるわけで…こりゃどうしようか。

なんだか可哀そうだったのでカウンター席に座らせてココアを出してあげた。

当人は驚いていたけどな。

本当にただ足が向いて入って来ただけで手持ちはないので直ぐ出ていきますと立ち上がろうとしてたけど、おいおいそりゃねぇぜお嬢さん。

こんな可哀そうな女の子を放っておくなんざイタリア人の風上にも置けねえぜ。

ココアはただだから飲み終わるまで居座りなよと言えば、おずおずと座り直す様は中々可愛らしかった。

孫娘みてるみたいだな。

それより何か思い詰めてるみたいだったけど、話してみなよ。

ん?ほう……なるほど……うーん…

なんというか、重い。

ええと、どうやら少女は女優の母親とその母の再婚相手である父親との三人家族のようだ。

でも母親は全く自分と目を合わせてくれないし、父親も無関心だと…うおぉ…

愛情の反対は無関心っていうけど、まさにそれだね。

何で自分を産んでくれたかも、何で生きているのかも分からないと。

おっも…久々にヘビーな内容だな。

しかも少女は見るからにまだ中学生だろうに…

何だか泣きそうなくらい目の中に涙溜まってるんだけど、これ我慢するより一度出させた方がいいかな。

蒸しタオル、蒸しタオル…あ、あった。

蒸しタオル片手に少女の背中を摩り出す。

愛情を知らずに育つと爆発するか、鬱々と塞ぎこむかの二択だよなぁ。

まだ爆発するなら誰かが気が付いてくれるけどさ、塞ぎこむと誰にも気付いてもらえなくなるかもしれない。

それ考えると俺の店に入ってきたは運が良かったのかもしれない。

直ぐに吐き出せ吐き出せと背中を摩りながら施すと、まぁわんさか出てくる出てくる。

これ育児放棄で警察沙汰なったって可笑しくないよね。

なんだっけ、ネグレクトだっけ…

こないだの野球少年より重症の様な気がする。

蒸しタオルで目元を押し当ててやって、泣き止むまで待ってあげる。

にしてもこういう場合ってどうすればいいのやら…

俺がここで慰めたって根本的な問題が解決するわけじゃないし。

取り合えず慰めて、泣き止んだら一緒に考えてみるか。

まさか少女が泣き終えるまで一時間も要するとは…。

既に冷めてしまったココアを入れ直し、暖かいココアを飲ませてあげる。

少女にはまず生きる理由を見つけてみようと言ってみた。

ので、暇なときはこの店に来ていいよと言ってみる。

親から少しでも離れて違う場所で新しいことをやらせてみるべきだ。

というかこういう子には楽しさを見つけさえすればいいのだ。

この店には沢山の人種が来るから、沢山人を見てこういう人もいるんだと知って欲しい。

それに親じゃなくても君を必要としてくれる人は絶対にいるハズだ、うん。

まぁ俺の場合いつここを離れるか分からない以上、バイトとして雇えないのがネックだが。

少女は何だかさっきよりも元気になった気がする。

これからも店には顔を出すと言ってくれたので、暫しの間は様子見しようかな。

少女の精神状態が改善されなかった場合は警察に相談すればいいし。

少女を見送った後、俺は居酒屋に切り替えた。

夜の方は割と結構客が出入りする。

寿司屋のおっさんが魚持ってきてくれたので、それをおつまみにして酒盛りをし出す。

今日はもう店仕舞いでいいや。

あー日本酒うめー

あれから少女は店に来てないからめっちゃ気掛かりだ。

どっかで事故にでも会っちゃっただろうか…

まぁ名前も聞いてないから探しようもないけどね。

ん?電話…?包帯君からかな?

うぇぇぇええ?何でトンファー君?

俺お前に電話番号教えた覚えないんですけど?

え?何?俺が料理中に勝手に番号盗んだ?

お前後でちょっと覚えてろよ

で、なに?はぁ!?入院?何で!?

