「・・・今回のジュエルシードは樹の化物・・・か。」
「だけど・・・私とアルフ、それに君がいれば」
三人の目の前には木の根を蠢かしながら左右から木の枝の手を生やした姿は戒翔の言う通り樹の化物である。
「先ずは様子見で・・・・・ソニック」
『shooter』
戒翔の放った一発だけ黒色の魔力弾が放たれるが樹の化物の眼前で展開された薄緑色の障壁に阻まれる。
「・・・障壁を展開・・・か。」
「どうする?アタシ等だけじゃ・・・」
「・・・・・・どうやらその心配をしなくてもいいかも知れんな」
戒翔が背後を振り返る。それに倣う形でフェイト達も後ろを見ると
「おっきい・・・これもジュエルシードの影響なの?」
「そうだと思う。けど、アレは・・・」
「アレがどうだって関係ないな。要はぶっ潰せばいい話・・・だ!」
一人暴走する竜崎を放って置き、フェイトとなのはが何かを話している。
「・・・さて、アルフ。今は彼女達の動きを見ながら行動を考えるぞ」
「?・・・どうしてだい?」
訝しむアルフに戒翔は
「先の小規模ながらだが起きた次元震の一件で管理局が感付かないとも限らない。」
「そう・・・だね。気を付けておくよ。」
フェイトとなのはの砲撃が樹の化物の障壁を抜く所であった。端の方で竜崎がその余波で墜落するのを確認した戒翔は嘆息しつつも一応回収をしておくことを忘れない。
「・・・フェイトちゃん。」
「・・・・」
2人がデバイスを構え、動く。そしてまさに激突せんとする所に
「ストップだ!ここでの戦闘行為は危険だ!僕は時空管理局執務官クロノ・ハラオウンだ。」
「管理局!?こんな時に・・」
「来たか・・。アルフ、バインドを破壊するからフェイトの事頼んだぞ?」
「言われなくても!」
――――――――――――――――――
「君達には弁護の機会がある。抵抗しないのであれば大人しく武装解除をしてくれ。」
「っく」
警戒していた筈なのに気が付かなかった・・・これが執務官。
「それとそこの小動物姿をしている方にも話を」
聞こうかと言おうとした所で急に私の体が引っ張られる感じがしました。すると私の体は黒騎士の恰好をした戒翔にお姫様抱っこされてました。
「っな!?新手か!?」
「か、「此処で名前を言うな。面倒になるぞ?前の様に呼んでおけ。」うん、分かった。助けてくれてありがとう。黒騎士。」
驚いている執務官の子を余所に戒翔は驚きの余りに名前を呼ぼうとしていた私を制して黒騎士と名乗らせる。
「君はいったい何者だ!その子の仲間か!?」
「・・・協力者だ。執務官殿。悪いが今日は帰らせてもらう。」
「待って、黒騎士。ジュエルシードを」
『ソニックムーブ』
「ッ!?待て!」
戒翔の制止を振り切り、ジュエルシードを手に入れようとした所で後ろで魔力反応がしたので咄嗟的に後ろを見ると水色の砲撃が飛んできていた。それも直撃コース・・・直ぐに躱せないと判断した私は目を瞑り体を強張らせるしかありませんでした。
「・・・?」
一向に痛みや衝撃は来なくって、私の体を優しく抱く温もりに違和感を覚えて目を開けると私の目の前にはアルフと片手を横に
「ば、バカな・・!?砲撃を片手で払い除けた!?」
男の子がそんな事を言って私は驚き、彼の後姿を見ていた。
「・・・これを持ってさっさと転移しろ。此処は俺が抑える。」
そう言ってこっちを向いた戒翔は反対の手を出して私の目の前で開く。その中にはわたし達の目的の物・・・
「何時の間に手に入れたんだい?」
「それは秘密だ。」
アルフの問いに戒翔は少し笑ったかのような声色で言うと私の掌にソレを乗せるとまた相手の方を向きました。
「さて、この子達は逃がさせてもらおうか・・。」
「させると思うのか!」
