少年の異世界戦記~リリカルなのは編~   作:クロイツヴァルト

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悲しみと癒しと約束

 

 

 「さて、改造も一段落したところで…町内でも見て回るか。」

 

 少年はそう言って屋敷を出る。

 

 「海鳴公園に聖祥学院に翠屋…見事に彼女のいる場所だな…。」

 

 『そのようですね…。どうします?』

 

 「今は昼時だし公園に行ってみようか…。」

 

 少年が公園に行けば栗色の髪をツインテールにした女の子が1人砂場で何かをして遊んでいた。

 

 「(さっそくエンカウントか…。)」

 

 少年は少女の行動をベンチに座ったまま観察する事にした。

 

 「(あそこから動かずにずっと砂いじりしているな。)」

 

 『かれこれ2時間になりますが彼女の親と思われる者が現れる気配は無いですね…。』

 

 少年の腕に巻き付いたチェーン型デバイス【アルカイン】愛称アルはそう呟く。

 

 「(そりゃそうだろ。男親の方は裏の仕事がメインで母親と兄と姉は新装開店したばかりの翠屋の運営に忙しい。幼いわりに聡い彼女の事だから自身が我慢すれば周りに迷惑かけないと考えたのだろうな。)」

 

 『とても六歳児の思考では無いですね。』

 

 少女の事を観察しながら少年はアルと念話でそんな事を話していた。

 

 『マスター、このままでよろしいのですか?』

 

 「(良いわけないだろ。)」

 

 そこからの少年の行動は早かった。少女は急に近付いて来た男の子に警戒したが隣にドカッと座り込むと自分と同じ様にして砂で遊び始めた事に困惑する。

 

 「あの…」

 

 「1人じゃつまらないから遊べ。」

 

 「え…?」

 

 「お前も一人で暗そうな表情(かお)してて楽しいのか?暇だからちょっと手伝え。」

 

 「え、あの?」

 

 少女の事等お構いなしに少年は少女の隣で砂を弄り、砂の山を作りトンネルを作ったり、城の山を作る。そんな事をしている内に少女もその作業に入って来た。

 

 「…そこは少し水を含ませれば崩れにくいぞ。」

 

 「そうなんだぁ。」

 

 「そのままじゃ崩れるから水を少量含ませて砂に吸わせてやれば安定した下地が出来るからうまく作れる。乾燥したら崩れるけどな…。」

 

 そう言いながら少年は手を動かしながら少女の方を見る。

 

 「所で、お前の名前は?」

 

 「え?私?わたしの名前はなのは、高町なのは。君は?」

 

 「俺か?俺の名前は戒翔、黒逸戒翔だ。よろしくな、なのは。」

 

 「うん!」

 

 暫く砂場での遊びに没頭していれば既に日は傾き始め、町を夕焼け色に染めつつあった。

 

 「もうこんな時間か。」

 

 「…そうだね。」

 

 少年、戒翔がそう呟くと少女、なのはは俯きつつそう答える。

 

 「…おれはまた明日此処にいるから今日と同じ時間帯ならいるからまた遊べるさ。」

 

 「ほんと?」

 

 「嘘を吐く訳ないだろ?なのはとおれは友達なんだから。」

 

 「なのはと友達になってくれるの?」

 

 「なんだ、友達は嫌いか?」

 

 「ううん!なのはは友達がいないから…。何時も一人で公園の砂場で遊んでたの。」

 

 戒翔の言葉になのはは首が取れるんじゃないのかと思うほど振るとポツポツと語りだす。

 

 「お父さんとお母さんはお店のお仕事で忙しくて、お兄ちゃんとお姉ちゃんはそのお店の手伝いで忙しいから、なのはは邪魔をしない様にお外で遊んでたの。」

 

 「子供が親兄弟に迷惑とか言ってんじゃない。子供は迷惑かけて当然というのは可笑しいが我儘言って良いんだ。子供の内にしか我儘なんて言えないからな。」

 

 「でも…」

 

 「なら、親に甘えれない分は俺に甘えろ。俺を頼れ。俺に我儘を言え。俺がお前を支えてやるよ。」

 

 尚もごねるなのはに対して戒翔はぶっきら棒に言いつつもなのはの頭を優しくなでる。

 

 「いい…のかな?………ぐすっ……………わたしも我儘、いっても…」

 

 「なにを当たり前の事言ってんだ。我儘は子供の特権だ。」

 

 知らずの内になのはの表情がくしゃくしゃと歪み、瞳からは大粒の涙がこぼれる。戒翔はそんななのはの顔を自身の胸に押し付ける。その拍子に堰を切った様にしかし、声を押し殺して肩を震わせながら泣くなのは。彼女はいまだに幼い少女なのである。そんななのはの頭を昔…そう。ほんとに昔に母親にやって貰った様に頭をポンポンと叩き、そして優しくなでる。

 

 「(頭を撫でられると不思議と安心したんだよなぁ…。)」

 

 背中も同じように叩きながら泣き止むまで好きなようにさせた。

 

 おもいきり泣いたなのはは、目の下が赤くなっていたが先程までの暗い表情が嘘の様に心の底から笑えていたように思えた。

 

 

 

 

 「…なんかごめんね。」

 

 「気にすんな。溜まった物吐き出してすっきりしただろ?」

 

 泣いていたのは少しの間だけだが、悲しむ彼女よりも笑っていた方が良いのは誰でも同じことなのだから…。涙で濡れた服など彼女の笑顔に比べれば安い物である。

 

 「うん……」

 

 その後もなのはの事情を聞くと忙しい家族の中で何も出来ない自分はいらない子ではないのかと思う時があるという。

 

 つまる所、何もできない=いてもいなくても変わらない=必要無いという結果になった様だ。1人、孤独でいればそういう思考になるのも頷けるが、如何せん彼女はまだ6歳。その歳でこんな結論に至るのはかなり深刻な物である。

 

 「…なのは、門限は何時だ?」

 

 「え…?6時だけど…」

 

 なのはの言葉に戒翔は時計台を見やると丁度4時30分を差していた。

 

 「…よし。門限までには帰らないといけないがそれまで一緒に遊んだりお話でもするか。」

 

 そうして、戒翔の判断でなのはと一緒に言葉通りに門限近くまで遊び倒すのであった。

 

 「ねぇ、戒翔くん。またなのはと遊んでくれる?」

 

 「なのは、なにを当たり前のことを聞いてるんだ?明日もまた今日と同じ時間に集まって遊ぶんだからな?」

 

 「ほんと?約束だよ!」

 

 「あぁ、約束だ。」

 

 そうして、約束を交わしたなのはと戒翔は公園の出入り口で別れるのであった。

 

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