ハンバーグ?いやそれより何でお前入院して…切りやがった。

まぁ昔から面倒見てる子だし、お見舞いに行ってあげるか。

俺優しいなぁ…あんな不良児心配するなんて。

なんやかんやあって、ご飯作って病院行ったんだけどまずロビーの前で学ランリーゼントの男子が数名いる時点で帰りたくなった。

相手側が俺に気付くと、駆け付けてトンファー君の病室まで案内してくれた。

親切なのはいいんだけど、周りの視線が痛い。

病室に入るとトンファー君があちこちにガーゼから包帯やらをしていて、一目見て喧嘩で作ったと分かった。

正直呆れたけど、子供の頃は少しくらいやんちゃなくらいでいいのかなーと思い始める。

ぶっちゃけこいつ眉毛君と同じ性格してるから、注意しても聞きそうにない。

俺にだけ迷惑をかけなければ大目に見てあげよう。

まぁ喧嘩は良くないから一応叱るけどな。

散々叱りまくったので拗ねてるトンファー君にハンバーグランチをあげた。

ふん、仏頂面してるけど嬉しがってるの知ってんだからな。

ほんと眉毛君と似てんな、こいつ。

ん?ナッポー?ああ、この前の二代目ナッポーの話か。

うんうん、何お前あの子と喧嘩したの?

へぇあの子ってそんな強かったんだ。

で、え?あの子について何か知ってるかだって?

あーそうだな……チョコが好きらしいぜ!

おいそんな残念な奴を見るような目をするなよ…本当にそれしか分からなかったし。

ハンバーグランチを完食したらしく、とてもご満悦のようだ。

そろそろ学年が変わる頃だけど、トンファー君はちゃんと高校生になるんだろうか。

聞いてみた。

やっぱり並盛中にいるようだ。

おいどうなってやがる…それも3年生とかそんな次元じゃなかった。

何年生でもないよとか言い出す始末。

大人になりたくない一心で中学に居座ってんのか?動けよ教師。

まさかここまで不良児だったなんて…

今年限りで高校に上がれとしつこく言ってみた。

誰の指図も受けないよとか言ってるけどこれそういう問題じゃないから。

お前恥ずかしくないのかよ、ずっと中学に留まるとか。

並盛中学校は僕のものとか言ってる場合じゃないからね、現実見ろよお前ぇ…

そんなに並盛大好きーならいっそのこと並盛の財団か何か作ったら?

まぁ冗談だけど。

校長とかにでもなったら並盛中とかお前の支配下みたいなもんだろ。

お前のこれからが心配だよ。

え?宇治金時味の大福?また食べたいの?

ならまず中学卒業してくれ。

ほら、いやいや言わないでさぁ…

よし、じゃああと一年だけ在籍したらちゃんと卒業するでどうだ?

約束してくれたら宇治金時味の大福とハンバーグランチと…和菓子作ってやる。

な?別にお前が威張れる場所が中学だけってわけじゃないだろ?

おお!約束してくれた!結構物分かり良いな。

トンファー君の答えにも満足したし帰るか。

怪我治ったら俺の店に来いよー。

 

 

 

 

 