そう言って黒い子がデバイスを両手で構えて青い魔力弾を数発撃ってきました。
「・・・ブラックガイスト。」
『分かったよ。』
「んなっ!?」
戒翔の体を薄い魔力の膜で覆われたと思ったら戒翔に向かって来ていた魔力弾は直撃した筈なのに逸らされたかのように地面に落ちて土煙を上げていました。その様子をわたしはこの場にいる子達と一緒に驚いた様子で彼を見ていました。
「・・・アルフ、さっさとこの場から逃げろ。いくら俺がジャマーを働かせているとしても時間稼ぎにしかならない。」
「分かった。アンタも無茶しないでさっさと帰って来るんだよ?」
「分かった。」
「黒騎士!?アルフ、私は大丈夫だから」
「悪いな、フェイト。眠りの霧・・。」
戒翔が私に手を翳したと思ったら急に眠気が来て私はそれに抗えず、意識を手放しました。
――――――――――――――――――――――――
「さて、これでやりやすくなったな・・?」
戒翔はそう言って片刃の峰に銃の機構が付いた剣をクロノに向ける。
「ッく。」
戒翔の雰囲気に吞まれそうになるも伊達で執務官になった訳では無いクロノはデバイスを構える。
「・・・そこで盗み見とは良い御身分だな、管理局とやらは」
いざ飛び掛からんとしていたクロノは出鼻を挫かれた形となるが見えていない筈のサーチャーに気付いていた事に内心で驚愕する。
「だんまりを決め込むのなら此方にも考えがある。先程の無抵抗な状態の彼女に向けて直撃コースで砲撃を撃った一連の動きをデバイスで録画させて貰っている。」
戒翔はそう言って片手を翳せばホログラムの映像が現れて先程の行動が映されている物が現れる。
『《時空管理局所属、次元航行艦【アースラ】の艦長リンディ・ハラオウンです。黙って見ていた事は誤ります。ですがアレは危険な物です。ですから私達の指示に》』
「今更来てどの面で言う?アレが起きたのは一週間は過ぎている。それに貴様らが来たのも小規模ながらだがジュエルシードの暴走を観測したからに過ぎないだろ?」
『《それは・・・》』
「故に俺は貴様らに従う必要性を感じない。」
『《対応が遅れた事は謝罪します。ですからどうか私達に話せる場を作らせてもらえませんか?》』
「無抵抗な彼女を撃った奴がいる艦に乗れと・・・?冗談にしては面白い」
「貴様!」
『《クロノ執務官は黙っていなさい!これは上司である私の指示が悪いのだから・・》』
「しかし、艦長」
「貴様の艦長は懸命だな・・・。」
そう言って戒翔は片刃の剣を映像越しにリンディと名乗る緑色の髪を後ろに結った女性に剣を向ける。
「だが、彼女に向けて撃った事には変わらない。それにはどう弁明する?俺が守れたからいいものをあんなものを年端もいかない少女に向けて撃つような物じゃない。非殺傷設定だから安心?馬鹿か?魔法はそれ単体でも危険な物だという認識が無さ過ぎる。」
『《ですが・・・それがあるからこそ世界は》』
「身の程を知れ・・。人間が世界を管理する?馬鹿も大概にしろ」
『《ッ!?》』
戒翔の発した濃厚すぎる殺気にリンディは血の気が引き表情が蒼白する。
「・・・だから今回の事で彼女達に罪があるとか抜かせば俺が貴様等の闇を世界に向けて公表する。そして、テスタロッサ家に関しては手出しするな。」
『《闇・・・?》』
蒼白させた表情ながらも戒翔扮する黒騎士の言葉に疑問を持つ。
「気付かないのか・・・それとも敢えて気付かないふりをしているのか・・・どちらかな」
黒騎士は自身の知りうる管理局の裏にある物をこの場で開示する。
「『《これは・・・ッ!?》』」
