「テメェそれは!」
「ほぅ、貴様にこれがどういった物か理解しているのか」
戒翔の出した魔導書から出て来た少女の姿を見て竜崎は顔色を変えて狼狽える。
「な、なんでテメェみたいなやつがそんな強力なもんを持っていやがる!」
「異な事を言うな? 持っていたから使っているだけの事。 まぁ、俺は道具としてでは無く家族であり相棒でもあるコイツを大切にしているがな・・・貴様とは違って」
「道具は道具だ! それを俺がどう使おうと勝手だろうが!!!!」
「高性能のデバイスは所有者の補助をする為に高度なAIを組み込む・・・すなわち成長次第では人間と顕色無いそれを道具呼ばわりとは近いうちに痛い目を見る事になるぞ?」
「ハッ! 俺が痛い目に会う? ならオメェが痛い目に会えよ!」
戒翔の挑発行動に簡単に引っ掛かり最初の委縮していた態度はなりを潜めセイバーを構えて戒翔目掛けて突っ込んでくる。
「エセル」
「イエス、マスター」
迫る竜崎を尻目に戒翔とエセルドレーダーはお互いの手を重ね
「「ユニゾン・イン」」
「なッ?!」
瞬間、戒翔とエセルドレーダーのいる場所に濃密なまでの魔力溜まりが出来上がりその余波で周囲の空間が軋み、地面に至っては隆起したり陥没し戒翔のいる位置には蜘蛛の巣状の亀裂が出来上がる。
「ユニゾンって・・・まだ開示されていないベルカの魔法体系の一つじゃないか! なんで」
「不思議な事を聞くな・・・エセルのその身はあらゆる世界の禁術や秘術を記した《ナコト写本》それにたかが次元を隔てたベルカの魔法体系を記していない筈がないだろう?」
竜崎の言葉に闇色の魔力溜まりから姿を現した戒翔はしれっと答える。 そして戒翔の姿はオルタの姿に闇の衣を纏い、頭からすっぽりと覆うローブを羽織り、手元にはナコト写本が握られていた。
「それがお前の・・・ユニゾン状態」
「そうだ。 そしてこの姿を見ているのは貴様だけだ。 この姿になる前に俺達がいる空間は位相をずらして認識が不可能な状態だ。勿論だがサーチャーからの映像転送も無理だ。 向こうでの事が終わるまで貴様には俺と一緒に遊んでいてもらおうか」
「・・・畜生が!!!!」
「ン・カイの闇よ」
斬り掛かる竜崎に対して戒翔は片手を突き出してベルカ式やミッド式とは異なる術式の円環が現れ周囲に数十個もの黒い球体が生成され天体の様に戒翔の周囲を回り始める。
「超重力の壁をどう突破する?」
《Gravity wall》
「ぐあッ!?」
天体の様相を保っていた黒球は竜崎の周囲を飛び回るのと同時にその周囲に異常な重力力場を生成し、地に縫い付ける。
「まだたかだか通常の二十倍程度なのだが・・・その程度で地に伏せてしまうのか」
「くッ! な、舐めるな!」
「口だけは上手く動くのか・・・なら更に倍だ。」
「ガァアァァァァァッ!?」
更に竜崎の周囲の重力を変化させる。 常人なら既に過重で押し潰され圧死しても可笑しくないレベルであるが、転生者である竜崎の特典と魔導師の着るBJの性能の御蔭で未だに無事で済んでいた。 しかし、物には限度と言うものが存在するように竜崎も自身が耐えうるレベルを超えようとしている事に焦りを見せ始めていた。
「弱い弱すぎる・・・本当に転生して慢心しかなかったのか・・・己を省みず、修練もせずただただその日を生きているだけなのか。」
なおも地に這いつくばる竜崎を見て戒翔は呆れ、失望していた。 この様な転生者は嫌というほど見て来たがどうにもなれないものである。
『戒翔、そろそろ撤退するぞ。』
『了解』
その最中、シグナムからの念話に短く答えて戒翔は竜崎を見下ろす。
「貴様は一生そこで地に這いつくばって生きていくが良い。 悔しければ俺の所まで上って来るが良い。 それだけの力と能力を貰ってそのままでは宝の持ち腐れ・・・相棒のデバイスも気の毒だからな」
そう言って結界を解除して戒翔はその場を離れて行くのであった。