おっす、俺はエミーリオ。

野球少年が二年生に上がったと報告してきたので祝いで何か奢ってあげた。

たくさん食べる野球少年にこっちも嬉しいくなるねぇ。

あ、不良少年君も来てたのか、うむお前にも奢ってやる。

あとそこのマグロ君もな。

不良少年の方は結構な頻度で来るから結構親しくなれたと思う。

敬語こそないけれど、汚い口調は直してもらったしね。

というより暴言吐くたびに鉄拳制裁してたからだな、うん。

マグロ君が驚いているのを見ると、こいつ学校では絶対に口悪いな。

教師達の手を煩わせてるんだろうなぁ…トンファー君といい不良少年といい、並盛中の教師を同情するわ。

いや俺もこの問題児達の相手してる時点で同情してもらいたい、切実に。

お前たちちゃんと2年生になっても勉強頑張れよー

三人が出て行った後、夕方になってたから居酒屋に替える。

すると久々に包帯君が来てくれた。

おー!ひっさびさに見るねえ。

何か機嫌よくない?え?例の極悪犯捕まえられた?良かったじゃん。

うんうん、じゃあ俺からの祝いだ、飲め飲め。

にしてもお前果実酒本当に好きだね。

え?俺のだから?嬉しいこと言ってくれるねぇ。

おおう、飲んだら酔ってまた愚痴り出した。

ええ?また犠牲者?どっかの殺人犯追ってるのかな?

あ、チャッカマン?まだ探してたのか!

仮面付けてくる人なんて俺の店にはいないよ、うん。

ぶっ殺したいとか言ってるけど物騒だなぁ。

にしても包帯ボロボロだ、また買ってあげよう。

水飲ませて酔いが醒めたらしく帰っていったけど、大丈夫かね。

日本の包帯は質が良いし、今度渡そう。

そういえば二代目ナッポー君来ないな…あの少女も来ないし何かあったかな

あー……何にもないし少し時間飛ばすか。

 

 

 

 

やっほー、俺はエミーリオ。

現在フランスにいます。

っというのは、最近ベルモットが人気で俺の店で扱ってる量が底を尽きそうだったからだ。

甘味果実酒のベルモットの材料である香草やスパイスはまだストックがあるからいいんだが、ニガヨモギという多年草が足りなかったので原産地であるヨーロッパへ行くことにした。

イタリアでも良かったんだが、何故かよくイタリアで飛ぼうとするとフランスに着くからそのままフランスで収穫することに。

収穫にベストな時期だったので良かった。

崖を登ったところの滝が近くにある畑へ行ってみた。

人気がないので盗み放題だと思い、こっそりと収穫する。

まぁある程度取れたので、帰り際に滝見て帰ろうとした。

おや?子供がいる。

小さな7歳くらいの黄緑の髪色をした男の子が滝で遊んでた。

暇潰しで遊んでいるようなので、少し付き合うことに。

水の掛け合いとかそんなんでいいかな…

っと思ってたらいきなりぶどうやら犬やら出してきた。

うぉぉぉぉぉお、こいつもマジック出来やがる。

俺も出来んだぞ!っと自慢すると凄い勢いで喰いついてきた。

取り合えず鼻炎の赤ちゃんから習ったことそのまま教えてみた。

泊まっていってと言われたけどすまん、フランスに長居するつもりないんだ。

おばあさんと二人暮らしのようだったので、夕飯だけ作ってあげてそのまま帰る。

結構引き留められたけど、ちゃんと説得して納得してもらった。

駄々こねそうなので、何かプレゼントしようとマジックでてきとーに被り物を作ってあげた。

おおう、間違えた。

何か凄くでかいリンゴの被り物出来てしまった。

捨てようと思ったけど、少年はいたく気に入ってるご様子だったからそのままあげた。

リンゴの被り物に満足したようだ。

また会いましょーと気の抜けた声が背後から聞こえた瞬間俺は飛んでしまった。

あわわ、炎見られたかもしれない、やっべー。

今更戻るわけにもいかないし、そのまま飛ばされた場所を確認する。

日本にちゃんと戻れたようだ。

さて店に帰るか。

開店したと同時に、学ランの中学生が入って来た。

茶髪で眼鏡をかけていて、如何にも気が弱そうな少年だった。

確かこの眼鏡君以前にも俺の店に来たことがあるような…

ああ、そういえばギターの練習が上手くいかないって愚痴ってた子か!

ミュージシャンになりたいって言ってたから頑張れ!って応援してあげたけど、あれから頑張ってるのかな?

なにやら真剣そうな顔してるけど、何があったし。

取り合えずカウンターに座らせて、注文を聞く。

ソフトドリンクを持ってくると、眼鏡君は俺に質問してきた。

未来が分かったらどうするかって、ええ?