「違法研究所に加担する管理局員に、人造魔導士を作るために人体実験と称して孤児を使った実験・・・極め付けには故意に事故を起こさせてその頭脳を利用しようと暗躍する上層部・・・。これの他にも多くの物的証拠、記録映像がある。これを公表しない代わりにテスタロッサ家に罪があるという冤罪を取り消せ。そもそもジュエルシードがこの地球に離散した時に迅速に動いていればこの様な状態にならなかった筈だ。」
「こんな・・・こんな事出鱈目だ!お前の捏造だ!」
「・・・やはり幼い執務官では組織、ひいては軍は一枚岩で行く事は無いとは分からないのだな。」
「僕たちは・・・正義の為に・・・正しい力の使い方を」
クロノは更に続けようとするが戒翔の発する怒気によりその続きを言う事は叶わなかった。
「何を持って正義とする?何を持って正しい力とする?人の間に正義も悪も混在する。正しい力と言ってもその者が持つ力が正しい使い方はされたか?人の歴史を見て来たがお互いに主張する物、護りたいモノがある。お互いがお互いの正義とぶつかり合う。そして負けた方が悪とされてきた。」
戒翔の言葉に誰もが反応できなかった。いや、出来る筈がない。それはまるで・・・
『《貴方は・・・人の争いを》』
「あぁ。数えきれない程見て来た。そしてその中で貴様等の様な人間はいなかった。お互いの正義を主張し、争うばかりの人間ばかりだった。それなのに貴様等は人間の歴史を見ずに管理局の視点からしか見ない馬鹿のようだな・・・。」
『《貴方は・・・いったい・・》』
「すでに此方は条件を出した。それが飲めなければ此方は此方で勝手に動かさせて貰う。」
『《・・・分かりました。貴方の条件を飲みます。どうか私達に力を貸してください。》』
「・・・今回だけだ。だが、貴様らが虚偽の言動をすればその場で俺は降ろさせてもらう。」
『《感謝します。クロノ執務官はそのままアースラに戻って下さい。後日、会談の場を設けますのでその時はこの地域の公園に集合と言う事でお願いします。》』
「分かった。」
そう言って戒翔は身を翻す。
「待って!」
「・・・なんだ、白の魔導師?」
「わたしの名前は高町なのはです!貴方の名前は・・・」
「いずれ明かす時が時が来る。その時になったら教えてやる。」
戒翔はそう言って通常の転移魔法とは違う魔法体系・・・移送方陣を展開してその場から離れる。
――――――――――――――――――――――
「艦長!何故あの時に強引にでも捕まえなかったんですか!?」
「クロノ、あの人が見せた映像の中にはある事故の映像も混じっていたの。」
「ある事故?」
「【ウロボロス魔導炉暴走事件】、当時の担当していた研究者はミッドチルダでも有名だったプレシア・テスタロッサ。そして・・・」
「彼女が試験運転として炉を動かした時に暴走が起きて周囲に甚大な被害を出してしまったの。」
「それからほどなくして彼女は姿を消してしまったの。まさか、本局の人間が関わっていたなんて考えもしなかった・・。」
「それを何故アイツが情報を、映像を持っているんですか!」
「分かりません。ですが、もしハッキングしていたとするのであればまだ此方に分が残されているかもしれませんが・・・多分だけど望み薄かもしれません。」
リンディの言葉に艦長室に入ったクロノはしかめっ面をする。
「すみません。もう少し慎重になるべきでした。」
「しょうがないわ。もう過ぎてしまった事だから。今はこれからの事、そして彼との交渉をもう少し進めて何とかしないといけないわ。クロノはもう休みなさい。」
「しかし「艦長命令です。」・・・分かりました。」
クロノが退出するのを確認してリンディは深く溜め息を吐く。
「彼が何者か分からないけど・・・此方に落ち度があった事には変わりないものね・・・。どう話したらいいかしら」
そう言ってリンディは虚空を見つめる。