今頃の中学生の悩みは分かんねーなぁ。

未来が分かったってどうにもなんねーのに。

んと、なになに?ふむふむ

10年後の世界ではとある人物のスパイをしてて?このままじゃ世界は破滅に向かうと。

そんな未来の自分から手紙を託されて、手紙に書かれている助っ人を未来に飛ばしてほしいと頼まれた。

ふーん、創作小説かな?

とある人ってのは世界を征服しようと企んでるらしい、と…ほうほう。

世界征服ねぇ、そんな世界は弱くないと思うけどなー。

でもまぁやってみたらいいんじゃないかなぁ…。

やらないよかマシでしょ。

まぁ小説の内容にここまで入り込んでる時点で現実を思い出させてあげなきゃダメなのかな?

決心がついたとかなんとかでお金払ってそのまま店を出て行ったけど、大丈夫かな…

ていうかミュージシャンどうしたの?

数日経つと、不良少年が弁当を作ってくれと頼みに来た。

何故に。

どうやら自分の力不足を嘆いて、修行で山籠もりするらしい。

山籠もり……中学生が、山籠もり…ふむ。

俺もたまに炎の修行で山籠もりするし、最近じゃそれが主流なのかな?

お金さえ払ってくれればいいよーと言えば感謝された。

頑張れよ!不良少年!

何か不良少年が出ていくのとすれ違いで金髪のお兄さんが入って来た。

入店すると同時にこけたんだけど大丈夫かな?

手を貸して立たせてあげる際顔がよく見えたんだけどイケメンだった。

しかも昔の友人並みの。

イケメンは取り合えず酒を注文し出したので、注文通り注いでいく。

会話を進めていくと、どうやら俺に用事?というかまぁ聞きたいことがあったらしい。

トンファー君のことで、と言われた瞬間頭が痛くなった。

また何かしたのかなーと思い聞いてみると、どうやらトンファー君の師匠…というか家庭教師を務めるらしい。

ってことはトンファー君よりも強いのかな?っていうか何で家庭教師?

ッハ、俺との約束守るために高校受験に向けて勉強し出したとか!?

違うようだ、辛い。

どうやら鍛えるみたいだ。

あいつあれでも強いのにこれ以上強くしてもどうしようもないでしょ。

つーか強くしたらいつも殴られてるリーゼントの友達君が可哀そうだ。

ん?なになに?今度決闘があるからそれに向けて強くするって?

中学生の決闘…あの子不良だから有り得るなぁ

あ!だから不良少年も修行しに山籠もりしてんのか!

うへー…日本って安全な国じゃなかったのかよー…

ああ、ごめん、で…ふむふむ、トンファー君の家庭教師をする際に俺のことを聞いたと。

トンファー君が俺のことを認めているらしい。

俺の何を認めてるのかわからんけど、嬉しい…のかな?

それでトンファー君をどうやって懐柔したかって?

えーと…ええ?ていうかあいつ懐いてるのか?わっかんねー

だってお説教と拳骨した記憶しかない。

イケメン君顔引き攣ってるけどどうしたの?

あー…でもそうだなぁ、やっぱハンバーグじゃないかな?

そう、和風ハンバーグ。

あいつ大好きだよね、よく食べに来るし。

やっと糸口が掴めたぜ!とか言ってるけど、大丈夫かな?

店から出る時も転んでたけど心配だ。

また来るぜー!と言って度々転びながらどこかに消えて行ってしまったイケメン君。

あれ絶対トンファー君より弱いだろ、ぶっ飛ばされる未来しか思い浮かばない…

にしても決闘かぁ

今頃の子供ってどんな喧嘩してんだろう…

今度覗き見てみようかな。

ああ、いらっしゃーい、空いてる席ならどこでもいいですよー

トンファー君が全うな子になるのを祈るか。

 

 

 

 




少女:凪
少年:フラン(小)
残念なイケメン:ディーノ
眼鏡君:入江正一

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